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ともだちの魔法は星の色~その転校生、のじゃロリ魔法少女につき~  作者: ひさなぽぴー/天野緋真


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第19話 修学旅行 3

 それからわたしはずっと何か起きるんじゃないかって心配してたんだけど、結局何も起きないままネズミーランドでの時間は終わった。

 予定してたアトラクションは全部乗れたし、それどころかちょっと時間が余って追加で体感型のアトラクションに乗れたくらいだ。キラキラのイルミネーションで飾られたパレードも、わりといいところで見ることができた。

 そのあとはタイムリミットまでに集合場所に戻って、移動のバスに乗って……で、普通にホテルまでたどり着いてしまった。あんまりにも何もなかった。


 いやすごい楽しかったんだけど、ネズミーの何もかもが超楽しかったんだけど、ひーちゃんが出動するようなことがなくて拍子抜けしちゃったよ。


「イズ子ってそーいうところがオタクだよなぁ」

「いやだって、あんなこと言ったら普通さぁ……」

「それはお話の中の普通でしょう? ここは現実なのよ、平良さん」

「ぐふう」

「はっはっは、この二人が正しい」

「うー、ひーちゃんまで……」

「何もないのが一番じゃろうが」

「ですよねー……」


 到着したホテルの部屋で、それぞれのベッドの上でくつろぎながらそんな話をする。


 うん、その通りではあるんだ。わかってはいるんだけど、ひーちゃんのかっこいいところをまた見たいなって、思っちゃったんだよ……。

 なんて言ってもたぶん誰からも賛成してもらえないだろうから、言わないけどさ。


 それから食事の時間になって、大きい広間で学年全員が揃って晩御飯を食べて。

 そのあとはグループを分けて、お風呂の時間だ。わたしたちはラッキーなことに、最初に大浴場を使えるグループに入ることができた。


「ここって確か、露天風呂はないけど外が見えるようになってるらしいね」

「あ、それこっちに書いてあるぞ。壁の一部が全部窓になってるんだってさ」

「へえ、夜景が見えるようになってるのね。素敵だわ」

「今日は晴れておるし、よく見えそうじゃな。満月でないのはちと残念じゃが」


 脱衣所でそんなことを話しながら、服を脱ぐ。

 ……けど、そうするとどうしても見えちゃうんだよなぁ。胸囲の格差社会ってやつが……!


 ちら、と横に目を向ける。そこにいるはーちゃんの身体は、さすがプロのモデルさんなだけあってすごいきれいだ。同年代の女の子としては背も高いし、何よりその、お胸が、ねぇ……。


 その奥で今ちょうどメガネを外したふーちゃんも、なんだかんだで結構スタイルがいい。最近ははーちゃんと近いからか目立ってなかったけど、実はってやつだ。着痩せするタイプなのかなぁ。


 じゃあわたしはと言えば。真下の眺めが最高の、貧相な身体つきだよ……。身長も全然伸びないままだし、自分のことながら悲しくなってくる。

 昔の写真を見る限り、お母さんもかなり小柄なほう(お父さんが犯罪者に見えるレベル)だからこれは遺伝なんだろうなぁ……。


 絶望的すぎる……思わずため息が出た。


 ちょうどそのタイミングで、目の前にいたひーちゃんが実に豪快に服を脱ぎ捨てた。そしてそこから出てきたのは……。


「……ひーちゃん」

「うん?」

「心の友よぉぉ……!」

「うわっ、なんじゃ急に、どうしたというんじゃ」


 そう、ひーちゃんの胸はぺったんこだった。わたしと同じで、どう見ても子供体型。身長も同じくらいだし、彼女こそわたしの心の友……!


「……ってわけだよ」

「なるほどのう」

「はーちゃんは解説しないで!?」


 いつの間にか準備が終わってこっちに来たはーちゃんが、なぜか楽しそうに解説するんだ! くそう! このおっぱい星人め!


