第八話
結局俺だけ拳術を取り、春はスキルポイントを貯めておくことにしたようだ。
それからゴブリンを数体倒し、ドロップ品も確認できなかったので今日のところは帰る事となった。ゴブリンはあまりドロップ品を落とさないからな。
因みにステータスは
高山田亮
レベル3
スキルスロット1
猫神の寵愛
拳術
残りスキルポイント15
山下春
レベル3
称号 殺意の波動に目覚めし女神
スキルスロット2
残りスキルポイント11
マシロ
レベル4
スキルスロット0
残りスキルポイント30
といった感じだ。
俺はレベル3になると同時にスキルスロットが1つ開放された、それを見た春がまたしても羨ましがっていたが、彼女はそれ以外がチートなのでこれ以上俺より凄いところがあると、俺いらなくね?ってなりそうだからホッとした。
スキルスロットの表記はどうやら余りのスキルスロットが表示されているらしい。マシロに関しては元々のスキルポイントの残りがあるため少し多い。
ゴブリンに対して無双をするのはいいが、正直効率はあまり良くないなと思った。今の俺たちなら2層もいけるだろうからな。明日は装備を整えたりしよう。
ダンジョンから出るときに、守衛がこちらを見て少しホッとした顔をしていた事から、おそらく心配されていたのだろう。今度からもう少し準備していきます。
バイクに乗り神社を目指す。相変わらずのパイパイの感触を楽しみつつ神社へ帰っていった。
神社に着くと早速マシロのスキルボードを見ることにする。
「どれにしようかなー」
尻尾をフリフリしながら楽しそうにスキルボードを見るマシロの横から覗いて見る。
手水舎・・20
手水舎・・・・・30
社殿・・・・・・100000
社務所・・・・・20000
鳥居・・・・・・10000
斎館・・・・・・20000
賽銭箱・・・・・500
小屋・・・・・・30
祓所・・・・・・10000
小屋・・・20
鎮守の森・・・・20000
売店・・・・・・1000
休憩所・・・・・500
・・・・・・
神社に必要な物が沢山並んでいる。その辺は全部取らなきゃいけないだろうな。必要じゃないものもあるみたいだが。
これ小屋とボロ小屋の差が10しかないのに、何で俺の住んでる所ボロにしたんだ?あと10くらい出せよ!絶対に出せただろ!
「いっぱいありますねー。マシロちゃんはどれが欲しいんですか?」
「んー。やっぱり社殿と鎮守の森、手水、鳥居、賽銭箱は早めに欲しいかなー」
「全くポイント足りないけどな」
「まぁそうなんだけど、この辺を取っておかないと御利益がスキルボードに表示すらされないからさ。御利益受けたいでしょ?」
あれだけ凄い御利益って言ってたくらいだから気になるのは確かだな。
「なぁそろそろ御利益の内容教えてくれよ。今後のモチベーションにもなるからさ」
「そうだね。仕方ないから教えてあげよう」
そのドヤ顔で言うのやめろ。猫がそれすると可愛いのとウザいのが両方くるわ。
「マシロちゃん・・。尊い・・」
ほらみろ!春なんて最早話聞かなさそうなくらいメロメロ状態じゃないか。俺の場合はウザさが優ってるからいいけども。
「いくつかあるんだけど、例えば社殿はそのままでも賽銭箱を設置すると、御賽銭の値段で補助魔法がかかるんだ。内容としては身体能力アップなんだけど・・」
そういうマシロの話を纏めてみると
100〜4999円・・・・身体能力アップレベル1
5000〜9999円・・・身体能力アップレベル2
1万〜99万9999円・・身体能力アップレベル3
100万円・・・・・・身体能力アップレベル4
効果は4時間で切れる。普通の補助魔法と比べると破格な気もするけど、レベル4の値段はエグいな。
「4時間しか効果が無いから受けたい人は何度も来るしか無いんだよね。そしたらお金もガッポリさ!」
「アコギな商売に見えるな」
「仕方ないよ。時間制限で切れないと儲からないでしょ?それにレベル1でもスキルの補助魔法と重複するんだからかなり強いんだよ」
