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第15隻目 「我、縮退炉にて航行中」

やっと戦闘に突入!

自分でも戦闘に突入するまで長かったなと思います……

誤字報告をしてくださる皆さん、ありがとうございます!

なかなかそこまで手が回らないもので……とてもありがたいです><


ブクマ登録580件突破!総合PV7万突破!ユニーク18,000突破!

皆さん読んでいただきありがとうございます。

「本艦ワープアウトまで残り5分」


跳躍管制を行う航海長がワープアウトまで間近であることを伝える。

艦内は既に臨戦態勢が敷かれ、いつでも戦闘状況に突入できるようになっていた。


「総員、臨戦態勢。通信士、16艦隊旗艦に救援に向かうことを知らせろ。航海長、現出タイミングを誤るなよ。0.001秒のずれが命取りになる。レーダー班は警戒を厳にせよ。各機動兵器部隊は現出と同時に出撃。まずは敵状把握に務めよ。機関部、縮退炉の出力を限界まで上げよ」


一息にオガタは指示を出す。そして次の指示を告げた。


「ではこれより、戦闘システムを起動する。サイジョウ少佐。鍵用意」


「鍵用意良し!」


サイジョウも懐から平べったい一本の鍵を取り出。オガタも同じく鍵を取り出し、戦闘指揮所内の戦闘システム起動用の2個の鍵穴に、それぞれ差し込む。

顔を見合わせ、オガタはタイミングを合わせるべく掛け声を出す。


「カウントする。3、2、1、GO!」


二つのカギが同時に回され、戦闘システムが立ち上がっていく。


(1,000年以上経ってもこの方式か。イージスシステムのようだ。まぁ、この戦闘システム自体がイージスシステムの模倣・発展品なのだけどな)


オガタはそう思う横で、サイジョウは……。


(オガタ准将と初めての共同作業……初めての共同作業……!)


と、こんな状況にもかかわらず鼻息を荒くしていた。

それを尻目に見ながら、正規の昇進を果たしたミッシェル大尉は、サイジョウを恨めしそうに睨みつけていた。


オガタは脳内データベースにアクセスする。この戦闘システムの成り立ちの歴史を……。


彼の前世での死後直後には、戦闘システムに限らず、ほぼ全てをAIに任せっきりの艦艇や戦闘機が出現していた。特に人手不足に喘ぐ海軍は殊更にAI技術に陶酔しており、艦内でマンパワーが必要な部分以外は全てAI任せにすることで、170mクラスの駆逐艦を僅か80名で運用していたほどだ。これによって艦内居住スペースの縮小が図られ、戦闘能力が向上するというメリットも大きかった。宇宙歴になり、人類が宇宙への進出を始めた頃などは、航宙艦にとどまらず、民間の輸送船や移民船の航行システムにもAIが活用されていたほどだ。だが、スカイネット事件が発生し、AIを活用するシステムというのは、宇宙軍を含めて地球帝国全域で全面禁止となった。

便利であったがゆえに依存し、そしてそれが使えなくなった結果がマンパワーによる解決という時代の逆行であった。

しかしながら、その逆行によって過去の遺産といわれたイージスシステムの解析、さらに発展させた現在の汎用戦闘システムの構築や、縮退炉を封じたあとも跳躍を可能にした数学的事象変動域形成フィールドを実用化。などなど、人類がいま持つ技術はAIがなくなったが故に確保できたともいえる。

しかしながら、数学的事象変動域フィールドの基礎理論、及びその発展理論や製法などはAIによって提唱されたのは皮肉な話である。


オガタはデータベースからそれらの情報を一瞬で把握すると同時に、嘆息する。


(まぁたAIかよ)


AI技術の発展と衰退の歴史はオガタが思い描いていた未来とは、大きく乖離したものだった。

彼の中での千年後といえば、人類は銀河全域に進出して、人々は働くこともなく悠々自適に生活しているものだとばかり思っていたが、現実は前世と変わらず、人々は日々働いている。

スカイネット事件までは確かにオガタが思い描いた未来に近かった。だが、それによって仕事にありつけない人も多かったのが実情だ。そう考えればAIがなくなったことにより、復活した職業が多く、職にありつけた人が多くいるのも事実だ。

このちぐはぐな現実に「事実は小説よりも奇成り……か」と独り言を漏らす。


「准将。どうされましたか?」


「いやなんでもない」


サイジョウの心配を余所に、思考迷宮に嵌りかけていたオガタはタバコを咥えて紫煙を吸い始める。

紫煙とともに思考迷宮に入ろうとする自分の悪癖を吐き出す。そこでどうにか思考迷宮に入らずに済んだ。

入るのは後でいい。そう割り切って正面を見据えたと同時に、「ワープアウト1分前!」と報告が入った。


「准将。吸うなとは言いやしませんが、灰皿はつかってくだせぇ」


「おう。すまない」


サイジョウは普段通りに懐から携帯灰皿を取り出してオガタに渡す。

携帯灰皿に灰を落とす。


「サイジョウ。いつもありがとう」


「ふ、副官たるもの、これくらいは朝飯前ですぜ」


赤面するサイジョウの頭を撫でくりまわすオガタだったが、周りからの視線に気づいていないわけではない。


(いちゃつくんじゃねーよ色ボケ准将!)


