第十一話
あれから安い食べ放題の焼肉を食べて、協会にいき、マジックバックの返却とパーティ名を申請してきた。
「よし。じゃあ俺の家にいくか」
「楽しみです!」
「別に何も楽しいことはないと思うけどな」
春と会話をしながらバイクで家へと向かう。現在の時刻は15:30だ。ちょうどいいくらいであろう。
しばらくバイクを走らせて大野城まで向かう。俺の家は大野城の山手にあるのだ。まぁ色々理由があって、そこなんだけどな。
「着いたぞ」
「ここですか?」
俺たちの目の前には大きな家がある。
「え?凄く大きいですけど・・」
「まぁ大家族だからな。親父が金を持ってるのもあるし、大きくはなるよ」
「お金持ちなのにデンスケさんはお金を稼ぎたいのですか?」
「金持ちって言っても親父がダンジョンで稼いだだけだからな。金は自分で稼ぎたい。だから兄貴や姉貴もエクスプローラーになってるんだよ」
「そうなんですね?お兄さん達がエクスプローラーなのは知らなかったです」
あれ?春に言ってなかったか?そういえば家族の話はしてなかったな。
「まぁその辺はおいおい話すよ」
「わかりました」
バイクを駐車場に置いて、玄関へと向かう。途中マシロが出てきた。
「おっきいねー。康隆は稼いでるなぁ」
「大体アイツが金持ってるんだから、神社に寄付して貰えばよかったんじゃないか?」
「寄付をもらっても社殿とか施設を建てれないからね。スキルポイントで建てないと意味ないし」
それもそうかと頷く。
「それにあの一帯の土地を買うのでもかなりの金額を使ったみたいだし」
そう言えばそう言っていたな。あれだけ広い土地だ。やはり数十億は使ったのかもしれない。田舎とは言え福岡だからな。
玄関に着いたのでドアを開けて全員で中に入る。するとたまたま玄関の近くを通りかかったのか、長い赤髪の母さんがいた。
「お?おかえり!もう帰ってきたのか?」
「ただいま。文香母さん。息子が帰ってきてもうって言い方はなくない?」
この人は母さんの1人の文香母さんだ。男勝りな性格をしていて、親父が最も頭の上がらない女性の1人である。親父の幼馴染のお姉さんだったらしいのだが。こんな美人が幼馴染とか本当に親父は物語の主役だな。
「悪い悪い。ところでそっちは・・・。ん?マシロじゃないか!後は田亮の彼女か?」
「お、お邪魔します・・」
「文香久しぶりだね」
いやいや。まず春は彼女を否定しろ!既成事実になってしまうぞ!この人はそういうこと平然と喋って回るから!あとマシロ!お前の声にゃーしか聞こえてないだろ!
「相変わらずマシロは猫の鳴き声にしか聞こえないな!ところで彼女さんは何て名前?」
「あの、山下春です!不束者ですがよろしくお願いします!」
「春ちゃんだな?うちの息子の方が不束者だからこっちこそよろしく!」
「違うわ!春は彼女じゃなくてパーティメンバーなの!それと息子を不束者呼ばわりしないでくれ!」
「照れるなよ田亮。あと不束者っていうのは定型文みたいなもんだろ。気にしすぎだ」
まぁそうかもしれないけどさ!そうじゃなくても俺は兄貴達に比べると味噌っカスみたいなもんだから気にするんだよ!
