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間話その1 地球帝国宇宙軍ラグーン宙域方面軍第16艦隊司令のとある1日

作者の暇つぶしを兼ねた投稿です。

読まなくても問題ありませんが、よんでくださるとうれしいです。

今日は書類仕事がメインだったが、それもすぐに片付いたので艦隊巡回を行うなどして時間を潰した。

まぁ、平たく言えば平和だったわけだ。

艦隊内の風紀は良好であり、特にこれといった問題はなかった。だが時間だけはたっぷりとあった。

然るに、艦隊巡回も一隻、一隻を念入りに行うことができた。

表立っては歓迎されたものの、腹の中では邪見にされているのだろうが、こっちも勤務時間を無為に使うのは税金泥棒だと揶揄される原因だ。そんなのは真っ平御免だ。

一隻ごとに念入りに艦内を歩いた結果、どの艦も大きな問題こそないが、かといって全くもって問題が無いわけではなかった。

例えば食堂の飯が不味いだとか、同室の同僚の歯ぎしりがうるさくて夜眠れないだとか、タバコが足りなくなっただとか、洗濯機が不調だとか……些細ではあるが、当事者である彼らからすれば大問題だ。私も一兵卒のころは同種の不満や鬱憤が溜まっていたものだ。

私が将来上に立ったときには、そういった不満を聞いてやれる人間になろう。と努めてきたからこそ、彼らの溜まっていた問題を表面化できたのであろう。

尤も、この程度の問題を黙認してきたという艦長達にはお灸を据えてやる必要があるかもしれないが……。

それは兎も角、旗艦に帰ってすぐさま各艦の居住環境改善のための命令書を作成した。

命令書が完成し各艦に送るころ、ようやく勤務時間が終了する。

とりあえずは明日の朝までは夕番と夜番に任せられる。だからこそ、さっさと食事を済まし、買い貯めていた愛飲のウィスキーの封を切って、グラスに注ぎ至福の一杯と洒落込むことにした。

アルコールの余韻を楽しみつつ、軽い酩酊感を覚える。あぁ、最高のひと時だ。

だが、そんな時に限って嫌な知らせが入るという物だ。


「先行するハルジオンより入電。アンノウン補足。艦種、隻数から『紅蓮海賊団』と推定されるとのこと」


部屋に備え付けられた艦内有線電話が鳴ったので出てみれば、酔いなど一瞬で吹き飛ぶ知らせではないか!

せっかくの酒だが、酔った状態での戦闘指揮は軍規に触れる。故に、酔い冷まし用のナノバイオマシンのアンプルを腕に打ち込む。

瞬く間に体内に散ったであろうナノバイオマシンにより、急速に酔いが冷めていくのが感じられる。


「『紅蓮海賊団』だと? 大物が見つかったものだな。よろしい。全艦隊に通達、第二種戦闘配置!」


「了解。全艦隊、第二種戦闘配置に付けます」


命令を下しつつ、脳内メモリから紅蓮海賊団の詳細な情報を探し出す。

紅蓮海賊団はここ⒑年ほどで飛躍的に成長してきた海賊だ。始めこそは武装した民間用の惑星間航行船を乗っていたが、ある時に宙域保安隊の巡視船を奪取し、その後は瞬く間にさらに大型の巡視船や軍のコルベット艦クラスなどを強奪。さらに、民間軍事会社の私設艦隊を強奪するなどして今やラグーン宙域最大クラスの宇宙海賊団へと成長した。

当時の方面司令が間抜けだったために、これほどまでの成長を許してしまった。

現在の方面司令はこの事態を正確に把握している。だからこそ、我々が航路の安全確保のために巡察していたわけだ。

まぁ、大海賊とはいえ、このあたりに出るようなのは所詮は下っ端の艦艇。

我々第16艦隊に掛れば、いともたやすく宇宙塵(スペースデブリ)にできるだろう。

そう高を括っていたのだが……次にもたらされた情報により状況が一変した。


「アンノウンは『紅蓮海賊団』であることが確定。隻数は……ひゃ、百隻!百隻以上の大艦隊です!」


「な……」


第16艦隊は巡洋戦艦を旗艦に据えた快速性重視の30隻ほどだ。

あくまでも航路の安全化を主目的として編成された小規模艦隊だからだ。

対艦戦闘を考慮して編成されているが、あくまでも敵が10隻未満の艦隊だという想定に基づいての編成であった。だが奴っさんはこともあろうに100隻!ほぼ全艦艇ではないか!!


