1話 異世界クラス転移テンプレキタコレ
「貴様は、我が城から追放とする!今すぐ出ていけぇ!」
この時俺が感じた感情は、
理不尽な言葉による怒りでもなく
こんなことになってしまったという悲しみでもなく
あ、これなろうでよく見た異世界転移の追放ものと同じだ。
という、あまりにもテンプレな状況への感心であった。
そんな俺は、吾味 極つい1週間前、異世界クラス転移で異世界に来たクラスカースト中の下。
趣味は、なろうで小説を読むことという極々平凡な高校2年生である。
2週間ほど前、俺達2年1組は突如異世界に召喚された。
なろうを熟読している俺にとっては、その時の状況は所謂テンプレの如き。
細かい描写は、よくある異世界転生系のなろうで読んでくださいといったまとめでいいんじゃないかと投げっぱなしジャーマン理論に任せたいぐらいである。
それはあまりにも端折りすぎなので簡単にまとめると
2年1組朝のホームルーム中、魔法陣が突如出現
↓
気が付くと見たこともない場所に
↓
目の前にいたいかにも王様ですと全身から自己主張しているおっさんが
「よくぞ来られた、異世界から来られた英雄達よ。」
とか言ってくる。
↓
「ふざけんな!」「元の世界に返せ!」等の当然の主張を繰り返すクラスメイト
↓
魔王を倒さなければ返すことができないという一方的な主張を押し付ける異世界の人
↓
なろうでよくいる美形、頭良い、運動神経抜群というクラスのリーダーみたいの天下原 蓮が魔王討伐に乗り気
↓
その取り巻きのよくいるスポーツ特化の親友、戦原 刀弥
皆に優しい天下原の幼馴染の女生徒、天音 優
少し勝気で女生徒に人気のある委員長タイプの女生徒、大神 真
も賛同
↓
しぶしぶ説得される他のクラスメイト
↓
それを眺めているまんまなろうの展開だ!と感動している俺
↓
なんか綺麗な年上のお姉さんが出てきて
「召喚された勇者の皆さんにはユニークスキルがあるのでこの水晶で鑑定しましょう」
と言ってきた。
↑
今ここ
といった状況である。
正直ワクワクしてます、はい。
そりゃなろう好きとしては、こんなテンプレ異世界転生にワクワクするなというのが無理です。
ただ、ここでうかれてはいけない!
ひと昔のなろうしか読んでいなければここでうかれ放題だったと思う。
だが、ベテランのなろう読者としては知っている。
ひと昔前までのなろうだと、異世界テンプレハーレム俺TUEEEばっかりだったが今は違う。
最近は主人公が悲惨な目にあうようなパターンだって沢山あるんだ。その辺俺は詳しいんだ!
最近は、幼馴染下克上ざまぁ系とか業が深いものが人気だったりしているしな。
そんなことを止めどもなく考えているとスキルを鑑定しているあたりから歓声が聞こえてきた。
「おお、素晴らしい!このスキルは【勇者】!先代の魔王を倒した英雄が持っていたスキルですよ!」
「さすが蓮だな!」
「すごいね蓮くん。」
「まったあんたはおいしいとこ持っていって。」
上から順に、戦原、天音、大神の発言である。
すごいよ!テンプレだよ!やっべ興奮しすぎて鼻血でそう…。
それからクラス30名の全員が順にスキルを鑑定していった。
特に目を引いたスキルが
天下原:【勇者】
戦国:【剣聖】
天音:【聖女】
大神:【大魔道士】
といったクラスカースト上位ベスト4のメンツだろう。
スキルの内容は、まぁ見たまんま。
というかスキルっていうか職業なんじゃね?というツッコミはおいておいて。
勇者は、攻撃、防御、魔法すべてに高い補正がかかり勇者専用の魔法まで使える超万能型というチート。
剣聖は、魔法こそ使えないものの物理による攻撃、防御は勇者をも上回る、高レベルになるとドラゴンをも両断できるというチート。
聖女は、回復、補助魔法に高い適正があり高レベルになると瀕死になった人をも完全回復させることができるというチート。
大魔道士は、火、水、風、地の4属性の魔法を操ることができ、高レベルになると、湖を蒸発させ、津波を起こし、竜巻を発生させ、地震を起こすことも可能というチート。
チートの宝石箱やー、と某グルメな人なら言うぐらいチートがチートでチートにチートである。
ここまでくるとテンプレ満載だなーといった感想しかでてこない。
他のクラスメイトもこの4人と比べたら見劣りするが、元の世界にいたころでは得られないような強力なスキルばかりだ。
あの4人のスキルは職業みたいなものだったが、他のクラスメイトを見る限り職業というわけでもないようだ。
【上級剣術】とか【火炎魔法】とかスキルっぽいのも出てきている。
職業みたいなスキルのが当たりなのか?
