3話 追放テンプレ
あっという間にこの世界に召喚されてから2週間がたった。
俺といえば【極】を使いこなしクラスメイトの中でもトップクラスの成果を上げている。
さすが吾味ぃ様です!
さす吾味!
なんてこともなく、結局【極】の効果はいまだ不明。
ここ2週間で手当たり次第にいろんな訓練に参加してみたが
剣を振ってもダメ
槍を振ってもダメ
盾を使ってみてもダメ
魔法なんてかけらも使えない
「【極み】!」と叫んでみても何も起こらず、いい加減他のクラスメイトの冷ややかな視線がしんどくなってきた。
他のクラスメイトは順調にスキルを使いこなしてきて、今はダンジョンに行き実践訓練を行っている。
中でも例のカースト上位4名、天下原、戦原、天音、大神は絶好調。
さすが天下原くん!さすが戦原くん!さすが天音さん!さすが大神さん!
はいはいさすさす。
この世界はよくあるレベル制でもあるらしく、上にあげた4人はもうLv30を超えたらしい。
ただステータスなんかは調べる方法がないらしくわかるのはレベルとスキルだけらしい。
他のクラスメイトも20前後が大半。
俺?俺は一回ダンジョンについて行って最弱のモンスターと1対1でほぼ互角の末ギリギリで勝利しその時Lv2に上がった以降上がっていない。
身体能力だけでももう天と地の差がある。
おっかしーなーいい加減テンプレだといい加減俺のスキルが目覚めてさす吾味!になるんじゃないのかなぁ。
考えないよう目を背けていた一つの可能性が浮かんできた。
いやいや、そんなまさか…まさかね。
今は、お城の書庫でひたすら調べもの中だったので嫌な考えを振り払い、スキル関係の本を読む作業に戻る。
すると
「吾味様、ダンジョンから他の方々が戻られたので皆様と共に王の間へおこしください。」
とお城の執事さんセバスチャン(仮)が声かけてきた。
「わかりました、本を戻してから向かいます。」
「ああ、本でしたら私が戻しておきますので、お向かいください。」
「はい、お願いします。」
そう言って書庫から王の間へと向かう道を歩いて行った。
途中クラスメイトと合流しみんなで王の間へと入る。
「よくぞ参られた異世界の英雄達よ。」
王の間の一番奥のいかにもな椅子に座っている王様から声がかかる。
「皆の活躍聞いておる、特に天下原殿、戦原殿、天音殿、大神殿に至っては我が騎士団長、神官長、魔法団長と並ぶ活躍をみせると評判じゃ」
「いえ、皆様のご指導の賜物です。」
さす天下原!
「それに比べて、一人この場にふさわしくない者がおるようじゃの。」
あ、これあれか、いやな予感が現実味を帯びてきた。
「吾味 極!」
ほらきた。
「貴様は、我が城から追放とする!今すぐ出ていけぇ!」
やっぱりこれ、異世界転移追放ものだよ!
王様の怒気を帯びた声を聴き嫌な予感が現実になったことを悲しむことはなく
やっと来たテンプレへの感心が強くでた。
「お、王様、いくら何でもそれは!」
誰にでも優しい天音さんがフォローをしてくれるが
「ええい、何も役にも立たない無能をこれからも養ってやる義務などない!」
いやいや、あんたたちが勝手に呼んどいてそれはないでしょ。
と言いたい所だが、言っても相手を逆上させるだけなのは目に見えているので
「わかりました、ただこれから仕事を探すにしろ無一文では何もできません、支度金を頂けないでしょうか?」
素直に従いとりあえず暮らしていけるだけの金を要求するのが一番だと思いお願いしてみた。
「なにぃ?支度金だと!?ふん、1週間程度食えるだけの金はやる!とっとと出ていけぇ!」
近くにいた大臣らしき人からお金が入った革袋をもらい王の間から出て行こうとした時
「吾味くん!」
「天下原くん…」
天下原が声をかけてきた
「僕達は必ず魔王を倒し、元の世界に帰れるようにする!それまで無事に生きていてくれ!そして一緒に帰ろう!」
良いこと言っているように聞こえるが、それって今後べつに助けてくれないっていう宣言ですよね。
こいつはこういう所があるんだよ、本当にテンプレ系主人公に追い落とされるキャラみたいな性格してんなぁ。
「ああ、俺は何もできないかもしれないけど、信じて待っているよ」
心の中の声は隠し、出来るだけ他の人の印象を悪くしないような回答をして、俺は城を去っていった。
さーて、これから異世界転移追放テンプレにならって冒険者にでもなろうかなー。
【極】がまだ活躍しません!
あと1~2話ぐらいかかるかも?
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