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猫福神社で街づくり  作者: とある神主
9/15

第九話

次の日。

朝9時頃に目を覚ました俺は、マシロと自分の装備品について考えることにした。


「手甲は間違いなく欲しいとして、防具をどうするかだな」


「防具ねー」


「何かそういうのは無いのか?」


「あるにはあるけど」


「あるのか!?どんな性能なんだ!?」


俺が食い付いてマシロに詰め寄ると、ちょっと嫌そうな顔をされた。


おい!俺の時と春の時で対応変わりすぎだろ!最初は懐いていた癖に!


「えっとね。白衣と袴と狩衣と正服、雪駄、烏帽子、笏・・とにかく神主系一式はあるよ。袴は一応浅葱、紫、白、紋付もあるけど、どれも性能は一緒だね」


「どんな性能なんだ?」


「まず全部に清浄、修復、耐久、サイズ調整がついているね。あと白衣に祝詞スキル効果アップ、袴が行動阻害減少、雪駄が速度アップ、笏は不壊、烏帽子は並列思考アップ、狩衣が全耐性アップ、正服は一式装備だからそれが全部ついてて更には強化されてるよ」


「チート装備じゃないか!!何で最初から渡さないんだよ!」


そんな装備有れば最初から10層でも余裕でいけるだろ!


「無理だよ。装備制限があるもん」


なん・・だと?

それだけ良いものがあるのに装備制限があるだと?宝の持ち腐れもいいとこだな!


「装備できないなら売っちまうか?」


「シャーッ!!!」


めっちゃ威嚇してくるマシロを見ながら慌てて訂正する。


「怒んなよ。冗談だって」


「どうだか?」


「本当だって。それで制限はどんなのなんだ?」


「まず、猫神の寵愛がいるね。これはデンスケなら大丈夫だね。後は称号で神の友人がいる。これもボクの好感度を上げれば良いだけだから難しくはないと思うけど、さっき売ろうとしたからちょっと下がったけどね」


言わなきゃ良かった・・。口は禍の元だな。


「後は神職系スキルを5つレベル10にしなきゃいけないかな」


「神職系スキルってなんだよ?」


そんなの初めて聞いたぞ。


「例えば祝詞、祭式作法、笏、降神、昇神、とかかな」


何だそれ?ガチで神主じゃ無いとダメなやつじゃ無いか?


「そのスキル効果あるのかよ?」


「使えるのと使えないのがあるね。でも初代は15スキルスロット中、5つ、寵愛もいるから実質6つをこれで潰す形で装備してたよ。まぁ装備できれば破格の性能だからね」


6つ潰すとか正気の沙汰じゃ無いな。15もスロットが有ればいけるかもしれないが。


「効果だけど、祝詞は降神した神様の種類で内容が変わってバフ、デバフがかかって、笏と祭式作法はぶっちゃけ戦闘には意味ないね。作法がうまくなるだけだし。降神はランダムに神を召喚して、昇神は呼んだ神に帰ってもらうスキルだよ」


「神様呼んで帰ってもらわないとダメなのか?」


「神を降神している最中は生命力をかなり使うからね。帰ってもらわないと死ぬよ?」


なかなかタダで呼ぶわけにもいかないらしい。死ぬとまでなると呼びたくなくなるな。


「それでレベルが上がると降神は呼び出す時の時間と呼び出した後の使用生命力の減少。昇神は帰ってくれるまでの時間の減少だね。レベルマックスの10で両方とも一瞬で出てきて、一瞬で帰ってくれるよ」


「なるほどな」


これはどうするべきだろうか・・。仮にその装備をつける事にしたとして、既にスキルロットは2つ埋まってしまっている。ひとつは必須だから良いが。マシロももう少し早めにそういう大事な事は言って欲しいものだ。


「今の人類の最高スキルスロットは7だぞ?今更言われても難しくないか?」


「んー?大丈夫でしょ」


「何か方法でもあるのかよ?」


「うん。施設が整えばスキルスロットから外せるからね。それで要らないの外して神職系スキルにすれば良いよ。でも使ったスキルポイントは戻らないけどね」


「はあ?スキルスロットを埋めたら二度と外せないんじゃないのかよ!?」


「今はそうなの?でも祓所とか色々出来れば外せるはずだよ?」


マジか!?そんなこと出来るってわかったらここに国家単位で攻め込みにやってくるぞ!?絶対に知られるわけにはいかん!


