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第39隻目 超連合艦隊観艦式! そして———出撃———

銀河間連合アイレンバーゼン国防宙軍本国全艦隊 10,000隻

大マゼラン共和国防衛軍特別攻撃編成艦隊 12,000隻

地球帝国宇宙軍即応師団など強行偵察艦隊 5000隻


と、本来ならばこの3個艦隊で超連合艦隊として観艦式であったが、予行観艦式での所で更なる艦隊が到着することになった。


ライラバル星系連合対地球帝国用極機密艦隊 5,000隻

銀河間連合ラーゼンバーグ連邦残存戦力結集艦隊 100,000隻

銀河間連合オリンポス大公国近衛師団・中央軍艦隊 20,000隻

銀河間連合ブリヂット連合王国軍王立騎士団艦隊 8,000隻

アンドロメダ銀河帝国 40,000隻


ライラバルはもともと地球よりも進んだ科学にて、人類よりも遥かに先に宇宙へと版図を広げた国家である。先の地球戦で投入するはずだった対地球帝国の切り札である艦隊は、ある程度既存戦力で地球側の損耗を強いた後に止めを刺すために用意されていたわけだが、エクセリオンの一撃によりその計画は灰塵と解していた。その戦力を供出することで地球帝国へ改めて軍門に下る意思を示すと同時に、敗戦国というライラバルの地位を挽回するために機密艦隊を派遣した。

艦艇はエクセリオン級よりも遥かに小型ではあるが、3㎞という巨艦に3連装30mレーザー砲塔12基という超攻撃的な武装である。

銀河間連合に属する各国はアイレンバーゼンだけに良い所を取られたくないために()()で派遣しているに過ぎない。数こそ多いが艦のサイズは地球帝国の現水雷艇と同サイズであり、正面戦力に数えるには心許ない。ましてやアイレンバーゼンの双璧と謳われたラーゼンバーグ連邦が派遣してきた戦力も、なけなしの艦隊である。200万隻もの艦艇はいまや僅か20万隻。新造艦を急いでいても失った人的資源が蘇るわけでもなく、戦力の回復は遅々として進んでいない。

それでも派遣するところが、大国の意地であろう。

そしてアンドロメダ銀河帝国という聞きなれない国家は、銀河間連合に属す必要がないほどの大国の中の大国である。一応は銀河間連合とは敵対関係にあるものの、謎の大艦隊の被害はこのアンドロメダ銀河帝国にも及んでいた。現状は辺境宙域の駐留艦隊をやられただけだが、いつ本国にまで危険が及ぶか分からない。だが襲ってきた艦隊の本隊はいくら探しても見つからない。そんな折に銀河間連合から「天の川銀河の地球帝国という国が、謎の大艦隊を駆逐する作戦を行うそうだ。一緒にいかないか?」と一応は確認したら二つ返事で承諾。そして派遣の流れとなったのだ。

そんなアンドロメダの艦艇の1隻あたりの戦闘力は、大マゼラン共和国の大戦時戦艦と同等と試算されている。


こうして謎の大艦隊20万vs超連合艦隊20万とどうにか同数に持ち込むことに成功したのである。


そして行われた観艦式は、大観艦式として報道され茶の間の老若男女が総じて言葉が出ない様子である。

自分達が生きる時代にこのような大それたことが起きるとは、誰一人として露ほども思っていなかったのだから当然である。


この大きな流れを生み出した張本人である男は、そんなことこそ露知らずにタバコを吹かせつつ、観艦式の指揮を取っていた。


「観艦式の殿が一番貧弱な我々か、なんともまぁ皮肉が効いているじゃないか」


殊更迷惑そうに言って見せるが、口元のニヤニヤは隠しきれていない。


「全く、誰がタヌキだかわかりませんぜ」


「そういってくれるな。まさか我々が知らない国まで参加するとは、さすがの私も予想外だったんだ」


余裕綽々とした様子で悠然とタバコを吸うオガタだが、その内心は全くもって穏やかではなかった。


(おいおいおいおい聞いてねーぞこんなの! わけのわからん大国が来るだなんてよ。しかも大マゼラン共和国の大戦時級のが4万隻も派遣するなんて完全に示威行為だろ!)


