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第22隻目 ライラバル星系連合と相対する!

祝総合評価2000pt突破!

皆様ありがとうございます!


今回も地味ですが、お楽しみください。

地球帝国宇宙軍の行動は早かった。

民間への被害が及んでいた海賊の出所がライラバル星系連合という、地球帝国からすれば目の上のタンコブのように目障りな存在であったからだ。

長年、ライラバルとは国境沿いの宙域に互いに艦隊を張りつかせにらみ合いを続けてきた。

ここ数年で、ライラバル星系連合は地球帝国の縮退炉に相当する戦闘艦艇用機関を完成させたという情報もあり、一層緊張が高まってる最中での出来事であったため、ラグーン宙域方面軍隷下の全艦隊に出動命令が下された。

戦艦2万、空母1万、重巡洋艦3万、軽巡洋艦3万、駆逐艦6万、強襲降星艦3万隻、揚星艦1万、補給・輸送艦1万。合計20万隻にも及ぶ大艦隊である。

このうち、戦闘艦艇の半数は国境宙域に張り付いているため、エクセリオン含む先発増援艦隊は直ちに合流するべく行動を開始した。

また本国艦隊はもちろん、近隣宙域の各方面軍からも増援が向かっている。

ラグーン宙域方面軍と合わせて50万隻という超大艦隊である。

本国艦隊の中には戦列艦隊という名称で、竣工間際だったエクセリオン級7隻も加わることとなった。

ただし、エクセリオン含む使節艦隊構成艦は5月17日1200までにライラバル星系より離脱し、同月20日までに宇宙軍本部のある太陽系月面基地に到着するのは変わっていない。

本国並びに各方面軍艦隊の増援到着予定は10日。現在日時は5日午前11時である。


ライラバル星系とラグーン宙域のはざまにある緩衝地帯。エイブラム宙域と呼ばれる本宙域は、資源惑星と民間開拓惑星がいくつかある程度の実に侘しい宙域だ。

この宙域では0.1光年という距離で互いに艦隊を並べてにらみ合う状況が続いている。

これはかれこれ数百年近く続いており、共和国との戦争以前よりも続くため「Old Cold War(年老いた冷戦)」と呼ばれている。

この状況を打破したいのはラグーン方面軍だけでなく、ライラバルもまたしびれを切らした結果が海賊と偽った越境攻撃である。それも民間船などを襲う、卑劣な方法だ。

地球帝国憲法の「我が国の国民の生命、領土、主権に危機が及ぶ状況において、いかなる手段をもってしても脅威は排除する」という第8条第1項、宇宙条約戦争法関連の「戦争・非戦争状態にかかわらず文民保護の徹底と文民への攻撃を禁ずる」に触れたため、今回の派兵は議会も2つ返事で快諾した。

右翼、左翼、中道問わず、地球帝国の歴史において数世紀にわたり頭痛の種を合法的に排除できる機会は、これを逃してもう二度とないことを理解していたのだ。

何よりも絶対的な自信があった。


エクセリオンさえあれば、勝てる。


浅はかであるが、エクセリオンの華々しい初陣の活躍を見て、期待を寄せるのは当然のことであった。

報道を通じて市民にもその活躍は伝えられており、一部の過激右派が報復を訴えてデモ行進を始めており、左翼でさえ海賊に拉致された被害者の救出を求めるデモ行進を行われるほどだ。

