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第13隻目 エクセリオン、ワープインに備える!

総合PV5万、総合ユニーク14000突破!

皆様、読んでくださって本当にありがとうございます><

今回はスペースオペラ作品でよく登場するワープについてのお話です。

現在、試験艦エクセリオンは天の川銀河のハクチョウ腕の中。太陽系からはいて座A*という大質量ブラックホールにより宇宙歴600年ごろまで観測不可能だった宙域、ハクチョウ腕外先端部付近にいた。

近傍には多くの恒星系があり、ハビタブルゾーンであるハクチョウ腕各星系への入植は700年台から始まり、800年台には約10億人が入植した。

エクセリオンは現在、ジャンクション宙域と呼称されている宙域にいる。ジャンクション宙域と呼称されるのは、近傍にいくつもの人類の支配地域となっている宙域が存在するためだ。1000光年ほど銀河中心に向かえばフロンタル宙域、2000年光年ほどハクチョウ腕外端部に行けばハクチョウ宙域、1000光年ほど銀河外縁部に向かえばラグーン宙域など、多数の宙域があるためだ。またラグーン宙域から更に8000光年ほど銀河外縁に向かえばライラバル星系連合国家が存在する。ライラバル星系連合国家とは天の川銀河で人類以外で唯一の文明国家であるが、人類とは敵対せずに互いに不干渉を貫くことを協定として結んでいる。

ただし、今回はライラバル星系国家の近傍宙域であるラグーン宙域で各種試験に臨むため、ライラバル星系連合国家にはラグーン宙域方面軍より事前通達と、謎の艦隊についての情報提供が行われている。

ラグーン宙域でなぜ試験を行うのか。

それは小マゼラン銀河に対し、いて座A*という大質量ブラックホールが隠れ蓑となるためだ。

ここまで警戒する必要があるのかとオガタ自身も思ってみたが、自艦が超長距離跳躍を行うための天体観測レーダーで小マゼラン銀河を観測し得る能力を持つ以上、相手も同様の装備を持っていると想定した結果がである。

今回行う試験内容としては、まずラグーン宙域を天体観測用レーダーにて網羅し、ラグーン宙域辺境へ跳躍(ワープ)を行う。その後、試験標的を射出し、ジャミングやクラッキングなどの電子兵器の有効性を実証する。また、各種兵装の実性能を小惑星や試験標的に向け行い確認する。といった内容となっている。

この試験を実施するにあたって、オガタは軍上層部に対し、再三に渡ってよりラグーン宙域などの人類移民星系外で行うことを提案していたが却下されていた。

理由としてはラグーン宙域に、ハクチョウ宙域やジャンクション宙域なども管轄するにはラグーン宙域方面軍が存在するからだ。

昨今こそ海賊対処などの不正規戦闘が主な任務となっているが、本方面軍が置かれた本来の目的はライラバル星系連合国家の抑え役である。

故に、現在においても縮退炉搭載型艦艇は無いにせよ、帝国宇宙軍の新鋭艦が優先配備されている。

快速性に優れるサウスダコタ級巡洋戦艦を筆頭に、主力であるソブレメンヌイ級戦艦やイズモ級航空母艦などの艦艇で構成されている。

これら艦艇は延べ20万隻近く、常にライラバル星系連合国家との宙域境界線上付近に半数近くが駐屯している。

とはいえ、やはり縮退炉なしでの戦闘艦艇の性能は遥かに低く、数字上の戦力は共和国との戦争時よりも2倍近く多いものの、その戦闘力は半分以下である。

話を本題に戻し、なぜラグーン宙域なのか。それはラグーン宙域方面軍の管轄内であれば不測の事態にもどうにか対処可能であるという目算があったからに他ならない。これは人的反乱という意味も含まれていることくらい、オガタでもわかった。また、もしも機関部に不具合が生じた場合でも、地球への影響が最小限に抑えられるという思惑もあったであろう。

こうしたお上の見え隠れする思惑を理解しながらも、オガタは命じられた以上はその任を果たすことに注力することになる。


「ラグーン宙域の天体軌道観測完了。ワープアウト可能地点の割り出しに成功」


「了解」


天体観測士が報告をあげ、一息つこうと紅茶を啜る中、オガタは堂々と紫煙を燻らせていた。

指揮所内の艦長席に腰かけ、煙をうまそうに肺腑に染み込ませる。


(あぁ。タバコが美味い)


今時、珍しい天然物の葉を使ったタバコにうっとりと陶酔しつつ、艦の指揮を行っていたのだ。

副官であるサイジョウはそれをみつつ、そろそろコーヒーを入れる頃合いか見計らっていた。

サイジョウ自身も今回は彼女のクラッキング技術を試す、電子戦試験があるが、試験実施の時までは今まで通りオガタの副官業務をこなしている。


「55分後にエネルギー供給を跳躍機関に接続。本艦は現在より1時間と8分後。艦内標準時間1600にワープを行う。機関部要員はワープイン作業を開始。レーダー班は見張りを残し、以外の者は休憩を取るように」