「すぐに方面司令部に連絡! 救援要請!」


「ダメです!ジャミングがひどすぎます!」


通信士の返答に私はショックを禁じ得ない。

つまりはたったの30の手勢で100隻を相手にしなければならないのだ。

こういう時には深呼吸だ。すーはーすーはー。よし、冷静になった。

冷静に考えてみれば敵の多くが巡視船や軍艦とはいえどコルベットクラスが中心だ。

だがこちらは巡洋戦艦であるこの旗艦を筆頭に重巡と軽巡、駆逐艦からなる快速打撃艦隊だ。

まともに撃ち合ったところで我が方が負けるわけない。そうだ。負けるわけないのだ。


「司令! 敵艦隊内に大型艦艇を複数確認。艦種は……ヴァリャーグ級戦艦!ヴァリャーグ級戦艦が4隻です!」


「なんですって!?」



ヴァリャーグ級といえば、1000㎜3連装レーザー砲を主武装とする帝国宇宙軍の一世代前の主力戦艦じゃないか!

いくらこっちが最新世代っていっても、所詮は巡洋戦艦。火力も装甲も一歩劣る。にも拘わらず、それが4隻だと……絶対誰かが横流ししやがった!

ん……待てよ、ヴァリャーグ級なら……やばい!


「全艦隊! ランダム機動開始せよ! 奴さんの主砲の射程内だぞ!」


私の言葉に即座に反応してくれたが、それでもやや錬度が劣る艦艇は反応が遅れ、次々と極太のレーザーが突き刺さっていく。

たった今の一斉射で3隻も轟沈した。なんてことだ。


「撤退せよ! 殿は旗艦『ダコタ』が引き受ける!」


命令を下してやる前から、そそくさと撤退行動に移る友軍が確認できた。

必ず軍法会議にかけてやる!

そんな決意も、まずは生き残ってこそ実行できる。


「後部主砲全力斉射始め!」


艦長の号令により、後部主砲からレーザーが放たれるも、ヴァリャーグ級の装甲を前にいともたやすく弾かれてしまう。

敵のレーザーやプラズマ砲などの類も本艦への直撃コースを辿るものの、新型の電磁フィールドや数学的事象変動域形成フィールドにより致命傷には成らずに済んでいる。

それから数分間の追いかけっこが始まったが、多勢に無勢。本艦に敵からの攻撃は集中し、数発のレーザーが各フィールドを透過して艦の側面を抉っていく。


「総員退艦せよ!」


「司令…?」


「早く退艦せよ!」


もうこの艦の寿命は長くない。

機関部も損耗し、速度が減速している。

このままではどの道、全員がお陀仏ってやつだ。


「ですが……」


「いうな。あとは私に任せなさい」


「いえ……救援要請が受諾され、現在こちらに向かってると連絡が入りました」


「は?どういうことだ?」


私の問いに通信士が答える前に、答えが宇宙空間から現れた。


「な、なんなのだあの艦は!!?」


突如として宇宙空間に現出した艦。

あまりにも巨大かつ、その勇ましい姿が目にこびり付いた。


「こちら試験艦『エクセリオン』え~っと、我、縮退炉にて航行中」


随分と陽気な声が艦橋に届いたのだった。

「我、縮退炉にて航行中」をやってみたかったのです(沈黙の艦隊的な感じで……)

元ネタは世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」がテムズ川航行の際に「本艦、原子力にて航行中」より。

またいくつか前の後書で帝国宇宙軍は通常推進型ワープと記載してましたが、あれは誤りです……。

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