「たしかにそう言われればそうだな。レベル4とかトップエクスプローラーしか使えないだろ。金を払うのが厳しいだろうからな」
「その辺は本人達がボスを倒す時だけレベル4を受けるって言う感じで考えるでしょ」
「そうですね。でも5000〜9999円とかだったら、みんな5000円にするんじゃないですか?」
「まぁその辺は値段を告知する訳でもないから、本人達が勝手に決めてやると思うよ。何せ補助魔法は体感でしか無いからね。その日の調子で違うのかな?って思ってくれるさ」
意外とコイツ腹黒いな。お参りに来る人をミスリードして、金を稼ごうとはなんて奴だ。
まぁ俺としては金が稼げるのなら是非も無いけどな。
「それで社殿を建て替えた場合はどうなるんだ?」
「その場合は効果が次の日の午前0時まで続くようになるよ」
「いいですね!それは間違いなく建て替えた方がいいと思います!」
「建て替えるのは吝かでもないが、まずはポイント貯めないとな」
「ですね〜。10万は遠いですね〜」
「正直賽銭箱の500もかなりキツいぞ?」
マシロは俺と違ってポイント2倍が無いからな。
「ほかにどういうのがあるんだ?」
「鎮守の森だと精神安定の補助魔法がかかるよ。お金は鎮守の森に末社を建てて、そこに御賽銭を入れてもらう形だね」
なるほど。末社を建てなければいけないのか・・。
「御祭神はどうなる?」
「基本的に末社の場合はボクの眷属が御祭神になるね。それか他の神社から神様を分祀してもらうかだね。その場合は補助魔法がその神様によって変化するよ」
これは奥が深いな。やり込み系のゲームみたいだ。色々な神社の由緒を調べないといけないな・・。
「そういう訳でポイントを貯めなきゃいけないんだけど、とりあえず今回は小屋を建てようと思ってるんだよね」
「何だ?新しくしてくれるのか?」
「デンスケの為じゃ無いよ。ハルが着替えたりする場所が必要でしょ?それに今後巫女さんが増えた時のためさ」
「わあ!私の小屋ですか?ありがとうございます!」
いや、春だけの小屋じゃないけどな。一応巫女さん部屋になる予定だから。今は春しかいないから春専用だけれども。
「うんうん。春は可愛いから特別だよ」
おいそこの神!贔屓しすぎだろ!
「じゃあ建てちゃうね」
そう言ってマシロが前足でスキルボードを操作する。次の瞬間、俺の小屋の隣に綺麗な木造の小屋が出来た。
「一瞬で出来たな」
「うん。凄いでしょ?」
「ホント凄いです!流石マシロちゃんです!中に入ってもいいですか?」
「いいよー」
春がマシロを抱き抱えたまま小屋の玄関を開く。そこはお洒落なコテージのようになっていた。中に入り部屋を見てまわる。広いリビングにアイランドキッチン、トイレも何か高級そうな感じで、風呂もバスタブも洗面所に洗濯機まである。更には6畳ほどの部屋が2部屋と全てに家具までついていた。羨ましい事この上ない。
「素敵です!私ここに住みたいです!」
「いいよ」
「待て待て!マシロだけで決めるな!俺の意見も聞けよ!」
「え?デンスケはハルがここに住むの嫌なの?」
「嫌なんですか??」
2人の視線が痛い。そりゃ別に良いけどさ。今日会ったばかりの子が隣に住むなんて・・。
「デンスケが考えている事もなんとなくわかるけどさ。デンスケと家は隣なだけでしょ?だったら良いと思うなー」
「そうですよ!安心してください!私は勝手にデンスケさんを襲ったりしません!」
普通逆だろ!何で俺が襲われる側なんだよ!
「はぁ・・。まぁここの土地はマシロのものだしな。わかったよ」
「「やったーーー!」」
2人で大喜びしているのを見て、これで良かったんだろうと納得した。
「それでは私は引っ越しの準備をしたいので、今日はこれで帰りますね!」
「にゃ?もう帰るの?」
「はい。寂しいですがすぐにでも荷物を纏めないといけないですから!!」
いや、何がお前をそこまで駆り立てている?
