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十四話『王都、到着』

全然思いつかないでござる。

 いつの間に寝ていたんだろうか? 確か……ご飯を食べた後、ソフィーに抱きしめられて……


 そういえば、頭の下が柔らかくて温かいような。


 さわさわ……


「んん……マスター、くすぐったいのですよぅ」


「……ごめん、ソフィーの足だとは思ってなくて」


 そう、膝枕である。

 目を開けると、スカートの中が若干見えてしまった。慌てて上に目を逸らせば、素敵な光景(おっぱい)が映る。


 しかし、近くに三人ほど居るので可及的速やかに起き上がる必要があるのだ。非常に残念。


「……僕、どのくらい寝てた?」


 その質問は、隣に座っていたリアが答える。


「四時間くらいですね。もうすぐ着くと思いますよ?」


「そんなに寝てたんだ……ソフィー、ありがとう。ずっと同じ姿勢で疲れたでしょ?」


「そんなことないのですよー。マスターの可愛い寝顔でぇ時間を忘れていたくらいですからぁ」


「いや、まあ、大丈夫ならいいんだけどね。というか、可愛い……? あ、戻してないんだっけ」


 元の自分をイメージして集中。

 女体化した時とは違い、すぐに変化した。恐らくは、慣れ親しんだ体でイメージが明確なものだったからだろう。


「うん、やっぱりこれが一番」


「……男の子のマスターも、可愛いのですよ〜?」


「ありがとう……って言っていいのかな? それより、頭を撫でられるのは恥ずかしいんだけど……」


 歳の差を考えれば子供扱いされていてもおかしくはない。

 ただ、ソフィーの場合は単純に可愛いと思っているだけで、撫でるのにも照れがある様子。


「……シルクも撫でる」


「え、えと……じゃあ、わたしも」


「……………」


 一体どういう状況なんだろうか。

 リア、シルク、ソフィー、ルーナから撫でられるなんて……恥ずかし過ぎて訳がわからない。


 とりあえず、


「ルーナ、無言で膝の上に乗るのはいいとしても、膝立ちされると痛い訳ですよ」


「あ、ごめ――うっ! お兄ちゃん、硬い……」


「「「え……!?」」」


「はいそこ三人、どこを見ようとしているのかね? ルーナが言ったのは、ステータスのせいで硬いって事だから」


「し、知ってましたよ……?」


「……シルクはそんな勘違いしてないよ」


「る、ルーナちゃんを心配してただけなのですよー?」


「目を逸らしながら言われてもなぁ……」


 ルーナの膝が股間にダイレクトアタックしてきたのは確かだけど、そこまでの痛みになればステータスが防いでくれる。


「さて、むっつりさん達。ここからは歩きだよ」


「そうだよ、むっつりお姉ちゃん達」


「む、むっつりじゃありません! シルクさん、ソフィーさん、そうですよね?」


 ルーナと僕がふざけると、リアが慌てて否定してくる。……だがしかし、ソフィーだけは頷かない。


「ちょ〜っと否定出来ないのですよぅ……」


「え……」


「シルクはむっつりじゃないもん。ご主人様になら、何をされても嬉しいもん」


「そ、そうじゃなくてですね……」


 シルクの返しはスルーしておくとして、むっつり(確定)なソフィー……いや、自分から白状したらむっつりじゃないよね。


 降りてからもちょいちょいふざけつつ歩く。すると、偶に馬車が通る訳だ。当然、僕達が来た方向からも。


「僕が寝てる間に馬車を追い越したりしなかった?」


「した。なんだあの馬車はーとか、どこの貴族だーとか、他にもいろいろ聞こえてきたよ」


「そっか……まあ、中は見えてないだろうし、大丈夫かな。シルク、教えてくれてありがとう」


「じゃあ、なでなでして」


 言われた通りになでなでしてあげると、「わふぅ……」という犬っぽい声を出して喜ぶ。可愛い。


 声の抑揚や表情の変化は人より少ないけど、それは人と話す事に慣れていないだけだと思う。

 その証拠に、驚いたり喜んだりする時は顔に出る。尻尾だって元気よく動くし、あんまり無表情キャラって感じはしない。


 今も、尻尾がパタパタしてて足に当たっていたのだが、突然その動きが止まる。遠目に街が見えてきたからだろう。


「三ヶ月ぶりか……」


 朝までいた街とは比べ物にならないほど大きい。人や馬車が長蛇の列を作り、僕達の番が来るまでに数十分はかかりそうな感じだ。


「お兄ちゃん、来たことあるの?」


「うん、ここで召喚されたからね。とは言っても、城以外ほとんど見てないかな」


「ここで……」


 風に煽られて黒い髪を揺らすルーナ。

 元々は赤い髪だったんだけど、とある理由により髪を染めることにした。理由は後々わかる。


 街に近づいていくと、行列の一番後ろに並ぶ。


「……ご主人様」


「なに?」


「人、多いね」


「ふふ、中に入るともっとすごいんですよ?」


「まあ、そうだね。比較にならない程多いと思うよ。ご飯が美味しいお店も多いんじゃないかな?」


 尻尾が動いてる。シルクは食べるの好きなんだね。