そういうスキルがセットになっているのが職業みたいなスキルなのだろうか?
最初にブーブーいっていたクラスメイトも、強力な力があるとわかった途端まんざらでもないような感じだ。
「それでは、最後のあなた。こちらへどうぞ」
そうして最後に呼ばれた俺の番となった。
「こちらの水晶に手を触れてください。」
いわれるがまま目の前の台座におかれている水晶に手を触れると一瞬だけ水晶が輝き光が収まる。
「これは…初めてみるスキルですね。少なくとも我が王国で記録されているどのスキルにも該当しません。」
お、来たんじゃないのこれ!
今までいなかった完全ユニークスキルで無双系はじまったか?
周りにいたクラスメイトもその言葉を聞いて、興味深そうにこちらを見ている
あれ、俺なにかやっちゃいましたか?とか言ってみたい!
「あなたのスキルは【極】(きわみ)です。」
【極】?俺の名前と同じか。
もう運命じゃねこれ、ここから俺のチート転生タイムがはっじまっるよー。
「【極】ですか!?それでこのスキルにはどんな効果が!?」
「…わかりません。」
「へ?」
「先ほど言った通り、初めて見るスキルなので効果がわかりません。」
「……まじで?」
「まじです。」
「そこはなんかこうすごい魔法とかすごい道具でわかったりは?」
「しません。」
「え、じゃあ俺はこれからどうすれば?」
「そうですねぇ、他の方々はこれからそれぞれ自分のスキルを実感していただいて使いこなす訓練をしていただこうと思っているのですが、貴方の場合はスキルの効果が不明なので色々試してスキルを調べていく所からですかね。」
「なるほど…。」
「心配しなくて大丈夫ですよ。【極】なんてすごい名前のスキルなんですから、すぐにわかりますよ。」
「そうですよね!」
となんか誤魔化された感も否めないが、まぁ大丈夫だろう。
だって【極】だぜ、名前からして半端ない効果があるに決まってるさ。
そんなことを考えながら水晶の前からクラスメイトの集まりに戻ると
「すごいじゃないか吾味くん、【極】なんて前例がないスキルを得るなんて」
「だな、ぶっちゃけ平凡な奴だと思っていたけど、これからは頼りにさせてもらうぜ」
「これから一緒にがんばろうね!」
「スキルの効果がわからないのは不安かもしれないけど、これから頑張りなさいよ。」
と声をかけてきた上から、天下原、戦原、天音、大神のカースト上位ベスト4。
「ああ、頑張るよ!」
あれ、これもしかしてカースト上位に入るチャンスか?
「ちっ、吾味のやつうかれやがって」
「まぁ、【極】なんてすごそうなスキルだからしょうがないよ」
はっはっは、今まで俺より上だったカーストの奴らの負け惜しみが気持ち良いのー。
とまぁ、この時の俺はこんな感じでうかれまくりの最高潮にいたわけだ。
2週間後あんなことになるとは知らずに。
なろうに初めての投稿です。
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