第19隻目 機密書類と連絡将校!
次の投稿は5月1日といったが、あれは嘘だ(キリ
前話(閑話)の投稿予定は4月28日だったのですが予約投稿設定を忘れており、4月26日に投稿してしまいました。
そのため、この話の投稿で4月28日分とさせてただきます><
誠に申し訳ありません。
評価者人数45名様突破。皆さま、評価していただきありがとうございます。
感想をくださる皆様、励みになっております。誠にありがとうございます><
ラグーン宙域方面軍司令部がおかれるレンミッタ。その司令部内の上級将校用の面談室にて、オガタはA3サイズの茶封筒を渡された。それには帝国宇宙軍総司令部に君臨する総司令長官を示す蠟封が成されていた。そして地球帝国議会を示す蠟印。さらには地球帝国の旧き象徴たる、各州(旧:各国)王侯の末裔たちのトップに座る源久天皇の蠟印まで押される茶封筒。
この封筒を届けた背丈の低い連絡将校は、目深く軍帽を被り表情は読めない。ただオガタが開封するのを待っていた。
オガタは仕方ないとばかりで、その場で開封する。
中には数枚の書類。1枚目にはオガタが見たくない現実がそこにあった。
1183年5月10日に発生したラグーン宙域辺境部での海賊との戦闘事案より、試験艦エクセリオンを一等航宙艦エクセリオン級として正式採用とする。
またエクセリオン量産化に伴い、先立って以下の工廠などを新たに設置するものとする。
縮退炉製造工廠 10
10㎞級超ド級戦艦建造工廠 1000
艦艇建造用自律思考型ロボット製造工廠 20
艦艇搭載型自立思考型ロボット製造工廠 10
多目的軍用物品製造工廠 20
戦艦建造工廠において現在既に20工廠が完成、18工廠においてエクセリオン級建造開始。また各工廠完成次第、エクセリオン級の建造を開始する。
その他各工廠は完成次第、速やかに製造を開始するものとする。
以下、年度ごとの建造計画
1183年度 2000隻調達
1184年度 6000隻調達
1185年度 10000隻調達
1186年度 10000隻調達
1187年度 20000隻調達
またこの建造計画遂行のため、地球帝国軍、並びに地球帝国議会は1183年12月12日1205より戒厳令を発布・施行する。
本決定は帝国宇宙軍の提案により、地球帝国議会により承認されている。
戒厳令の発布・施行の宣言は源久天皇によってなされるものとする。
一読して、この紙をぐちゃぐちゃに丸めて床に叩きつけなかったのは、精一杯の自制心をオガタが振り絞ったからだ。
紙をぐちゃぐちゃに丸めなかった変わりに、空だったはずの左手には拳となり、指の隙間から赤い液体が滴っていた。
(こんなことのために、陛下を担ぎだすのか! 腐った愚衆議員共め!!)
許しがたい決定だった。
ましてや、前世から右派であり天皇派を自認するオガタにとって、天皇陛下に汚れ役を押し付けるようなマネをする帝国議会に、怒りを禁じえない決定なのだ。
この仕業がなぜ帝国議会によるものとオガタは判断するのか。
それは、帝国宇宙軍の上層部はすべて保守派で固めれているからだ。
上級将校ともなれば身辺調査は綿密に行われる。それも裏社会と繋がりはないかというのは当たり前だが、他に以下の特異調査がある。
王や皇帝といった、出身州のそういった旧支配階級を、たとえ象徴だとしても尊敬しているのかどうかというものだ。
また、出身州以外の旧支配階級を、嫌悪したり蔑ろにしていないか。などが非常に重要視される。
このことを知っているオガタからすれば、議会以外にこんな馬鹿げた決定を下す奴はいないということだ。
「閣下。次のをご覧ください」
連絡将校は先を読む様に急かす。
連絡将校の役割はこの書類をオガタが読み終わったのを確認し、その場で焼却処分して灰を持ち帰ることまでだ。
恒多無や脳通を利用しない、古典的な連絡手段。しかしながら今現在までも有効なのは、その徹底した情報管理を行えることだ。
急かされたオガタは若干苛立ちながらも次の紙を、血で湿らせながら読みはじめた。
小マゼラン銀河より飛来せし正体不明の艦隊への使節団派遣について
地球帝国議会、並びに宇宙軍は通称「謎の大艦隊」への使節団派遣を行うことを正式決定した。
本使節団はエクセリオン級戦艦先行試作型一番艦エクセリオンを旗艦とし、僚艦に現在建造されている同級量産型10隻と、小マゼラン銀河探査に活躍したアダムとイブにより、計13隻の艦隊を派遣し行うものとする。
エクセリオンは5月20日まで地球月面基地に帰還せよ。
同地にて詳細な説明を実施するものとする。
追記 この使節団の派遣により、地球帝国軍の建造計画を柔軟に変更する。
最後の一文でオガタの目に生気が戻る。
はっとして、連絡将校を見るも、やはりオガタからはその顔は見えない。
ただ見えるのは不格好な大きさの軍帽のみ。
「閣下。もう一枚ございます」
さらに急かされ、オガタは最後の1枚を読む。
その一枚は特に驚きが禁じえないないようである。
いや、これまでの驚きなど霞んでしまう内容であったのだ。
オガタ・マサヒサ宇宙軍准将の現在目の前にいる人物は天羽皇太子であり、使節団長を務める者であり、階級を特務准将とする。丁重におもてなすように。
たっぷりの上下の余白。簡略に中央にのみ書かれた短文。
されど、この内容にオガタは表情が固まっていた。
現在、漢名を使用できるのは日本州において皇族のみ。
そして、皇族を騙る行為は国家反逆罪か国家背信罪、もしくは両方に該当し即処刑となる。
さらにはこの書類は軍、議会、王族という地球帝国の三巨頭のそれぞれトップが蠟印を施すほどの書類。
