閑話 乙女3人寄れば姦しましい!
本日、『任侠学園』なる邦画をみましてね……ちょっとおもいついちゃったものでして……w
一応閑話なので読み飛ばしても本編に影響はありませんが、読んでもらえるとありがたいです。
エクセリオン艦内にあるダイニングバー「大正デモクラシー」。
ダイニングバーなのになぜこの名前?それでいて店内は別段、大正時代をイメージしたわけでもないのに? メニューも普通なのに? と、あまりにもツッコミどころ満載な店だが、この店の命名はただ単に「なんか、語呂っていうか、響きが……うーん、良かったから?」と、オーナー兼マスターは適当なことを言っている。
だが、出される食事や酒は絶品と名高く、彼の銀河間連合独立調査艦隊のマンダ達との会食で腕を振るったのほどである。
そんなお店のカウンター席に麗かな乙女3人がアルコール片手に、飲んだくれていた。
時刻は午後3時。
艦内が明日に向け昼終いしたということもあり、オガタからの要請で艦内の各飲食店は3時より開店している。
「でさあの時、私、准将の背中にゲロ吐いちゃったんだけど……あの人、ちっとも怒らないどころか、寮まで送ってくれて、着替えまで手伝ってくれたのに、一切、一切よ。私にエッチなことしなかったんだぜ。本当に紳士よ」
「オホホホホ。サイジョウさんも乙女ですわね」
「なによミッシェル。あんただって『責任は俺が取る』って准将が言ったから惚れたんでしょうが」
「ちょっと、恥ずかしいこというの止めてくださいまし……そうストレートに言われる、ぶり返しそうですわ」
「先輩方も私と似たようなものなんですね。准将のあの器の大きさ、そりゃ惚れちゃいますよ」
「ニアちゃんもわかる? 准将のあの男としての包容力と器の大きさ。そこらの小物とはわけが違うってもんだぜ」
「あら、そうでしょうか? ……やっぱり私たち未練たらたらですわね」
「ですね」
「だな」
サイジョウは麦焼酎のストレート、ミッシェルはイタリア産赤ワイン、ニアは(本当は未成年なのでダメなのだが)マンゴーカクテルを飲んでいた。
ツマミはサイジョウはいかなごの釘煮、ミッシェルはカプレーゼ、ニアはなし。といった具合だ。
点でバラバラの好みの3人だが、共通点はただ一つ。
天羽を応援するためにオガタへの恋を断つ。すなわち断恋
である。
ニアに関しては付き合いが短い上に浅いために傷は浅いように見える。また憧れや尊敬に近い感情であったが、彼女からしても初の「恋」だったために、なかなかに深い。それも仲良くなった友達である天羽が、完全に「ほの字」だったのもあって譲ったというのも、その傷を深くする要因だ。
サイジョウは付き合いもそこそこ長く一緒に過ごす時間が長かったために、なかなかに痛手だったが、それでも失恋は初めてではない。それでも失恋ではなく断恋は、後味を悪くさせるには十分だった。
ミッシェルがスーキングをしていたのは、彼女なりに初めから断恋していたのだ。なぜならばサイジョウがオガタに惚れていたことに気付いていたからだ。だからといって心の傷は零ではない。
失恋とは形はどうであれ心に傷が残る。
その傷が化膿しないように、アルコールを飲むことで消毒する。
消毒は早いほうが良い。遅れれば遅れるほど、化膿し、壊死し、心に消えない傷が残る。
「マスター、おかわり!」
サイジョウはおかわりを要求する。
マスターはグラスに麦焼酎を注ぐ。
「私もですわ!」
残っていた赤ワインを飲み、ミッシェルもおかわり。
「わ、わたしも!」
ニアも負けじとグラスを空にしておかわりする。
再び全員のグラスが満たされた。
そして次に始まったのは、オガタへの非難合戦だ。
口火を切ったのは、グラスたっぷりの麦焼酎を一気に飲み干したサイジョウだった。
「でもな、准将は結構けち臭い上にオタクだぜ」
「どんなところがですか?」
「あのな、私と准将とサシで飲む機会があったんだけど、その時、仕切りに財布と睨めっこしててさ。んで何日か経って理由を聞いたら『戦艦模型を買う予算がなくなりそうだったんでな』ってさ。あの時、准将は中佐だったはずだから、全然余裕あるはずなのにな」
「確かにそれはケチですわね。それでサイジョウさんはどのくらい飲まれたのでして?」
「確か……ビール20…いや25……覚えてないや」
((いや、さすがにそれは飲みすぎでしょ)))
ミッシェルとニアは両者同じツッコミを胸中で入れるが、言葉にするのは野暮なので代わりにグラスを傾ける。
「そういえば准将ってかなりむっつりですわよね。あの熱い部屋で、私の足を舐めるような目線を這わせまわれて、思いだしただけで興ふ……ではなく、寒気がしますわ」
「そうよね。あと結構マニアックよ准将は」
「それはどういうことでして?」
「あの人、素足とストッキングじゃ視方が全然違うんだぜ。ストッキング、それも黒の薄いときのには、すっごく見るぜ」