「それ絶対に内緒にしろよ!?マジで狙われかねないからな!」


「うん。内緒にするのは良いけど、それが出来るようになる頃には神社の境内地一帯に結界を張れるようになるし、そもそもそれなりの設備が揃った時点でこちらを害そうとする人は境内地に入れないから大丈夫だと思うよ」


結界まであるのかよ!これはマシロとこの神社が1番のチートだな。俺のスキルなんてちょっと珍しいスキル程度だわ。


「とにかく最終的にその装備を使える様になるとして。現状の装備を考えないとな。・・・母さん達に聞いてみるか」


「脛かじるの?」


「うるせぇ」


そうと決まれば早速電話をかけることにする。誰が良いだろうか?やっぱここは俺に1番甘い未来みく母さんだな。


スマホを取り出し電話をかける。数コールして相手が出た様だ。


「もしもしー?デンスケちゃん?元気してる?」


「あぁ元気だよ。まだ2日しか経ってないからそう簡単に病気とかならないよ」


「でもでも、やっくん(親父)が急にデンスケちゃんを連れて行くから、母さん達もびっくりしちゃって」


「え?親父は母さん達も賛成してたって言ってたぞ?」


「それは独り立ちするのに良いとは思ったけど、急になんだもん。お別れ会したかったのに」


あ、やっぱり賛成はしたのね?ちょっと悲しいな。


「まぁそれは良いよ。ところで母さん達はさ、手甲とか持ってない?」


「んー。やっくんが手甲装備だから、あると思うけど。ナニナニ?デンスケちゃんもやっくんと同じ装備にするの?」


電話越しに嬉しそうな声が聞こえるが即座に否定する。


「親父とお揃いにしたいわけじゃねーよ!単純に手甲で殴った方が戦いやすいからだよ」


「もう!素直じゃないんだから!」


素直とかじゃなくて本当の事なんだがな。まぁそもそも親父に戦い方を仕込まれているから、同じになるのは仕方ないが。


「それで?あるの?ないの?」


「あると思うから探しにおいでよ〜。それで一緒にご飯食べよ?」


「わかった・・。じゃあ後で行くから。また連絡する」


「お昼ご飯?晩御飯?どっちにくる?」


「昼は用事があるから夕方にいくよ」


「わかった〜。みんなにも伝えておくね」


「あ!親父には・・・。切りやがった」


親父には言うなと言いたかったが切れたなら仕方がない。どうせ言っても結局は親父に話すだろうしな。


さて手甲は大丈夫だが、防具をどうするかね・・・。


「どうしたの?電話では上手くいってたみたいだけど?てかボクもご飯食べに行くからね!みんなに会いたいし」


「あぁ。母さん達とも会ったことあるのな?」


「そだよ?康隆の奥さんだもん挨拶くらいしてるよ。聞こえてないみたいだったけど。それでどうかしたの?」


「あぁ、防具をな、どうするか迷っているんだ。買うにしてもダンジョン産の装備品は高いからな」


「それなら装備制限のない白衣白袴があるよ?」


「あんのかよ!でも制限無しならそうでもないだろ?」


「んーん。巫女装束と同じ性能で、防御力もまぁまぁ高いからいいと思うよ?」


「良さそうな装備じゃないか!防具はそれで決定だな」


「だねー。ホントボクがいて良かったね?」


「まぁありがたいけど、その辺はギブアンドテイクの部分もあるだろ?」


「そうだねー。まぁお互いに居なきゃいけない存在になって来るだろうしね。勿論ハルもね」


「そうだな」


「早速装備してみるかい?」


「おう」


今の言い方だとゲームっぽいけどな。こいつはそんなこと知らないだろうから偶然だと思うが。


マシロと一緒にプレハブ小屋に戻り着替える。実際に来てみると難しいな・・。


「あ。襦袢も白衣も左が上だよ。右上だと喪服だからね」


何でそんなに詳しいんだよ。まぁわかってるけど。


「これ足袋の方がいいか?」


「靴下だとマヌケに見えるよね」


・・・・。

着替えが終わり、小屋の中の鏡で自分の姿を見てみる。


うん。我ながら似合っているな。こう見ると神主に見える。まぁ一応神主なんだけどな。ここの宮司だし。でも本庁とかに所属してたら絶対認められなかっただろうなぁ。親父が言うにはあそこの奴らは全員石頭どころかダイヤモンド頭らしいからな。それにちゃんと階位を取るために頑張った人も認めることは無いだろう。


「どうだ?」


「うん。似合ってるよ。初代によく似てる」


「でも、ちょっとこの格好でダンジョンは恥ずかしいけどな」


「そうなの?」


「んー。いや、俺もエクスプローラーがどんな格好で普段ダンジョンに行ってるかなんてあんまりわからないからさ。ただ流石にこの格好はいなさそうだから」


「気になるなら今日にでも康隆達に聞いてみればいいよ」


「そうだな」


まぁ親父の場合大爆笑しそうな気がするけどな。


ブーッブーッ!

