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第40隻目 「軍隊蟻駆除」作戦、実行せよ!

攻撃は最大の防御なり!

だが、先制攻撃をしたものには必敗の法則が作動したり、しなかったり……

ワープアウトと同時に作戦予定宙域の20au手前にワープアウトした。

だが、その20au先の宙域にはおびただしい数の艦艇がいることをレーダースクリーンが示す。


「作戦予定宙域のレーダー情報は、アリが9に宇宙1!アリが9に宇宙1!!」


「これが奴らか……なるほど。移動が遅かったのはそういうことか」


ペルセウス腕外縁部宙域には双子赤色巨星により広大なバビタブルゾーンが広がっている。この宙域はまだ公共入植は始まっていないが、それでも入植準備段階としてテラフォーミング作業にあたる人々が入植している。

その宙域はいまや空いている空間全てが謎の大艦隊の艦艇や作業ロボットなどにより埋め尽くされている。

余にも膨大。余りにも隔絶した技術差。余りにも強大。

それがこの艦隊だ。それを理解するのに、時間はかからない。

一つの惑星は既に中心核を残すだけとなり、複数の惑星もその大地であるはずの大部分が消失。そして、本来ならばこの宙域を煌々と照らすはずの双子型赤色巨星の片方は、既に白色矮星と変質していた。

