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第32隻目 准将は特務准将と再会す!

大変遅くなりましたが、安心してください。エタりませんから!

宇宙歴1183年6月15日

この日、地球人類は記念すべき日を迎えた。

大マゼラン共和国との戦争後から続く地球帝国・大マゼラン共和国同盟を維持したまま、地球帝国が銀河間連合に加盟したためだ。

これにより、地球帝国が抱える謎の大艦隊への防衛力不足を補えることになった。

加盟国は有事には各国は戦力を拠出し連合艦隊を結成することとなっているためだ。

本来ならば、地球圏に向けてきている謎の大艦隊は銀河間連合からすれば対岸の火事である。だが、それを見過ごせない情勢となっていた。

銀河間連合加盟国の一つ、ラーゼンバーグ連邦(さんかく座銀河全域)が未知の敵と邂逅し、壊滅したのだ。

応援要請を受け銀河間連合艦隊が到着したころには、首都宙域の主だった居住天体は破壊され、ラーゼンバーグ連邦軍の主力艦隊は悉く宇宙塵と成り果てていた。

生き残った将兵たちの話を纏める中で判明したのは、「40万隻以上の大艦隊が突如としてワープアウトし、攻撃してきた。為すすべなく悉く敗れた」ということだった。

推定される敵艦船のサイズは最低でも2㎞、主力戦艦クラスは6㎞であり、大きなもので8㎞という大型艦であったという。

ラーゼンバーグ連邦の主力艦艇は1100mほどの戦艦で固められ、隻数は正規軍だけで200万隻を超える銀河間連合でも有数の軍事国家であった。故に、早々に防衛戦が突破される恐れは少ないとされた。そのため各国がばらばらに即応艦隊を派遣し各個撃破されるのを恐れ、連合艦隊編成完結を待ってからの派遣となった。それでも応援要請からわずか1週間後に到着した連合艦隊は、援軍としてではなく、戦場救命に奔走したことになった。

沈められた敵艦はわずか1万隻たらず。連邦の正規戦力180万隻を失って得た戦果は、極々わずかであった。

これを重く受け止めた銀河間連合は戦力の拡充を図ると共に、連邦を襲った艦隊を行方を追いつつ、連合加盟国を探す調査艦隊を多数の未探索宇宙に派遣することになったのだ、

その一つがアーデル・マンダ率いる調査艦隊であった。

地球圏に来たのはたまたまの偶然であったが、非好戦的で紳士的な対応であることからマンダは即座に連合への勧誘を行った。

だがオガタから渡された「謎の大艦隊」の情報により次の標的が地球圏になっていることに気付き、使節団到着と同時に大急ぎで交渉が進められていった。

そしてエクセリオン内の広大な格納庫内で記念式典が開かれることになった。

壁には地球日本州式に紅白の垂れ幕が張られている。

テーブルには地球の様々な料理と銀河間連合加盟各国の料理。そして各種アルコール。

式そのものは終わったので、酒豪であるサイジョウは既に銀河間連合の各国のアルコールの飲み比べを始めていた。

オガタは嘆息しつつもそれを見なかったことにした。

ある種、あの飲兵衛状態のサイジョウはどんな男も声を掛けたくない残念美人なので、放っておいても問題ないからだ。

それよりも、サイジョウに構う余裕がない事態が発生していた。


「で……どうして本艦に殿下が居られるのですか?」


「オガタ准将閣下。今は一応は帝国宇宙軍特務准将で使節団長ですから」


「あんな今生の別れ台詞を吐いたのに」


「あんな芝居がかった階級剥奪をしたではありませんか」


互いに言い合いつつも思いだして恥ずかしさで赤面し、二人して俯く。

それを見ていた部下たちもひそひそ声で「あの二人、あんなかっこいい分れ方してたのにな」とか「『私が成人した暁には、必ず挨拶に伺います』っていってたのにな」とか「そういやあのあと准将泣いてたよな」など、好き放題言っているのも耳に入り、二人揃って耳まで真っ赤にしていた。


「あれれ~? 准将も天羽さんも顔が真っ赤ですぜ~。もしかして飲んでますぅ?」


そこに絡み酒にやってきたサイジョウ。だが、さすがに空気を読んだニアとミッシェルにより両脇を固められる。


「准将ぉ~たすけ」


口まで塞がれ言葉を紡ぐことは疎かわずかな空気の出入りすら許されず、声を唐突に断ち切られて、サイジョウは格納庫から追い出されていく。オガタはこの空気を打開するための方法を考えたが、思い浮かばなかったのでタバコを吸い始めた。


「いろいろと頑張ったようだな」


世間話で茶を濁すことしかできない。

そんな自分のコミュニケーション能力の低さを恨みつつ、どうにか場を取り繕う。


「准将のご活躍に比べられれば、私なんてまだまだです」


相変わらずの殊勝っぷりを発揮しつつも、天羽は脱帽する。

今度は、サイズの合った小ぶりな帽子だった。


「謙遜しなくていい。天羽君は、頑張った」


いいつつ、頭を撫でてやる。

軽く撫でられただけだったが、天羽は別の意味で耳まで真っ赤にしていた。


「准将、私は来月で成人となります」


「お、日本州では18が成人だったか」


「……准将は、その、好きな人とか、恋人とかいます?」


「えっとだな……」


オガタは言葉に窮した。暗に「貴方が好きです」と言われたようなものだ。

即答することはできず、タバコを吸って誤魔化し始めた。

すると一人の女性が近づいてきた。


「オガタ准将。一月ぶりですね」


「これはマンダ司令。お久しぶりです」


イヤホン型の言語変換器により、明瞭な声が鼓膜を震わせていた。マンダの場合、人間のような顔立ちの種族であるが、頭の上に三角形の耳にイヤホンを付けている。既に十分な量の音声データにより、互いの声音までも正確に再現されたいた。