 よく食べる女の子は……割と、見てて楽しい。可愛いから目の保養にもなるし。


 ……食べ過ぎには注意しておこう。


「なんだかぁ〜見られてる気がするのですけどぉ……」


「え? ……ああ、エルフそのものが珍しいみたいだし、ソフィーは美人だからね」


「……なんて言ったのか聞こえなかったのですよぉ〜。もう一度、お願いできますかぁー?」


「エルフが珍しい?」


「それからぁ〜?」


「……ソフィーが美人。あのね、そこだけ言うと凄い恥ずかしいんだけど……?」


「えへへ〜……嬉しかったのでぇ、ついー♪」


 そう言って腕に抱きついてくるソフィー。

 出来ればそれはやめて欲しい。周りから殺気すら感じるから。……ま、これくらいは平気だけどね。


 それからも、僕達の番が来るまでそのまま――リアも抱きついてきて――待っていた。


「もう日暮れだし、急いで宿をとろうか」


 長かったけど、待っているのは大して苦痛じゃない。

 リアみたいな美少女……シルクとソフィーもだけど、そんな子達とイチャイチャしておいてつまらないとか、そんなことを言う奴は死んだ方がいい。


 という訳で、宿へ行こう。

 観光案内所の人にそこまで高過ぎず、かつ防犯がしっかりしている宿を紹介してもらった。


 外観は……


「え、えっと……ここ、高そうじゃないですか……?」


「うん……聞いてた話と違うような……」


 確か、『ピッタリなお値段』と言っていたはずなんだけど……


「……あれ? よく考えたらピッタリなお値段っておかしいよね? 普通はお手頃とか言わない?」


「シルクはよく分かんない……」


「……マスターに、ピッタリという事では〜?」


 ソフィーが意味不明なことを言い始めた。僕は貴族みたいな服装じゃないし、お金持ちっぽい雰囲気もないはず。


「マスタ〜? 私達はぁ、奴隷、なのですよ〜?」


「奴隷……なるほど」


 そういえば、奴隷は高いもんね。一般人が奴隷……しかも、美少女ばっかり連れてる訳ないか。

 ルーナも居るけど、妹とかだと思われたのかな。


「とりあえず、入ってみようか」


 お金に関しては問題ないし。

 その辺の下級貴族よりは持ってるんじゃない?


「いらっしゃいませー!お食事ですか? お泊まりですか?」


「え? あー、泊まりでお願い」


 うん、えっとね……


「あはは、中はショボイなって思ったでしょ? ごめんね、お父さんがバカなの……」


「いや、そんな事ないよ。掃除が行き届いてるし、お客さんも多いみたいだからね」


「えへへ、ありがと! えーっと、お名前は?」


「時雨です。部屋は何処が空いてるのかな?」


 外観とは違って、中は普通の宿屋だった。ただし、全体的に綺麗で、料理のいい匂いもする。

 それと……看板娘が可愛い。


 多分同い歳くらい。

 親しみやすいキャラだし、大人にも人気だろうと思う。ここは、この子が居なくなった時点で潰れると予想。


「シグレさんね。今は四人部屋が三部屋と、三人部屋が一部屋、二人部屋も一部屋空いてるよー! (わくわく)」


 一人部屋は空いてないんだ。使わないけど。

 あと、リア達と僕を見てわくわくしないで欲しいんだけど。いや、リアとはそういう関係なんだけどさ。


 ……ちょっと、周りの人達、なんで黙ってこっち見てるのかな? 気になるんだけど?


「うーん、どうする? 僕とリアでひと――」


「シルクもご主人様と一緒がいい」


「あらー、食い気味に言っちゃいますかぁ〜。なら、私とルーナちゃんは一緒にしますー?」


「私はそれでいいよ。……お兄ちゃんと一緒が良いな……」


「ルーナ、何か言った?」


「な、なんでもないよ!?」


 うん? 何かは言ったんだ?

 まあいいや。僕、リア、シルクで一部屋。ソフィー、ルーナで一部屋……おっと、ナチュラルにシルクが一緒の部屋で寝ることを受け入れてしまった。


 それにしても、ソフィーは頼りになる。ちょっと残念そうにしてるけど、ルーナは一人に出来ないからね。

 かと言って、僕と同じ部屋は嫌だろうし。


 いや、十歳だしそこまで気にしない?


「三人部屋と二人部屋だね……一泊で合計15000アテナになりまーす!」


「15000か……じゃあ、五日分で」


「あ、お風呂もあるけど、15分で500アテナかかるよ。どうするー?」


 お風呂……リアと僕で40分、シルク、ソフィー、ルーナで50分くらい使うかな?

 リアもこれで大丈夫って心話で伝えてきた。


「90分でお願い」


「長いね、お風呂好きかなー? ……合計で、78000アテナです! 明日もお風呂に入りたい時は、私に言ってねー」


 この子である必要はあるんだろうか?

 お風呂を沸かす……いや、お湯は魔道具があるし……会計とかはこの子がやるって事かな?


「……ふふふ……」






 ……この時の僕は、この子の笑みと、周りが黙った事の意味に気付くことが出来なかった。そして、気づいた時にはある意味手遅れなのである。

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