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第20隻目 中堅将校、頭を抱える!

令和元年が始まりました!

令和初投稿ですが地味な内容です。

軍隊らしい内容ともいえますので、マニアックな内容とも言えます

※注意※

今回は戦艦の活躍もなければ、オガタが設計に悩むシーンもありません。


ブックマーク登録件数760件突破。評価50名様突破。SF:宇宙ジャンル週間2位!

皆様ありがとうございます。

宇宙歴1183年5月2日

レンミッタ軍用宇宙港 エクセリオン第一会議室


会議室内には各部署のリーダーが揃い踏みしていた。

艦長であるオガタ准将。副長であるサイジョウ少佐。

以下列記及び、簡単な説明である。

砲雷長、レルゲン中佐。軍歴30年となるベテランとなる砲雷戦畑一筋。

機関長、チョウ中佐。全身サイボーグ。縮退炉取り扱いのプロフェッショナル。

船務長兼電子戦長 ミッシェル大尉。言わずと知れたストーカー。もとい、電子戦のスペシャリスト。

航海長 シュナイツァー少佐。最近少佐となった軍人一家の末っ子。能力的に中の上。

機動長(機動兵器) マッカラン大尉。機動兵器部隊では現在、最専任であるため出席。ワイルドフェイスと自認するが、周囲からは山賊顔と揶揄される。

整備長(機動兵器関連整備) ズムウォルト中尉。口が悪いが腕は確か。全ての機動兵器整備に精通。

衛生長 マキナミ中佐。シュナイツァーと同期。ただし医師試験に合格により序列は上に。

補給長 ミハイロフ少佐。酒豪。サイジョウとは艦内酒場での良き飲み仲間。仕事は真面目。

警務長 ゼニガタ少佐。先祖がすごい警察官だったという噂が絶えない叩き上げ。愛称「とっつぁん」


他細かい部署の長もいたが、オガタが尉官以上の長のみを集合させたため、この人数となった。

エクセリオンを運用するには、この中の誰一人として欠いてはならない重要なメンバーでもある。

オガタは彼らを見て一瞬「名前が出てこない……!」となったが、すぐさま脳内データベースから引きずりだして顔と名前、簡単な経歴などを脳内画面にて表示して、名前を間違えたりするというミスを起こさずに済んだ。

自分の直接上の人間が自分を覚えてくれていないというのは、士気低下に直結。最悪、反抗の芽を生むきっかけにもなりかねない。故に、名前を間違わないというのは、オガタの経験則によれば「絶対」であった。


「では定刻となりましたので、これより、緊急会議を実施します」


サイジョウの進行で始まった会議であるが、誰もが表情をこわばらせていた。

そんななか、一人の若い佐官が挙手して発言の許可を求めた。

サイジョウはその佐官を指名して、彼は口を開く。


「会議を始めるのは構わないのですが、……そちらの方は?」


航海長であるシュナイツァーだった。

会議室に入室したときから、オガタの横に立っているその新参者に疑問を抱いていたのだ。

ただし、彼がなぜこの質問をしたのかは、彼の横に座る金髪の女性尉官が「あれは敵あれは敵あれは敵だから殺す殺す殺す……」などと小言でなんとも恐ろしい念仏を唱えていたからだ。

その恐怖から逃れるための質問であった。

この時、シュナイツァーとサイジョウとミッシェル。そして最近帰ってきたばかりのチョウ以外は、その正体を知っていた。いや知っていて然るべき人物なのだ。

だからこそ表情をこわばらせ、頑なに現実を受け入れないように。これは夢か幻だと己に言い聞かせていた。にもかかわらず、この若手の航海長はなんとも直接的な質問を投げてしまった。故に、この場にいる全員が己が想像する答えと違うことを切に願っていた。

頼むから、他人の空似であってくれ!と。


「それは私自身が説明します。皆さん初めまして。私は源久天皇が長子、天羽と申します。この度は特務准将の任を拝命し、エクセリオンには使節団長の名目で配属されました。肩書こそ大層ですが、今日から軍歴がはじまった新兵未満です。何卒ご指導ご鞭撻のほどをお願いします」


現実はそう甘くはなかった。

自分達の予想が的中したにもかかわらず、彼らは微塵も喜ばない。

なぜならば、皇族が乗艦するとなればそれ相応の応対をしなくてはならない。特に頭を抱えているのは給食業務を行う部署の長であるミハイロフ大尉であった。

皇族ともなれば、その食事には細心の注意を払う必要があるからだ。厨房を取り仕切る古株で神経質な給養長に頭を下げてでも、最高の料理を毎食作らせなくてならない。考えただけでも吐きそうになるほどの心労が、ミハイロフを襲っていた。

次にゼニガタ大尉も頭を抱えていた。オガタが尉官以上で警備を固めるように言っていたその意味を、ここにきてようやく理解していた。皇族の警備ともなれば厳重かつ、なお厳重にしてもなお足りない。ローテーションを一から組み直し、万が一がないようにしなくてならない、という重い重責が双肩に食い込んでいた。

