第五話
しばらくバイクを走らせ猫福神社に着いた。
因みに後ろで春が抱きついていたため、柔らかちっパイの感触がすっごく楽しめました。
ありがたやありがたや。
「よし。ここだ」
バイクを降りてヘルメットを脱ぐ。春はヘルメットを脱ぐと周りを見渡している。
「こんなところに神社があったんですね〜。しかも凄く広いです」
「まぁ私有地だったから誰も入れなかったみたいだからな、知らなくても無理ないと思う。それに見渡す限り神社の境内地だから土地だけはかなりあるぞ」
「大自然って感じでいいですね〜」
そう言いながら腕を大の字に伸ばし深呼吸をしている。
うむ。大自然に美少女。最高の組み合わせだな。目の保養になる。
「それじゃ悪いけどちょっと待っててくれるか?相方と話をしてくるよ」
「私は行かなくてもいいんですか?」
「うん。先に一度話さないといけないから」
「わかりました。待っていますね」
春を置いて、神社の社殿へと向かう。まぁこの場合拝殿と言ってもいいのだが、面倒くさいから社殿でよかろう。
靴を脱ぎ中へ入り、声をかける。
「マシロちょっといいか」
「ん?おかえりー」
そう聞こえると、目の前に光の粒が集まり段々とマシロが姿を現した。
「どう?エクスプローラーにはなれた?」
「おう!バッチリなれたぞ。これでいつでもダンジョンに行けるな」
「そうだね!早速いく?」
「いや、まだ昼飯も食ってないし、マシロに相談したい事もあるんだよな」
「相談?何かあった?」
「実はな・・・」
俺はマシロに掻い摘んで説明をする。説明の間マシロの尻尾がフリフリされているのを見て、いつかモフモフしようとどうでもいい事を考えていた。
「なるほどねー。ボクとしては別に一緒でもいいんだけど、説明しなきゃいけないし、説明したところでボクの存在に納得するかな?」
「んー。俺達は魔物がいるのが当たり前の世代だから、大丈夫だと思うんだよな。そもそも伊勢神宮とかは神様いないのかよ?」
「あそこは多分いるよ。というか詳しく説明してなかったけどさ。古い神社っていうのは殆ど古代文明時代の名残があるからね。ボクの場合は特殊で神社と一緒に神様として召喚されたからちょっと違うけど、他のところはその時代の英雄とかを祀ってるんだよね」
「そうなのか?じゃあ神様ではない?」
「いや、神様っていうのもさ。元々は人だったのが神格化して、神様って言われることもあるわけでしょ?」
「あぁ。東照宮とかか。」
あそこは確か徳川家康が御祭神だもんな。他にも、福岡だと太宰府天満宮とかもそうだな。元々は実在した人が神格化されている。
「まぁ東照宮?は新しい神社でしょ?だったらボクはわからないけど、伊勢神宮の天照皇大神とかも元々は前のダンジョン時代の英雄の1人だよ」
俺にとっては古い時代だが、マシロにとっては新しいのか。
「じゃあいるってことか?」
「さっきも言ったけど、多分ね。ボクもこの神社と繋がってるからデンスケや康隆みたいにボクとの親和性が高い人に連れ出されないとここから出れないからさ。だから会ったわけではないからわからないけど。でもあの時代の名前の通りだし居ると思うよ」
「マシロは外に出れたのか?」
「気になるのはそこ?まぁデンスケの中に入れば出れるよ。じゃないとダンジョンに行けないでしょ?」
「そうか。そしたら講習に来れば良かっただろ?勉強になるぞ?」
「嫌だよ、面倒くさいもん。しかもその講習よりもボクのほうが圧倒的に知識量は上だと思うし。ダンジョンが無くなって久しいし、復活してからもまだ数十年だし、わからない事だらけでしょ?」
たしかにその通りか・・。親父はこの事をわかってたんだろうな。でもコイツの存在が明るみに出たら、とんでも無いことになりそうだから黙ってたんだろう。アイツ面倒くさがりだし。
ん?ということはマシロの存在を春に言うのもダメなんじゃ無いか?
