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妖精と王子様のへんてこマーチ(へんてこワルツ3)  作者: 魚野れん
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7

 ブライスは、エルフリートに向けて簡潔にまとめる。


「俺たちには、それぞれ向き不向きっってやつがある。俺は頼りがいのある男にはなれるだろうが、どう頑張ったって美しい男にはなれない。

 これは外見だけじゃない。内面だって同じだ」


 エルフリートは頷いた。


「今の自分にある、良いところを伸ばしてやれ。そこに近いものを伸ばしていけば良い。遠いものを伸ばそうとしたって、なかなか身につかないもんだ。

 あと、自分しか持っていない強みが何なのか。しっかりと振り返って考えてみるが良い」


 ブライスの言葉をしっかりと胸に抱く。


「頑張ってみるね」

「おう。ま、俺も時々気にしておいてやるよ」

「ありがとう」


 エルフリートの自然な笑みに、ブライスは笑い返してくれた。




 ブライスの話を思い返しながら、エルフリートは自分の得意不得意について考えていた。ブライスが褒めてくれた通り、魔法は得意だ。人とのコミュニケーションも負担ではない。

 確かにロスヴィータの言葉は間違いではなかったのだろう。あとは、どうやって伸ばしていくか。そう言えば、ブライスは他にもいろいろと提案してくれていたのだった。


 能力があるのだから、それを活かせるようになれば良い、と。必要な場面で発揮するというのは後手に回った活用方法である。その考えを捨て、能力を発揮する事を前提として行動に組み込むのだ。

 エルフリートはその話を聞いた時、戦略と同じだという感想を抱いてしまった。能力を使いきる事のできるプランを練る。それは戦いにおいて重要な事だ。


 この前のカッタヒルダ山とカリガート領での戦いは、まさにそれであった。自分に何ができるのか。それを正確に把握しているからこそできた作戦である。

 同じ事をするとしたら、自分の能力について、しっかりと見つめ直す必要がある。


「女装は……バラすわけにいかないしなぁ」


 真っ先に思いついた能力を、エルフリートはすぐになかった事にした。


「魔法とか、そういうのは出てくるけど、私ってどんな感じなんだろう」

「フリーデ」

「ロスやバティたちとは違うのは分かってる……具体的にって、思うと……」

「フリーデ」


 エルフリートはぶつぶつと呟きながら、寮の入り口を通り過ぎる。


「ほんわかマイペース、ムードメーカーかな……」

「凍てつく刃よ――」

「わぁっ!?」


 急に感じた殺気にエルフリートは悲鳴を上げた。


「な、なにっ??」


 びっくりして振り返りつつ、結界を張る。振り返った先には、詠唱を中断し、呆れ顔でこちらを見つめるマロリーの姿があった。


「……あなた、完全に不審者だけど。何をぶつぶつ言っているの?」

「マリン!」


 マロリーには、いつも変な姿ばかりを見せている気がする。エルフリートは指先で頬をかき、へたくそな笑みを浮かべた。


「勤務明けで帰宅しようという時に、怪しい人物を見かけるなんて、ツいてないわ」

「ごめんね。ちょっと悩んでたの」


 エルフリートがしおらしく言うと、マロリーは片眉を上げておやっという顔をした。普段悩みとは無縁そうな人物像のエルフリートである。そんな顔をされても仕方がないと納得するしかない。


「後で部屋に行くわ。私の為に、お茶でも用意して待ってて」


 どうやら、マロリーはエルフリートの相談を受けるつもりらしい。意外な展開に動揺しつつ、エルフリートは彼女の訪問を待つのだった。

 エルフリートが茶菓子と飲み物の準備をしていると、着替えだけを済ませてきたらしい彼女が現れた。


「邪魔するわ」

「どうぞ」


 機能性重視の動きやすいワンピースを身につけたマロリーは、慣れた様子で席に着く。エルフリートは準備していた紅茶を淹れ始め、その間に菓子を勧めた。


「ありがとう。夕食抜きだから助かるわ」

「えっ、お菓子じゃ駄目だよ」

「良いの。普段なら、食べずに寝てしまうし」


 マロリーの食生活は意外と乱れているようだ。

 エルフリートは少し悩んだ末、リンゴなどのフルーツをふんだんに使ったタルトを取り出した。果物が入っているだけ、こちらの方が健康的だろう。

 少なくとも、小麦粉と砂糖が主原料の焼き菓子よりは良いに違いない。


「お菓子も食べて良いけど、こっちも食べて」

「あら、おいしそう」


 マロリーはタルトを見るなり目を輝かせた。リンゴにブルーベリー、ラズベリー、モモ、果物をこれでもかと乗せたそのタルトは、果物の宝石箱みたいだ。

 食べる前から楽しい見た目のそれは、マロリーの目に適ったというわけだ。


「食べながらで悪いけど、何を悩んでいるの?」


 早速核心を突いてきた。効率よく何でも進めてしまう彼女らしい。普段のペースを崩さず、相手を緊張させないように配慮してくれているのかもしれない。

 何だかんだ優しいんだよねえ、と思いながらエルフリートは悩んでいる事を話し始めた。


「――悩むほどかしらね」

「え?」


 エルフリートの話を聞いたマロリーが出した答えは意外なものだった。

2024.9.18 一部加筆修正

2025.11.1 誤字修正

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