指揮所内の人員は敬礼して命令の受領を示した。

オガタも起立して答礼し、それに答えたのであった。


彼らがワープ前に休憩をするのにはれっきとした理由がある。

ワープのために異空間に突入するのだが、異空間内では第2種戦闘配置命令が出される。ワープ中は全員が即応体制を維持し、ワープアウト直後の不測事態に対応できるようにするためだ。

共和国との初戦において、ワープアウト直後に襲撃を受け大きな損害を被った。これを教訓としている。

例えワープ突入前には安全な宙域だとしても、ワープアウト時も安全とは限らない。

エクセリオンの指揮所内勤務者は、レーダー班を残し休息をとる。レーダー班の場合、亜空間内ではレーダーが役に立たないため、その間は当直を残して休息に入るのが常だからだ。

休憩に入り、同僚と歓談を初める者。軽食をとる者。タバコを吸いに喫煙所に行く者。ボードゲームを始める者。仮眠をとる者。

十人十色の時間を過ごしながら、彼らはワープに備えていた。


エクセリオンを含め、地球帝国宇宙軍の全艦艇が単独でのワープ機能を備えている。しかしながら、縮退炉か否かでその跳躍可能距離には雲泥の差がでる。縮退炉であれば一度に1万年光年以上の距離を跳躍できるが、常温核融合炉のみであれば精々が500光年ほどである。

これは亜空間内で発揮できる超光速が全くもって異なるためだ。それでも常温核融合炉でも500光年もの距離をワープできるのは、数学的事象変動フィールドにより速度という事象を書き換えているためだ。だが、それも無限に書き換えられるわけでもなく、演算機の性能も相まって、500光年が限界なのだ。だがそれでも実時間においても僅か1日足らずで500光年も跳躍できるのは、人類の英知が成しえた結晶である。

余談だが、数学的事象変動フィールドは縮退炉なしでの長距離跳躍を可能にするためであり、防御に転用可能だから戦闘時にも使われているのに過ぎない。また縮退炉を搭載するエクセリオンにおいては計算上10万光年近くを跳躍可能となるが、それほどまでに遠くてはワープアウト地点の観測が不可能であり、実質的に2万光年が限界でもある。


ところで、機関部勤務者等は休憩などとそんな悠長な暇などなく、大忙しで跳躍機関に異常がないか、縮退炉は正常に動作しているか、補機である常温核融合炉は確実に動作するのか。それらを自律思考ロボットを交えながら点検作業に勤しんでいる。

それをオガタは暇潰し。もとい、錬度確認を込めて見学していたときに、とある若手機関士達が目についた。機関部勤務員はワープと戦闘時以外は基本的に暇な役職であるが、若手等はあろうことか「俺たちばっかり働かせやがって」と、悪態を吐いていたのだ。しかしながら、オガタとしては「給料分働け」という心情である。一喝してやろうと口を開きかけたが、機関長が悪態をつく若手等を目敏く見つけて雷を落としていったので、オガタは開きかけた口をそっと閉じた。


「これは艦長。こんな所にお出で成すって」


全身サイボーグとなった男。『アダム』の機関長を務めたチョウ中佐である。

100年前の共和国との条約により、現在の宇宙軍には縮退炉に精通している機関士は皆無であったため、『アダム』よりも大型で縮退炉を搭載したエクセリオンにぜひにとオガタが勧誘したのだ。

チョウは『アダム』では少佐であった。艦内では昇格人事が一切行われていなかったというのもあり、彼が帰還時も少佐だった。本来なら年齢的にも退職という道であったが、『アダム』勤務中にサイボーグ化を施しており、肉体的な限界というのもなくなったため、帝国宇宙軍法の『能力発揮可能な肉体に限り、本人の意思が続く限り将兵は勤続する権利を有する』に従い、彼は軍に残る道を選んだのだ。

そういった諸々もあり、中佐へと昇進した彼はエクセリオンで機関長を務めることになった。


「中佐のお陰で機関周りを任せられます。感謝します」


オガタの言葉にチョウは豪快に笑ってみせた。


「艦長のお陰で私にも軍に残る道ができたものです。ここには若いのが多いもんだから、鍛えがいがあるってもんです」


チョウはそういいつつ、作業にもたついている一団を見つけ、「ちょっと行ってきやす」と言い残してすぐに指導に向かった。そういった目端が利くというのは得難い人材であるとオガタは再認識する。

若年兵が多いエクセリオンにおいて、老練した古参兵という存在の大きさは計り知れない。

ただの羊100匹の群れよりも狼に率いられた10匹の羊のほうが手強い。しかしながらここには犬くらいの実力だが十分な数がいる。ならばそれはもはや十分な戦力として機能し得る。

オガタは機関部を見学をして「機関部はなにも問題なし」と判断を下したのだった。


かくしてワープインの時刻となり、エクセリオンは亜空間へと進むのであった。

チョウ中佐のイメージは機動戦士 鉄血のオルフェンズに登場するおやっさんこと雪之丞さんをイメージしてます。

ただし、彼は全身サイボーグ化しているので、見た目的にはバトーさんぽくもあるようなないような……。

あぁ、鉄血のオルフェンズ第3期来ないかな……モビルスーツ戦も良いけど、できれば艦隊戦だけを見たい。

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