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第26隻目 ライラバル星系連合は帝国の傘下になる!

前話で初めてヒロインが一話で登場しましたが、チラッとだけしかみんな出てないので今回はまとめて出てもらいました。

ただ今回は、修羅場になりました(なぜだろう)


ブックマーク登録件数888件となりました!(執筆時)

誤字報告ありがとうございます><

感想もとても嬉しいです!!!

お読みいただきありがとうございます。今後もマイペースに続けますのでよろしくお願いします。

駐在武官という制度がある。

駐在する武官(軍人)と読んでそのままの意味だ。

多くの場合、友好国や国交を結ぶ他国の大使館や領事館などに配属されることが多い。

大使館や領事館というのは、接受国において派遣国を代表して外交を行う起点であったり、パスポートの発行やビザの発給、接受国が有事の際には情報収集の拠点として機能する。その中で特に駐在武官に求められるのは平時から接受国の軍隊との交流や情報収集、有事の際には危険レベルを軍事的観点から洞察し、大使や本国に知らせる任務がある。

だが、大きな戦争で敗戦した国が差し出す駐在武官というものは悲惨なものだ。

はっきり言えば傀儡に等しい。何を成すにも接受国の意向をそのまま本国に伝える操り人形がだ。それも敗戦がきっかけで国交が樹立したとなればなおのことだ。

だが、地球帝国においてそういったことはない。

地球帝国が掲げる地球憲法前文には以下の文言がある。




恭順する者には共に繁栄の道を。拒絶する者には鉄槌を。




地球帝国樹立の際、多くの植民惑星や開拓宙域を一つにまとめ上げたのは地球帝国の前身である地球国である。

この文言こそが地球が帝国主義に逆行する旗印を掲げた人物が残した言葉である。


WW3で戦勝国となった日本、アメリカ、NEU(新生欧州連合)、ASEAN(東南アジア諸国連合)、特に功績が大きかった日本は独自路線を取り、戦前と異なった政治体系を選んだ。

日本が戦勝国として並べたのは自衛軍に軍師として天久天皇(当時皇太子)陛下が助力したためだと言われ、立憲君主制から制限君主制へと移行した。

天皇が実際に軍を動かしたのは日本国において初めてであった。

皇族将校などが一時期いなかったわけではないが、天皇が直接軍を動かしたことはただの一度もない。それがあったと言われるものもあるが、そのすべてが軍の暴走であった。

彼は国だけでなく地球全体が荒廃していくことに酷く心を痛め、軍師としての才覚を発揮し、戦争を終結させるに至った。

一方で天久天皇は苛烈な人物で、口々に「降伏した兵は味方と同じ扱いにせよ。反抗する者には容赦するな」としており、終戦後は日本は新日本帝国を名乗るとともに、人工頭脳の開発促進や荒廃した地球を復元するための研究に莫大な予算を投じ、地球全体で幸福を甘受する方針を取り続けた。

天久天皇が残した言葉はその後も脈々と続き、地球が地球帝国と名乗るきっかけとなった太陽系戦争(俗称:宇宙戦争)以後は、彼の言葉が帝国憲法に刻まれたと共に、全ての国家が統合され立憲多数君主制となった。

この地球憲法に救われたのはライラバル星系連合国家 エンラベル・デ・クローク特務大佐派遣駐在武官であった。


宇宙歴1183年5月17日

彼は地球という未知の文化、未知の生命体が存在する星に飛ばれたとあって、それは恐ろしい思いでいた。

それは共に送り込まれる同僚となる数名の武官は勿論のこと、外交官や大使、講話条文締結のために行く連合代表なども、それはそれは沈痛な面持ちであった。

だが着いてみれば聞いていたのと全く違う光景を目の当たりにする。

まるで祝賀会のような会場に案内され、笑顔での歓待を受け、さらには……

「祝国交樹立! 地球帝国はライラバル星系連合国家との国交樹立を歓迎する」

と、ライラバル公用語で書かれた横断幕まで用意されていた。

何の冗談かと思ったが、地球帝国の歴史を聞いてライラバルの面々は納得するしかなかった。

ライラバルが500年以上も他国との接触を避ける中、1000年以上も昔に残された言葉を貫く国家姿勢。ライラバルにも差別することもなくその国家姿勢を示されれば、もはや格の違いを理解するほかにない。

