第38隻目 超連合艦隊編成完結!
デンデンデンデンデンデンデンデーン
は、まだ先ですよ
トップファンの皆様、もう少しお待ちください。
オガタ率いる地球帝国宇宙軍即応師団艦隊が、土星基地にて更に足止めされること72時間。
アイレンバーゼン艦隊が到着した。
マンダが率いてやってきた独立調査艦隊と本国艦隊の計1万隻という大艦隊であった。
本国艦隊の大多数はまだまだ(アイレンバーゼンにとって)旧式艦が多いが、指揮官クラスの艦艇は連合標準型戦艦と銘打たれた『アーマイオスィ級戦艦』。独立調査艦隊旗艦であった試験艦の量産型である。
その数120隻ほどであるが、他の艦艇群と一線を画す戦力であることは明白である。
他の艦艇も火力、装甲は銀河間連合でも随一の艦隊であることは明白だった。
……だが、この大艦隊は本国艦隊を総動員して得られた数であり、現在の本国防衛戦力は地方隊などの寄せ集めでわずか5000隻にも満たない状況だという。
しかし威容たるや壮観なもので、土星基地の勤務員からは「宇宙に壁ができた」と語られるほどだった。
彼らの戦力は確かに『謎の大艦隊』へ唯一対抗可能である銀河間連合の最大戦力であった。
アイレンバーゼンより遅れること11時間後、大マゼラン共和国艦隊が姿を見せた。
どうやら地球帝国との協定違反であることを承知で、銀河間戦争時の艦隊を派遣してきた。
モスボール処理されていたとはいえ100年も昔の戦艦であるがその戦闘力は侮れないものであり、防御面においてはエクセリオン級には及ばないものの、その火力たるや凄まじく、全ての戦艦には『天体破砕砲』なる超兵器が搭載されている。
なぜ大マゼラン共和国が協定違反の兵器を持ち出したのか? それは大マゼラン共和国の辺境地域において『謎の大艦隊』らしき艦隊が確認され、地球帝国との情報共有により謎の大艦隊の一部隊が共和国首都宙域方面に進軍を行っていることが判明。そのため悠長に構えていられる状況ではないと判断され、秘蔵の虎の子を持ち出すことになった。
その数5000隻。
また空母や巡洋艦などを含めれば1万2000隻にも及ぶ大艦隊である。
この協定違反は地球帝国が先に「縮退炉の製造再開」を行ったことの半ば報復措置であり、いま帝国がそれに文句を言おうものならその大戦力で悉く蹴散らされるのは目に見えているので不問となった。
斯くして、総戦力2万3000隻の超連合艦隊がここに結成されたのである。
「思ってたよりも……多いな」
「ですね……象と戦うためにミジンコがカバになったくらいのレベルですぜ」
「ですがまだ戦力不足は否めませんわ。追加のゲイ・ボルグが5万機、明日にも5万機が配備されるそうですが……それでもたった20万機です」
「艦載機はまだまだ欲しいところだが、こうも出張ってこられると我が軍の面目丸つぶれだな。これが帝国主義か。実に笑える話だ」
そういってオガタは悪そうな顔を作って笑い始めた。
「それも目算の内でしょ」とサイジョウ含めて周りの人間は思ってみたが、地球帝国政府の「帝国主義」にうんざりしているのもあって「してやったり」としめしめ顔で会ったのも事実だ。
旧世界の頂上階級にあたる皇族や王族達を真の飾りへと追いやり、飾りとして崇めた讃え、そして神輿として帝国主義を主張し、天の川銀河の9割(現在はライラバル星系連合を下したため10割)を平定。大マゼラン銀河は完全に手中に収められなかったが、属国に近い形で同盟関係を結び、さらには未探索銀河であった小マゼラン銀河の探索も実施し、実質植民地化に成功ときた。
小マゼラン銀河の一部では現在も「戦争」を行い、平定に向け進んでいる。
そしてその矢面に立つのは須らく「軍人」だ。
ここ数十年大きな戦争はなく、地域間での領宙紛争や資源紛争、さらには独立紛争などがなかったわけではないが、それでも大きな戦争がないからこそ安定した収入が得られる宇宙軍に入隊を果たした者が多い。
さもすれば、大きな戦争に駆り出されるリスクの高い帝国主義なんぞ糞食らえとなる。
だが末端の軍人がそうは思っていても、軍高官や政府の役人はそうではないことが多い。帝国主義万歳など時代錯誤甚だしいが、いまだ盲目的に信奉する人間は後を絶たない。
そんな奴らの鼻っ柱をへし折ったのが、アイレンバーゼン艦隊と大マゼラン共和国艦隊である。
帝国主義をいくら念仏のように後生大切唱えようと、宇宙の海ではそれが溺れる者が掴む藁ほども役に立たないことを証明する。
今頃、総司令部や帝国首相官邸では大騒ぎだろう。
まだまだ我々の軍備が遅れを取っている……と。
