第二話 勇者は死と直面す
どうも、ぽてとです!
大変お待たせしました。第2話です!
前回の反響?はとても驚きました。
レビューにもありましたが(書いて下さった方ありがとうございます!)、星の数ほどある小説の中で第1話のみでこれほどの評価を頂けたのは嬉しい限りでございます…!
これからも頑張って執筆致しますので、どうぞよろしくお願いします!
それではどうぞ!
『ーーーーー緊急連絡。』
『ギルドヘネシス支部 第5転送装置にて異常を感知した模様。』
『原因不明の力により転送装置絶対防御圏は突破されたとの報告が入ったーーー。』
『現場には、既にポリス部隊のメンバーが向かっている。』
『敵勢力の正体及び数は不明。』
『現在、〝王者の三角形〟カーネルが敵勢力と交戦中。』
『各自厳戒態勢に入れ。』
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「プッハ! うん! やっぱこっちのビールは美味い!」
ナナは思いっきりの歓声をあげ、満面の笑みで、ビールを飲み干した。
既に彼女は3杯目で、酒が弱いにも関わらず相変わらず飲み続けている。
既に頬はほんのり赤くなっており、口にビールの泡を付けている姿は青年エイトにとってなんとも妖艶に感じた。
(ナナは美人で俺らを引っ張ってくれる姉御って感じだ······加えて実力も最強クラスとか憧れる要素しかねーな······)
密かにナナを横目で見ながら、エイトも2杯目のビールを飲み干した。
既に僅かだが酔いが回り始めてきているのが分かる。
「······ん? 今揺れなかったか?」
ふとサムが言葉を発した。
僅かにだがこのギルド全体が揺れた気がしたとサムは告げる。
「そう?」
「揺れた······? 地震? やーねえ······」
そもそも相手は酔っ払い3人なので他の者は気づかなかった様だ。
辺りを見渡してみても、どこも酔いが回った若者達が騒ぎ散らしており、揺れに気付く者は1人もいない様子だった。
(地震とは違う何か······この建物だけが揺れているような感覚だったのだが······気のせいか)
「なぁ、フォーメーションってちゃんと組みなおさないといけないのか?」
軽く酔いが回っている状態のエイトは顔を真っ赤にしながらサムに問い掛けた。
先程のパーティーのフォーメーションについて気になったのだろう。
フォーメーションというのは実戦の際パーティーがどのように動くかという予想練習である。
常に未開拓領域に行けば魔物に四方八方から狙われる。
何百、何千という動き方のシュミレーションを行っていなければ即座に魔物の餌食と化してしまう。
魔物には知性はないとされているが、〝狩り〟を行う為の仲間との連携、賢さを持った魔物もいると報告されている。
生半可な気持ちで未開拓領域に足を踏み入れれば二度と帰らぬ人となるのは間違いないだろう。
エイト達パーティーメンバーも結成してから2ヶ月間あらゆるフォーメーションを熟考し、各々の鍛錬も積み上げてきた。
サムも残りのビールを胃に流し込むと彼への答えを告げる。
「エイト、さっきの戦闘を思い出してみろ······俺らが2ヶ月間練りに練ったフォーメーションが一撃で捻り潰されたじゃないか。」
エイトは思わず顔を顰める。
彼の脳裏に蘇る〝竜王の息吹〟。
「まぁ······出来るならもう〝アレ〟は喰らいたくないな······」
「たまたま避けられたからといって決して油断するな。常に魔物は俺達の予想を遥かに上回ってきたで······〝正解〟に留まっている限り、奴らを退ける事など出来ない······」
つまり、魔物を打ち破るには〝最善策〟では到底無理だと言うことをサムは示していた。
「過去の勇者達を思い出してみろ。かつて名声高かった〝メイサ一族の悲劇〟をな。」
「勇者ランクAの女戦士がリーダーだったパーティーの話か? あれ当時話題になったよな······」
「詳細を覚えているか?」
サムはつまんなそうに淡々と話し始める。
過去にメイサという勇者ランクAの女勇者がいた。
彼女は人一倍努力家で、無名の時期から鍛錬を積み、仲間を集め、勇者界でも屈指のパーティーを結成した。
パーティー対抗試合では無敗を記録し、富と名声は勿論、未開拓領域の最深部である〝魔界〟への到達が1番近い存在と噂される程であった。
だが。
彼女らの話題ピークが最高潮の当時、突如として〝ある出発〟を機に消息不明となった。
原因は分からない。
ただ帰って来なくなったのだ。
魔物に殺されてしまったが1番有力な説だが一部ではこう囁かれている。
〝強さ故の傲慢さが目立った〟