心の中で叫びながら、とりあえず家へと上がる。
「春も上がりなよ」
「はい!お邪魔します!」
「ところで未来母さんから話は聞いた?」
「あー。聞いた気がする。未来は話が長いから半分くらい聞いてないんだよな。晩飯がどうとか言ってたけど」
晩飯の話しか聞こえてないとか、食い意地はりすぎだろ!ったく相変わらずだな。2日しか経ってないのに懐かしい気分になったわ。
「あの!文香さん!」
「どした?」
「ファンです!握手してください!」
「おう!いいけどアタシの握手なんて価値ないぞ?」
「そんな事ないです!ドラゴンスレイヤー文香さんと握手できるなんて夢見たいです!」
めちゃくちゃ食いつきながら目を輝かせる春を見て、母さんが若干引いている。
俺の方へ顔を寄せて耳元で囁いてきた。
「なぁ。この前みたいな子じゃないよな?」
この前とは俺をダシにして親父のハーレムに入ろうとした子のことだろう。
「いや、純粋にファンなだけだろ。俺の家族のことさっき知ったばっかだし」
「ならいいか」
俺たちが内緒話をしているのに不安を覚えたのか、春が悲しそうな顔でこっちを見ている。
「あ、あの。ご迷惑でしたか?」
「いや、そんなことないぞ?ほら!握手でいいなら幾らでもいいぞ!なんなら一緒に風呂でも入るか?」
文香母さんは親父が1番好きなのだが、ほかの母さん達のことも大好きで、偶に親父そっちのけで百合百合している事がある。母さん達に対してだけ両刀を発揮するらしい。
「おい!春をそっちの道に引き込むな!」
「そんな事しないぞ?アタシはやっくんと母さん達一筋だ」
複数の時点で一筋になってないけどな。
「ったく。それで未来母さんは?」
「さっきまで晩飯の下拵えしてたぞ?」
「じゃあリビング行ってくるわ。春とマシロもいくぞ」
春はペコリと文香母さんに頭を下げて俺の方にきた。マシロも尻尾をフリフリと手を振るようにしてこちらへ来る。
「因みにやっくんは修練場だぞー」
その声を聞きながらリビングへと歩く。リビングに着いたので扉を開けて中へ入る。
「ここも広いですねー」
春がリビングを見て感嘆の声を出すが、それもそうだろう、リビングは50畳以上あり、その奥に見えるキッチンもどこかの店のような広さだ。
キッチンからこちらへ2人の女性が顔を出して挨拶してきた。
「デンスケちゃんおかえりー」
「おかえりデンスケ」
「未来母さんも奏母さんもただいま」
黒髪ロングの未来母さんは先程の電話の相手で、茶髪のショートカットの奏母さんはあれだ。俺の生みの親だ。
「あら?デンスケちゃんが彼女連れてきてる!」
「ホントだ。家を出て2日で連れてくるとかやっぱりあなたはやっくんの息子ね」
「だから違うっての!パーティメンバーなんだよ」
「なんだ〜」
「まぁこの子が彼女出来るわけないからね」
くそ!なんて言い草だ!俺だって彼女くらい出来るわ!多分。
「あの、山下春です。お邪魔してます!」
「どうぞどうぞ〜。ワタシは未来です」
「私は奏です」
「お二人のお話も聞いてます!未来さんが賢者の未来と言われる魔法使いで、奏さんが弓帝の奏さんですよね!!」
「まぁそういう風に言われることもあるわね」
「恥ずかしいよね〜」
また春がミーハーな感じになってる・・。
俺はため息を吐きながら会話に入り込む。
「それで手甲は?」
「ん〜。やっくんに言おうとしたんだけど・・・」
「私が止めた」
「なんでだよ?」
「やっくんの手甲を借りるんだからちゃんと本人に言いなさい。家族とは言えそれが礼儀よ」
奏母さんはそういうことに厳しい。だからこそ生みの親である奏母さんじゃなくて、俺に甘い未来母さんに電話したのに。
親父に言うとこれ見よがしに、揶揄ってくるに違いない。
「くそ。じゃあ親父に直接言うよ」
「デンスケ!ちゃんとお父さんって言いなさい!」
「はいはい」
そう言いながら修練場へ行こうとする。春はオロオロしながら俺の方についてきた。因みにマシロは俺のそばにいるままだったのでそのままついてきている。
「あー!マシロちゃんもいるじゃない!」
未来母さんの声にマシロがビクッとしてすぐに俺の中へ入ってきた。それと同時に俺たちも立ち止まる。
「逃げられちゃった・・」
「未来はマシロを可愛がりすぎよ。あれ嫌がってるのよ?」
「え〜」
どうやらそう言うことらしい。
(お前未来母さん苦手なのか?)