式の開始にはエイブラム会戦における死者への黙祷が捧げられ、これにもまたライラバル一行は感激した。

自動言語翻訳機を介してだが地球帝国議会議長からの言葉もまた彼らを地球帝国の虜にするには十分だった。

表向きの話は。である。


「こんな安っぽいシナリオか……」


「オガタ准将。言葉を慎むですぜ」


「いや、こんな見え見えのポーズで取り込めるなんてチョロすぎだろライラバル」


オガタが一連の式典などを観察しながら、「小学生の劇のほうが面白い」とまで酷評した。

実際のところは入念なリサーチにより、ライラバルの国民性を理解した上での演出である。

彼らはかつての日本のような義理堅く人情味あふれる国民性で、非常に保守的だったのだ。

それを溶かすにはさも「貴方の味方ですよ」と嘯くことで、朝飯前にできてしまったのだ。


「帝国議会は既に愚衆政治の極み……しかし腹芸だけは一流だ。尤も、皇族の名を汚すやり口はやっぱり気に食わない」


新しいタバコを咥え、燃え尽きる寸でのタバコの火種を先端に押し当てた。


「とはいえ、後顧の憂いを断つという意味で懐柔政策は正しいのでは?」


「軍人として政治の話はご法度ではありませんこと?」


「いまさら野暮ってもんですよミッシェルさん。天羽ちゃんもそう思いません?」


「自分にそれをいいますか。私的な時間ですし問題ないのでは」


「お前らな……」


両手に大輪の花を抱えた状態といって差し支えないオガタだが、さすがに周りの目が気になった。

二名は成人しているが、2名は未成年。もっとも、一人は皇太子殿下だ。

とはいえ、オガタを今にも刺し殺さんばかりの視線の集中砲火は火力を増す一方だった。

ここは艦内喫茶「タレーラン」。喫茶と謳いつつ酒類も提供される場所だ。

訓練が終了し、サイジョウに呼び出され来てみれば、サイジョウ、ミッシェル、ニア、天羽の4名が待ち受けていたのだ。

黒髪清楚な大和撫子のサイジョウ。金髪碧眼巨乳の美女、ミッシェル。期待のホープな赤毛美少女、ニア。中性的な銀髪皇族将校の天羽。

選り取り見取りなこの状況をそれまで楽しんでいた男たちは、オガタが登場したことにより「眼福」から「准将許すまじ」の視線に切り替わったのは必然的だった。

一身にヘイトを集める中、4名は好き勝手に話していた。


「それよりここのチーズケーキ美味しいですわよ」


「でもここベイクドとレアの2種類ありますぜ。どっちがいいですかい?」


「どちらも美味しいですわ」


「両方頼んで食べ比べしませんか?」


「ニア軍曹に賛成するであります」


女三人寄れば(かしま)しいとは昔の人は良く言ったものだ。

それも甘味のことと恋バナに関しては特に姦しい。と、オガタは感じつつ、コーヒーを啜る。

人工コーヒーではない本物のコーヒーの味わいは、最高の一言に尽きた。


(このブレンド……マンデリンとキリマンジャロかな。やっぱり本物はうまい)


女性陣の会話を聞かぬ知らぬで自分の世界に逃げようとしたオガタを、呼び出した本人はそれを逃がさない。


「時に准将」


「なんだサイジョウ」


「准将はどの子が好みですぜ?」


「ぶっふぁ!!!」


含んでいたコーヒーを盛大に霧にする。

その後、少々咽込み、サイジョウに背を擦られる。


(なんだこの公開処刑は!)