「もう、花房さんはそういうこと言っちゃダメよ。人が気にしてることを言うのはやめるべきだわ」


 ほうら、正義の委員長、ふーちゃんのお出ましだぞ。たっぷりお説教されてしまえばいいんだ。


 ……でもふーちゃん。わざわざ引き寄せてかばおうとしてくれるのは、ありがたいんだけど、違うんだ。


「ふーちゃん違う、そっちひーちゃん。わたしこっち」

「え!? あ! ご、ごめんなさい! メガネがないとよく見えなくて……」


 わりと近いところにいるのに間違えるなんて、相当目が悪いんだなぁ。

 確かにひーちゃんがポニテを下ろすと、身長とか身体つきが近いせいかわたしたちかなりそっくりかもだけど。


「いきなり引き寄せられて何事かと思うたぞ」

「ごめんなさい……」

「いやわしはまったく構わんが」

「メガネ着けてけばいいじゃん。あたしのパパはそうしてるぞ?」

「私のメガネは防水仕様じゃないから……」

「へー、メガネにもいろいろあるんだね」


 なんて話してるうちに、胸の話題はどこかに行ってしまってた。いいことだ。

 というか、わたしがヘンなことしてなかったら誰も言わなかったんじゃ?


 ……うん、これについては忘れよう!


「カナ子って視力どんだけ?」

「0.1くらいかしら……昔から本を読むのが好きで、暗いところでも読んでたから……」

「うへ、あたしにはよくわからん話だったぜ」

「わたしはなんとなくわかるよ。ゲームとかマンガで時間忘れることあるし」

「わしも最近その境地に達したな。面白いものに当たると、周りが見えなくなるんじゃよなぁ」


 そんなことを話しながら、お風呂場に入る。


 当たり前だけど、そこは広かった。でもって、このホテルに今泊まってる人の大半はわたしたち小学生だからか、貸切状態。開放感あるー!


「へー、なかなかじゃん。これなら思いっきり泳」

「ダメよ」

「……はえーよバカ」


 相変わらずのやり取りをしてる二人はともかく。


 まずは全身を洗う。話はそれからだ。

 でもわたしたちくらい髪の毛があると、頭を洗うのにだいぶ時間がかかる。こういうとき男の子は楽なんだろうけどなって思いつつ、洗って洗って。

 最後はお風呂の中へどぼん。


「ふはぁー、きもちいー」

「うむー、これはよいものじゃのうー」


 ひーちゃんとお風呂の端のほうでくつろぐ。

 いや真ん中に行きたいのはやまやまなんだけど、わたしたちそこまでいくとあごまで浸かっちゃうから……。おかげで隅のほうの、段差のところから離れられないんだよね……。


 ともかくそこから真ん中のほうで泳ごうとするはーちゃんと、それをとめようとするふーちゃんのやり取りを改めて眺めながら、その奥にある窓……の、さらに奥の空に目を向ける。


 何かそういう加工でもしてあるのか、窓は全然曇ってない。おかげで東京の夜景がバッチリ見渡せる。

 夜景が結構な明るさだからか、上のほうに浮かんでる三日月がちょっとかわいそうだけど。でも、どっちもきれいで見てるだけでもうきうきする。


 そんなに離れてないはずなのに、柊市の景色とは全然違うんだもんなぁ。まあ、どっちも違って好きだけどね。

 そんなことを考えながら、しばらくわたしは無言で景色を眺めていた。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


 お風呂上り。ノーブラでブラジャーを使ったことすらないって言うわたしとひーちゃんに対して、はーちゃんがものすごい勢いで「ぺったんこでも着けるべき!」って語る一幕もあったけど、それはともかく。

 うん、別に怒ってなんかないですよ? ぺったんこ連呼されたからって、別にそんな。


 ともかく、そんなお風呂のあとから寝るまでの時間は、騒がしくしすぎない限りは結構自由な時間だ。最初はトランプをしてたんだけど、はーちゃんが枕投げをしたがったから途中から枕投げになった。

 ふーちゃんが却下したけどわたしとひーちゃんが賛成に回ったから、多数決でそのまま決行された。


 最初はわたしとひーちゃんで、はーちゃんを集中攻撃してたんだけど……途中で気づいてしまったんだ。戦い慣れてるひーちゃんが、ずっとノーミスノーダメージだってことに。

 だからそこからは立場が逆転。最終的にはひーちゃんというラスボスに三人で立ち向かうみたいな形になった。

 でもってそれでも全然当てられなくて、みんなでムキになってたら音を聞きつけた先生が来て、四人でまとめて怒られました。


 ふーちゃんがやってしまったって凹んでたけど、まあ、なんていうか、赤信号もみんなで渡れば怖くないよね!


