カースト制度
一時的なジョーカーにランクアップできた聖は気分が良くなり、クラスのジョーカーグループの方へも顔を出すようになっていく。
最初の頃は、自分が所属していたグループへは手出しできないように手を回していたが、次第に気が大きくなっていって、そんな事すら煩わしくさえ感じ始めて。
今までは朔弥が止めに入っていたが、今は立場が変わったため、誰も聖を抑える者がいない。
故に聖は調子づき、俊にちょっとした嫌がらせをし始めるようになっていった。
昼食に持ってきたお弁当を取り上げて、勝手に食べたりする事も多々あった。
俊は何も言えずにされるがままになっていたが、さすがに朔弥がいい加減にしろと反抗し、聖の暴走を止めようとした。
しかし、そこはカースト順位の壁が立ちはだかり、他のジョーカーたちが朔弥を反逆者として見做し、一般的な下民としてでなく、その下の下僕的な立場にされてしまうのだった。
朔弥を助けようとする俊だったが、敦也と共に止めに入り「今手を出せば、今度はお前が下僕になる」と釘を打っていた。
「………こんなの、間違ってる!この学園の生徒も教師も皆、普通じゃない!」
「「………」」
俊の言葉に、敦也も甲斐も返事が出来なかった。
結局、朔弥は学園全体からの差別的な扱いに耐えられず、暫くしてから転校していった。
「はっ、根性ねーな。これくらいで逃げてたら、社会に出ても負け犬決定だろうよ!」
傲慢な態度で朔弥を馬鹿にし、そんな変わり果てた聖の姿を見て、俊たちは距離を置くようになった。
それから暫くしてからの事。
今度はなんと聖がランクを落とされて、下僕になっていた。
「いい気になりすぎたな。上納金も、もう払えないくらいに借金してたって、笑える~」
金を渡していたジョーカーに馬鹿にされ、反撃しようにも事実を言われているので、言い返せない。
実は聖は今までの上納金を、家の金から勝手に盗んでは渡し、足りない分を借金してまで支払い続けていたのだった。
いくら家庭が少し裕福だったとはいえ、負債を抱えれば制限が掛かるのは当たり前。
繰り返される負債に額が大きくなっていき、これ以上は貸せられ無いと、資本元から拒否されてしまったのである。
その結果次第に上納金を支払えず、さらにランクを落とされて、借金で家計は崩れ一気に破産してしまったのだった。
「貧乏人に反論なんて、出来るわけないよな~。あはは!」
ジョーカー達は聖を蔑み、哀れんで、こんな話を持ちかける。
「ちょっとくらいなら、お前の家の負債を軽減させてやっても良いぜ。ただし、この学園にいる間ずっとお前が下僕だけどな!」
ゲラゲラと下品な笑い声を上げる彼らに、聖は何も言えずに拳を握り、涙ぐんでいた。
俊たちはそんな聖を遠くから見守り、でも敢て何もせずにいた。
―――アイツは自分から裏切った。
自業自得、助けるなんて偽善だーーー
そう自分に言い聞かせるように、3人は見て見ぬふりをするしかなかった。
そして季節は変わり、冬休みに入る前に聖は体調不良を理由に学校へ来なくなり、そのまま転校していった。
しかし、その後もカースト制度は続いていて。
新たな犠牲者が出ては、体調不良を理由に学校へ来なくなり、耐えきれずに転校する者が出続けた。