数名の若い兵らは席を立ち、わざわざオガタたちが座る近くの席に陣取り始め、もはや睨むを通り越しメンチを切り出していた。

中には私物であろうナックルパート付きのグローブを嵌めたり、座ったままだが軽くアップを始める者もいる。


「……どういう意味だ? 上官をからかうつもりなら止めなさい」


オガタは心を鎮めるものの、心臓は太鼓を叩くがごとく大きく打っている。


「なかなか誰にも手を出さないので、直談判しようかと思いまして」


(一体いつからハーレムルートにはいったんだ!? 俺はなろうの主人公か!!)


内心かなりメタい突っ込みを入れるも、もはや逃げ場はない。

女性陣は猛禽類の目でオガタの一挙手一投足を逃すまいと捉え続ける。さらにその外にはアップが完了したらしい若手の男兵十数名がオガタを物理的に包囲している。


「……サイジョウ少佐」


「はい」


「非常呼集! これより緊急演習を実施する! 第一種戦闘配置!!!」


逃げるが勝ち。

オガタが職権乱用ともいえる演習の実施命令に一同騒然となる。

だが、そうは問屋が卸さなかった。


「復唱しかねます」


「量子演算機はメンテ中ですわ」


「特務准将として却下します」


「機動兵器をすべてオーバーホール中であります」


もはや、逃げ場がない。

オガタが観念して彼女達を見る。

未成年者は論外として、サイジョウとミッシェルは確かに魅力的な女性であることは確かだった。

しかしミッシェルはストーカー化しており消去的にサイジョウが妥当であるが、消去法で選んだとあっては失礼極まりない。という気持ちもあった。


「……ちなみに、『どの子が好み』には、不肖ながら私も含まれておりますので、ご理解を」


「いや、天羽君は未成年であるし、何より皇太子だ。私の男色の気はない」


この言葉を言った瞬間、天羽の顔が青ざめた。

それは効果音で「ガビーン!」と音がしそうなほどに。


「オガタ准将。何か勘違いしてません?」


赤毛を揺らしながらニアはオガタに問いかけた。


「どういうことだ?」


「天羽ちゃんは、女の子ですよ」


「……は?」


「いや、皇太子ってのは継承権第一位につけられる称号です。現在の源久天皇の長子である天羽ちゃんは、1000年ぶりの女性皇太子って報道されたの、覚えてません?」


「……いつごろだ?」


「つい半年ほど前です」


半年前。それはオガタがエクセリオンの設計に奔走していたころだ。

ちょうどそのころ、亀城上皇が天皇を存命退位したのは知っていたが、それ以外は耳に入っていなかったのだ。


「えっと……天羽君?」


「……大丈夫です。慣れておりますので」


(やっちまったああああああああああああああ!!!!!!!!!)


オガタが盛大に後悔する中、彼女らは天羽の肩をさすりつつ早々に席を立つ。

彼女らを、天羽を追いかけようとした時、呼び止められる。


「准将。見させてもらったよ。14時ごろ機関室に来てくれ」


「チョウさん」


助け船を出したのは意外な人物だった。

3人寄れば文殊の知恵ともいいますが、いやはやどうなることやら。

今回は完全な続き物として数話展開予定です。


……天羽は男の娘にするか迷いましたが、やっぱり女の子であるべきでしょう。

できればツインテール(ルリ)とか編み込みポニー(テッサ)とか、ロング(ニア、モコタン、イリヤ……)か、現状ではセミロングというイメージです。できれば声はイケボ女子と思っていただきたい(作者の趣味です


次話更新予定は5月18日ですが、諸般の都合で遅れる可能性が多分にあります。

詳しくは活動記録を閲覧いただければ幸いです。

ではでは次話も張り切ってサービスサービス!

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