再会
ほんの1週間ばかりの軟禁状態ではあったが、宙ぶらりんというのは堪える。
クラーレ宛ての書き置きを残して、フラスコはさっさと家を出る。
太陽に照らされたペキンパー城は、部屋の窓から見るときよりも美しく見える。
商店街に辿り着いただけなのに、人の営みがこんなに眩しく、また尊く感じるとは。
もし、魔王軍の北上を止められなかったとしたらゾッとする。
城への道すがら、視界に入るもの全てがフラスコを祝福するかのように彼は酔いしれていた。
「橋ィ下げェい!」
衛兵の威勢のいい掛け声で、ペキンパー城へ入る唯一の架け橋が下がっていく。
四面を掘で囲まれたペキンパー城は何人もの侵入をも拒む。
ついつい侵入経路を探ってしまいたい衝動に駆られるのは、フラスコの悪癖である。
「こちらでお待ちを」
フラスコは、多くの扉が並ぶ廊下を延々と連れてこられた挙句、一つの部屋へ通される。
なんの変哲も無い豪華な部屋としか形容のしようがない。
とりあえず部屋の中央に鎮座するソファに座ってみるも腰がソワソワする。
いつもの癖か、椅子の裏や戸棚の中に盗聴陣が描かれていないか探ったり、窓からどう逃げるかなど思案を巡らせるうちに、ドアがノックされる。
「流石にお早いですな、隊長」
「おお、ジャンク!」
入ってきたのは髭面の大男、フラスコ隊の切り込み隊長ジャンクだった。
「元気してたか?」
「お蔭さんで……ところで、隊長のところにも……その、家政婦が?」
「お前のところもか……なあ、上手くやれてるか?」
ウン……と唸るジャンク。
「その……とてもタイプだったもので……初日に襲ってしまいまして」
「え」
「それから今日まで四六時中繋がってる始末で……いやお恥ずかしい」
「お前……この報酬で満足か……?」
「確かに金を期待してた節はありますが、今となっては」
「そうか……」
大人気ないのは俺だけかと自己嫌悪に陥りそうなフラスコの思考を遮るように、さらに2人の男が入ってくる。眼鏡をかけた小男と、赤ら顔の男である。
「ベール兄弟か、久しぶりだな」
眼鏡をかけた方がサム・ベール。赤ら顔の男がジョン・ベールだ。
兄弟と呼ばれているが血縁関係は一切なく、単に家名が同じだったことをきかっけにつるんでいたのが今に至るだけである。
サムは元猟師で罠の扱いに長けており、ジョンは弓術に長けている。
「お久しぶりです隊長」
「おまっとさんです!……ヒック」
さて、あと一人だが……