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第12隻目 試験航海を実施せよ!

総合PV4万突破! 総合ユニーク1万突破!


皆様読んでくださり、ありがとうございます!!!

引き続き、マイペースにマニアックな内容をお楽しみください。

エクセリオンは竣工と同時に試験航海に旅立つことになった。

試験航海とはその名の通り、試験を行う航海である。一般的に試験航海は竣工前、メーカーから軍に引き渡される前に行われる。最高速力や各段階速力が設計通りでるのか。また緊急停止クラッシュ・ストップ・アスターンがしっかりとできるのか。各艤装が正常に作動するのか。兵器類は設計通りの能力を有するのか。などといったことを確認し、不備があれば是正し、完全に出来上がった状態となって竣工。軍への引き渡しとなるのが通常だ。

だが、あまりにも緊迫した情勢が、そのような悠長なことをやっている暇などない!と軍を動かした。

設計も軍。建造も含めて軍が所有する工廠であったために、そういったことをすべてすっ飛ばせたともいえる。

だが、それを預かる身となったオガタからすれば、しっかりと試験航行を行ったうえで竣工としたかったのが本音だ。しかしながら、彼も軍に籍を置く以上、お上からの命令とあらばそれを遂行することが本分であることも理解していた。

彼はいつか自分も艦長や艦隊司令となりたいという考えもあったため、参謀課程を経て参謀本部付きの技術将校となり、さらには1等艦艇操舵資格、2等艦隊指揮資格も技術将校として勤務する傍らに取得していたからこそ、文句や僻みに遭いつつも、今回の大抜擢となったのだ。

そういった諸々のことを理解しつつも、やはり、どこか納得いかないオガタであったが、彼はやはり図面とにらみ合っていたのだ。


「准将。また設計ですか?」


いつものように(MOTOKOが淹れた)コーヒーをテーブルに運ぶのはサイジョウ少佐である。

彼女はオガタが昇進したのを追って、4月12日付で少佐に昇進していた。こういった上官の昇進に伴って部下も昇進するというのは、宇宙軍においても異例である。

だが、上官が将官でありながら直属の部下が尉官というのも、問題であった。そのことを具申したのは、いままさに図面と睨めっこしているオガタ准将であった。


「あぁ。俺がもともと設計を命じられたのは『艦隊型戦艦』の設計。エクセリオンは一点豪華の試験艦。お上からは『艦隊型戦艦』の基本設計だけでもさっさと送れ!と催促がやかましくてな……一応、准将になったのにな」


「それはしかたないですぜ。だってオガタ准将はオガタ准将ですから」


「なんだよそれ」


部下と軽く会話しながらもオガタは設計を詰めていく。

人員と居住区の問題は自律思考型ロボットで解決できているため、かなり余裕をもった設計であった。

だが、やはり武装面は手が付けられないでいた。

エクセリオンを旗艦とした使節艦隊の派遣というの名の威力偵察の結果を待ってからでないと武装は決めるに決められないからだ。

そのことは上層部も理解していたが、一刻も早く戦力を整えたい余に無茶な催促を寄越しているのだ。


「でしたら、いっそのことエクセリオンの小型化で武装もそのまま減らしたものではいかがですか?」


「それも考えている。だが……これだけ武装の種類が多いと、建造費が嵩む。それでは隻数を揃えられない」


「それもそうですが……」


軍上層部は単純比較ではあるものの、エクセリオン1隻=謎の艦隊4隻分の戦闘力と見積もっている。

では謎の艦隊の隻数は20万隻。すなわりエクセリオンクラスの戦艦が最低でも5万隻は必要となる計算だった。

天の川銀河の総艦艇数は100万隻以上であるが実際に戦闘用といえるのは70万隻未満であり、それらをすべて動員したとしても、謎の艦隊と決戦を行えば、計算上のキルレシオは1対20という、絶望的な被害率の高さとなっている。

エクセリオンを除いた帝国宇宙軍最高サイズの戦艦は『アダム』と『イブ』であり、両艦ともに全長は1.5㎞である。これは、謎の艦隊の巡洋艦と(おぼ)しき艦艇と同クラスであることからも、その圧倒的な戦力差がうかがい知れる。