兎も角、会食や機動兵器模擬戦などを通して交遊を深めていたマンダの登場により、言葉で表現し辛い雰囲気は払しょくされた。

これを言祝いだのはオガタだけでなく、聞いた本人である天羽も同じであった。


「天羽さんもご一緒でしたか。あらあら、天羽さん、耳まで赤くなってましてよ」


マンダは口に手を当ててコロコロと笑う。

軍服を着ていなければ貴婦人と見紛うほど上品な女性であった。


「な、なんでもございませんから」


知らぬふりを決め込んでみるが、紅潮した頬の赤みは失せそうにない。


「まるで婚姻したばかりのカップルのようにお似合いでしたのに」


「ごっほごほ!!!」


「!!!」


それを分かった上でマンダはさらにちょっかいをだす。

二人揃って大きなリアクションをとったのに満足したのか、マンダは満面の笑みである。

格納庫入口で金髪碧眼巨乳でヤンデレストーカー化しているミッシェルが、呪詛の言葉を吐きつつ懐からコルトパイソンを抜こうとしたところを、ニアとMOTOKOが見つけて羽交い絞めにして強制連行していた。


「ところで、オガタ准将。エクセリオンの建造ノウハウ。特に艦艇建造用ロボットを譲ってくださらないかしら」


二人がようやく落ち着いたのを見計らってマンダはいきなり本題へと切り込んできたが、オガタはさきほど盛大に咳込んだおかげか、たいして驚かずに済んだのは不幸中の幸いだったであろう。


「それは、難しいですね。仮にも我が国の機密事項ですから……ですが、丁度良かった。本国からもマンダ司令への言伝を預かっておりましたので。連合各国の航宙艦に関するノウハウをご教授願いたい。とのことです。それと交換条件になるならば、本国も吝かではないでしょう」


マンダが艦船建造ロボットに興味を持っているのは連合加盟国の軍事力に起因していた。

主力艦艇が1000m前後の国が多い。その中でも一点豪華主義とも揶揄される個艦優勢主義であるマンダの祖国『アイレンバーゼン』だけが、唯一、謎の大艦隊に対抗可能とされている。

それは銀河間連合所属調査艦隊として派遣された、マンダ率いる調査艦隊からもうかがい知れる。

しかし、建造費が高い。それはもう、馬鹿高い。

アース換算で80億アース相当。エクセリオン級が量産効果により現在30憶アースで建造されているのを鑑みれば、2.5倍以上の建造費がかかっている。

理由として職人技といえる技術が多用され、建造の機械化が遅れているのが原因だ。

それ故に数を揃えられないというジレンマに陥っている。

秘蔵中の秘ともいえる建造ノウハウの提供をおいそれとは行えないところだが、目前に迫る共通の敵の為には譲歩の余地があった。

つまりはアイレンバーゼンなどの銀河間連合加盟国の航宙艦に関するノウハウ全て。

上層部は革新的技術が獲得できるのであれば多少の譲歩は仕方ないとまで言っている。

また将となって日が浅くマンダと面識があるオガタなら、()()()()に最適という判断も少なくなかった。


(これって政治なのか、軍事なのか……微妙なラインだよな)


軍人が(まつりごと)をするのはご法度。であるが、命令とあらば動くのも軍人である。

己の信条と命令の板挟みで葛藤するものの、オガタはとりあえずは流すことにした。


「本当ですか。嬉しいわ」


耳だけでなく尻尾まで振り始めたことでマンダが心底喜んでいるのが分かる。

だが、オガタは自分の出番はここまでと線を引き、隣の小柄な特務准将の肩に手を置く。


「では正式な話はこちらの使節団長を通してお願いします」


「え? あ、はい。承知しました。後日、改めて席を設けてお話ししましょう。書類も整えますので」


急に自分の話が振られたために天羽は少しテンパった様子であるが、どうにか返答する。

使節団長とはいいつつもお飾りであることはマンダも承知していたが、相手は4000年以上の歴史を紡ぐ皇室の皇太子。マンダは最大限の謝辞を述べて深々と一礼する。


「顔を上げてください。私はそれほどのものではありませんから」


天羽は付け足して「今は一介の将校にすぎませんから」と付け足す。

マンダもそれを聞いてようやく顔を上げた。

オガタはそれを眺めつつ、いささか「不味いことになった」と胸中にて呟く。

仮にも連合の代表として出席しているマンダに頭を下げさせたというのは、いささか問題であったからだ。

マンダ自身に問題がなくても、他の連合出席者の衆目があるなかではいらぬ反発を招きかねない。

そう思って会場を見渡すと、連合出席者の大多数は形式はどうであれ天羽に向かって礼を行っていた。

軍人は敬礼し、文民は手を合わせていたりとマチマチだが、そこには紛うことなく感謝の念が込められていた。


(銀河間連合は礼節を重んじるのか。それとも、そこまで逼迫しているのか)


連合の意図がどうであれ地球帝国にも、なによりもオガタ自身にとってみてもまたとない好機でもある。

連合より齎されるであろう先進した技術を吸収できるこの機会をみすみす逃すわけもない。

そしてそれは、オガタが作りたい最強の戦艦の上限を限りなくさらに高める僥倖だ。


(さて、明日からは設計に入ろうかな……)


舌なめずりを一つ。

追い果てぬ最強の宇宙戦艦を作るために、オガタは二本目のタバコを吸い始めた。

ストック、尽きてるので少し待ってください。

次話は来月初旬までには投稿します。

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