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第54隻目 大型輸送・採取船母艦!

すみません。いいストーリー展開が思いつかず、少々どころか雑にこの教育編は〆ます……。

設計学の後に小休止を挟み素材学へと講義をシフトしていった。

だがそこに落とし穴があった。


「宇宙船を構成する材質には主にチタン超合金、炭化タングステン合金、超硬化スチール、カーボンファイバー……そして最近の主流はエクセリニウ合金。これらを単一、もしくは複数種類を組み合わせて作り出すんだよ。各材質の特徴として、チタン超合金は軽量かつ耐衝撃性にも優れていて腐食にも強いね。だけどね、材料であるチタンは現在においても採取できる量が少なく、非常に高価。それに加え生産性も低いね。次に炭化タングステン合金は比重が重い。それに耐熱、耐衝撃、耐腐食性……どれにおいても非常に優れている。だがねタングステンは先に言ったように比重が重い。そのため装甲全体を炭化タングステン合金でまかなうと、船が重すぎて近年増えている微重力宇宙港での運用に支障がでているという報告がある。そして超硬化スチール……」


マクラーレンの大学の教授先生が教えるような滔々とな話し方は、まさに子守唄となる。

睡魔を誘発する話し方というのは大昔に理論的に証明されている。

抑揚のない、話にメリハリがない、ダラダラと話す……これらは脳の働きを鈍くし、そして睡眠へと誘う。

例をあげれば海辺で聞こえてくる波打ち音。

一定のリズムで聞こえてくる音というのは、人間の脳を極度のリラックス状態にしてしまう効果がある。

さらに問題であったのはこの第三設計室の空調設備が著しく老朽化していたことだ。

換気性能の低下により、この部屋のCo2濃度は2100ppmという数値になっていた。これは意識障害(いわゆる居眠り)を引き起こすには十分だった。

もともと設計室とは名ばかりの倉庫だったのを、マクラーレンが勝手に研究室代わりに使用していただけなのだ。

そんな部屋に被教育者7名、指導者2名とオガタの護衛で7名の人間がこの部屋にいるわけで、かれこれ数時間籠りっぱなしなのだ。二酸化炭素濃度が上昇し、マクラーレンの話し方はまさに眠気を催すのに止めを刺すのに十分な環境条件が整っていたのだ。

この状態で船を漕がずにいるのはわずかに3名。

ボリス、ズヴェーレバ、リュウであった。


「えーそれでだね、近年はエクセリニウム合金という新合金で置き換えるのが進んでおって……」


「マクラーレン少佐。少々休憩を挟みましょう」


「ん?今からいいところなんだけどね」


どうにかマクラーレンの子守唄を中断することに成功し、30分間の長休止となった。

大きく柏手を打って眠れる子らを起こし、休憩の旨を伝えるとオガタも外に出て煙草を吸うことにした。


外といっても喫煙所もないので、換気ダクトの近くでちまちまと吸うだけである。

手前で携帯灰皿片手に吸う横で、一人の男がやってきた。


「准将。自分も一本よろしいでしょうか?」


「イワノフ君だったかな? 君もやる口かな」


「ここ数日、買いに行く暇もなかったもので」


無口かつ寡黙だったイワノフだが、どうやらタバコの匂いに誘われてきたようだった。

オガタは無言で一本を差し出す。彼はありがたそうに受けとり、咥えて、そこでライターがないことに気づいた。


「すみません。ライターをお借りしても」


「あぁ」


ライターで火をつけてやると、ボリスは心底旨そうに肺腑に煙を充填させていく。

彼は黙々と紫煙を燻らせ、口からモクモクと煙を吐き出した。


「実にうまいタバコです」


「手製でな」


手短にいうと後ろからくる気配に気づきオガタが振り返る。

だが、そこには誰もいなかった。


「……気のせいか」


オガタはそういうとまたタバコを燻らせたのだった。








それから1時間の講義の後、昼食を挟み、また講義となった。

講義は1時間ごとに小休止が設けられた。


講義も順調に進む中、宇宙資源開発公社から細かい仕様要求書が届けられた。

それから数日が経ち、設計段階に入ったのであった。


イワノフ、チセケディ、ズヴェーレヴァが採取船母艦の設計を。リュウ、ハインケル、天羽が採取船の設計を行う。ラサールは両組の連絡係となった。

この人選はくじ引きによって決まった。

母艦設計組は問題ないのだが、採取船設計組はいささか問題があった。

リュウとハインケル、この二人の仲が絶妙に悪いのだ。それを天羽が取りなそうとするのだが、火に油を注ぐ結果となり、悪化するというスパイラルに陥っていた。


「如何ともしがたいな。採取船組は」


「オガタ君もそう思うかね。私も思う」


マクラーレンも彼らが設計する様子を見ながらため息をこぼす。

ついでにオガタもため息をこぼした。


「これは採取船の方は絶望的かもしれないな」


「いやそうでもありませんよ。なに、仕込んでありますので」


「……君も染まったね」


「染まりましたか」


いい年した男二人はそういいつつ、事の成り行きに任せていた。

いつの間にか彼らも争うことを止めていた。


「どういうことだ? 彼ら、設計に没頭し始めたぞ」


「いったでしょ。アプリケーションにしていると。彼らみたいにゲーム世代にとって、最高ですよ。マインクラフトみたいですから」


「まいんくら……? なんだねそれは?」


「いえ、なんでもありません。ともかく、没頭するのは当然ですよ」


(いかんいかん。ぼろが出るところだった)


人知れず冷や汗を垂らし、オガタは彼らを見る。


「で、両者の連携役をラサールがうまいことやってくれている。彼の勤勉さに助けられているよ」


かくして設計は進められていく。

短期間の教育であるが彼らを有精卵からヒヨコにする程度には役に立ったことは、数年後、宇宙資源開発公社から資源採取船母艦、および採取船が高く評価されたことから間違いなかった。

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