いつしか彼女らはその圧倒的強さ故に、未開拓領域を侮り、大口を叩くようになったのだ。
メディアに対し魔物を軽視する主張を続け、〝誰でも勇者になれる時代〟と安易な若者達の勇者勧誘を喚起した。
その結果、生半可な気持ちで未開拓領域へ足を踏み入る若者が続出。
その者達は皆、帰らぬ人となった。
そこからメイサ達パーティーの好感度は滝下がりを起こし、〝メイサ一族の悲劇〟と呼ばれるようになったのだった。
「ああ、思い出した······2年前くらいだったな」
「そうだ。俺はそうなりたくないからな。ダメなら何度でもフォーメーションを組み直す、それが俺らの仕事だ。」
「だな······!じゃあ、もう一度皆の役割を明確化しておかないか?」
「ではもう1回説明しようかーーー」
「サム、よろしく!」
酔いも回り始め、サムは若干気持ち良さそうに話し始めた。
「パーティーには4つの役割がある。まぁパーティーによって十人十色だから一概に言えんが······」
「あくまで基本ってことね」
「そうだな。例えて言うなら、俺らはトランプで表すことができるな」
「トランプ?」
「あぁ」
トランプは誰もが知っているダイヤ、ハート、クローバー、スペードを使うカードゲームの事だ。
果たしてそれがどうパーティーに影響するのだろうか、とエイトは顔を顰めた。
これが勇者レベル格差社会の実態であるとも知らずに。
「例えば、俺は"スペード"。主な役割は味方の盾及び一番最前線で矛を振るう者だな。相手に致命的ダメージを与えるフィニッシャー、まぁこれがスペードの役割だ。」
「なるほどね」
とは言ったものの、エイトはサムの役割を改めて知り心の中で敬意を表す。
「カンナは"ハート"。呪文の使い手に該当するな。主に遠距離タイプで味方の回復や補助を行うサポート役に当たる。この職業がいなければまず戦闘は不可能と断言出来るな。」
〝待ってました!〟言わんばかりに颯爽と反応するカンナ。
その顔はとても嬉しそうで、彼女もまた頬が赤くなっている。
「そんなスペシャリストだなんて、サムも分かってんじゃ~ん!」
サムは少し引き気味になるが。
「お、おう。スペシャリストとは言ってないがな···だが、カンナは攻撃呪文も唱える事が出来るからな。これは極めて異例なケースだ。」
「え、どうして?」
「カンナは〝魔法使い〟だからさ。攻撃呪文は専門外の職業なんだが······」
「攻撃呪文を唱える事が出来る職業は?」
「〝賢者〟か〝僧侶〟だな。」
「なるほど······同じハートでも様々なタイプがあるということか······」
エイトに対し自慢げな表情を浮かべるカンナを横目にサムは続きを話す。
「ナナは"クローバー"。カンナ同様軽めの補助を行いながら、前線で敵と対峙し続けなければならない、要はチームの司令塔ポジションだ。戦場の全体を把握し器用に動かなければならない。なかなか難しい役割だ。」
「へぇ、流石はナナだな」
素直に言葉が出るエイトだったが、ナナは嬉しそうな表情を浮かべた。
「褒めても何も出ないぞ~?」
それにむすくれるカンナはあえて触れない。
「そういえばナナは"魔法兵士"だっけ?職業の名前······」
「そうよ。よく知ってるじゃん!」
ほぼ無理やり頭をわしゃわしゃと撫でられるが、エイトは拒んだ。
「サムは"戦士"。カンナは"魔法使い"、ナナは〝魔法兵士〟······」
また新たにビールを四つ注文するナナを傍らに、エイトは考え込む。
「ーーーーーなぁ、俺は?」
素朴な疑問。
ここで一つ思い浮かぶ疑問。
それをエイトは問う。
「俺はじゃあ······余りの"ダイヤ"?ダイヤってどんなポジションなの?」
「うーむ······いや、エイトは"ダイヤ"という事になるが······正確には〝ダイヤ〟ではない。」
「え?そうなの?」
「あぁ、"ダイヤ"の主な役割は"囮 特攻"。敵の囮となり視線を引き付け、隙を生じさせるポジションだ。まぁ常に第一前線で敵と対峙し続けなければいけない······どうだ?」
「確かになんか違うな······」
青年は即答だった。
こればっかりは譲れない。
「確かに······俺は前回の戦闘で敵の囮役になったけど危うく死にかけたし······そもそも呪文1つ唱えられないし、敵と対峙する技もない···」
誰にも見られない机の下でエイトは拳を握り締めた。
彼は自分で言っておいて、自分に腹が立って仕方がない。
今回の未開拓領域遠征で痛い程〝己の無力さ〟を痛感したからだ。
(こんなもんなのかよ······俺は······)
(なんで俺はこんなに弱いんだ······)
(なんで俺は足でまといなんだ······)
奥歯を噛み砕く。