横から差し出された灰皿に灰を落としつつ、オガタは眼前を進むたった1000隻のアクセリオン級を見る。

各国の大艦隊の後に続くにはあまりにも貧相。あまりにも貧弱な艦隊だった。


(ラーゼンバーグにオリンポスにブリヂット。どれも連合の主だった国々、さらにはアンドロメダ……ちょっとだけ帝国に灸を据えてくれればと思ったが、やりすぎだ)


地球帝国の帝国思想を砕くには、アイレンバーゼンと大マゼラン共和国の2か国の艦隊で十分だったが、それ以上の大艦隊が太陽系に集結したのはオガタの頭脳を以てしても誤算だった。

オガタとしては地球帝国の帝国主義の鼻っ柱をへし折ってくれれば十分だったが、これでは完全にKO(ノックアウト)だ。こうなると地球の帝国主義は負けじと反発するしかなくなる。

示威行為でひるむことはあれど示威だけで負けを認めるなど、帝国主義にはあってはならない。

ましてや天の川銀河、大マゼラン銀河、小マゼラン銀河を手中に収める地球帝国は、いまだ天の川銀河系すべての攻略を国是としている以上、示威行為が強力であるならばそれに対抗できる国力を、戦力を、軍を求める。

対抗できる軍となれば、連合やアンドロメダ銀河を相手取っても不足のない大戦力を期待される。

ともすれば、現状の建造計画では不可能だ。

超江を主力として長江がワークホース。空江や強江で5万隻という建造計画では不足しているのは明白だった。


(超江や長江だけで5万以上はないと、太刀打ちできないな……それに、連合はあのアイレンバーゼンの新型艦を標準型主力戦艦として建造するんだろ。そうなれば連合は完全に一枚岩。そうなると厄介なのはアンドロメダ銀河……そして我々は連合加盟国。ならば、まず叩くべきはアンドロメダだろうが……いかんな。まずは『謎の大艦隊』を始末しなければ)


つい明後日の方向に思考が飛躍していることにオガタは気づき、本来の敵に意識を集中させる。

作戦については既に全艦隊司令に通達済みである。要は「地球帝国が魁殿をするから、他の方々は好きにやってください」という感じだ。

一応は地球帝国の直掩にアイレンバーゼンと大マゼラン共和国。ライラバル星系連合が入り、他のは好き勝手に行動するということになっていた。

しかし、連合艦艇の大多数が1㎞前後の艦艇であり、その防御力や火力は地球でいうところのアダムとイブにも劣るものだ。そのため、好き勝手と言いつつ地球帝国即応艦隊の直掩という名の下の観戦艦隊となる。

デバガメのお陰で余計なお荷物を帝国は背負うことになるわけだ。


「准将。粗茶ですがどうぞ」


「おぉすまない。天羽士官候補生」


受け取られた湯飲みの中には茶柱が一本立つ。

それを啜る間に、観艦式は終わる。

観艦式といえど地球の衛星である月軌道を低速で進むだけだったが、延べ20万隻にも及ぶ観艦式はマスコミたちがいうように「大観艦式」というには相応しい威容だった。

可能であれば地球帝国宇宙軍だけでやってみたいものだとオガタは思ってみるが、それは軍人としては口が裂けても言えない、オガタ個人としての感想だった。


「では全各国艦隊に通達。目標、ペルセウス腕外縁部X-1829,y-1620,z120。ワープ準備!」


「全各国艦隊に通達。ペルセウス腕外縁部へのワープ準備。座標X-1829,y-1620,z120」


サイジョウは復唱する中、ちらりと天羽を見る。

自然体でオガタの傍らに立つ彼女は、凛とした空気を漂わせている。


(皇族将校……か。この子がまだ子供ってこと、時々忘れそうになるぜ)


サイジョウは内心で呟くと、コンソールを叩き始める。

暫くしてワープ準備が整ったという知らせが入る。

全艦隊がワープ準備を完了させたのは観艦式終了から1時間後であった。


「ワープ!」


「ワープ!」


各艦が亜空間に滑り込んでいく。

そして20万隻もの艦艇は、一瞬にして太陽系から姿を消したのであった。

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