「総司令部より入電。『超連合艦隊編成完結を祝し地球標準時間で明後日1300、月面基地にて観閲式を実施。その後速やかに謎の大艦隊へ向かえ。各国との調整は完了済み』である」
「……思ったより手際が良いな。何を企んでやがるあの狸め」
そういいつつオガタはタバコを吸う。お手製の手巻きタバコだ。
サイジョウが灰皿を出すよりも先に、天羽が灰皿を差し出していた。
「准将。あまりおタバコを吸われてはお体に障ります」
「あ、あぁ。ありがとう」
どこかぎくしゃくした雰囲気だったが、サイジョウはそっと灰皿を仕舞った。
(この子が相手じゃ、勝ち目ないぜ……あーあ、いい男どっかにいないかなー)
若干の未練はあったものの自分が決めたことだと頭を振って邪念を払うサイジョウ。
「あ、追加で入電が……えっと『明日の15時から観閲予行を実施。それまでの間、全乗員を休息させよ』だそうですぜ」
「そうか。現在時が10時か……なら各分艦隊長は10時30分に艦長室にてモニター会議。11時30分より本艦エクセリオンの各セクション当直は艦長室に集合。12時に終礼とする。以上、各部に伝達」
「10時30分に各分艦隊長はモニター会議に出席。11時30分より本艦各当直は艦長室に集合。12時に終礼。了解」
「よろしく頼むぞ……それより、ミッシェル大尉がいないようだが……」
「あー……彼女なら……、演算室に閉じこもってクラッキングシステムの改良を行っております」
「……いつからだ?」
「えっと……1週間ほどまえから」
「生きて、いるんだろうな?」
「それはMOTOKOが生存確認を兼ねて手伝っておりますので、大丈夫かと」
二人揃って冷や汗を流す。
「サイジョウ。今すぐ大尉を演算室から連れ出せ。あと、俺が言うのもなんだが、バーにでも連れて行ってやれ。まさか、あいつがそこまでだったとは……」
「准将。手前の女の前で他の女の心配はご法度ですぜ。気を付けてください」
「む、すまん」
「わかりゃいいんです。わかれば。ニア曹長を誘ってもいいですか?」
「……目は瞑ってやる」
「感謝しますぜ」
選んだ結果がこうなるとはオガタ自身はわかっていたが、それでも身に堪えるものだ。
それでもオガタは一途な男だ。
他の女を心配とサイジョウは言ったが、あくまでも一部下を心配したに過ぎない。
だが、そんなオガタの裾を小さくつまんで離さない白髪の少女がいた。
「ん?どうした?」
「どうもしません。ただ、掴んでいたいだけであります」
そういうとそっぽを向く少女が愛おしいと思う反面、それが恋愛感情なのか父性なのか、分からないでいたが、どちらにせよ愛おしいことには違いがなかった。
「終礼が終わったら飯でも行こう。土星焼きでも食べに」
「賛成であります」
目を輝かせてオガタをみる天羽だが、そこにどこか儚げな寂しさを感じ取る。
一体なぜこんな寂しさを感じるのか?
その疑問よりも先に天羽は離れて、己に振られた職務「軍法全書」の書き写しを再開した。
根っからの真面目で優秀で勤勉な人間。それはとある軍事理論でいえば「参謀将校向き」とされる。
正しく彼女にはピッタリの役割だ。
「ところで天羽士官候補生、なにかわからないところはあるか?」
そう、彼女は士官候補生となっていた。
先日まで皇太子であった彼女だが、皇后が先日男児を出産されたため、皇太子の身分を正式に返上した。そして昨日付で正式に入隊を果たした。
つまり彼女は今、一人の人間としての生をようやく謳歌するスタート地点に立ったのだ。
それでも元皇太子であり皇族には変わりないが、今までも王族将校や皇族将校は珍しくない。前皇太子、現天皇も4年間ほどを軍に籍を置いていたこともある。
因みに、彼はエースパイロットだったそうだ。
兎も角、彼女は士官候補生試験を学力、体力、技術をほぼ満点通過したエリートである。
いまはエクセリオン内で士官訓練を行っている真っただ中というわけだ。
「はい。この旧陸戦協定であるハーグ条約は現在も地球帝国内の地域紛争でも適応されるとありますが……」
「これはだな、滅多に起こらない事案だが12年前のハクチョウ腕独立紛争で正規軍がハクチョウ腕星系中央の方面司令部惑星に上陸戦を行って……」
こうして時間が経過する中、モニター会議や当直への徹底事項の伝達、そして終礼を終えたのだった。
トップをねらえ!
は、「トップガン」と「エースをねらえ!」のタイトルを混ぜたらしい……
また作品内容も往年の名作から良い所どり……
本作はそんなトップをねらえ!にインスパイアされオマージュしています(キリ
だが……ストーリーだけはオリジナルだぜ(キリキリ




