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最強王女が裏切り姫と呼ばれてる件  作者: しんとうさとる
Episode 3 彼女は顔を上げ前を向く
33/62

4-3.子供扱いしないの




「お待たせ、ブランク」


 ターナの家から伸びる細い路地を抜けたところでブランクに声をかけた。姿は見えないけど、魔力的な繋がり(パス)からなんとなく近くにいるってことはわかる。

 すると何処からともなく姿を現して、まるで最初っからずっとそばに居たような自然さで並んで歩き始めた。周りからすれば突然人が現れたように見えるはずなんだけど、全然気づいてないみたい。まるでスパイね。


「だろ? それに近いことをやってたからな」

「親バカのスパイってのも中々シュールよね」

「信じてねーだろ。こう見えてもだな……」

「はいはい、分かった分かった。で、そのスパイさんは私たちがおしゃべりしてた間何してたの?」

「……バイトの面接?」


 とぼけた事を言いだしたので「何言ってんだコイツ?」的な冷たい視線を送ってやると、ブランクは明後日の方向を向いて下手くそな口笛吹き始めた。ごまかすにしてももうちょっとマシなごまかし方があるでしょうが。


「いや、バイトってのはちょっと言い過ぎだけどよ。どうせ暇だからな。ちょっと大道芸でも見せて小遣い稼ぎやってたんだよ。その証拠に、ほれ」


 言いながら何処からともなく現金とタバコにお酒を取り出して見せてきた。どれも本物っぽいけど……出処はちゃんとしてるんでしょうね?


「だいじょぶだいじょぶ。ちゃんとキレイな金だって。

 それよかそっちはどうだったんだ? 表情から察するにおかしなことにはならなかったみたいだけどよ」

「そう、ね……うん、やっぱり行って良かったと思う」


 独善的な考えで動いてる自覚はあるけど、それでも、少なくとも今回は間違ってなかったと思う。

 それだけ話すと、不意にぽふっと大きな手が頭に乗せられた。


「そっか。良かったな」

「うん」


 何だか子供扱いされてるはずなのに、素直にうなずいてしまった。そのことに気づいたけど、今更手を振り払うのも子供じみた態度に思えて、だから「少しお腹が空いたわね」なんて言ってたまたま目についた露店で適当な昼ごはんを買ってごまかした。


「飯食いながら話すのも何だが、結局どうするつもりなんだ? 調べる方針くらいは決まったか?」


 並んで熱々のサンドを頬張りながら歩いてる途中でブランクが尋ねてきた。本当のトコ、まだ何をどうすればいいかなんて分かんないけど――


「ターナのお父さんを陥れた人がいるんだとすれば――やっぱり同じ職場の誰かだと思う」


 実際に会って話してみたけど、そんな悪そうな人はいなかった。デイビースは例外としてみんな愛想は悪かったけど、それでも悪人って感じじゃなかったし。だけど大金を横領するのもターナのお父さんを陥れるのも、彼ら以外には考えづらい。


「想像でしかないけど、たぶんあの人たちの誰かがターナのお父さんにたくさんお酒を飲ませて、フラフラの状態で賭場に連れてったんじゃないかしら? ベロベロに酔っ払ってればまともな判断なんてできないでしょうし、連れてった誰かに言われるがままギャンブルさせる。そうして負けてもどんどんその場で借金させて、潰れた頃にはとんでもない借金が残った。そんな感じだと思うわ」


 そして借金で追い詰められたところで、そそのかすのだ。仕事で扱う税金を使ってしまえばいいと。一緒に自分もこっそり横領して、全部の罪をターナのお父さんに押し付けてしまえば完了。誰も真犯人には気づかない、という寸法だ。

 ギャンブル場なんて行ったことないから、その場で借金なんかできるかどうか分かんないけどね。ま、真っ当なギャンブル場なら借金させてまでギャンブルをさせないだろうけど。


「とにかく、同じ職場の人たちで賭場と繋がりがある、もしくは頻繁に出入りしてる人が怪しいと思うの。だからまずはそこらを調べてみたいわ」

「オーケー、了解した。んで、ギャンブル場ってどこにあるんだ?」

「そこなのよねぇ……」


 王国自体が運営してるギャンブル場も一箇所あるけど、別に出店を規制してるわけじゃないから他に何箇所もあるらしいのよね。規模も大小様々。怪しげな連中が運営してることが多いから大々的に宣伝してるはずもない。

 なのでハッキリ言えば、何処でどの時間にギャンブル場が開いてるのか、私にはまったく見当もつかないってわけで。

 私が困ってると、ブランクが顎を撫でてから「よし!」と声を上げた。


「ならそこは俺がやるさ。どうせ昼間は開いてないだろうし、調べるなら夜かね? 資料室でいろいろ調べるよりよっぽど手っ取り早そうだな」

「いいの? てか私が一緒じゃなくても街に出て大丈夫なの?」


 いくら普通じゃないとはいえブランクも精霊の類だ。私から距離が離れすぎると魔力供給のラインが細くなりすぎて、存在を維持できなくなると思うんだけど。


「大丈夫。姿を消したりできなくはなるが、それくらいなら問題ねぇだろ。派手なドンパチかますわけじゃねぇし、一晩二晩は供給なしでも動き回ることはできるさ」

「……相変わらず常識が通じない奴ね」


 だけどそれなら行動範囲が相当に広がるわね。調べ物程度なら私と完全に別行動しても大丈夫そうだし、かなり効率が良くなりそう。


「それにシャーリーは、賭場とかそういった場所に脚踏み入れたことねぇだろ? そんな奴が近くウロウロしてたらすぐバレちまうぜ。連中、鼻は良いからな」


 精霊にお願いして姿を消すくらいはできるんだけど……でもバレるリスクは低いに越したことはないわね。

 私なんかよりよっぽどそういった場所には慣れてるみたいだし、ならブランクに任せるとしましょうか。何もかも任せっぱなしな気がするけど。


「気にすんなって。俺の力はアンタの力。自分以外の人間を顎で使うのも大人に必要な能力なんだぜ?」

「……子供扱いしないの」


 クツクツと笑いながらブランクが私の頭を撫で回してきたので、今度こそ私はその手を払い落としてやったのだった。





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