「なぁ。マシロの存在を春に伝えて、そこから色々と広まったらヤバくないか?」
「んー・・・。デンスケから見て、その子は周りに吹聴しそうなタイプなの?」
「そう言うことはしないと思うけどな・・」
「だったら大丈夫でしょ?ボクはデンスケを信用してるからね。そのデンスケが言うんだから間違いないよ」
いや、信用するの早いな。昨日会ったばっかりだぞ?まぁコイツはチョロいからな。
「そう言う事を言われたら裏切れないな」
「そうでしょ?やっぱりデンスケは信用できるよ!」
「はいはい」
「照れてる?」
「アホか」
本当はめっちゃ照れてるけど。絶対に言わないけどな!ったくいきなりそんな事を言うなっての。
それはさておき少し考えることにする。おそらくだが、春は大丈夫。ダンジョンに入ってからマシロを出せば、他のエクスプローラーと遭遇した時に説明が面倒だが、猫にしか見えないし、ワンチャン従魔に見えるからいけるか?てか従魔として紹介すればいいか?・・・考えるの面倒くさいな。ま、大丈夫だろ。
そうと決まれば早速春にマシロを紹介するか。
「よし従魔として紹介しよう!」
「んにゃ!?従魔なんかと一緒にするな!!ボクは神様だよ!?」
「仕方ないだろ。説明しようがないから。それにそっちの方が好都合だろ?」
「むーっ。仕方ないか〜」
物分かりのいい猫だことで。
「じゃあ行くか」
マシロを抱っこして外に出る。意外とマシロは暴れることもなく、腕の中にすっぽりと納まっていた。
春の元へ行き、声をかける。
「待たせたな」
「いえいえ。ところでその子が相方さんですか?可愛い猫ちゃんですね!もしかしてデンスケさんの従魔ですか?」
「あぁ。コイツはマシロって言うんだ。俺の従魔でレベルは3ある」
「3なんですか!?でも何で既に従魔を?」
ヤバい。その辺考えてなかったぞ。どうしよう・・・。親父から貰ったことにするか?それなら大丈夫だろ・・。
そんな事を考えているとマシロから声がかかる。
「ねぇ。やっぱり従魔は無理があるし、ボク神様だから納得できないよ。ちゃんと説明しようよ」
「え!?猫ちゃんが喋った・・・」
「は!?コイツの声聞こえるのか!?」
「聞こえちゃいましたね・・。従魔じゃないとか神様だとか・・」
おいおい。俺と親父だけにしか聞こえないんじゃなかったのかよ?
そんな思いを込めながらマシロを睨む。
「にゃ!?そんなに睨まないでよ!ボクだってまさか声が聞こえるとは思ってなかったんだよ!だって康隆の奥さん達も聞こえなかったんだからさ!」
「でも今は聞こえてるみたいじゃないか?」
「あれ〜??何でだろ?」
「何でだろじゃないだろ!」
「あ、あの!とにかく私にも聞こえちゃってるんで、喧嘩はやめて下さい」
「あぁ。悪いな」
春に言われて、少し頭を冷やす。しかし、何で聞こえたのかが不思議でならない。
「とにかくボクの声が聞こえるならそれでいいよ。初めまして!ボクはマシロ。猫福神社の神様なんだ!」
「可愛い・・・」
「にゃ?」
「可愛すぎます!!神様なんですか!?猫ちゃんなのに!?でも可愛いから何でもいいです!」
「あ、ありがと。えっと、君は?」
「あ!ごめんなさい!私は山下春です。よろしくお願いします、マシロちゃん」
「よろしくね」
何か置いてけぼりだな・・。まぁ仲良くなれそうだからいいか。
「あー。じゃあ説明するぞ?」
「あっハイ!あの〜、よろしければマシロちゃんを抱っこしたいのですが・・・」
「いいにゃ!デンスケの男臭い腕よりもハルみたいな女の子のほうがいいもんね」
そう言ってマシロが俺の腕から飛び出し、春の足元に近寄って行く。嬉しそうな顔をしながら春がマシロを抱き上げた。
俺ってそんなに臭いのかな?ちょっと傷ついた・・。
「わぁ!フワフワのモフモフだ!マシロちゃんの毛並みは最高ですねぇ」
マシロを抱っこしながら顎を撫でている。マシロのやつもゴロゴロと音を立ててるけど、それもう完全に猫だからな!神の威厳はどこいった?最初から無かったけど。
「ゴホン!じゃあ説明するぞ?」
「あっハイ!お願いします」
俺はマシロとの出会いから何故マシロとダンジョンに潜るかも説明した。
「なるほど・・。そういう理由があったのですね」
「まぁそう言う事だからさ。マシロの存在は今のところ秘匿しようと思うんだよな」
「わかりました。誰にも言いません!それにこんな可愛い猫ちゃんを誰かに取られる可能性があるなら絶対言わないですよ」
「ボクは猫じゃないよ。猫神だよ!」
「はい。でも猫神ちゃんだと言い辛いので、猫ちゃんでいいですか?それなら知らない人に聞かれても大丈夫です」
「んー。わかったよ。でも神様ってことは覚えといてね」
「勿論ですよ!」
アイツいい様にあしらわれてんな。結果猫呼びを認めさせられてるじゃないか。やっぱチョロいわ。
「あ!そうだ!ここの神社って神主がデンスケしかいないんだよね。だから春が巫女になってよ」
「え?でもいいんですか?巫女さんとか簡単になっても」
「まぁその辺は大丈夫だろ。ここは神社本庁に属してないし、そもそも属してたとしても巫女さんになるのに資格とかいらないからな」
「そうだったんですか?私てっきり巫女さんになるのには資格がいると思っていました」
「いや、いらないぞ。神主は本庁に属した神社の場合は基本的に資格がいるけどな」
