シエル――フランベルジュ
セリオンとベルジュはブールジュ山のふもとに到着した。
「ここがブールジュ山……入口には門があるな。入れないのか?」
「この門は、資格を持つ者が現れると開くらしいぜ。俺たちなら簡単さ。さあ、行こうぜ」
「おや、君たちもブールジュ山に挑もうとしているのかい?」
そこの現れたのは髪の長い魔法使い風の男。
手には杖を持っている。
「オホホホ。おまえたちみたいな小僧がこの山に挑むなど、乱心もいいところよ」
もう一人は女性で、高圧的な態度がシャクに触る女だった。
「なんだ、おまえたちは。名を名乗れ」
「フフッ、ぼくはセウス(Seus)」
「オホホホホ! わたくしはレア(Rhea)」
「ブールジュ山の宝はぼくたちがいただくよ」
二人はすごい勢いで山を登って行った。
「ベルジュ! このままだと宝が取られてしまうぞ?」
「安心しろ。あいつらは単にバカなだけだ。山にはどうやら試練があるらしい。それに合格しなければお宝は手に入らない。俺は情報通なんだ」
「だが、のろのろと行くつもりもないだろう?」
「もちろんだ! さて、行くぜ! 遅れるなよ?」
セリオンとベルジュは駆け出した。
ブールジュ山の上のほうには雪が積もっていた。
セリオンとベルジュは走って山を登った。
道は急ではなくなだらかだった。
二人が登った後、山は夜に包まれた。
「おい、セリオン。ここで今日は野営しよう」
ベルジュが提案した。
「そうだな。それがいいだろう」
二人は火を起こし、対面して座った。
「俺は前に一人でこの山に来たことがあってな。その時は門は閉じられたままだった。俺がおまえを誘ったのは、おまえなら門が開くと見たためだ。どうやらおまえには資格があるらしいな」
「資格、か……」
「少し、昔のことを話そうか……」
「おまえの昔の話か」
「まあ、聞いてみろって。俺は小さいころから商人になりたかった。商人になってカネをたくさん稼ぐビジネスを営んでみたい、そう思っていた。そのころの思い出は半分は実現した。俺は宝石商になり、金持ち相手にビジネスを始めた。わかるか? 世の中では高価だから売れるものがあるんだ。つまり高級品だと売れるのさ。安いものは一般大衆に売れるが、高いものは金持ちや貴族に売れるのさ。ブランドって奴だ。俺はカネに不自由しなくなったが、俗物たちを相手にするビジネスにも嫌気がさしてきた。そんな時だ。トレジャーハントをしようと思ったのは」
「なぜ、トレジャーハントに興味を持ったんだ?」
セリオンが口をはさんだ。
「俺はトレジャーハントにあこがれた。それにトレジャーハントにはスリルもあった。それに冒険心も。そうやって俺は自分の強さを磨いた。そうして今に至るってわけだ。武闘大会に出場したのも、一つはカネが欲しかったからだが、もう一つの目的はこの山の門を開けることができる奴を探すためだった」
「それが俺というわけか?」
「まあ、そういうわけだ。おっ、鍋がぐつぐつにこんできたな。さ、食おうぜ。スープもピリ辛で寒いブールジュ山ではおいしく頂けるものばかりだ」
二人はその後会話をしなくなった。
そうして、食事を取った後、二人は交互に仮眠をした。
「ここが、ブールジュ山の山頂か。ん? 何か神殿のようなものが見えるな」
とセリオン。
「あれはブールジュ神殿か。さっそく行ってみようぜ」
二人は神殿の中に入っていった。
神殿は円柱が美しく並ぶ列柱回廊だった。
神殿の中には一人の巫女がいた。
彼女は長い茶色の髪に、法衣を着ていた。
「ようこそ、資格者たちよ。私はこの神殿を管理する巫女ディオティマ(Diotima)。神殿にはその人間の一部となるクリスタルが保管されています。それが欲しければここで力を示しなさい」