マナーモードにしていたスマホから着信を知らせるバイブが鳴る。


お?春から着信だな。


「もしもし」


「あ、もしもしデンスケさん?こんにちは」


「おう。もう準備は終わったのか?」


「はい!それでなんですけど・・」


「わかってるよ。今からそっちに行くわ」


「ありがとうございます!待ってますね!」


「あいよー」


電話を切ると、とりあえず普段着に着替え始める。マシロがソファから降りてトコトコと近寄ってきた。


「ハルの迎えでしょ?ボクも一緒に行くね」


言うが否や光の玉となり俺の中に入ってきた。


(まだ返事してないのに急に入るなよ)


(いいじゃない。慣れてよ)


ったく。我儘なやつだ。


着替え終わったらバイクの所へ移動し、出発する。


ーーーーーー


しばらく走らせると春の家に着く。既に春がその場で待っていた。バイクを止めて、メットを脱ぐ。



「お待たせ」


「全然待ってないです!わざわざありがとうございます!」


「気にすんなよ。パーティメンバーだろ?」


「そう・・・ですね。私たち一緒のパーティですもんね!!」


どこがそんなに嬉しかったのか、ニコニコ笑顔になって後ろに乗ってきた。


「そうだよ!ボク達はパーティだからね!家族みたいなものさ」


マシロが急に出てくる。その出てき方も俺の肩から顔を出す形だ。ホラー以外のなにものでもない。


「ありがとうございますマシロちゃん!一緒にお迎えに来てくれたんですね?」


「うん。ハルに早く会いたかったからね」


「私もです!!マシロちゃんは本当に可愛いですね!」


毎回思うけど、なんかこうマシロと春の会話に入れないんだよな。疎外感を感じるわ。


「うんうん。ハルありがとうね。でもあんまりボク達だけで仲良くしているとデンスケが妬いちゃうから。デンスケにも構ってあげてね」


まるで俺がかまってちゃんみたいな事をマシロが言うので、春が悪ノリしてきた。


「デンスケさんごめんなさい。私はデンスケさんも好きですよ?」


「いや、そんなとってつけた様なのは要らん」


「本心なんですけど・・・」


「はいはい。とにかく行くぞ?」


俺はバイクのエンジンをかけた。慌てて春がヘルメットを被るのを見て出発した。因みにマシロは俺がエンジンをかけた時点で俺の中に退避済みだ。


(デンスケ。ハルは本心で言ってたと思うよ?)


(・・・)


マシロを無視しながらバイクを走らせる。


そもそも本心だったとして、どう反応すればいいんだよ?今まで彼女もいない男だぞ?童貞だぞ?気の利いたセリフなんて言える筈も無いだろ。


心の中で悪態を吐きつつ走らせる事十数分。神社へと辿り着いた。


「それじゃ荷物整理してきますね」


そう言って降りた春を見送りながら、マシロと今後何を先に取るべきかを話す。


「なあ?マシロとしては次の神社の設備は何がいいんだ?」


「迷う所だけど・・・。候補としては手水舎か賽銭箱か鳥居だね。デンスケはどれがいい?」


「賽銭箱は補助魔法を受けるのに必要ってのはわかるんだが、他の2つの効果が知りたいな」


まぁ金も入るし補助魔法もかけて貰える賽銭箱は魅力だが、寵愛の効果で俺が受けるとレベル10の補助魔法になるからちょっと怖いんだよな。何が怖いって春のことですけど何か!?


そんな俺の心情など気にする様子もなくマシロが説明を始めた。


「手水舎は今のボロの状態だと単純に手を清めるためなんだけど、新しくすれば手水の水が聖水になるんだよね」


「アンデッド対策になるな」


「そうなんだよ。アンデッドが出てくる予定とかある?新しいダンジョンはわからないんだよね」


新しいのか?正直よくわからないが。


「那珂川ダンジョンは、8、9、10層がアンデッドが出てくるな。それまでは特に使うこともないと思う」


「そうなるとまだ要らないかなってなるね。やっぱり鳥居かなー」


「鳥居はどんな効果があるんだ?」


「えとね。鳥居は登録した場所へ転移ができる様になるよ」


待て待て待て。それはアーティファクトすぎ!!転移なんて今の世の中絶対にないぞ!!