よくわからない子だ。
「出来れば明日にはここに引っ越してきたい所なので、デンスケさん!!」
「どうした?」
「送って貰っていいですか?」
少し申し訳なさそうに頼んでくる。そういえば俺が送らないとダメだったな。
「わかった。すぐ行くか?」
「ですね。それじゃマシロちゃんまた明日!」
「うん。また明日ね〜」
手を振りながら春は外へ出る。俺も後に続こうとすると
「デンスケ。送り狼はダメだよ?」
「せんわ!」
にひひと笑いながらマシロはリビングのソファに乗ると寛ぎ始めた。
それを呆れた顔で見つつ、外へ出る。
「すみません。わざわざ送って貰う事になって」
「大した事ないから大丈夫だ。ところで荷物はどうやってここまで運ぶつもりなんだ?」
「それなんですけど。家具は揃ってるみたいですし、服とかだけで良さそうだなと思って。なので協会から安めのマジックバックを借りようと思っています。後はタクシーで近くまで来ようかと」
協会ではマジックバックという見た目と容量がそぐわない、アーティファクトの貸出をしている。借りるのにそれなりにかかるのだが、春が借りるであろう容量のマジックバックは引越し業者を頼むのよりは断然安い。
因みにマジックバックを無くしたり、壊したりしたらとんでもない金額を弁償しなければならず、レンタカーを借りるのと同様にその場で簡易の保険に入らなければならない。またそのまま窃盗しようとした場合、追跡魔法が付与されているのでまず間違いなく見つかる。
「そうか、それなら良いけど。よければこっちに荷物を持ってくるときに連絡くれれば迎えに行くぞ?」
「いいんですか?」
「大丈夫だ」
「それならお願いしますね!」
可愛い笑顔を見ながらバイクに跨る。春も後ろに乗ったので、出発した。
ーーーーーー
春を送って神社に戻り、新しい小屋に入る。
「おかえりー。早かったね」
「送っただけだからな」
「そっかヘタレだねー」
「おい。今日会ったばっかりだぞ?何もする訳ないだろ」
「それもそっか。濃い一日だったから一週間くらいに思ってたよ」
冗談を言いながら尻尾をパシパシとソファに叩きつけている。
「なぁ。俺の寵愛のスキルなんだが・・」
「あー、最大レベルのこと?」
「そうだ。春がいたから聞きそびれてな」
「あははは。気を使ったんだねー」
当たり前だ。あれだけ加護ですら羨ましがってたんだぞ!?称号のせいもあってか、少し怖かったんだからな!
「それで最大レベルはいくつだ?」
「10だよ」
「10もあるのか!?」
「うん。でも施設が整わないと普通の人は受けることすら出来ないけどね」
「じゃあ俺は?」
「デンスケは賽銭箱が設置された時点で受けれるね」
これは困ったぞ。御利益を受けるのは良いが、春が受けれないとなると1人で受けるのが難しいな。
「そう困らないでよ」
「困るだろ。春がまたむくれるぞ?それを見るのも可愛いから良いかもしれないけどな」
「正直だねー。まぁ寵愛スキルを受けれない事もないけどね」
「なんだ?そんな方法があるのか?」
「うん。聞きたい?」
「聞いてみたいな」
「それはね・・・。デンスケと契りを交わせば良いんだよ」
「おまっ!マジかよ・・」
「嫌なの?」
嫌なわけがない。でも童貞の俺としては難易度は高い。それにいくら寵愛が欲しいからと、愛もなくセックスするのも嫌だ。童貞だからその辺は拘りがあるんだ!
「それ春にはいうなよ?」
「なんでさ?」
「アイツちょっとネジが外れているところがありそうだから、スキルの為に俺とやりかねん。そういうのは嫌だ」
「うん。わかったよ。言わないでおくね。でもハルがデンスケと夫婦になりたいと思えるほどの気持ちが見えれば、言うかもしれないけどね」
「・・・わかった。でも少しは俺の気持ちも考慮してくれよ?」
「それはどうだかね?だってボクはハルのこと大好きだからね!」
半日一緒にいただけでそこまでなるとか、チョロすぎだろ!
先が思いやられそうだ。