まるでパーティーの助けにもならない自分を痛めつけるかのように。
「お前はアレだ、"ジョーカー"。」
突如サムは言葉を発した。
「へ?」
彼は思わず聞き返してしまう。
「あの······なんですかジョーカーって」
「知らねーか? ババだよババ。」
「えーと······つまりどういうこと?」
サムは何故か得意げに。
「要は、決まった役割がないってことだ。無茶苦茶ってとこかな。」
ジョーカーって大富豪でいうチートみたいな奴だろうか?と考える。
何を出しても、どれだけ強力なカードを出しても、その上を上回る力を持つ。
だが、それは諸刃の剣だ。
ジョーカーも破ろうと思えば破れてしまう。
限りなく最強で、限りなく最弱。
それが、ジョーカー。
「いや、待て。俺ってそんな強くないぞ?」
「いや、強いよ」
「なんで?」
「そのうち分かるだろ。俺もまだ〝確証〟を得てないんでな···」
「まさか〝竜王の息吹〟を避けたからって回避技スキルがあるね君~とか言うんじゃねーだろうな······」
エイトは軽くビールを飲みながら笑い飛ばそうとした時だった。
サムは何故か下を向きながら。
「エイト、お前本当に竜王の息吹を避けたのか?」
「ど、どういうことだよ?」
いつになく真剣な眼差しで彼をを見つめる。
まるで自分が何か罪でも犯したような気分だ。
だが、その視線は獲物を追い詰めるような抉りとる視線。
「それはーーーーー」
「みなさーん! 落ち着いてください!」
なんということであろうか。
シリアス的空気をぶち壊すかのようにある男が大声をあげ始めた。
「ん?なにあれ?」
「周りがうるさすぎて聞こえないな······」
「ちょっと近く行ってみる?」
ナナ達がそんなことを話す中で、一人俯くエイト。
俺は勇者として人々の助けになりたい、たったそれだけなのに。
いつからか勇者はレベル分けされ、低ランク者は見下される社会に成り変わってしまった。
本来勇者というのは、強さではなく、気持ちを指すのではないか?
強きを挫き、弱きを助ける。
これが本来の本質であり、強さは関係ないはずなのに。
だが、気持ちだけでは人は護れない。
気持ちだけでは強くなれない。
それが現実だった。
何処にもぶつける事の出来ぬ、心の裏の部分にベットリ蔓延る黒い何かが気持ち悪い。
「ん、地震か?」
そんな中、再び微かな揺れに反応するサム。
(やはり揺れている······?)
身体で違和感を感じ、グラスの中にあるビールが揺れたいるのを目にしたその瞬間であった。
刹那。
まるで殴られたような、身体が強引に強制移動したかのような衝撃がギルド内にいた全員に襲い掛かった。
動いている車から降りたような。
どうしようもない、逆らいようもない衝撃。
あらゆる場所から悲鳴やグラスや食器が割れる音が響き渡った。
エイトは衝撃に耐えられる筈もなく、まるで紙のように吹き飛んだ。
地に叩き付けられ、その際に落ちていたガラス片で頬を切る。
揺れの衝撃が襲い掛かる故に、痛みをあげる声を出すことすら不可能だった。
「今の揺れはなんだ!?」
「エイト、大丈夫っ!?」
「あぁ······頬を少し切ったくらいだ!」
「良かった······それにしても何!?」
「それより何か臭わないか······?」
轟音に紛れながらも、エイトはその声を聞き、無意識に嗅覚を研ぎ澄ます。
「何か臭うって······―――――!」
誰もが何か拒絶する臭い。
思わず嘔吐感を感じずにはいられないあの臭いだ。
「―――――血?」
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カーネルとカムイ。
光と闇。
善と悪。
神と悪魔。
対極とも取れる2人が相見えた。
それが何を意味するか。
わざわざ説明する必要も無い。
場に流れる異常な空気。
巨大な力の地鳴りにも関わらずカーネルは静かだった。
だが、それは呆気にとられているからだ。
カーネルはかつてそれに似たものを感じた事がある。
それは魔物に殺されかかった時。
若手の頃、追いに追い詰められ、死を意識した時。
五感以外の何かがソレを本能的に拒絶していた。
ソレをカーネルはなんと形容すればいいのか分からなかった。
思わず言葉を失ってしまう。
間違いなく厄介な「何か」をしてくるのだが身体が動くことを躊躇っていた。
まずカムイの手の平。
彼はまずカムイの突き出した掌に注目する。
漆黒。
ただ真っ黒の得体の知れぬオーラのようなものが四方八方に散り始めた。
まるで生き物のように蠢くソレは自らの標的を意識してるようだ。
(なッーーー。なんだ······これは······!)
