表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/66

第24隻目 放て対艦隊殲滅兵器!

日間2位(執筆時)となってました!

1位の人とのポイント100以上……ま、負けるもんか!

趣味で書いている物なので、気にしないようにして書いていきます……


お待たせしました。いよいよ艦首対艦隊殲滅兵器が発射されます。

「定刻5分前」


船務長を務めるミッシェルがカウントを開始した。

先ほどまでは人として有るまじき表情、言動を繰り返すばかりだったが、仕事となれば切り替えているようだった。

手元でコルト・パイソン3インチの手入れをしていることを除けば。

ミッシェルのカウントが聞こえると共に、艦内クロックによるカウントもホログラフィックディスプレイによって開始される。

オガタは手元のホロディスプレイでとあるデータ入力を終え、一息ついていた。

この頃には希望者全員がオガタの私物固形栄養食を食べきっており、一部の者はお代わりと称して違う味を食べていた。

オガタからすれば在庫処分できるので良いのだが、「遠慮なしかよ」と思っていたら、袖を引っ張られ、見れば「別の味も試したいであります」と天羽が言う始末であった。

開戦数分前ということもあり、さすがに「以後喫食禁止! 飲料のみ許可する」と釘をさすことになった。


「発射1分前」


艦隊旗艦「アマテラス」からの通達で「状況に変化なし。予定通り実施せよ」と定型文が送られて来るのみであり、先ほど問い合わせても「状況に変化なし。予定通り実施せよ」と帰ってくるため、エクセリオンでは予定通りに艦を前進させ間合いを詰めていた。

ライラバル星系連合打撃連合艦隊と銘打たれたラグーン宙域方面軍主力艦隊には、同方面軍司令であるアディティア大将が就いている。

ラグーン方面軍には主戦論者が多い。というよりも9割近くが主戦論者によって固められている。その抑え役として穏健派の司令が通常配属されるのだが、つい昨月配属されたアディティア大将が主戦論者であったことも、この作戦の性急さに起因していた。

だが本国も長引くことを懸念して本作戦にゴーサインを出しているあたり、アディティアの判断が誤っているわけではない。

むしろ、このままもたついている間にライラバル艦隊の層と幅が広がることの方が問題だった。

レーダー情報によれば敵の縮退炉相当の機関を搭載した戦艦は確認できないとのことだが、データベースに無い新型艦も多数見受けられるという。

縮退炉相当の機関を搭載しているとなれば厄介な相手であるが、それがないのであれば突き崩すのは容易い。という判断だ。


「本当に大丈夫でしょうか?」


「何がだ?」


「いえ……こんな大艦隊相手にマイクロウェーブ砲なんて」


「心配いらん。俺を信じろ」


オガタに否定されてもサイジョウの中の疑念は晴れないようで、唇に指をあて思案顔を浮かべていた。

なかなかに絵になっていたので、オガタはこっそり脳内フォルダの「艦内広報用画像」フォルダに静止画として納めた。

黙っていれば大和撫子のサイジョウを広報用に使いたいという広報部からお願いされていたからだ。

だが私的フォルダにも複製した直後、オガタの頭に痛みが走った。フォルダを確認したらきれいさっぱり消し去られ、したり顔でサイジョウがにやついていた。


(こいつ俺の頭にまでバックドアしかけてやがる……)


呻きつつも悟られないように冷静に努めていた。


オガタにはサイジョウの不安を否定する根拠があった。

人類史上最強最大の戦艦「エクセリオン」であれば、単艦でもライラバル艦隊程度なら壊滅状態に追いやれるのは確実だからだ。

技術屋として、そして前世から恋焦がれた最強の戦艦であるエクセリオンを設計したことだけでなく、自身が艦長となって短期間とはいえしごき上げた部下の錬度を以てすれば、容易いことだ。

さらにはとっておきの秘策を今しがた仕込み終えたこともあって、その自信は確実となったのだ。


「10秒前、8、7……」


カウントが残り僅かとなる。

レルゲンは艦主砲の発射スイッチに慎重に指を這わせコンマ1秒の狂いもなく押せるように構える。

彼の額からは一筋の汗が流れていた。


「……3、2、1、今!」


「発射!」


掛け声と共に発射スイッチが押され、数十億ギガワットクラスのマイクロウェーブが照射された。

彼我の距離は2000万km。照射範囲は縦横に約1000km四方に設定され、範囲内には約1万隻近いライラバル艦が存在している。

排熱が困難な宇宙空間において艦体丸ごと超高出力のマイクロウェーブを照射されればどうなるか。

チタンやタングステンなどの金属はマイクロウェーブの反射率が極めて高く、家庭用電子レンジで加熱されてもそれは表面の数ミクロンしか加熱されない。

しかし、それは2.45GHzだからだ。これは2.45GHzが極超短波と非常に透過性が低いためだ。そのためオガタは艦を丸ごとローストすることを前提に290GHzに設定してある。

とはいえ、これでも1ミリ未満も過熱できない。

故に、本命は別に合った。


「照射開始。照射終了まで27、26……」


カウントが始まった中、オガタはにやりとほくそ笑む。


(マイクロウェーブで艦を焼く? 笑止! 装甲なんて初めから無視する波長……Ζ(ゼータ)線で艦内を焼き尽くす)


