郷愁学校とニートにて
学校の夢を見る。
高校の卒業間近のあのふわふわして、不安と不安と時おりの張り付けた笑顔をしていた時間。
小学生の頃に思い描いてた楽な道などなく、中学生の頃には何も想像できなかったくらい道が、高校の頃には想像ではなく、現実だと知ることになるあの時間。
何ももてなかった。
努力も水の泡になる頃に、踏ん張りもできずに、異性どころか同性にも嗤われる。
勉学だけできてもと思う反面、所詮は底辺の上澄みであったことを自覚するには、体力や何か技量があるわけでもない。
人との付き合いを避ければ、避けるほど将来が暗くなることはわかってはいるが、さりとてという話でもある。
自己を改革するにはお金も気持ちも全く足りてない。
白い紙に筆を取り、希望も、遺書という文字を書きたくもない。
自分でもできそうな仕事も、いつしか心に合わせて沈んでいく。
つらつらと思い起こす度に、あのころの夢をみる。
学校にいきたくないなと、ふと思ったときに親に病気だと嘘を付いて布団に潜り込んだあの頃。
大人でやればそれはなんだろうか。
ぬくぬくとした布団にくるまって、ぐらぐらとする不安に抱かれながら寝て、夢でも現実でも背中や頭に込み上げる叫びの欠片が身体を巡る。
だけども叫ぶことは許されない。
だって皆より頑張っていないことなんて解りきっている。
誰に言われるまでもなく分かっている。
お前が叫ぶなと分かっている。
底辺の上澄みでも理解できる。
黒板に書かれた数式をあの教室の生徒で誰よりも早く分かっていた自分が、こんなことをわからないはずがない。
教室で誰よりも真面目に過ごした時間だってある。
話についていけなくたって、愛想笑いを浮かべていた頃もある。
理不尽な目にあったこともある。
体操着やノートを隠されたことなど一度や二度ではない。
あの頃のように誰かのせいだったら、楽だ。
今は、自分のせいだから、苦しい。
最後のテストが返される。
満点でもない赤点でもない回答用紙の文字が崩れていく。
かき集めようとしている自分が滑稽で、
満点でもない自分がみすぼらしくて。
教えてくれる人も、笑いあうひとも、好きな人もいない、嫌いだったやつもいない教室で、帰る準備をしながら、泣いたあの時間。
答えをとりあつかえない。
答えをとりつくろえない。
そんな夢をみる。
まだまだみる。
いつか見なくなり、また見はじめるそんな夢を見る。