「あら、なんでそのことを早く仰って下さらなかっ……じゃなくって、とんだ変態ですわね」
言葉の端々に未練というか、ストーカー根性を滲ませているミッシェルだが、それでもあえてオガタを否定する。
そうじゃなければまた演算室に籠ってしまいそうだったからだ。
「准将ってそんなお人だったんですか、幻滅します……。そういえばどこでも構わずタバコ吸うのも止めてほしいですよね。いくら空調が効いているたって、限度がありますよ! 格納庫でもどこでも吸うもんだから、かなり迷惑です」
ニアは「准将の黒ストッキングフェチ疑惑」にかなりドン引きした様子である。それにつられて鬱憤を吐き出し始めた。
「そうそう。毎日毎日、タバコを吸ってくれるお陰で、制服にタバコの臭いが染み着いちゃったぜ」
「髪にもタバコの臭いが着くのも困りますわ」
「格納庫だと灰を落としていくので掃除するのも大変なのですよ」
そういってみんなしてグラスを呷る。
「「「おかわり!!!」」」
マスターは黙って焼酎、ワイン、そして準備していたマンゴーカクテルをそれぞれ注ぐ。
「それとこの盃に、日本酒を少し注いでもらえますか?」
サイジョウは懐から和紙に包まれた朱い盃を取り出した。
その瞬間、マスターの目つきが変わる。
「この盃にかい? こいつは上等な盃だね」
マスターは盃を手に持つと、それを掲げて持ったり斜めから見たりして、それが業物と太鼓判を押す。
「良いだろう。こういう盃に相応しい酒を注ごう」
そういうとマスターは奥に一旦引っ込む。
「その盃はどこからでてきたでして?」
「私の実家に伝わる家宝らしいけど、詳しいことは知らない。なんでも大昔に交わされた『兄弟の盃』だそうですぜ」
「「?」」
二人揃って頭にクエスチョンマークを浮かべる中、マスターが戻ってきて桐箱に入った酒を取り出す。
『純米大吟醸1割5分磨き 獺祭 頂上』
「ちょ、マスター……これってめっちゃくちゃ上物じゃないですか!」
酒に詳しいサイジョウは慌てだす。
「お嬢ちゃんこれがわかるかい? この蔵元が創業1500年記念で作ったやつだ。尤も、これは最近復刻醸造したやつだがな」
「これネットでかったら数十万するのに……」
「ははは。逆にこんな良い盃に安い酒じゃ、俺は二度と酒のプロは名乗れねぇな。なぁに、こいつは俺の奢りだ」
そういってマスターは盃に波々と『純米大吟醸1割5分磨き 獺祭 頂上』を注ぐ。
「感謝しますぜ。マスター」
「おう」
そういうとマスターはまた静かに、グラスを布巾で磨き始めた。
「これで何しようってんです?」
ニアはこの酒豪が一気飲みでも始めるのだとばかり思っていたが、一応、確認を取る。
「兄弟の盃ってしってるか?」
「まるで大昔のマフィアですわね」
「まぁそんなところ。本当は人数分の盃で、注がれた酒の量で兄か弟か決めるんだけどよ、この場合は終いの盃ってところ?まぁ、細かいことがいいっこなしだぜ」
「で、どうするのです?」
「回し飲みだぜ。でもこの量は多いから、私は最後にいただくぜ。きっと一番多く飲めるからな」
「サイジョウさんらしいですわね」
「ですね」
皆笑う。
そしてニアから呑むことになる。
両手で持たれた盃の縁に、その愛らしい唇が触れつーっと酒が口内に滑り落ちていく。
「お、美味しい……」
ただその一言で十分だった。
その酒の旨さは、「美味しい」以外に形容することなど、現在の地球文明の言語では、不可能。
「では私も……」
唇の紅いルージュをおしぼりで拭ってから、両手で包まれた盃の縁が、艶かしく輝く唇に触れ、酒が口内に流れていく。
「美味、ですわ」
「じゃ、最後は全部私が頂くぜ」
サイジョウはそういうと片手を盃の縁に、片手を盃の底に添えて持つ。盃の縁が清楚な唇に触れ、酒が口内になだれ込んでいく。
「んー……うまい!」
残った酒を一気に飲み干す様はまさにサイジョウらしかった。
「これで私達は姉妹だ。どんな時も助け合う、仲間だ!姉妹だー!」
「姉妹ですわ」
「姉妹でーす!」
それからはざっくばらんに話は進み、時間は夜となる。
そろそろ店仕舞いとなり勘定となるが、そこで問題が起きた。
「お会計は960アース(約10万円)です」
「……わ、割り勘で」
この場合、慣例通りならば最上位者であるサイジョウが払うのだが、早速、姉妹の契りを利用するのであった。
酒を飲んでも飲まれるな!
酒を飲んだら(車に)のれん(これが暖簾にかいてあるのですよ……実家近くの警察署内にあったんですよ……2重の親父ギャグやん……)
鉄血もそうですが、作者はあぁいう任侠系、結構好きです。
スジの通った男ってのは、かっこいいもんです。世の中に背を向けず、真っ当な人生を歩みつつ、『任侠学園』みたいな、あぁいうスジの通った男になりたいもんですなぁ(要は超面白かった)