「そうなんですね。でも資格いらないなら私ここの巫女になります!」
「にゃ!そうと決まれば早速巫女装束をあげる!昔の奴があるから一緒に本殿まで来てよ」
「待て待て待て。昔のとか大丈夫なのかよ?カビとか生えてないか?」
「失礼だな。ボクが言っている昔のはダンジョン時代のだよ?今のと違って付与魔法として、清浄、修復、耐久、サイズ調整が付いてるんだから!ずっと新品みたいな物だよ!」
いきなりアーティファクト出すなよ。しかも付与魔法が付いている服とか今の時代ダンジョンでドロップしたら一攫千金だぞ。
「わかった。待ってるわ」
2人は神社の中へと入っていった。
しばらく待っていると巫女服姿の春がマシロと出てくる。
なんというかアレだな。似合ってるな。正直めっちゃ良い。
「どうですか?」
その場をくるりと一回転して見せて感想を聞いてくる。
「似合ってるな。なんというか、こんな可愛い巫女さんと神社で2人でいられる事を考えると素直に嬉しい」
「2人っきりだなんて・・・」
何を勘違いしたのか春が照れて、真っ赤になった顔を手で隠している。
ちょっと言い方がおかしかったのは事実だが、俺なんかからそういう事言われてキモがらないのは貴重だな。
「2人じゃないよ!ボクもいるよ!」
マシロが必死に自分をアピールしている。
「そうですね!3人ですもんね!皆んなでこれから頑張りましょう!」
何か最終回みたいな事言っているがそれこそ俺達の冒険はこれからなんだけどな。
「さて。そしたらこの3人でパーティを組むとして、今日はどうする?」
「ダンジョン行こうよ!」
マシロが元気な声で提案してきた。
「俺は別に良いが、それよりもさっきも言ったが、まずは昼飯を食いたい」
「そうですね。私もちょっとお腹が空きました」
「わかったよぅ。でも何か食べるならボクも食べたいかな」
「わかった。とりあえず飯を食いに行こう」
「はい!私着替えてきますね」
そう言ってもう一度本殿へと戻る春。
「なぁ?本殿で着替えるのも不味いからさ。今度からプレハブ小屋使ってもらうか?」
「そうだね。あそこはボロいけどそっちの方がハルも安心するだろうしね」
「じゃあそうするか。ところでお前オス?メス?」
「ん?どっちでもないよ?ボクは純粋な神様だから性別はないんだよね」
「お、おう?そんなもんか?」
「そんなもんだよ」
じゃあ男でも女でも抱っこするのどっちでも良さそうなもんだが・・・。匂いについて言われたらなんとも言えんな。男の方が汗臭かったりするのは仕方がないし。
しばらくマシロと取り留めもない話をしながら春が出てくるのを待つ。数分程経ったところで春が出てきた。
「お待たせしました」
「たいして待ってないぞ?というか今度から着替えるときはそこの小屋を使ってくれ。カーテンもあるし大丈夫だからさ」
「わかりました。あそこは倉庫か何かですか?」
「いや、一応俺の家だ」
「あ・・。そうなんですね。ごめんなさい」
謝られたら悲しくなってきたな。あんなところに住んでる可哀想な人と思われそうだ。
「親父から俺がいたら母さん達とイチャイチャ出来ないからってあそこに追い出されたんだよ」
「追い出されたんですか?・・大丈夫です?」
「追い出されたことか?まぁ仕方ないだろ俺の親父達はそんな感じだし、わざわざここまで通うのも面倒だしな」
「そうそう!デンスケはもうボクと一蓮托生だからここに住まないとダメだから仕方ないよ!」
「まぁそういうことだ」
「わかりました。辛くなったら私の家に来てもらっても大丈夫ですよ?部屋は空いてるので」
「いや、流石に女の子の家に転がり込めないわ」
「そうですか・・」
ションボリする春を見たマシロがこちらをジト目で見てくる。
なんだよ?普通のこと言っただけだろ?俺だって男だから女の子の家に行きたい気持ちもあるけど、流石に不味いだろ。
そう思いながらマシロを見る。ふうっとため息を吐いたマシロを見ると、ちょっとイラッとした。
「とにかくどっかで飯でも食おう」
「そうですね!」
「じゃあボクはデンスケの中に入ってるね」
マシロが光ったと思ったら、そのまま俺の方へと近づいてきて、そのまま胸の方にスッと入っていった。
「わぁ。本当に神様だったんですね?光になってデンスケさんに入っちゃいましたよ」
「だな。俺も初めてされたから驚いた」
(これでやっと認めた?)
脳内から声が聞こえる。
「うぉ!念話か!?」
1人で驚いている俺を見て春が不思議そうな顔をしているところを見ると、彼女には聞こえていないらしい。
(そだよ。慣れてよね)
「わかった」
「お二人で話しているのですか?」
「ん?あぁ、どうやら俺にしか聞こえないみたいだ。悪いな」
「いえ。ちょっと羨ましいだけなので」
羨ましいとか奇特な奴だなと思いながら、バイクに跨る。
「それじゃ行くか。どっか良いとこあるか?」
「美味しい喫茶店がありますよ!そこはペット可なので!」
「じゃあそこで。案内よろしく」
(ボクはペットじゃないよ!)
(うるせー)
俺たちが念話で言い合いをしているのに気づいていない春が返事をする。
「はい!」
嬉しそうな顔で俺の後ろに乗ってくる春。さてとりあえず腹拵えでもするか。
俺は未だに喚いているマシロを無視してバイクを発進させた。