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コロン様主催企画参加作品。

甘い香り


全国の食用菊栽培農家の間に、糖句野県の菊池町で品種改良されて栽培されている食用菊は香りが良く、花びらが甘いという噂が流れた。


その噂が全国の食用菊栽培農家の間に流れてから暫くした頃、強い風が吹き荒れている最中にツーリング中のバイカーが菊池町の町道の歩道でビデオカメラを拾い、隣街の警察署に落とし物として届ける。


受け取った拾得物を管理してる警察官は、落とし主を調べる為に電池切れのビデオカメラを充電して落とし主を特定しようとした。


映っている画像を見ていた警察官は突然立ち上がり、慌てふためいて上司や関係部署の同僚の警察官を呼び集める。


上司や関係部署の警察官を呼び集めた拾得物管理の警察官は、最初からビデオカメラの映像の再生を始めた。


モニターに映し出される映像。


最初に、全国の品種改良された農作物を紹介しているユーチューバーの男性が映し出された。


「今回伺ったのは、花びらが甘く香りが良いと噂されている食用菊が栽培されている、糖句の県の菊池町に来ております」


そう話したユーチューバーはビデオカメラを所持している人、カメラマンに向けてこっちに来いというように手を振る。


カメラが近寄ったのか、モニターに映る男性の姿が大きくなった。


「なあ、何か甘い匂いっていうか甘い香りが漂っていないか?」


「そうなのか? 俺、夏風邪ひいて鼻詰まっているから分からない」


「まあいいや、栽培農家に行こう。


菊池町の紹介の為にカメラは回し続けて町の中や風景も映しておいてくれよな」


「分かってるって」


暫く菊池町の町の中や町から見える山々の映像が続く。


何故か早歩き気味のユーチューバーにカメラマンから声がかかる。


「オイ! そんなに早歩きしなくても良いじゃないか、俺はカメラ持ってるんだから付いて行くのに難儀するんだぞ」


「え? あ、ごめんごめん、早歩きになっているのに気が付かなかった」


「あとさ、何か此の町おかしくねーか?」


「何が?」


「今夏休みなのに子どもの姿が全然見当たらない、それに……町外れの公園の駐車場に車を止めてここまで20分くらい歩いているのに、道を歩いている町の人の姿が全然無いじゃないか」


「偶々じゃ無いのか?」


「そうなのかなぁー?」


「此の甘い香り、もしかしたら食用菊の匂いかも知れないな」


「うん、鼻が詰まってる所為で口呼吸になってる俺だけど、それでもなんか甘い匂いがするのは分かるわ」


「食用菊が栽培されてる場所に近づいているんだろう」


「栽培農家の人はなんて名前なんだ?」


「菊池さん」


「え? それ町の名前じゃ……」


「菊池町の菊池さんだよ。


此の町の大半が菊池性らしいぞ」


「へー」


モニターに栽培されている食用菊が映される。


「多分あそこだろう」


ユーチューバーの男性はそう言うと走り出し、食用菊の傍にいる菊池さんらしい人に駆け寄って行く。


「オイ、待てよ」


カメラマンはそう言いながらユーチューバーを追う。


「こんにちは、品種改良した食用菊を栽培している菊池さんですか?」


ユーチューバーが栽培されている食用菊の傍にいる人に声をかける。


食用菊の傍にいる人はニコニコとした笑顔をユーチューバーに向け返事を返して来た。


「はい、そうです」


「此れが品種改良された食用菊ですか?」


「違います、品種改良した食用菊は栽培が難しいので、あちらのガラスハウスで栽培しています」


「見せて頂けますか?」


「はい、どうぞ」


どうぞと言った菊池さんが追いついてきたカメラマンの方に目を向ける。


その目は、ニコニコとした笑顔とは裏腹に恐怖に満ちていた。


「此方です」


菊池さんはユーチューバーとカメラマンをガラスハウスの方へ誘う。


ガラスハウスにユーチューバーとカメラマンが足を踏み入れると、モニターに3メートルはあろうかと思われる巨大な食用菊が映し出された。


鼻をヒクヒクさせながらユーチューバーが巨大な食用菊にフラフラと近寄って行く。


と、突然、巨大な食用菊の花が上下に裂け食用菊の根元から伸びて来た触手がユーチューバーを引っ掴み、上下に裂けた口らしいところに押し込む。


食用菊はゴクンとユーチューバーを飲み込んだ。


それを見てカメラマンが悲鳴を上げながら逃げだす。


「ヒィィィーー!」


ガラスハウスを出て町道まで逃げて来た時にカメラマンは、食用菊の根元から伸びて来た触手に捕まった。


此処でビデオカメラは放り出され、触手に引き攣られて行くカメラマンを映し続ける。


「ヒィィィーー!」


カメラマンの悲鳴はゴクンという音のあと途切れた。


その後も歩道に放り出されたビデオカメラはガラスハウスとその周辺を映し続け、町民らしい人や宅配のドライバーらしい人がガラスハウスの中にフラフラとした足取りで入って行くのが映され、入った直後ゴクンという音が周りに響く。


ガラスハウスに入って行った人たちはビデオカメラの電池が無くなり途切れるまで、出てくる事は無かった。







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