これを覆すために、『艦隊型戦艦』が必要なのである。

そこに立ちはだかるのは予算の壁だ。

現状は艦艇建造用のロボットを大量生産することにより、一番のネックである人件費を多分にカットできているが、兵器関連はやはりお高くつく。量産効果で安くなるにせよ、不要な装備を載せて建造費を上げたりデッドウェイトになるのは避けれるならば避けたいのだ。


「まぁ、一番の問題は財務省を納得させるためにも、俺らが平和のハトを気取ってみせないといけないんだよな」


「なにをおっしゃいますか。ハトだろうがキジだろうがツバメだろうがなんにでもなってやろうじゃありませんの」


そこにミッシェルが相変わらず急に現れて言葉を挟み込んでくる。

これにはサイジョウも少しばかり歯がみするが、この間の一件もあり、表だってやりあうことはない。

しかしながら、脳通で錯乱ウィルスを送り込んだり、逆にそれを防がれて送り返されたりと、目に見えない二人だけの戦いが繰り広げられていた。

両者ともにいつの間にやらウィザード級のクラッキング技術を身に着けているのは、敵へのクラッキング攻撃を行うためのオペレーターとしての任を拝命したから……といいたいが、彼女らは既にその技術を持っていた。どこで覚えたのかは、わからない。


「さて、そろそろ訓練の時間だな」


オガタがぼそっと呟いた瞬間、二名の部下は肩をびくりと震わせた。


「わ、わたし今は勤務時間外だから……」


「あ、ちょ、中尉!逃げんな!」


「逃げてませんわ。勤務時間外は私の時間ですわ」


二人の乙女が目の前で見苦しい争いを再び始めたわけだが、オガタはそれを無視して艦内放送の送信機を手に取る。


「総員傾注! これより演習を実施する。総員、第2種戦闘配置!」


「そ、総員、第二種戦闘配置! これは訓練である!」


サイジョウが大声で復唱して、第二種戦闘配置が命じられた。この声が艦内に響いたと同時に艦内がにわかに騒がしくなる。

それもそのはずだ。第二種戦闘配置とは上番、非番関係なく各配置に付き、いつでも戦闘状況に突入できるようにするためだからだ。

通常の艦艇でもこういった訓練はままあるが、エクセリオンに関していえば全くもって事情が異なる。

この演習は完全に抜き打ちであり、錬度向上はもちろんだが、ひたすらに精神・肉体的に苛め抜く訓練内容であるからだ。

例えば……。


「正面、敵艦隊。距離1光年にて補足。では状況を開始」


「状況開始!」


「開始早々だが、敵の分艦隊が艦後方にワープアウト。スラスターをやられた模様」


オガタは「いきなり被害を受けた」と状況を付与した想定のもと訓練を行う。それはダメコン班や操舵士に多大な負担となったのはいうまでもない。

更には……。


「敵の波状攻撃により事象変動フィールド消失。さらに電磁フィールド消失。艦に複数の直撃弾」


「量子演算機沈黙!」


「復帰まで各個光学照準で対応させよ」


余にも過酷すぎる状況の付与の連続である。

こうなれば最早最速ダメダメだが、この状況こそが本来訓練すべき状況だというのが、オガタの持論だ。

通常状態であれば、81式量子演算機「オモイカネ」に戦闘システムの大部分を任せっきりであるために、人間は大まかな攻撃目標の指示や、次の行動を指示するだけで戦闘が進んでいく。

だが、数学的事象変動フィールドはこの量子演算機の演算任せである以上、演算速度を上回る攻撃をされた際に、一時的に事象変動フィールドが解除された上に量子演算機が沈黙するというデメリットがある。

このデメリットの解決策は単純に量子演算機を2基載せれば解決できるという意見もあるが、この量子演算機がなかなかに大型であり、また消費するエネルギーも馬鹿にならない。よって1基のみの搭載となっている。

こうした諸問題は、最終的にはマンパワーが解決する唯一の方策である。

だが訓練を受けさせられている兵士諸君は皆同じことを口走る。


「「「「「「「「「「「「鬼畜准将め!!!!!いつか必ずぶっ殺してやる!!!!!」」」」」」」」」」


尤も、彼らが訓練を終える頃にはそんな気力も欠片も残せず、各持ち場にて泥のように眠る姿が確認されている。

Q サイジョウは本当に貧乳なのか。


A ミッシェルが巨乳なだけで、サイジョウは現代日本人の平均レベルです(((

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