その書類にこんなジョークめいたものが紛れ込んでいても、疑う余地はなかった。
「あの……えー……天羽皇太子殿下でありゃせられますか?」
畏まったオガタは、普段なら総司令長官にもしないような言葉遣いを始める。
その全くもって慣れない言葉で舌をかなり勢いよく噛んでしまっていたが、そこは帝国軍人らしくなにごともなかったように振舞って見せた。
当然であるが舌を噛んで赤ちゃん言葉のようになったのを、真正面に立つ天羽が聞き逃すことはなかったが、聞かなかったことにした。
「現在は天羽特務准将として任官しております。またこの特務というのは対外的には一個上に見るのが通常でしょうが、私の場合は一つ下に見てください。オガタ准将閣下」
淡々と答えるこの特務准将は伝令将校の役目を果たしたとばかりに、書類をひったくると灰皿に丸めて放り込んだ。すぐに火がないと気付いたのか、オガタの胸ポケットから手早くオイルライターを抜いて火を点けた。
「えっと、では天羽特務准将。貴官の役目は?」
一応はオガタより立場は下であると言われたため、普段でもそこそこ口にする准将としての口調で話すことで、今度は噛まずに話すことができていた。
汗が額にじんでいるが、それもまた、相手が緊張することに成れている特務准将にとって気にすることではなかった。
「表向きには国家元首相当が出向くことで、相手へ誠意を表すこと。実質は国内向けのプロパガンダに担ぎ出され、ハリボテであります。オガタ准将閣下」
実に自らの立場を正鵠を射た回答した天羽特務准将だが、その皮肉たっぷりな様子はなにもかもを悟ったような風体である。
だが、それは天羽特務准将がもう少し年を取っていたら、もっといえば中年か高齢になっていれば様になっただろう。
しかしながら、その小柄な体躯がそれを滑稽に映す要因となっていることには、当の本人は全くわかっていなかった。
(天羽皇太子ってまだ16歳くらいじゃなかったか? それにしては小柄だな……)
オガタが膨大な記憶データの海をかき分けてほしい情報を取り出そうとする中、扉が突然開かれた。
「准将!」
「ノックくらいせんか馬鹿もん!」
押し入ってきたのはサイジョウである。
彼女は現在の状況を、片寄った知識と偏見において勝手に判断した。
「准将閣下。まさか、まさかオガタ准将が未成年者略取だなんて……いますぐ出頭すれば降格処分くらいで済むはずですぜ」
「馬鹿。俺は二十歳以上の女性にしか興味ないぞ。しかもこの方はやんごとなき御仁だ。口を慎め!」
サイジョウが馬鹿げたことを言いだしたが、彼女が半分面白がっているのは理解していたので、オガタは軽く流しつつ釘をさす。
そのやり取りを見てこの天羽は、先行きが不安になる。
(帝国宇宙軍は馬鹿なのか? こんな風体で使節艦隊の艦隊司令がこの男だと?)
懐疑的な目でオガタを睨むように見るも、天羽からはオガタの表情は見えない。いや、実際のところさっきから顔はほとんど見えていないのだ。見えていたのはオガタの顎から下だけだ。
そのぶかぶかの軍帽のツバが上方視界を見事に塞いでいるからである。
「えっとだな。とりあえず、艦に戻るぞ。本日地球時間1800よりエクセリオン内の会議室にて、各部署責任者以上全員で会議を行う。急ですまないが、連絡頼む」
「了解しました。警備を付けましょうか」
「あぁ。できれば尉官クラスで警備を固めてほしい」
オガタが仕事モードに切り替わったのをみてサイジョウもまた仕事モードに切り替わった。
その一瞬での人の変わりように、天羽は感激していた。
(これがプロの軍人……興味深い)
天羽はオガタに興味が注り、指で軍帽のツバ押し上げて、オガタの顔を始めて見た。
(……おっさんかよ)
先ほどまでの感激はどこかに飛んでいき、落胆めいた言葉を胸中にて吐露した。
「あ、准将にお伝えすることがあってきたのです」
「おう。そりゃそうだろうな」
冷静さを取り戻したサイジョウは伝えるべき事を伝える。
「ラグーン宙域方面軍司令部より、海賊の支援組織が判明したと連絡がありました。また……助太刀してほしいともいわれました」
「それは、また一段と面白そうな話だな」
オガタは人一倍悪そうな笑いを浮かべ、タバコを咥える。
ライターを天羽が持っていることを思い出し、思わずいつもの調子でこういった。
「見て分からんのか。火だ。火」
「あ、はい」
オガタからすればライターを返してもらうつもりだったのだが、天羽は背伸びしてオガタが咥えるタバコの先端に火を灯した。
「すまない……ライターを返してくれればよかったのだが」
「いえ。ここは軍隊。序列で考えればこうしてもおかしくないでしょう」
その様子をサイジョウは見ていた。
そして「こんな合法的にオガタ准将に顔を近づける方法があっただなんて……!」などとのたまっていた。
「では天羽特務准将、サイジョウ少佐帰るぞ。我らが艦に」
「了解です」
「了解、しました」
オガタは司令所館内を紫煙を燻らせながら歩き始める。
己が設計し鍛え上げられた部下たちが待つ最高最強の戦艦に向け、部下を引き連れて闊歩するのだった。
「見て分からんのか? 火だ。火」(葉巻フリフリ)
ヘルシング インテグラさんの言葉を借用したことをお詫びします(テヘ
あのセリフはスモーカーの一人として、一度は誰かに言ってみたいものです。
次話投稿予定は、今度こそ5月1日予定です。次回もサービスサービスゥ!
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