「具体的には何をすればいいんだ?」
セリオンが尋ねた。
「この者と戦い勝利すれば」
「この者?」
「来なさい」
「やあ、また会ったね、君」
そこにはセウスとレアの母子がいた。
「おまえは確か、セウスだったな」
「そうだよ。覚えていてくれたとは光栄だね」
「ホーホッホッホ! 我が息子が勝つに決まってますわ! さあ、セウス! おまえの力を見せておやり!」
「わかったよ、母さん」
こうしてセリオンとセウスの戦いが始まった。
この時ベルジュはひそかにディオティマの近くに移動していた。
「多連・氷結槍!」
セウスはいくつもの氷の槍を形成した。
氷が杖から魔力があふれて形を成していく。
「フフン、これだけの氷の槍を君は防げるかい?」
セリオンは目を細めた。
「行け!」
セリオンは蒼気を発した。
セリオンは蒼気の刃で氷の槍を薙ぎ払う。
「やるね。でも、これはどうかな? 多連・風翔槍!」
セウスは同様の魔法を属性を変えて放ってみた。
鋭い風の槍がセリオンを貫くべく殺到する。
セリオンは再び蒼気を出した。
セリオンは蒼気で風の槍群を叩き潰した。
「なら、これならどうだい? 多連・水泡槍!」
セウスは今度は水の魔法を放った。
水の槍がセリオンめがけて飛び立つ。
水の槍は一本ずつ、セリオンに向かって行った。
セリオンはタイミングを計り、蒼気の刃で水の槍を斬り払った。
「ふむ……属性を変えても通じない、か……これはどうかな? 斬風!」
円月の風がセリオンに飛来する。
セリオンでもくらったら全身をなます斬りにされる攻撃だ。
斬風を無力化するにはその本体を斬ること。
セリオンは蒼波刃を出して、斬風を切断、無力化した。
「まだまだ、行くよ! 竜巻!」
風でできた竜巻がセリオンに向かってくる。
「無駄だ!」
セリオンは蒼気を強く発し、竜巻を一刀両断にした。
「くっ! ここまでやるとは……だが、風衝!」
セウスは風の衝撃を叩きつけてきた。
セリオンは蒼気を刃にまとわせると、それで風衝を斬った。
「これで、終わりだ! 旋風陣!」
強烈な気流の渦がセリオンを呑み込もうとする。
セリオンは膨大な蒼気を叩きつけて旋風陣を破った。
「おのれ! これで決めてやる! 円月輪!」
空中に円月の刃が形成された。
円月群はセリオンを斬り刻むべく殺到する。
しかし、セリオンはすばやい剣裁きと蒼気で円月輪を無効化した。
「そんな!? まさか!?」
「来ないのか? ならこちらから行くぞ! はあっ!」
セリオンは蒼気を叩きつけてセウスを吹き飛ばした。
「うわあああああああ!?」
セウスは倒れて、そのまま失神した。
「そこまで! お見事です、セリオン殿。あなたを勝利者と認め、あなたにこのクリスタルを授けましょう」
ディオティマはクリスタルを出した。
それは青白い輝きを放っていた。
「おっと、悪いが、そいつは俺がもらうぜ!」
「何をするのです!?」
「ベルジュ!」
突然ベルジュはディオティマからクリスタルを奪った。
「悪いな、セリオン。これは俺のものとさせてもらうぜ!」
「ベルジュ……どういうつもりだ?」
「クックック! 俺の真の名はフランベルジュ(Flamberzch)。炎獄の主だ」
「炎獄?」
「そうさ。燃えたぎる炎の領域だ。俺はそこにいる。おまえのことは利用させてもらった。おまえがいなかったら、俺はこのクリスタルを手に入れられなかっただろう。追ってこい。俺と決着をつけたければな! アディオス!」
そう言うと、ベルジュは闇の膜の中に消えた。
セリオンはディオティマに近づいた。
