第33隻目 新標準型戦艦の設計を命令される!
一応まだ7月上旬ですよね……(汗
遅くなりました。申し訳ありません。
以下、言い訳です。読み飛ばしても結構です。
自衛隊の訓練を5,6月に詰め込んだら14連勤(自衛隊と会社含む)して1日休んで、現在17連勤目(やったね!)です。22連勤したらやっと休みです。やっとだ。やっと……
と、会社はちゃんと休みくれてるけど、自衛隊の訓練行ってるから一人で勝手にデスマーチ中。
そんな中なので、許してください><
銀河間連合との会談や軍事会議を通して、地球帝国と銀河間連合は「謎の大艦隊」の全容を掴み始めていた。
一つ目に、彼らは宣戦布告なく、また対話を試みることもなくラーゼンバーグ共和国への攻撃を始めたことから、対話を行うという甘い考えが通じる相手ではないということ。
二つ目に、ラーゼンバーグ連邦が大敗を喫し正規戦力の大半を喪失したにも関わらず、連邦を制圧しなかったことから領土欲からの攻撃ではないこと。
三つ目に、彼らは単艦でワープせずにワープゲート艦とも言うべき艦艇により、大多数の艦艇を一度にワープさせているということ。
最後に、連邦が辛うじて撃破した艦の情報だ。
撃破した艦には戦艦クラスは含まれず、2㎞クラスの駆逐艦(と称すべきか悩ましいところだが)と500mクラスのフリゲート(と称すべき以下略)のみであった。それらは無人化されており、誰一人として乗艦していなかった。これらは巡洋艦クラス。もしくは指揮艦ともいうべき艦艇によりコントロールされている使い捨ての艦艇という見立てとなった。
駆逐艦などには、高度なデータリンクシステムが搭載されていたため、地球でも一時期あったアーセナルシップ構想と近似した運用方法である。
撃破に至った駆逐艦から推察するに、艦艇スペックは地球帝国のほぼ想定通りであったことが判明したが、敵戦艦クラスのシールド及び装甲を突き破るには、艦正面発射式12mレーザー砲では不足という見解が連合の解析により示された。
艦載機の性能の差も著しく、地球帝国や銀河間連合各国の艦載機では太刀打ちできないというのが、連合の見立てだ。レシプロ戦闘機「F6F」とジェット戦闘機「F-15」を比べるくらいどうしようもない性能差だからだ。
一つ目にしろ、二つ目にしろ、三つ目にしろ、「来る。だから迎え撃つ」しか対処のしようが他にない。
だが、相手の戦力が把握できれば、あとはこちらのものだ。
戦艦においてはアイレンバーゼン主体で試験艦が数種類建造され、既にいくつかの艦が竣工。その一隻が太陽系惑星エリス近傍に現れたマンダ率いる連合独立調査艦隊旗艦である。
全長10㎞という巨艦は4重船殻構造で抗耐性に優れ、主砲には平時格納方式3連装16m級レーザー砲が108基というエクセリオンを凌駕する火力。砲の旋回範囲外の甲板にはVLS発射腔が並ぶ。艦の各所には合計600機もの艦載機を格納するために、複数の格納庫と直結するカタパルト10機が設けられている。
肝心の建造費は1隻のみの建造であったために高額となりアース換算で150憶相当と試算されていたが、地球からの艦艇建造用ロボットの輸出と、ロボット製造工廠の技術移転により、量産されれば70億アースまで下がるとの見方だ。
他にも数隻が建造されているが、現状では本級が連合の標準型戦艦として採用される見込みだ。
艦載機の問題も深刻であったが、機動兵器に長けた数か国が共同で開発することになっている。
一方で、地球帝国は地球帝国で独自路線を採る選択を行う。
地球帝国。帝国と名のつく通り、領土拡大主義だ。
現在こそ共通の敵が存在するため連合に加盟し共同歩調を採るが、いついかなる時も『帝国』の名を捨てることはない。
それは「謎の大艦隊」という共通敵を撃破した後のことも見据えた戦艦を作れということだった。
それが上層部の下した結論であった。
「お上は帝国主義が宇宙の海にまで通用すると思い込んでるのかね」
「ぼやいてないでやっちゃってください。今回は司令部も『好きにやってかまわない』って言ってんですぜ? だったら、准将の好きにしたらいいじゃないですかい?」
コーヒーを啜りつつ、オガタは最近になって趣味で始めた、手巻き紙タバコを作りまくっていた。
指先を水で湿らせて、紙の端をなぞってくるりと巻き込む。できあがったタバコをシガレットケースに収め、また紙を置いてフィルターを置き、煙草を敷き、くるくると巻いて紙の端を湿った指先でなぞって巻き込む。
