第7隻目 試験艦建造開始!
ここ2,3日で評価ポイントが急増しており驚いております……。
マイペースに更新していきますので、お付き合いいただければ幸いです。
試験艦としての基本設計が完了したことが参謀本部に齎される。
諸元、性能は現在の地球帝国が持つ技術の粋を結集したものであると同時に、本艦が建造され、竣工されると同時に地球帝国軍の全ての艦艇が一気に旧式化するのが目に見えていた。それでも参謀本部主導で建造が推進された。
可及的速やかに建造を開始するために、帝国宇宙軍参謀本部の全ての予備費、更に同総司令本部の3分の1の予備費が宛てらた。その費用は8,170,806,820アース。オガタの前世時代の日本円に換算して約8200憶円相当という超大な建造費となった。ただし、その予算内訳としては超大型建造ドック建造費で2,110万アース(約210憶円)、艦艇建造用自律思考型ロボットプラント建造費・生産費12億アース(約1,200億円)、建造資材費30億アース(3000憶円)。残りが人件費や研究開発費である。
この巨額の拠出にあたって軍内でも反対意見も多数出たのは、正常な反応であっただろう。だが、帝国宇宙軍総司令長官と参謀本部長両名の直筆署名が入った命令書で黙ったあたり、軍の規律が遵守されているようだった。こうして軍内で話が纏まった。
しかしながら、予備費と言えどこれほどまでに多額の金を動かす以上、帝国議会による承認が必要となった。そこでは軍内以上の大きな反発が予想されたのは誰しもが予想していた。
議会は愚衆政治の極みとなり、現在目の前に迫る地球史上最大級危機を、対岸の火事どころか、煙すら立っていないと認識する政治家が多数派が占めていたからだ。しかしながら帝国議会の中道派層や保守派層への政争における実弾でもって取り込むことに成功したことにより、比較的スムーズにことが運んだのだった。
この根回しは地球帝国中央情報局によるものだった。情報局は事態を正確に把握しており、表向きこそ帝国宇宙軍と犬猿の仲であるが、裏では蜜月の関係にあったからこそ行えた連携だった。
また、この試作艦は後の来るべき艦隊型戦艦のベースとなることが前提となっている。ただの試作艦というわけではなく、先進技術実証先行建造試作艦という側面が非常に強い。
予算が付く前から、帝国宇宙軍技術開発局第2研究室名目でドック建設費と艦艇建造用自律思考型ロボット関連の予算が計上されており、それらは既に動き出していた。それらを補填するために参謀本部予備費が宛がわれたわけであった。
ロボットの量産体制に入ったのは基礎設計完了から2週間後。上記の予算に関する議会承認を得たのはそれから2週間後であった。
その後、諸般の諸々の手続きや、物資の調達が開始されたのは更に2週間後であった。
「どうにか本日、試験艦の建造が開始された。これから細部設計に入るわけだが、その前に一旦の結節を迎える。明日からも鋭意努力してほしい。堅苦しいのはこれくらいで……乾杯!」
「「「「「「「かんぱ~い!!!」」」」」」
なみなみとジョッキに黄金に輝く発泡液を口内に流し込んでいく。起源を辿れば紀元前4000年ころまで遡れるビールは、それから7000年近く未来の人々にも愛飲されている。
当時に比べて、ホップが加えられたり、様々なフレーバービールも誕生していることから、全くの別物であるという認識を持つ者も少なくない。
その中にはオガタも含まれている。彼の知るビールはもっと苦くて清涼で、のど越しが爽やかなラガービールやピルスナービールだが、彼が口を付けたそれは、やはり、それらとはまったく異なる風味のビールだった。しかしながら場の雰囲気に合わせて、彼もまた杯を一気に傾け口内から胃袋へと流し込んだ。
「飲み食いしながら聞いてくれ。とりあえず江計画は次の段階に進む。内部設計は建造の進捗を見ながら決定していくつもりだ。皆の助けがあってここまでこれた。これほどまでに早い建造開始は諸君らの奮起の賜物だ。胸を張ってほしい。特に、エミュレータ部門!」
「は、はひぃ!!」
エミュレータ部門を束ねるフラム・セン・ティラ技術少尉は口いっぱいに頬張ったエビの素焼きをかみ砕きつつ返事した。三十路の女性の色気が普段漂う彼女には隠れたファンも多い。だが、この瞬間において、一欠片もそれを見つけることができないほど残念だった。周囲の男性陣が若干ながらも幻滅したのは致し方もないかも知れない。
余談だが彼女の出身はカンボジア王制州で、カンボジアの風習にならい皆、ニックネームでサクラ(桜)と呼んでいる。