「あなたは無事か?」
「ええ。ですが、この神殿の宝は持ち去られてしまいました」
「ベルジュは何をしようとしているんだ?」
「おそらく、クリスタルを取り込んで絶大な力を手に入れようとしているのでしょう」
「炎獄にはどう行ったらいい? 俺のせいでクリスタルが奪われたようなものだ」
「それならこれをお使いください。いでよ、神鳥アードラ(Aadla)」
セリオンの前に燃える炎のようなたてがみを持つ、大きな鳥が現れた。
「この鳥が炎獄へとあなたを運んでくれるでしょう。炎獄には次元を越えなければ行くことができません」
「わかった。アードラ、俺を乗せてくれるか?」
セリオンはアードラのたてがみに触った。
アードラはセリオンの前にこうべをたれた。
セリオンはアードラに乗った。
そして次元の壁を越えた。
それから炎獄にたどり着いた。
「ここが、炎獄……」
炎獄は炎の地獄だった。
至る所から炎が吹き出ている。
「ベルジュはどこにいる? ん? あそこに宮殿らしき建物があるな。あそこに行ってみるか」
セリオンは炎の海を避けるように丘の上に歩き出した。
セリオンは炎獄宮を訪れた。
その扉を開ける。
「ベルジュ!」
その中には黒い闇のオーラを放つベルジュがいた。
「ようっ、やっと来たか。待ちくたびれたぜ」
「クリスタルはどうした?」
「クックック。クリスタルはこの俺が取り込んだ。実にいい気分だ。大いなる闇の力を得られたんだからな」
「おまえは何をする気だ? おまえの目的はなんだ?」
「俺の目的か……それはな地上を炎獄に変えることだ。火炎の地獄……どうだ、すばらしいとは思わないか?」
「俺はそう思わない。おまえはこの俺が止める!」
「クックック、できるかな? この大魔王フランベルジュ様を相手に? 力がみなぎる……力があふれてくる……この力を俺は解放したい。行くぞ、セリオン? この俺の前で、ひざまずき許しを乞うてくれ! ハアアアアアア!」
ベルジュから黒いオーラがあふれ出た。
セリオンは目を手で覆った。
黒いオーラは膨れ上がり周囲に広がっていく。
そして闇のオーラが収まると、そこには二本足で立つ、犬の顔にたてがみをはやし、さらに一対の翼を持っていた怪物がいた。
「これが、フランベルジュ……」
「その通りだ! これが俺の真の姿! 大魔王フランベルジュだ!」
フランベルジュは咆哮を発した。
強烈な音波がセリオンの耳に入る。
フランベルジュの口に炎がともった。
セリオンはそれを注視し、大剣を構えた。
フランベルジュは炎の息をはいた。
炎はセリオンの全身を包み込んだ。
炎がすべて収まった後、セリオンの姿が無傷で現れた。
「ほう……」
フランベルジュが嘆息した。
セリオンの体は全身が蒼気でおおわれていた。
蒼気が炎の息を防いだのだ。
フランベルジュは前足に炎を収束させた。
フランベルジュの魔炎弾である。
フランベルジュは炎の塊をセリオンに投げつけた。
合わせて二発。
セリオンは大剣で二発とも斬った。
フランベルジュはなおも魔炎弾を放った。
赤い炎がセリオンに投げつけられる。
セリオンにとってこの程度の攻撃は蒼気を使うまでもなかった。
神剣サンダルフォンは魔法を斬ることができる。
ゆえに魔法使いにとっては天敵のようなものだった。
フランベルジュは双連・火炎槍を放った。
二本の火炎槍が弧を描いてセリオンに向かう。
セリオンは大剣を振るって双連・火炎槍をかき消した。
フランベルジュは一気にダッシュした。
フランベルジュの大きな体がセリオンに急接近する。
フランベルジュはセリオンにかみついてきた。