カーネルは動かない。
否。
動けない。
まずこの時点で、カーネルが知る全ての呪文リストから外れていたからだ。
普通の勇者がそれを言っているのではない。
世界で3人しか存在しない〝最高勇者ランクS〟の彼がそれを知らないというのだ。
加えて、彼はただランクが高いわけでない。
魔法兵士の上位互換である〝魔法戦士〟、つまり戦闘や、呪文の達人のカーネルでさえ知らぬ未知の呪文。
それらはカーネルも理解している。
故に動けない。
未知なるモノの対処法が分からず動けないのだ。
カムイが呪文を唱えて、ここまでで僅か1秒も満たない。
瞬間。
目にも止まらぬ速さで黒い「何か」がカーネルを捉えた。
1秒にも満たない速さでカーネルはソレを見る。
手。
漆黒色の手だ。
長い爪を生やし、獲物の首を狩ろうとする手。
ソレはカーネルの首目掛けて一直進に進む。
「視えた―――――ッ!!」
カーネルは極限に身体を捻り、まるでバク転でもするのかと言わんばかりに上半身を反らす。
あまりにも咄嗟の行動だった為、着地のことは考えていないのだろう。
地面に倒れこむように、〝手〟を回避した。
〝手〟は壁に激突するとシューいう音と共に黒い煙をあげながら消滅する。
「すごーい!」
それら一連の行動をカムイは物珍しそうに眺め感嘆した。
まるで映画を見る子供のような目でカーネルを見つめる。
「へぇ~コレを避けたのは君が初めてだ」
横たわっているカーネルに向け笑顔で拍手を贈る。
「いきなり物騒なもん出すんじゃないよ···」
地に膝をつきゆっくりと立ち上がるカーネル。
彼の瞳から余裕の表情などなく、得体の知れぬ存在に怯えているようにも見えた。
再び向かい合う2人。
「流石はS、目では見えなくても、攻撃を避けたのか―――。」
「君···ふざけてるなよ······攻撃ではないだろうソレは···」
「ちゃんとした攻撃さ。まぁ攻撃したのは俺じゃないけどね~」
「は?」
「コイツには〝意思〟があるんだ。凄いだろう
?知性を持つ呪文だ!勇者もビックリ!」
「そんなモノには興味はないよ······ただ······」
カーネルは冷や汗を垂らしながら。
「"暗黒呪文"ってなんだいーーー?」
要はさっきの〝手〟だ。
黒い正体不明の〝手〟。
その呪文の名前はーーーーー。
「そうか、知らんのか。そりゃ確かに"こっち側"に来るのは久しぶりだからね、知らなくても当然か。」
カーネルは何も返さない。
ただ返答を待つのみ。
「呪文の究極態―――、呪文を極めたモノ······まぁ禁断の術と言ったところか」
「······あ?」
彼はカムイの言っている意味が分からない。
否。
理解が出来ない。
「分からない? さっき呪文は〝死の呪文〟だよ。その呪文の片隅にでも触れれば、それは絶命するってやつ。」
『呪文』。
呪文というのは、この世界で人間に与えられた特殊能力を引き出したものだ。
確かに古来は魔物が使用していたところをキッカケに人間にも派生したと聞く。
だが、それらに〝絶命させる〟という効果の呪文は1つもない。
否。
あってはならない。
当然存在すれば勇者界最高管轄部であるギルドが廃止している。
そんなモノはあってはならないからだ。
恐らくカムイの言っている事は真実ではないと悟る。
だが、もし真実だとしたらーーーー?
もう既に彼はカーネルが知っている彼ではなかったら?
「······何を言っているのかサッパリ分からないなが······要するに······俺がさっきのに触れていたら死んでいたとでも言いたいのか?」
「そうだよ?」
あっけなく。
当たり前のように。
まるで1+1=2と答えるように。
ただソレは発言を肯定していく。
「あり得ない······信じられない。そんな呪文があればとっくにギルドが廃止してるはずだしね。君はハッタリを言えば俺を
「ふーん、君なら気付いてると思ったけど。」
強引にカーネルの言葉を遮り、どこか遠くを見つめるように彼は続けた。
「如何に······この社会の中枢が腐敗しているか―――――、君なら分かるだろ?」
ただ無音がこの場を支配する。
それが何を意味するのかは当人しか分からない。
恐らく2人の関係性も。
カーネルは服についた汚れを気にしながら。
ただ告げた。
「ーーーーーーあぁ。」
蠢く闇の匂いーーーーー。




