第20章「神の降臨」
第20章「神の降臨」
(※オリバー・ジョーンズ回顧録より)
――これは、俺が生まれるよりも遥か昔、バーンズダンとゼウスが未来から旧約の時代へ降り立った時の話だ。
直接は見ていない。けれど、俺は後にマスター・ダンからこの出来事を聞かされた。
彼は、まるで演劇を振り返るように、静かに、そして皮肉混じりに語ってくれた。
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砂嵐が吹きすさぶ赤土の大地に、巨大な影が降臨した。
宇宙船――14兆円号。
銀色の巨体が地上に接地するだけで、大気がうねり、時代の音が変わったという。
原住民たちは、最初その光景に言葉を失った。
「神が来た」と最初に叫んだのは、祈りを捧げていた長老だと聞いている。
以後はもう、群衆の感情は雪崩のようだった。
銀のスロープから姿を現したのは、バーンズダンとゼウス、そして聖トスゴーンの守護者たち――
800人の凍眠者が光る白の装備で一斉に降りてくる光景は、まさに“神の降臨”だったと、彼は語った。
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その場にいた誰かが叫ぶ――「神だ!神が降臨した!」
それは演出でも、台本でもなく、民衆の心から湧き上がった錯覚だった。
けれど、ダンはその錯覚を利用した。
彼はゼウスに合図を送り、担いでいたプロジェクターを起動させる。
数百台のドローンが舞い上がり、崖に――“映画”を映し出した。
『モーゼの十戒(1956)』。
海が割れ、民が進み、怒れる神が導く映像を見た原住民たちは、再び熱狂する。
「神の奇跡だ!」と。
「神は映像で記録するのだ!」と。
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だが、ゼウスとダンは違った。
ゼウスは、俺にこう語ったことがある。
「信仰は記録に勝る。だが、記録は嘘をつかない」
その時、隣でダンは冷たく言い放ったそうだ。
「演出だよ。科学者なら、信仰を語るな」
そして続けてこうも言った。
「それでも……殺すよりは、マシだ」
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群衆は涙し、祈り、感極まって崇拝する。
けれど、目の前に立っていた“神”たちの正体は、ただの未来人だった。
――この場面を、俺は決して忘れない。
なぜなら、バーンズダンはこの時、心の中で俺に語りかけていたのだ。
(オリバー。これは“嘘”の始まりだ。だが、いつか君が――“真実”を記す日が来ると信じている)
それは、俺に託された使命だった。
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