とっさにセリオンは大剣をフランベルジュの口に向けた。
セリオンは大剣でガードした。
しかし、フランベルジュのあごの力はすさまじく、大剣はセリオンの手から飛ばされてしまった。
「これで俺様の攻撃は防げまい? 今度は爪で引き裂いてくれるわ!」
フランベルジュが前足の爪を出してセリオンに切りかかる。
セリオンに武器はない。
セリオンは丸裸だった。
しかし、セリオンは不敵な笑みを浮かべた。
セリオンは全身から蒼気を出し、フランベルジュを拳で打ちつけた。
「グオオオオオ!?」
フランベルジュの体に蒼気の拳がぶつけられる。
フランベルジュに対して、セリオンは強力な蒼気の拳を打ちつけた。
フランベルジュはすさまじい勢いで吹き飛び、壁に激突した。
壁がガラガラと音を立て、崩れ落ちた。
「武器がないと思って油断したな。俺は格闘戦も訓練している」
セリオンはフランベルジュが倒れているあいだに大剣を拾った。
「おのれえ! よくもやってくれたな! 燃え尽きろ!」
フランベルジュが口に炎を収束した。
フランベルジュの「灼熱砲」である。
強烈な波動砲がセリオンに向けて発射された。
セリオンは蒼気をまとい、蒼気の刃を灼熱砲に叩きつけた。
すさまじいスパークが起こり、冷たい闘気と炎の対立が作り出される。
その均衡はセリオンによって破られた。
セリオンの蒼気が灼熱砲を打ち破り、かき消した。
「なんだと!?」
フランベルジュは驚愕した。
「どうした? これでおしまいか?」
「くっ! おのれ! 多連・火炎槍!」
フランベルジュは複数の炎の槍を形成した。
それらは赤々と燃えていた。
フランベルジュは一斉に炎の槍を放った。
セリオンは冷静だった。
セリオンは蒼気を大剣にまとわせて、膨大な蒼気で火炎槍を迎撃した。
「炎帝!」
フランベルジュの周りに赤い魔法陣が出現した。
「炎帝か……だが、それは無力化できる!」
炎はセリオンの周囲を取り囲む。
そして中心に炎がともった。
その時だった。
セリオンは氷結刃で中央の炎をかき消した。
周辺の炎も収まっていく。
「災炎!」
さらに続けて、フランベルジュは炎属性大魔法を発動させた。
小型の太陽が現れ、それが分割され、炎の塊としてセリオンに降り注ぐ。
セリオンは氷星剣を出して炎の塊を斬り払った。
「ぐっ! 災炎まで無力化するか……だが、これで最後だ! 炎熱!」
セリオンの周囲の温度が急上昇する。
セリオンはダッシュで炎熱の範囲から抜け出ると、蒼気の刃でフランベルジュに突き刺した。
「ギャオオオオオオン!? ま、まさか……この俺が!? 大魔王フランベルジュ様が敗れるだと!?」
フランベルジュは大きな絶叫を上げた。
その時、一本の硬石槍がフランベルジュを貫いた。
「ギャアアアアアア!?」
「どこからだ?」
セリオンは硬石槍が投げつけられたところを見た。
そこには黒い天使が浮かんでいた。
「ア、アズラエル様!? なっ、なぜ!?」
「フッ、もうおまえには用がないということだ、ベルジュ。そのまま消えるがいい。おまえは負けたのだ。負け犬は速やかに消え去るのみ」
「ちっ、ちくしょう……」
フランベルジュは赤い粒子と化して消えていった。
「おまえが真の黒幕というわけか?」
セリオンは大剣を向けた。
「フッ、その通りだ。フランベルジュをそそのかし、クリスタルを手に入れさせたのもそうだ。まだ、自己紹介をしていなかったな。私はアズラエル(Azrael)。堕天使アズラエルだ。ああ、そう。おまえのことは知っているぞ、セリオン・シベルスクよ? おまえのことはフランベルジュから聞いていた」
「そうか、なら名乗る必要もないな」