そしてサイジョウもまた、頭を抱える。彼女が頭を抱えるのは「やんごとなき御仁」という意味をいまいち理解しておらず、かなり失礼な発言をしていたことに今になって気付いたのだ。さらに言えば、そのあとも天羽が「普段通りの口調で結構です。特務准将とはいえ、軍歴は今日から始まった新兵未満ですから」などと言ったものだから、てっきり一日体験的な物だと思っていたのだ。そのため、天羽の長い銀髪で遊んだり、「私になんでも聞いてください。なんでも教えますぜ!」などと不遜極まりない行動・発言を繰り返していたからだ。

サイジョウが頭を抱え始めたために進行役不在となり、オガタがセルフで進め始めた。


「まぁ諸君ら。天羽殿下は……」


「殿下ではなく特務准将であります。また、階級は一つ下とみてほしいと言ったはずであります。オガタ准将閣下」


「え~……では、天羽は本日よりエクセリオンに配属された。先ほどの自己紹介通り、使節団長となる。使節艦隊司令は私が務めるのは変わっていない」


皇族。それも天皇が長子となれば皇太子。それが使節団長であるという意味を理解できない程、エクセリオンの幹部連中は馬鹿ではない。

彼らはオガタの言葉で聞くことによって、その意味、その重さを理解し、どうにか現実を受け入れ始めた。


「この使節艦隊関連で本国から命令が下ったため、ここで通知する。宇宙歴1183年5月20日までに月面基地に帰還せよ。という命令だ。そのため、帰還に向け残りの試験を実施していく」


「では、あの試験もやるのでしょうか?」


「あぁ。やるさ」


砲雷長であるレルゲンはその言葉を待っていたといわんばかりに、顔に嬉しいという感情を浮かべている。

いままでエクセリオンでは一度も実射したことのないあの砲である。

小型の実証実験などではその安全性や破壊力は確認できているものの、実物ではまだであったからだ。

レルゲンが満面の笑みでいるのを尻目に、会議は進んでいく。


「で、ここからが本題だ。もともと使節艦隊の件は決定事項であったし、天羽がきたことはイレギュラーではあったが、許容範囲内だ。……この間、海賊をコテンパンにしたのを覚えているな」


誰もが頷く。忘れるはずがない一方的な戦闘。もはや虐殺と言い換えても差し支えないほどの、一方的な攻撃を行い、圧倒的な勝利であった。

あれほどの戦果を挙げた戦いを、誰が忘れるだろうか。


「で、だ。あの海賊の背後関係をラグーン方面軍が探っていたわけだが、判明したそうだ」


「それは、どこですわ?」


ミッシェルはいつの間にか恐ろしい念仏を唱えるのを止め、素に戻っていた。

彼女の疑問は確かだ。その背後関係如何によって、今後のエクセリオンの動向が変わってくるのだからだ。


「……ライラバル星系連合。あの国だ」


「方面軍のこじつけではなくて? 最近になって方面軍司令に血気盛んなのが着任したと聞きましたわ」


「自分もミッシェル大尉に同感です。あまりにも()()()()ている」


シュナイツァーが同調する。

他の面々もそれに同調していく。

そんな中、今まで黙していた一人が口を開いた。


「ラグーン方面軍が廃棄したはずのヴァリャーグ級戦艦。その廃棄は、確かに正規の手段を則って行われましたが、廃棄業者はそれをライラバル星系連合に属するラグーン方面内の飛び地に『廃棄』していたことを確認しております。投降した海賊の中には首領がおり、自身がライラバル星系連合の非正規軍人、傭兵であることを自供しました。またこの海賊のフロント企業として艦船などの廃棄業務を行っていたことも自供しております」


そこにいたのはMOTOKOである。

階級こそないものの、自律思考型ロボット達の(トップ)としてこの会議に出席していたのだ。

表情こそないが、それはドヤ顔ならぬドヤ声だった。


「俺が言おうとしてたこと全部言いやがって。まぁ、そういうことだ。これは十分な協定違反であり、今後障害になりうる存在として、ラグーン方面軍内で準備が進められている。方面軍隷下の全艦艇を出すとのことだ。エクセリオンがこの助太刀を頼まれたってのが、今回の議題の本丸ってわけだ」


オガタは軽く言っているが、事態は重い。

小マゼラン方面からは20万隻以上の大艦隊。いて座A*というブラックホールを挟んだ丁度反対側にはライラバル星系連合。最悪、挟撃に合う可能性がある。

そこに、勢いよく挙手するものがいた。

その勢いで軍帽がくるりと回り、ツバは後頭部に達した。


「失礼ながら、発言します」


「なんだね、天羽」


「だったら、やるしかないでしょう」


小柄な皇族将校は、軍帽を直しながらあっけからんと言い放ったのであった。

書き終わって、オガタがタバコ吸ってないことに違和感を覚えました。

……あとコーヒーもないようです。

現実だと、WW2時代の戦艦榛名がお召艦となりましたが、きっと榛名艦内でも怒涛の状況なのでしょうね……そう思うと、少し感慨深いものです。

現実において本日の皇居周辺などの警備のすごさはヤバいですね。きっとゼニガタ少佐は頭を抱えまくってるでしょう(遠い目

次回更新予定は5月3日夕方ごろ予定です。

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