(未来はね、ずっと撫でてくるから毛が抜けちゃって酷い目に遭うんだよ)
想像できるな。今度からマシロが変なことしたら未来母さんに渡そう。面白そうだ。
「とにかく修練場に行ってくるよ」
「はいはい」
「マシロちゃ〜ん・・」
まだ諦めきれていない未来母さんを奏母さんが宥めつつキッチンへ戻っていった。
リビングを出ると春が話しかけてきた。
「お母さん達みんなお父さんのことやっくんって言うんですね?」
「あー。それ色々あったらしいぞ?」
「そうなんですか?」
「なんか最初はみんな違う呼び方だったらしいんだけど、誰の呼び方が1番いいかで喧嘩になったらしくて、結局親父が誰にも呼ばれてなかった呼び方で統一させたらしい」
「そうなんですね。皆さんの喧嘩になると大変なことになりそうです」
「実際大変だったらしいぞ?この周辺はダンジョンが現れる前に住んでた人たちの廃墟が並んでたんだけどさ。そこが更地になるまでやり合ったらしくて、結局親父がこの一帯の土地を買わざるを、得なくなったんだよ。それでどうせなら家建てるかってなって今の家ができたんだと」
「何かスケールが違いますね」
「だな」
まぁそれだけ怒らせたら怖いけど、正直殺意の波動の春を見たら、まだマシだと思うけどな。口には出さんが。
(ボクを未来に差し出したら、今考えてたことハルにばらすから)
先手をうたれてしまった。というより心読むなよ。
しばらくすると大きな扉が見えてきた。あそこの奥が修練場だ。
「やっぱり修練場って広いですか?」
「まぁそうじゃないと大変だからな」
そう言いながら扉を開ける。
そこには野球の試合が余裕で出来るんじゃね?って思えるほどの広さを持った場所だ。
そして目に入ってきたのは親父が忍者に攻め立てられている光景だった。
忍者がとんでもない数の苦無を投げる。それを親父が手甲で全て捌いていく。その間に忍者から追撃の炎が飛んでくるも親父は正拳突きをする。
パンッ!
親父の正拳突きの後から音が聞こえてきた。あれ音速超えてるやつだな。相変わらずチート野郎め。
それと同時に向かってきていた炎が掻き消える。忍者はそれも織り込み済みなのか、既に親父の真上に跳躍していた。忍者から次は雷が落ちる。轟音と共にこちらまで爆風が来る。
煙で見えないが親父がやられたか?やられて気絶とかしてたら笑えるんだけどな。
段々と煙が晴れると、親父が忍者を組み敷いていた。
雷でどうなったか全く分からなかったが何で親父が勝ってるんだ?大体雷が落ちてなんともないなんて2人とも人外すぎる事をするな。
その光景を呆気に取られた表情で春が見ており、マシロはうんうんと頷いている。
「康隆は凄いねー。初代には程遠いけど、リセット前のボクとならいいところまでいけるね」
「お前今レベル4だけどな」
「にゃ!仕方ないにゃ!生き残る為なんだから!」
「はいはい」
「お二人ともよくこれを冷静に見れますね・・」
「俺は見慣れているからな」
「ボクもこれくらいなら大丈夫」
「感覚が違いすぎます・・」
いや、春もかなり感覚が違うと思うよ?ベクトルが違うけど。
勝負がついたのかこちらへ親父が振り向いた。
「おう!飯食いにきたってな!ホームシックになるには早いぞ?」
「違うわ!」
「おかえりデンスケ」
急に耳元で声がする。先程の忍者だ。
「ただいま夏菜母さん」
「ん。おかえり」
春は急に忍者がそばに現れた為めちゃくちゃ驚いている。マシロは親父の元へ歩いていっている。
「デンスケのパーティメンバー?」
「そうだよ。流石夏菜母さん。すぐわかったね」
「デンスケに彼女が出来ても、どうせやっくんには見せたくないからって連れてこない」
その通り。この人は観察眼に優れているからな。隠し事とか直ぐにバレる。前なんてエロ本をしれっと買ってきたら速攻でバレた。
「あの!山下春です!」
「夏菜です」
・・・。会話続かないな。夏菜母さんは人見知りな部分があるから仕方ないけどな。
「超忍の夏菜さんですね!あと、主人公の康隆さん!」
親父とマシロがこちらへ来ているのを見て、2人の二つ名を言い当てている。
てか春詳しすぎな。親の二つ名とか息子からしたら恥ずかしいから。
「おう!そうだぞ!マシロから聞いたけどコイツのパーティメンバーだって?息子をよろしくな!」
「はい!」
親父よ・・。人から主人公とかいう二つ名を言われて恥ずかしくないのか?俺なら身悶えしてしまうけどな。




