表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

フラスコの背

「クラーレ、こっちに」


「う、うん」



クラーレを背で庇い、改めてアリサを見据える。


雲が引っ込んでしまえば元の姿……とはいかない。左腕と右足が無いのに気付く。


フッと、力が抜けるようにアリサの体が崩れる。


咄嗟にナイフを捨てて抱きとめたフラスコの腕にかかるのは、ただの少女の重さだ。


アリサをソファに寝かすフラスコは、そっと彼女の髪を撫でる。


クラーレに毛布を頼んだフラスコはアリサの体を調べる。


おもに左腕と右足……黒雲が飛び出した場所だ。


鋭利な刃物で切断されたようだが、包帯も巻かれず失血処置をしたような形跡が無い。


ただ、黒雲が渦巻いている。


忌まわしき黒雲。魔王と呼ばれた秘密結社のボスは、この黒雲を自在に操って襲ってきた。


ある時は幻術、刃物、爆弾、拳、囮、ブースター……ありとあらゆる姿に変わり、フラスコ達を苦しめてきた。

それが何故アリサに?



「毛布持ってきたけど……」



考えすぎていたのか、クラーレに気付かなかったフラスコは軽く礼を言って、アリサに毛布を掛ける。



「お医者さん呼ぶ?」


「医者の範疇じゃない」



最適なのは城住みの退魔学者あたりだろうが、下手にアリサを見せたらバラバラに解剖されてしまいそうだ。



「とりあえず起きるまで待つよ。事情を知らなきゃ、対策も練れない」


「そう……ねえ、本当に仲間のアリサって人なの?」


「……分からん、偽物がアリサの皮を被ってるってことも十分有り得る」


「……」


「けど、俺は本物だと思う。根拠は無いけどな」




早く寝た方が良いと急かされて、ベッドにもぐったクラーレだが、さっきの光景の衝撃は中々消えるものではない。


初めて、殺気を感じた。


恐怖もあったが、それよりも、殺気を全身に漲らせてクラーレを庇うその背に……


こんなに頼りになる殺気なんてあったんだ……


フラスコの、男の部分を感じた初めての夜でもあった。




朝起きると、フラスコは一歩も動かずアリサの傍にいた。



「おはよ、何か進展した?」


「おはよう。何も無い、何も変わらないよ」



アリサは穏やかな寝息を立てている。


それを見つめるフラスコの目は、父か兄のような慈愛を感じるものであり、クラーレの目にはとてもじゃないが色気は感じられなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