 と、そんなこともありつつ、本当に何もないまま平和に修学旅行の初日は終わった。最後まで実は、って思ってたわたしだけど、本当に何もなかった。


 そして次の日。意外……って感じはないけど、ともかく朝にすごく弱くてなかなか起きなかったはーちゃんを引っ張りながらご飯を食べて。

 そこから制服に着替えて、今日の目的地に向かうことになった。


 行き先は、昨日もバスの中で少し話題になった、キッズランド。お仕事を体験して、施設内のお金を稼いで、それを使って色んなことをするっていうアミューズメントパークだ。


「みんな何がしたい? わたし、このゲーム作りってのがやってみたい!」

「あたしは客室乗務員かな。なんかかっこいいじゃん?」

「私はお医者さんとか、弁護士が気になるわ。光さんは?」

「うーむ、『絶対これ!』と言えるものがないのじゃが、モノ作りの系統はどれもそれなりに気になるな」


 そう言ってひーちゃんが指さしたのは、お菓子作り。

 ……あ、これって作ったやつ持ち帰れるんだ? それならわたしもちょっと考え直しちゃうぞ。

 というか、食べ物を作る系のやつがほとんど選択肢になっちゃうな。これは困った。


 それははーちゃんも同じみたいで、組んだ腕を座席の上に乗せてうなってる。

 ふーちゃんは……そんな感じはないな。この辺はブレないっていうのかなぁ。


 そんなわたしたちを見て、ひーちゃんは思いついた、みたいな感じで少し考え込んだ。何か気になることでもあったのかな?


「ひーちゃん、何か気になるの?」

「いや、気になるというほどのことではないのじゃが……こうも皆の意見が違うと、施設内では班行動はできんなと思うてのう」

「あー確かに。わたしたち、なんだかんだでお互いの趣味ほとんど違うもんね」

「そうだなぁ。あたしもカナ子のやりたいところは行きたいとは思わないな」

「……正直私も、ゲーム作りはあんまり……」

「わしも客商売は遠慮したいのう」

「すごいね、本当にみんなバラバラだ!」


 あまりにも違いすぎて、みんなで笑う。


 いやー、何度も言うけど、趣味が違うのに一緒にいても窮屈じゃない友達ができるなんて、夏休みの頃のわたしに言っても絶対信じないよ。流れ星さまさまだね。

 もちろん今の状況は気に入ってるから、やっぱりなしでって言われたら困る。それだけはやめてほしいところだ。


「……まあ、元々キッズランドはやりたいことで班も分かれるって話になってたし、そこは仕方ないわね」

「それな」

「うん。ネズミーと違ってそんなに広くないみたいだし、迷いはしないよね」

「念のため、集合場所くらいは決めておくか。確か、昼飯はこの中で済ますんじゃろ?」

「それもそうね。えーっと、確かキッズランドのパンフレットは……」


 このあと、自分でもびっくりするくらい真面目に別行動中の取り決めを話し合ったよね。


 そして到着して、先生からいつも通りありがたいお話を聞いたあと。わたしたちはそれぞれの行きたいところに行くために、お互いに手を振って一旦分かれたのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


温泉回。

深夜にみんなが寝静まったところで夜空を眺めている藤子を目撃させたかったけど、泉美たち三人がそれに居合わせるだけの動きをしてくれなかったのでお蔵入り。

この辺りは作者の都合で動かすのではなく、彼女たちの都合で動いてもらったほうがいいかなと思ったので。

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