そして残った片方は、その大部分の表面に奇怪な覆いが為され、それは複数の巨大な管を通じて一つの星に繋がっていた。


「人工惑星のエネルギー源が恒星からのエネルギーを奪い取ることか。これは化物だな」


「じゅ、准将。これは、どういうことなのでありましょうか?」


「わからんか。天羽候補生。ならば説いてやろう。こいつらはな、進路上にある星を餌として取り込む()()()()()()そのものだってことだ」


「宇宙の、軍隊蟻……」


「だからこそ、さっさと駆除する。全地球艦隊に通達。これよりアマテラスシステムを起動し、全艦艇情報共有相互戦闘プログラムを開始する」


懐から取り出された鍵を鍵穴に差し込む。サイジョウも鍵を取り出すと、もう一つの鍵穴に差し込んだ。


「「3、2、1、今!」」


掛け声を合わせて回された鍵は、エクセリオン級の全戦闘能力を全力発揮可能にする魔法の鍵。

さりとてこの数の暴力はいかんともしがたいのは事実である。

その数はレーダー情報を精査すれば約100万隻にも及ぶ超大艦隊。想定の5倍という数は、まさに数の暴力である。


「本艦はマイクロウェーブ砲のエネルギー充填を開始せよ」


「マイクロウェーブ砲エネルギー充填開始!」


そしてその謎の大艦隊の一部戦力はオガタたち超連合艦隊を感知して、進路を転換し突撃を開始した。

その一部戦力だけでも20万であった。


「全水雷戦隊、核融合弾頭ミサイル発射用意!」


「全水雷戦隊、核融合弾頭ミサイル発射用意!」


命令が下達され叩かれるコンソールにより攻撃情報が艦隊内に共有される。

補助艦隊である水雷戦隊をアマテラスシステムの支配下に置くことで、さらにその攻撃能力は向上する。

各個射撃では重複目標へ着弾し、10万発のミサイルの一部が無駄になってしまう。

さらには個艦ごとの発射では、発射タイミングや弾着タイミングがずれ隙間が生じてしまう。そうなればその熱量はさらに無駄となるのは必然であった。

故にアマテラスを起動し全艦艇の指揮システムを統合することで同時弾着などの攻撃を容易く行えるようになるわけだ。


「並行してジャミング、クラッキング開始。やつらの艦艇の指揮装置は既に解析済みだろ」


「当然ですわ。なんならやつらの指揮権を奪って差し上げましてよ」


ミッシェルが高笑いをしながら高速でタイピング。さらには電脳化されたその脳を81式量子演算機に直結し、情報戦を開始した。

これは他の艦艇でも行われ次第に突撃してくる謎の大艦隊20万隻の足が遅くなり始める。


「核融合弾頭ミサイル、発射!」


「核融合弾頭ミサイル、発射!」


地球帝国宇宙軍補助艦隊である水雷戦隊による核融合爆弾の飽和同時着発攻撃を開始した。

10万発ものミサイルは次々とミサイルサイロから噴煙を上げながら打ち上がり、20万隻もの大艦隊に突撃していく。

亜光速、光速、そして超光速。

瞬く間に速度を上げ目標へと、着発した。


音が通じない宇宙。だが、その衝撃波はすぐさま超連合艦隊にまで伝播し、最低でも1㎞もの艦を大きく揺さぶっていく。

エクセリオンも例外ではなく、それは激しく揺れた。


「全各国艦隊に通達! レーダーが晴れ次第、各個戦闘を実施せよ!」


オガタの指示により、銀河間連合各国艦隊やアンドロメダ銀河艦隊は行動を開始した。

それは地球帝国即応艦隊も例外ではなく、全てのカタパルトが開放・展開され次々とゲイ・ボルグが出撃していった。

そんな中でとある格納庫より緊急連絡が入った。


「准将。第7ハッチでトラブル発生! さきほどの衝撃波で開閉機能が故障! 特別機を出撃できません!」


「ハッチの修理を実施。ハッチが直るまでに全弾薬と全武装を再チェックさせろ!」


「了解!」


10万発もの核融合爆弾の威力や凄まじく、いまだにレーダースクリーンはノイズ情報しか示さない。


「補助艦隊に通達。撤退を開始せよ。貴官らの任務は完了した」


『こちら補助艦隊司令。命令を受領した。ご武運を』


補助艦隊が転舵する。

このまま帰れば、補助艦隊は祖国にて有用な兵器であることを証明する証左となり、コストパフォーマンスに優れた艦艇として重宝されるだろう。弾頭だった、核融合よりも遥かに強力なものも、既に基本部分の開発に成功している。こうなれば、大艦巨砲主義の時代は終わり、小艦多数主義に回帰するのは必然だった。

オガタとしては一抹の寂しさがあったものの己の理想で軍を疲弊させ、他国に付け入る隙となりかねない大艦巨砲主義を捨てるきっかけとなる。


「!? 着発地域より高エネルギー反応を感知!」


「な……」


オガタが言葉を発するよりも先に、それは通り抜けていった。


「補助艦隊に着弾……いまでの1000隻ほどが轟沈しました」


「そ、そんな馬鹿な」


馬鹿な。と言ったオガタだが、次の瞬間には言葉を完全に失うことになった。

着発地域の中心温度は1憶2000℃という高温である。そんな中を悠然と突き出てくる数千隻の艦艇。


「……!?」


「全長6㎞。戦艦クラスですね」


MOTKOだけはそれを明確に言葉にした。

こんな時、知性と感情の生き物であれば、この信じがたい現実を直視できずに黙してしまう。だが、知性と疑似人格でできたロボットだからこそ、状況を正確に報告できた。


「やはり、大艦には大艦であたるしかないか……全艦隊、攻撃を開始せよ!」


下達された命令により、エクセリオンは増速する。

配下艦隊も速度を増し、亜光速、そして光速へと至る。


「重力制御を厳とし、本艦隊は一つの攻城兵器となる。事象変動フィールドを攻撃転化! マイクロウェーブ砲発射用意! シップデサント開始!」


一撃必殺となるか、オガタの得意先方に呼応してゲイ・ボルグはシップデサントの態勢を取る。

猛然と正面固定式レーザーを照射しつつ、エクセリオンにはいくつかの弾痕が穿たれていく。

事象変動フィールドを攻撃転化しているために防御面で大きな不足が生じたからだ。

他のエクセリオンでも敵の主砲による攻撃は防ぎきれずに、その装甲に傷跡を残している。

弾痕が穿たれていくのはなにも地球帝国即応艦隊だけではないが、各国艦隊の損害は馬鹿にならないほどだ。

既にブリヂット艦隊やオリンポス艦隊は戦力の3割が消失。ラーゼンバーグ連邦艦隊も2割近く損耗している。

アイレンバーゼンや大マゼラン共和国艦隊も、その巨艦でも既に戦艦クラスも撃沈され始めていた。

唯一変わらぬ威容を誇っているように見えるアンドロメダ銀河帝国艦隊も、数が多いからこそわかりにくいが数百隻を損耗していた。

そう考えれば、いまだに1隻たりとも沈められていない地球帝国即応艦隊のエクセリオンがいかに堅牢堅固たるかよくわかるものだ。しかし、距離が詰まれば穴が穿たれる数はますます増えていく。そんな中でオガタは脳通にてサイジョウに命令を下していた。


(アダムとイブを敵人工惑星へワープさせ、全力起爆させよ)


(……了解。2隻を……とします)


サイジョウは2隻をリモートコントロールして、ワープ準備を進めていた。


「Ζ線砲、ってぇー!」


放たれた必殺のΖ線砲。

その砲線は不可視探知不可能な一撃が放たれた瞬間であった。


エクセリオン級、初めての苦戦です。

だが、ピンチの時にあのメロディーが、あの音楽が、きっとあなたの頭に響き始めるでしょう……

そう、あの曲がね……!

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