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そして、ある日のこと。

ある生徒が圭に話しかけてきた。

それは………俊のことについてだった。


「なあ、一之瀬。架山はいた前の学校って、上条学園だったよな?」

「…そうだったと思うけど、それが何?」

「やっぱり、そうなんだ。隣のクラスの奴に聞いたんだけど、去年上条学園で屋上から飛び降りて、今も意識不明の子がいるんだって」

「………それで?」

「実はその子、架山のクラスの子だったらしくてさ。その………イジメが原因での自殺未遂なんじゃって。それが本当なのかどうか、確認したくて………」

「何だよ、それ。なんでそんなこと俊に聞くんだよ?もし、その子が本当に俊の知り合いだったらどうすんだよ!」

「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど………。気になって、つい………」

「つい、じゃねえよ!お前。それに、俊にそんなこと聞いても答えてくれるわけねえだろ?」


思わずカッとなって叫んだ圭に、他のクラスメイトが一瞬驚く。

確かにこんな事を聞いても何の得にも成らないと思ったのか「ごめん、もうやめておくわ」と言って、その生徒は去って行った。

しかし、その話はクラスだけに留まらず学年全体に、そして学校全体にまで拡がってしまっていた。


いつものように保健室にいた俊を怪我をして保健室に訪れた生徒が見つけて、何かと探ろうとする様子が窺えたため、美沙都が「用が済んだら、さっさと戻る!」と一喝していた。

そんなことのくり返しで、その度に俊は奥に設置してあるベッドに踞り、訪問者から逃げるように息を潜めていた。


そして心無い生徒が弥月のクラスにも詰め寄り、真相を聞き出そうと根掘り葉掘り探りを入れてきた。

この事態にさすがに教師達も動いていた。


「根拠のない噂で、相手を追い詰めるようなことをしてはいけない」


そう厳重注意をし、保健室や弥月のクラスへの不要な訪問を禁じた。

しかし今度は掌を返したように、クラスメイト達は弥月を腫れ物に触るような態度をとるようになっていった。


普通に話しかけることも、連絡事項を伝えることすら怪訝な表情をされて、完全に仲間外れの扱いになっていたのだった。

そのことが原因で、次第に弥月は体調不良を理由に学校を休み、やがて不登校気味になっていった。

そして俊もまた、ずっと息を潜めるようにしていたが、心労が溜まり体調を崩し早退する日が多くなっていく。

結局、それ以来学校へ通うことが困難になり、俊と弥月も完全に不登校になってしまうのだった。


そのことで圭は最初に噂を流した生徒を探し出し、どこからこんな情報を手に入れたのかをと問い詰めると、その生徒は素直に白状した。


「塾で一緒だった奴が、言ってたんだ。そいつ、上条学園を辞めて架山と同じように、別の学校へ編入したんだって。架山とも同じクラスだったらしくて、今も意識不明になってる子の事も、少しだけ聞いたんだよ。でも話聞いてて、カーストがどうとか、女王様・王様がなんてことも言ってて、ちょっと尋常じゃ無いって思ったんだ。話のネタにしたのは謝るよ。でもどう考えても、普通のイジメじゃ無いって思ったんだ。だから架山に直接聞こうと思ったんだけど………話がややこしくなっていって、こんな事になるなんて………。ほんと、ごめん!」


それを聞いて、圭も流石に普通じゃ無いと感じた。

いてもたってもいられずその情報をくれたその塾の仲間という生徒に連絡が取れないかと聞き、直接連絡を取ってくれた。


その相手は、広瀬甲斐ひろせ かいと言う生徒だった。


甲斐は最初、昔のことは話したくないと拒んでいた。

それでも圭が必死に頼み込む姿を見て、これ以上俊と同じような生徒が出ないようになるならと心を決めて。

上条学園で起きたことを、自分が見てきた全てを話してくれた。


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