そんな期待が寄せられているとは露知らず、エクセリオンは睨み合いの続くエイブラム宙域にて、鎮座するのであった。

その艦内、指揮所にて艦長席に座る男は、いつものように紫煙を肺腑から吐き出す。

彼は本日だけで既に一箱のタバコを吸っていた。


「どうしてエクセリオンがど真ん中なんだ?」


「それはエクセリオンが一番かっこいいからですぜ」


「どうしてエクセリオンが突出してるんだ」


「それはエクセリオンが一番頑強だからですわ」


「どうしてエクセリオンが……」


「准将、いい加減飽きませんか?」


オガタの言葉を天羽がバッサリと切り捨てる。

話題を変えようと、先ほどから行っている通信について触れた。


「……回線開放を願う連絡を電波、量子、恒多無で全ての緊急連絡チャンネルで呼びかけ、さらには光信号通信などもやってるってのに……」


「蛙の面になんたらってやつですぜ」


「……まぁいい、レーダー班は警戒を厳に。必ず1時間ごとに休憩を取るように。M-9AおよびF/A-50Fは引き続き哨戒活動を継続せよ」


オガタはそういうと、再びライラバル星系連合艦隊に向け通信回線を開くように、全通信方法を持って伝える。


「ライラバル星系連合艦隊へ。こちら地球帝国宇宙軍一等航宙艦『エクセリオン』。貴艦隊と通話をしたい。至急回線を開かれたし」


10秒……1分……5分……。時間は経過するが返答はない。


「これって梨の礫っていう方が正確じゃないか?」


「ははは。かもしれませんぜ。にしても、一体いつの間にエクセリオンをこんなに建造したんですかね」


「……知るか」


サイジョウの質問にオガタは不機嫌そうに、素っ気なく答えた。サイジョウ自身、特に意味のない質問だったらしく「そうですか」と言ってコーヒーを啜り始めた。

オガタは相も変わらずタバコを吸って暇をつぶし始める。同時に、サイジョウに嘘を言ったことに若干の後ろめたさをを覚えた。

エクセリオンが起工された直後に、既にエクセリオン級が量産体制に入っていたということくらいは、オガタもしっていたのだ。

江計画が棄却された場合は輸送艦にでも改めた形にするという裏・江計画とでもいうべき計画が、参謀本部及び宇宙軍総司令部内で進んでいたことも、彼は知っていた。

それも各方面軍の予備費で各個に、年度を跨いで調達することにより可能としていたことも。

さらにいえば、本国が国内よりも先に大マゼラン共和国に向けての輸出品として建造を極秘に進めていたことも。

だが、彼がそれらに対して不機嫌になっているわけではない。

量産型エクセリオンの()()()()()()に不服だったのだ。

ネームシップとなったエクセリオンは青色のカラーリングである。これだけはオガタが上層部に断固として譲らなかったことの一つである。

だが、量産型はなんと黒色である。

光学識別に対しての低視認性確保のためとなっているが、それは確かに成功している。

そのせいで全くもって目立たないことが問題だったのだ。

宇宙戦艦とは、青であったり、赤であったり、白であったり、緑であったり……その国や活動宙域に合わせたカラーリングを施すからこそ、カッコよくなるのだ!というのが、オガタの持論の一つだ。

それをこともあろうか黒! 地味かつダサいとすら思えるそのカラーリングに、オガタは嘆息を禁じ得ない。


(せめて灰色であれば及第点だったものを。残念だ)


胸中の呟きに誰も答えない。

彼の部下たちはオガタが思索に耽ることになれているため、オガタそっちのけで働いている。

それをみつつ、オガタは自分の左手に座る小さな将校を見る。


「なんでしょうか。准将閣下」


視線に気いたのか、天羽は大きな軍帽を指で押し上げそれを確認し、脱帽した。

脱帽したことにより抑えられていた銀髪が零れ落ち、美しく輝く。

一瞬だがそれに見惚れたオガタだが、相手は皇族でありそもそも男だと己に言い聞かせた。


「いや……暇ではないかと思ってね」


「それは准将閣下のことでしょうか?それとも、私に仰られているのでしょうか?」


この齢16の皇族将校にオガタが気を遣い、逆に天然であろうが厭味を言われているのを見て数名が笑いを隠した。

オガタといえばよく言えば豪放磊落。悪く言えば自由奔放な人間であり、訓練中やこういった状況中はいつもタバコを吹かして指揮所内を副流煙で満たし、参謀本部長であろうが総司令だろうが食ってかかるイメージがあったためだ。

オガタからすれば不本意極まりないイメージを部下が抱いているわけだが、彼自身は「良き上官」のつもりであり、それに関しては部下の大多数が首肯する。

その証拠に、タバコを指揮所内外どこでも吹かすこと以外には、誰も彼の悪口を言わない。ただし、訓練中・直後は除くとする。

さて、この厭味めいた天然気味の発言に、オガタはたじろぐことになった。


「君に言っているのだよ天羽特務准将。今ここに娯楽はない。あるのはタバコとコーヒーと、少しの菓子。だが君は、未成年だからタバコを吸えない。それにコーヒーにも菓子にも手を付けないでいる。それに君は今、見学の立場だ。暇だろう?」


逆の立場であればすこぶる暇であるはずだ。というのがオガタの認識だ。

考えてみてほしい、自分が今、全く興味もない工場の集中管理室に放り込まれ、ただ座って見学しているだけという状況を。

始めこそ真新しい機材や忙しそうにする人がいれば、それに興味を持って見学するだろう。だが、1時間、2時間と時間が過ぎれば、それにも飽きてしまい、もはや苦行の領域に入る。

だが、天羽は首を横に振る。


「いいえ。決して暇などではありません。むしろ流れ行く時間が惜しいとすら思います」


天羽の回答に、タバコを吹かす准将は興味を惹かれた。


「では私の暇潰しとして、その真意を教えてくれないか」


「はい。まずエクセリオンには人とロボットが共存し、一つの戦闘集団となっていることに興味が尽きません。第二に、この司令部内の人々の動きがとても無駄がなく、よく演練されたものであることが伺え、見ていて飽きません。第三に、私自身の安全がどうやって守られてきたのか。そして国民の命がこれからもどうやって守られていくのか。この目に焼き付けたいのです」


最後の言葉に皇族の威厳があった。

オガタが口をあんぐりと開け、危うくタバコを落とすとこだったのを、サイジョウのアシストにより回避できたのが幸いだった。


「よろしい。実に面白い回答だ。ただ最後のは誤りを訂正せねばならない」


「どういうことでしょうか?」


幼い特務准将はオガタが何を言わんとしているのかがわからなかった。


「君は今、軍服を身に纏い特務准将の階級を与えられている。ならば、今は君も国民の命を守る立場だ」


「……稚拙な発言、恥ずかしい限りです」


天羽が委縮したのをみて、オガタは普段通りに接していた。


「気にするな。君はまだ若い」


天羽は頭をガシガシと撫でられる。若干ながら抵抗しようとしたようだが、嫌がる素振りはない。

その時、オガタは違和感を覚えた。


(えらく髪が細いな……肌も白いし首筋も細い……ちょっと不健康じゃないのか?)


皇族に対し不敬な疑念を浮かべる中、艦隊旗艦より命令が下った。




宛 エクセリオン  発 艦隊旗艦「アマノガワ」

地球時間 1183年5月6日1305時に攻撃を開始する。エクセリオンは艦首大型兵器にて、艦隊の(さきがけ)となれ


銀(白)髪美少女といえば

テレサ・テスタロッサ(フルメタルパニック)

ホシノ・ルリ(機動戦艦ナデシコ)

ニア(天元突破グレンラガン)

エルネスティ・エチェバルリア(ナイツ&マジック)

え?この中に1人男がいる?気のせいだ(((

ということで、作者は銀髪好きでもあります。

次回は5月7日19時ごろ更新予定です。

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