これを先ほどから現実逃避を兼ねて延々と繰り返していただが、さすがのサイジョウも痺れを切らして注意されている。
勿論、オガタとしても作りたい。だが、エクセリオンを超えるとなると、ある一線を超えたモノになる。
それを戦艦として呼称しても良いものなのか。オガタでも懐疑的になる代物だ。
手元には「謎の大艦隊」の戦艦の推定諸元が記載されている資料がある。それをみて思ったのが「これは本当に戦艦か?」と思わざるを得ない、到底信じられない性能だ。
資料にある限りの情報だと、小学生が考える「さいきょうのせんかん」の方が、幾らか現実味があり、オガタも手巻きタバコの量産に勤しむという生産的なようで全くもって非生産的な現実逃避に走ることもなかった。
「レーダー網を掻い潜る高いステルス性能に、超光速航行……ステルスに関してはもう丸裸で、超光速航行は我々もできる。だが、なんだこの馬鹿げた装甲と火力は」
主装甲の推定厚さ30m(エクセリニウム合金換算) 3~5重船殻構造で合計装甲厚さ70~100m。
シールドは特殊なもので未確認技術によるもの。1秒間に15m級レーザーを50発以上着弾させる必要あり。
主砲はレーザーであるが、未確認技術による攻撃も多数有り。レーザー直径は15~18m級と推定される。
「……連邦が沈めてくれた駆逐艦には余裕。巡洋艦クラスならどうにかエクセリオンでも十分対応できるだろうが、奴さんの戦艦には手も足も出ないってことか」
「准将、お困りでしょうか?」
当然の如く通気口から頭を突き出したミッシェルを華麗にスルーに……するわけにもいかなかった。
「艦長室への立ち入りを禁止したはずだが?」
「ですので、立って入ってはおりません。こうしてダクトから失礼しております」
「貴様は一休さんか。頓知を利かすんじゃない。とりあえず、いまだけは扉から入ってこい」
「ご要望とあらば!」
言うが早いか、ダクトの蓋を閉じてからわずか20秒で彼女は身だしなみを整えて登場する。
「で、来てもらった早々で悪いが、ティラ少尉を連れてきてくれ」
「畏まりましたわ」
残像を残す勢いで退室したミッシェルを見送りつつ、オガタはコーヒーを啜って巻いたばかりのタバコを一本吸い始めた。
「サイジョウ。君ならどう設計する?」
オガタはサイジョウに質問する。彼女自身も技術屋上り、幾らかの腹案があっても良いものだ。もしかしたら自分よりも優れたアイディアを導き出す可能性もあった。
「私ですか。私なら素直にエクセリオンの船体をベースに火力を増強させますね」
「詳しく」
「艦正面発射式レーザーを更に大口径に改める必要があります。そうですね確実性を考えて24mくらいですかね。あとは垂直発射式も18m級にして、砲塔兵器各種は取っ払っちゃいますぜ」
「後方への攻撃手段は?」
「あ……えっと……」
「精進することだな」
「満足いただけないようでしたか……精進しますぜ」
サイジョウはそうはいうが、彼女は技術屋でも元々は縮退炉関係と情報関係の技術屋だ。
オガタとしては少し前にストーカー、もといミッシェルが言っていた腹案であるエクセリオン級をベースにしたファミリー化構想の方が確実性があり、なおかつ有用であると考えていた。
アイレンバーゼンが背負い式砲塔を採用したのは、艦載機も載せられる戦艦に拘ったばかりに垂直発射式大口径レーザー砲を諦めたのだ、
その点、垂直照射式8m級対艦レーザー砲を装備することを前提として設計したエクセリオンだが、1000機もの艦載機の格納スペースを省略すれば、可能だ。
だが、やはりここ至ってもオガタはオガタだった。
「フラム・セン・ティラ少尉、入ります」
エミュレータ部門責任者であるティラは入室して1時間ほどで帰りたいと切に願うことになる。
オガタが考える最強の戦艦とは、強敵が現れれば現れるほどエスカレートしていく。
つまりは、延々と続くトライ&エラーの繰り返しに延々と付き合わされるはめになったからだ。
エクセリオンを越える、新たな戦艦を生み出すための序章に過ぎなかった。
第7隻目で登場した海老を頬張っていたティラ(ニックネーム サクラ)さんですが、私の会社に実際にいる外国人実習生のお姉さんです。
今月の22日にカンボジアに帰っちゃうのですよ……寂しいです。ですから、また登場してもらいました。
次話更新予定は7月中旬中を予定しております。