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謁見

結局、チーム最後の1人である、魔女アリサは姿を見せなかった。


 衛兵の案内で、王子が待っているという広間へ、金魚のフンよろしく連れて行かれる一行。


 部屋でジャンクらと情報交換をするうち、アリサが旅に出たらしいということは分かった。

 破壊と呪術に特化したアリサは徒党を組まずに、常に単独行動と独断先行がモットーの女だった。

 その特性が生まれついてのものか成長過程で育まれたものかは分からないが、合理的で有能な彼女は結社狩りで大いに力を発揮した。

組織の輪を乱す独断先行は、規律を重んじる出世コースの人間からは嫌われていたが、フラスコは独自の判断で動ける彼女を買っていた。


何故アリサに関してここまで文を割いたかと言えば単純な話、フラスコが彼女を気にかけていたからである。


 愛の契りを交わした訳でもなければ肉体関係があった訳でもない。

 孤立しているアリサを引っ張り回していたせいで、有る事無い事を吹聴されたことがあった。

 その後から、アリサの視線に熱が篭っていることに気づいてしまったのである。


 漠然とアリサとなら上手くいきそうだと思っていたところで、いきなりチームをバラバラにされた挙句にいきなり女を充てがわれては不審と鬱憤の蓄積は免れまい。


「こちらです」



 長い廊下の角を曲がると、重厚な扉から6人の集団が出てくるところである。

6人の先頭に立つ男が顔を上げ、フラスコと目が合うと声を上げた。


「生きてたかフラスコ」


「サミーか、お前も呼ばれてたのか」


 サミーは共に泥を噛んできたフラスコの戦友である。

彼もまた、チームを率いて結社狩りに奔走していた。


「ケチな野郎だぜ、俺らの頭は」


 衛兵が睨むのを受け流したサミーらは悠々と歩き去っていく。



 さて、いかにもお偉方がおりますよと言わんばかりの重厚な扉の前に到着すると


「残念ながら陛下は多忙のため、王子から労いのお言葉を」


「話す時間は?」


「残念ながら多忙のため、諦めてください」


「……報酬への文句は?」


「王子に失礼があれば我々が引きずり出します」


 思わずチームを見回すフラスコだったが、誰もが同じことを顔に出していた。


さっさと終わらせて帰ろうぜ?




 重厚な扉が荘厳な軋み声を上げながら開かれる。


シンプルでいて豪華な部屋の中心に置かれた大テーブルには大量の資料が山のように積まれている。


「次は次は……これ?」


「こっちです、あの木偶にシチューぶっかけた顔がフラスコです」


「あっそっかぁ」


 偉く失礼な会話が聞こえた気がするが、聞かなかったことにするのが紳士の対応というやつだろう。


 大テーブルに並んで座り、正面の王子を見据えるフラスコら一行。

王子の名はアーリー。

その横に佇むのは教育係のピットと名乗った。

王子はといえば高貴なる爽やかイケメンを万人にイメージさせたものを足して割った姿と言えよう。

ピットはオールバックの紳士である。


「さて、君たち魔王討伐ご苦労様でした……と言いたいところなんだけどね」


頬をかきながら続けるアーリー。


「朝からもう何十人にも言ってるんだけどね、君たちが討ったのは影武者でした」


「影武者……?」


「魔王の首を持ってきたのは君たちだけでは無いということだよ」




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