マイクロウェーブ砲の波長は確かに290GHzに設定されているが、ここでも活躍するのが数学的事象変動域形成フィールドである。

このフィールドは透過した物体、物質、光、原子、粒子とあらゆる物の事象を変動させる。

変動させるにはそれが透過したことを量子コンピューターが認識する必要があるが、認識さえすれば任意に変更が可能である。

戦闘時などは防御や軌道計算などで自艦の攻撃兵器を変動させることは困難だが、一方的に攻撃する場合においてはその例には当てはまらない。つまり、この現状ではいくらでも書き換えが可能となる。

そしてΖ線はγ線よりも波長が短い、ある可能性が高いと言われている未発見の電磁波である。

理論上厚さ10mの鉛でも貫通する透過性を示し、人体には極めて有毒であり電子機器は悉く破壊されるとされている電磁波である。

照射されたライラバル艦に外見上の変化はない。だが、数秒と経たないうちに1隻、また1隻とどんどん機関を停止させていき、1万隻近い艦艇が機関を停止した。


「……ライラバル艦隊、機関停止多数」


「ライラバル艦隊より入電。停戦……停戦の申し入れです!」


「停戦の申し入れの判断は旗艦『アマテラス』に回せ。本艦はこのまま接近。敵の耳目を本艦に集めよ」


悠然と構えたオガタが命令を下すと、旗艦より入電があった。


『こちらアマテラス。エクセリオン、一体何をやった!?』


「え~っとですね、軍規に触れるためお答えできません」


オガタがのらりくらりと躱そうとするも、先方はそれを許せないらしく怒号が受話器から飛んだ。


『貴様。私は大将だぞ。准将如きが歯向かうなど……軍法会議に送ってやる!』


血気盛んらしくアディティア大将は受話器越しに口角泡を飛ばすばかりに咆え始めた。

それを冷静かつ、逆撫でするようにオガタは返す。


「閣下。お言葉ですが、私は参謀本部長、並びに総司令長官より本艦の設計を一任されており、情報開示する権限を私は頂戴しておりません。あくまでもその権利は参謀本部長か総司令長官にあります。そもそも敵が間近にいるここで、秘匿性の低いマイクロ波通信だなんて……アディティア大将閣下こそ、軍機に触れる行いですよ。奴さんに筒抜けでしょう」


『オガタ准将……よろしい。あとで覚えておけ』


通話は一方的に切られた。

通常ならば「よくやった!でかした!」と褒められて然るべき戦果にも拘わらず、まさか叱られるとはオガタは夢にも思っていなかった。

だがしかし、アディティアのキレっぷりに何かを感じた。


「通信士、本国の参謀本部に直通回線」


「はい。繋ぎます」


参謀本部長に即座に繋がった回線でオガタは端的に挨拶する。


「忙しい中すみません。至急お伝えしたいことが」


『アディティアのことか。もう手は打ってある』


参謀本部長はオガタが口にするよりも先に、オガタが伝えんとしたことを当てた。


「どれくらい回してもらえますか?」


『ははははは。何、もう5分としないうちに全て()()()()()


小太りの参謀本部長の言葉にオガタが分からないわけではない。

参謀という生き物は言葉の外を読み聞くことができるように訓練される。

その頭が「蹴りが就く」と明言した時、それはそのままの意味である。


「承知しました」


『一応、背後には気を付けよ。〆る直前が一番よく暴れるからな』


そういわれ回線が切られたころには、ライラバル艦隊との彼我の距離は1000㎞と、宇宙においては目と鼻の先まで近づいている。


「機動兵器、全機発艦! 人型は艦後方の警戒に当たれ!」


M-9Aと閃撃Ⅱが後方に散開する中、前方ではライラバル艦隊が降伏を意味する信号弾の打ち上げと機関停止を行っていた。


「勝ったか……勝ったけど……」


「准将……?」


オガタの様子がおかしい。それに気づいたサイジョウはオガタの顔を覗き込む。

天羽やミッシェルも気づいたようで、オガタに駆け寄る。

もしも急病であった場合命に係わるため、衛生班を呼ぶ声もあった。

しかし、そこはやっぱりオガタとでもいうべきか、彼女らの心配を余所にオガタは猛然と咆えたのだ。


「もっと歯ごたえ合ってくれよぉ!!!一瞬すぎんだろぉぉぉ!!!」


サイジョウがとりあえず「うるさいですぜ!」と頭を打って黙らせた。

この時、オガタ准将戦闘狂説が急浮上したのであった。


余談だが、参謀本部長との通話終了からきっかり5分後、アディティア大将は駆け付けた本国艦隊により包囲され、「国家反逆」「機密漏洩」「国家転覆未遂」などなどの容疑で拘束されたのであった。

Ζ線って書いてて、ゲッター線を思い出した。スパロボでちょっとしか使ったことないのに……


次からはやっと、やっと使節艦隊編に入ります。

今後も引き続きお楽しみください。


次話更新は少し空いて、5月12日19時ごろ予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