と殺視線の集中砲火が浴びせられているが、どこ吹く風である。

その視線は男どもであり、女性陣達は逆に黄色い声を上げていた。この黄色い声に呼応するように更に殺視線の勢いは増加するので、さすがのオガタも撫でるのを止めた。


「ワープアウト10秒前!!!」


航海長が場の空気を断ち切るように大声を張り上げる。

ワープアウト間近となり、先ほどまでの空気は消え失せ、緊張が張り詰める。


「ワープアウト直後にぶちかますぞ!」


オガタが一喝すると、皆は声を出さずに無言で小さく肯く。


「3、2、1、今!」


航海長の声と共に、エクセリオンは亜空間から飛び出す。

すると左側面に弾着したことを知らせる着弾報告が戦闘システムによって知らされたが、「異常なし」という表示も併記されていた。


「こちら試験艦『エクセリオン』え~っと、我、縮退炉にて航行中」


オガタはラグーン宙域方面軍第16艦隊旗艦『ダコタ』に恒多無で直接呼びかける。

呼びかけられたダコタは急に明瞭な声で、それも戦場に似つかわしくない陽気な声が聞こえたのだから驚いていた。

陽気な声なのは兎も角、明瞭に聞こえたのは、エクセリオンの強力な電子攻撃妨害装置や電子兵器クラッキング装置が正常に起動し、この戦闘宙域を覆っていたジャミングを発生源から断ったからだ。

ミッシェルがドヤ顔で「私が、私がぶっ潰して差し上げましたのよ。オホホホホ」と高笑いを決めている。


『こ、こちらラ方(らほう)16の艦隊司令のグンニッツだ。救援に、感謝する』


緊急時であるために略称であるが、ラグーン宙域方面軍第16艦隊司令のグンニッツは救援に心から感謝していた。だが、オガタはそれよりも事態の解決こそが最優先事項であるため、こんな会話で時間をかけるわけにはいかない。

脳通であれば一瞬で終わることだが、残念ながら脳通の弱点は登録していない人物とはやり取りが一切できないことであり、互いに脳を生体コンピューター化している必要もある。

よってこんな緊急時でも言葉を介しての意思疎通が図られる。


「こちらエクセリオン艦長のオガタだ。至急、戦闘情報の提供を求める」


『了解した。情報を転送する』


この会話の合間にも次々とエクセリオンにはレーザーが直撃するが、エクセリオンにはビクともしない。

元々は大きな研究施設や、軍の司令部などに設置されるように設計された超大型の81式量子演算機。それを載せるエクセリオンの処理能力ではこの程度の砲火は、象に一粒の砂を投げつけるくらいに無駄である。

だが、その砂粒も1粒ではなく、100粒、10000粒がまとめて投げられれば、どうなるのか。

転送が完了すると同時に光学観測班は今まで見たことのない光景を見る。


「右舷より同時弾着攻撃来ます!」


数百どころか、万近いミサイルやレーザーによる超飽和攻撃。

ワープアウト直後でほぼ停止状態だったエクセリオンは恰好の的となり、この海賊艦艇からの集中砲火を受ける羽目となる。


「第1戦闘速度。艦首を敵方に回頭」


「了解。第一戦闘速度。艦首敵方に回頭」


艦首と艦尾付近に設けられたサイドスラスターが軽く噴いて、艦をくるっと回す。絶妙なタイミングで逆のスラスターが一瞬噴くと、回転運動は収まり、艦首の先には敵艦隊が真正面に居座る正面戦闘となる。

エクセリオンにとって最も火力を発揮することができるのは正面である。

艦首から艦尾に掛けて据え広がっていく平べったい四角錐状の艦形は、全ての背負い砲塔や正面固定式レーザーなどの武装を全力使用できるためだ。

だが、それは相手にとっても同じである。

転送された情報では紅蓮海賊団と呼ばれるラグーン宙域を根城にする海賊の主な艦艇は旧式とはいえ、帝国製の巡視船やコルベット、果ては重巡洋艦や戦艦まである。

これら艦艇群は正面戦闘を中心に設計されており、コルベット艦でさえ正面固定式300㎜レーザーを艦首に4門備え、背負い砲塔式200㎜連装砲を艦首側上甲板に2基、艦首底部甲板にも同1基。逆に艦尾には底部甲板に1基のみであり、上甲板はVLSとなっているくらいのバリバリの正面戦闘特化である。

重巡であれば背負い砲塔で500㎜を超え、戦艦では1000㎜を超える砲も珍しくない。また艦種が大きなものになればなるほど、背負い砲塔の数も増えていく。

エクセリオンが加速を始めたことで、そんな砲火の雨あられを避けることに成功したわけだが、エクセリオン艦内では、緊張しつつも落ち着いている。

なぜならば、演習などよりも遥かに緩かったからだ。


「では、反撃を開始せよ」


オガタは命令を下すと同時に、格納されていた各種の砲が姿を現し、機動兵器群がエクセリオンから飛び出していった。

斯くして、エクセリオンの初陣が始まった。

宇宙での艦隊戦って、なんでどれもこれも艦橋が全部そろった方向なんでしょうねぇ。

重力ないんだから、好き勝手な方向でもいいんじゃないのかなぁ~

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