「さて、ではこの私とお手合わせを願おうか。闇の力の偉大さを思い知らせてやろう」
アズラエルは床に降り立った。
アズラエルは闇黒弾をセリオンに向けて撃った。
セリオンはそれを光輝刃で弾き飛ばす。
アズラエルはさらに闇黒弾を撃ってくる。
セリオンは対応する速度を上げる。
セリオンは光波刃で反撃した。
アズラエルは闇黒槍で反撃した。
セリオンは光の大剣でアズラエルを斬りかかった。
アズラエルは上昇して回避した。
アズラエルは三本の闇黒槍を出した。
三つとも別々の方向を向いていた。
それらが一斉にセリオンに襲い掛かった。
セリオンは光の斬撃で三方から来る闇黒槍を斬り払った。
「ふむ……なかなかやるな。素手では勝てないか……ならば、これを使うことにしよう!」
アズラエルは右手から黒い槍を出した。
アズラエルは上空からセリオンを狙って、槍で刺しかかってきた。
セリオンはとっさに後方によける。
さらにアズラエルの攻めは続く。
アズラエルは手にした槍でセリオンに連続突きを放った。
アズラエルの突きは強力かつ鋭かった。
アズラエルは一流の腕を持っていた。
「ゆくぞ? 闇黒突!」
アズラエルが闇の突きを繰り出した。
すさまじい闇が突きとなって槍先から放たれた。
セリオンはそれを光輝刃で迎撃する。
「闇爆!」
アズラエルが闇の爆発を引き起こした。
セリオンは後方に吹き飛ばされた。
アズラエルはなおも追撃してくる。
闇黒突でセリオンの四肢を狙ってきた。
セリオンは立ち上がると、光輝刃で的確に闇の突きを迎撃した。
「重粒子圧!」
セリオンはとっさに横によけた。
セリオンがいた位置が爆ぜた。
「邪星滅弾!」
アズラエルが闇属性大魔法を発動させた。
闇の爆裂弾が降り注ぐ。
しかし、アズラエルにはこの程度でセリオンを倒せるとは思っていなかった。
さらに強力な大魔法「獄審」を発動する。
セリオンの周囲に魔法陣が現れた。
四方から魔力が中心点へと上昇し、強大な波動となって降ってくる。
セリオンは光輝刃を極限まで高めて対抗した。
「うおおおおおお!」
光と闇が衝突し、相反する属性は互いを排斥しあう。
セリオンの光の大剣が闇の奔流に勝った。
「フム……ではこの私の奥の手を見せてやろう! これで終わりだ! 死門!」
大きな黒い門が現れた。
門は開くと、すべてのいきとしいけるものを抹殺すべく、生命力を吸い取ろうとする。
「フハハハハハハ! そのまま命を刈り取られるがいい!」
「くっ、反撃だ! 光輝斬!」
セリオンは光の斬撃を繰り出した。
光の斬撃は死門を斬り裂いた。
「なっ、なに!? バカな!?」
アズラエルが動揺した。
そこに隙ができた。
セリオンは光子斬を放ち、アズラエルに致命的一撃を与えた。
「ぐっ!? ま、まさか、この私が……忌々しい光に闇が敗れるというのか……」
アズラエルは漆黒の粒子と化して消えていった。
セレネは夜、教会で祈りをささげていた。
朝、昼、夕、夜と祈るのはセレネの習慣になっていた。
「ブルーダー・セリオンが帰還できますように。神よ、お力をお貸しください」
そのセレネの後ろで強烈な光が起こった。
「ただ今、セレネ。今戻ったぞ!」
「ああ、セリオン! おかえりなさい」
「それと、これは戦利品だ」
セリオンは亜空間収納で大量の金貨を出して見せた。
セレネはそれを見て、驚くよりあきれた。
「あなた……トレジャーハンターの資質があったの?」
「まあ、なんだ。帰る前に行った先で金貨を見つけてしまってね。どうせ所有者もいないことだし、俺がもらってきたんだ」
「まあいいわ。それだけおカネがあれば当面の教会の維持には使えそうね。ご苦労様」