「おい。転移はまだ確立されてないぞ?」


「そうなの?でも転移したところに居た人は、転移直後のこっちの事を認識できないから使ってもいいと思うよ?無意識的には転移してきた人を認識するから、ぶつかりそうなら勝手に避けたりするけど。それに転移する場所は人や物があると勝手に避けて転移されるから事故もないしね」


なにそれ?超古代文明のテクノロジーご都合主義まっしぐらじゃないか。こっちとしては使いやすいからいいけどね。


「使いたい所だが、親父と相談するしかないな。しかし転移で鳥居を使ったとして、戻るのはどうするんだ?」


「普通に使う人達は車ごと入れる広さはあるから、ダンジョンの近くの車を停めれる場所に転移すればいいんじゃないかな?」


「昔はどうしてたんだよ?」


「そりゃ昔のダンジョン時代なんて今よりも進んでたから駐車場とかあったよ。転移門なんて普通だったし。リセットされたから今の人類が知らないだけでさ。だからボクから見たら化学とか相当遅れてるよね」


どれだけ俺たちからして未来のテクノロジー使ってたんだよ・・。


「でもそれはスキルと魔石とかありきの話だろ?」


「そうだね。それらがないとまず実現不可能だと思うよ」


「付与魔術スキル持ちがかなりいたんだろうなぁ」


「まぁ物作りに関する仕事の人は付与魔術必須だったよね。だから昔は早めにダンジョンに潜らせてスキルを取らせてたからね」


「マジでそんなに発展してたのに、何で崩壊したんだ?」


「んーボクの予想だと・・・。いや、これはどうでもいいかな」


「よくねーだろ!教えろよ!」


「また今度ね。話が脱線してきたし」


「・・・わかったよ」


これ以上問い詰めても話す気が全く無さそうだな。いずれ話してくれることを願うか。気を取り直して話を戻してもらう。


「それで?普通の人はそうだとして、普通じゃない人はどうなるんだ?」


「普通じゃないって言ってもボクの場合だけどね。ボクの場合はそもそも神社と繋がっているから鳥居を設置すれば戻って来れるよ」


それは便利だな。ということは鳥居さえ設置すれば、一瞬でここに戻れるんだな。


「それめっちゃ良いじゃないか!ダンジョン探索中にやばくなれば転移すれば良いだけになるな!」


「いや、ダンジョン内は無理。どう言う理屈かはわからないけど、転移が発動できないんだよね」


あー。流石にそこまでは無理だったか・・。

折角だからそこまでご都合主義にさせてくれよ神様!あっコイツも神様だったわ。


「それでも外だったら一瞬で戻れるんだろ?色々なダンジョンを攻略するのに大助かりだな」


「遠いところに行くには良いけど、でも遠い場所の美味しい食べ物を食べてそこに泊まって過ごすのも楽しいと思うけどね」


たしかに。まぁそう言う時は旅館やホテルで一泊して、帰るときに転移すれば良いか。


「よし!それなら鳥居を作るのをとりあえずの目標にしよう!」


「一基あたり1万ポイントいるけどね」


それを聞いてガクッとしてしまう。そうだった1万もいるんだった。遠いなぁ。


「しかも一基でひとつのところしか設定できないしね。しかも一度行ったところ」


マシロが現実を見せて来るたびにガックリと肩を落としてしまう。


でもそれを乗り越えれば、引退した後に旅行に行くのも便利になる!道中が楽しみという部分もあるが、俺は断然、早よついて色々回りたい派だからな!時間は有限だぞ。


そんな事を話していると、春の家となった小屋から春が出てくる。


「お待たせしました〜。2人ともずっとここに居たのですか?」


「おう。マシロと話が弾んでな」


「えー。良いなぁ。私もマシロちゃんとお話しいっぱいしたいです」


「大丈夫だよ。今日からいつでも一緒にいれるでしょ?」


可愛く小首を傾げながらマシロがあざとい事をしている。


「ですよね!マシロちゃん可愛い!」


春がマシロを抱き上げて、頬擦りをしている。何というか、マシロに性別ないとか聞いたけど、この落差を見るとオスにしか見えんな。羨ましくなんてないからね!

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