「エミュレータのお陰で実験や設計が多いに進捗した。これは貴官等の働きがとても素晴らしいものだった。今後もますますの活躍を期待する」
「ありがとう (ごきゅ) ございます!」
嚥下する音を混ぜての返事に宴会場は笑いに包まれる。
アットホームでいつも笑いの絶えない職場。と書けば、多くの人が「なにそのブラック企業?」と思うかもしれないが、この場においては文字通りの素晴らしき職場環境であることを証明していた。
最上位者であるオガタを含め、末端まで技術屋で固められた職場では、若干ながら軍の規律よりも緩いというのもあるかもしれないが、この雰囲気そのものはオガタ自身が持つ気質により成り立っている。そのことを当の本人は全く知っていなかったが、彼の下で働く者全員がそのことをよく理解していた。
「もちろん、他の部署も頑張ってくれている。エミュレータに負けないよう、各部署、頑張ってほしい!」
「「「「「「「「了解!!!」」」」」」
実に楽しい雰囲気で皆が飲み食いしている中、オガタは席に着き両脇に座る二名の女性に気付く。
(あれ? さっきまでここはアイやセットだったはずだけど……)
最も末端である2名の若手。二名ともラオス州出身の男性だ。彼らもニックネーム文化が根強い地域の出身である。
この2名は、いつの間にかオガタの正面の席に座って、二人揃って3杯目のビールジョッキを傾けていた。
「中佐。今日は、前みたいな真似はしないよう、注意して飲みやすぜ」
「あらあらサイジョウ大尉は酒癖が悪いようですね。中佐はウィスキーがお好きでしたわね? 淹れて差し上げますわ」
「ミッシェル中尉。中佐は、二杯目にスダチ酎をいかれるのですぜ? しらなかった?」
両手に華の状況でありながら、オガタは困惑を禁じ得ない。
一体いつの間に両脇を固められたのか?とか、もしかしてやっと春が!とか思わないわけではなかったが、それよりも個人的には早々にノンアルコールに切り替えたいというのが本音だったのだ。
だが、眼前にはウィスキーとスダチ酎の2杯の酒。
呑まないわけにはいかない。
(毒を食らわば皿まで……)
覚悟して、両手にグラスを持ち、同時に口へと傾ける。
それを一気に嚥下し、臓腑に流し込んでいく。
「よ! 言い呑みっぷり!」
「中佐ぁの、かっこいいとこ、見てみたい!」
茶々を入れるのは若手のアイとセット。
そんなことをお構いなしに一気に飲み切り「ふぅっ」と一息つくと同時に、「ウーロン茶ください!」と、店員に大声でオーダーを通す。
「お前ら。俺はあまり酒が飲めない。すまないがノンアルコールで付き合わせてもらう」
そう宣言するとドンと座る。その様子を左右の美女2名は同時に同じことを考えた。
((このまま持ち帰るつもりだったのに!))
送り狼2匹は狩りの失敗を互いに認識した。
そしてアイコンタクトでアイとセットに「ウォッカ!」「テキーラ!」と思念を送る。
「アイとセット。君たちは酒の飲み方がわからないようだから、今日はノンアルにしないか?」
「はい…」
「わかりました…」
目が座った上に笑っていないオガタの笑顔により、二つの華の計画は沈黙を余儀なくされた。
オガタは立ち上がり手を打って耳目を集める。
「水を差すようで悪いがアルコールハラスメントやセクシャルハラスメントなどは、軍法会議ものである。宗教上や体質的に飲めない者も多いため、節度ある飲酒を頼む。尤も、私の部下にそのようなものは居ないと信奉しているが、念のためだ。楽しくやってくれ」
この言葉により計画は完全に頓挫したわけだが、それならばと料理の取分けや、空いた皿を片付けたりと地道な点数稼ぎに作戦変更した二名だった。
残念ながら、翌日の勤務時に両名とも呼び出されて「今後、変に気を使わないように。君たちのようなうら若い女性にあぁもされたら、逆に気を使うからな」と釘を刺された。
ただし、オガタの本心としては全く逆だった。
とうとう、俺にも春が来たのか……とてつもない春風。というか嵐みたいな春風だけどな……
彼は感慨に浸りつつ、細部設計を詰めていくことになったのだった。
私の職場には実際にカンボジアの人や、ラオスの人がいます。技能実習生ってやつです。
全員ではないでしょうがカンボジアの人は海老が大好物です。焼き肉に行くと、海老ばかり頼みます・・・(マジです
ラオスの人はよく酒(特にビール)を飲みます・・・すごい量です。休みの日に1人で一箱(24本)空けます。おかしいですね……
そういった外国の人のリアルさを表現してみました。