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妖精と王子様のへんてこマーチ(へんてこワルツ3)  作者: 魚野れん
泥被りの騎士たち

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15

 三人が話をしていると、どこからともなく騎士が集まってくる。偵察に行っていたメンバーもいる事から、目的は達成できたようだ。


「ロス、グレッドソン、セーレン、お疲れさま。たまたまこっちに姿を現した奴がいたから一人誘導しておいたぜ」

「ゲイル」

「嘘吐け、お前ん所じゃなくて俺ん所じゃねーか」

「ゲイル……」


 自慢げな男に向けた労いの視線は、次の瞬間には残念な生き物を見つめるような視線に取って代わった。


「結局俺が助けてやったんだ。似たようなもんだろ」

「一番大変だったのは俺だ!」


 開き直ったゲイルにツッコミを入れた男――ミゲルという名前だったはず――は小さく怒りを爆発させた。


「結局俺ごと罠にはめやがって! 何が悲しくて、あんな狭い所に隣国の野郎と急接近しなきゃいけねぇんだ」

「すぐ出してやったろ」

「!!!」


 ……大変だったらしいな。ロスヴィータは状況が状況であるせいで大声を上げて文句を言う事のできないミゲルに同情するのだった。

 ミゲルとゲイルの件は後で状況を確認するとして、ひとまず罠にはまったボルガ国の兵士たちを捕虜としてまとめるべく動き出した。回収作業を行うのは、顔の知られていないメンバーである。

 ロスヴィータ、グレッドソン、セーレンの三人は彼らに目撃されないよう、捕虜獲得の報告をするべくその場を去った。


「あの二人、作業分担を同じにして大丈夫か?」

「問題ないな。ミゲルはちょっとドジなんだ。だからゲイルみたいな柔軟で対応力のある人間を側に置いておいた方が結果としてうまくいく。

 それに、ミゲルは言えるタイミングだからそうしていただけで、仕事モードの時にそれを引きずる事はない」


 人間関係と仕事効率を心配するロスヴィータに、何という事もないのだとグレッドソンが答える。部下それぞれの特長を把握してうまく組み合わせるのは、新参者であるロスヴィータにはできない事だ。

 改めてグレッドソンに編成の采配を任せて良かったと確信した。


「そうそう。ミゲルはああ言ってたけど、自分のフォローをしてくれたのがゲイルだって分かってるしねぇー。まあ、いつもの事だよ」


 セーレンは過去の出来事を思い出したのか、笑う。


「すごいんだ。ミゲルってね、不幸体質って言うのかな……変な事が起きやすいんだよ。俺だって巻き込まれた事が何度もあるし」

「面倒見が良くて、何があっても負けない強い女性が現れない限り、結婚できないタイプだな」

「分かるー! そうだ。ロス、ゲイルみたいな感じの女性がいたら教えてよ」

「え、あ……まあ、考えておこう」


 ロスヴィータは一瞬、ゲイルが女装している姿を想像し、慌ててエルフリートの女装姿でイメージをかき消した。しかし、存在するのだろうか。そんなミゲルにぴったりの女性なんて。

 ロスヴィータがそんな事を思っている間にグレッドソンのもとへ連絡係が現れた。エンリケの鳥、テッサである。グレッドソンの腕に止まった彼女はすりすりとくちばしを彼の二の腕にこすりつけている。テッサはグレッドソンの事を気に入っているらしい。

 羨ましいと思いながら、ロスヴィータはその様子を見ていた。


「ロス、朗報だ。想定していたルートの内、三カ所で捕虜を入手したそうだ。俺たちの報告の返事が来る頃には、もっと増えているだろうな」

「そうか」

「あとは想定外のルートだが、それは無視する方向のままで良いようだ」

「ある程度こちらが捕虜を捕まえたという報告をしてやれば、勝手に姿を現してくれるだろうからな」

「取りこぼしの回収は厄介だから、あまりしたくないんだけどなぁ……」


 上の方針に不満を持つのはセーレンだ。ロスヴィータも気持ちは分からなくはない。侵入者が撤退せずに捕虜を回収しようと動くだけならまだ良い。それよりも、少人数での攻略ができないと判断した彼らが間諜となる可能性があるからだろう。

 隠密行動に慣れた人間で構成されているのである。それくらいさらりとこなしてくる者がいても不思議ではない。実際、ロスヴィータとセーレンの手で罠にはめられた男は話しかけ方を工夫していた。

 話しかけた相手が悪かったが。


「通常の領兵が、必ず通るはずの場所に罠を仕掛けるそうだ。どうやら領兵の中に優秀な人材がいるらしい」

「へぇ……なら、取りこぼしが撤退する方向に向かうかもね」


 グレッドソンの言葉を聞いたセーレンが興味なさそうに呟いた。


「ん? 罠を仕掛ける前に、撤退してくれと書いてある……撤退し遅れたら漏れなく罠にはまる――って取りこぼす気がなさそうだぜ」

「やる気がすごいな……その領兵たちにぜひ会ってみたいものだ」

「暇人の間違いじゃないの?」


 なかなか辛辣な事を言うセーレンは、興味の対象がテッサに移ったらしい。彼女にご褒美の干し肉を与えて撫で回している。彼女が嫌そうに翼を動かしているように見えるのは気のせいだろうか。

 あ、テッサがこっちを見た。助けを求めているように見えなくもない。ロスヴィータはさりげなくグレッドソンの腕からテッサを奪い、セーレンの魔の手から逃がしてやった。

2024.8.17 一部加筆修正

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