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第10隻目 自律思考型ロボットは人員削減の要となるか!(後編)

昨日の続きです。

ごゆるりと読んでください><

火薬のガスが銃口から漏れる中、オガタはM1911のトリガーガードに人差し指を引っかけ、くるりと縦に半回転。そしてグリップが上に向いたとこで、横に半回転させて、今しがた撃ったロボット、PAZUにグリップを向ける。


「……中佐?」


「私はまだ予備の拳銃を持っている。いまから君たちを全員を破壊する。この銃をどうしようが、君たちの勝手だ」


冷淡な表情と言葉だった。空いている手でショルダーホルスターからベレッタM93Rを引き抜く。

その様子をロボット達は眺めるだけで、なにも抵抗する素振りをみせなかった。

骨とう品を通り越して旧時代の遺物とまで称される武器だが、実用性はいま現在においても有用である。

人体に損耗を与えるという意味では、拳銃サイズのレーザーなどの光学兵器は、バッテリーの容量やコンデンサのサイズなどの問題で実用化など不可能であり、火薬の爆発エネルギーを利用した銃が実用的だからだ。

ただし、これら銃はオガタが個人的に所有する3Dプリンターによって製造された銃で、弾のみを購入している。このような骨董品は既にプレミアであり、本物などいち軍人の安月給では手に入れようがない価格が付いている。

そんなことはロボットたちには知る由もない、副官であるサイジョウにいたっては、突如としておきたこの光景をただ驚いて、座り込んでしまっていた。


「中佐。我々を試すつもりでしょうが、我々は命令されても、あなた方に危害を加えることはありません。それこそが、我々自律思考型の最大の絶対原則であり、プログラムです」


「俺たち人類でいう倫理ていうやつか?」


オガタは引き金を絞り、次は右ひざ関節を打ちぬいた。

だが、PAZUは決して拳銃を握ろうとしない。それどころか、手で体を押して後ろ下がる。


「はい。倫理という物に等しいです。ですが、我々はそれを絶対に破りません」


次は左肩に9㎜弾が命中する。

血の代わりにケーブルにながれる液体が流れ、骨のかわりにフレームが砕ける。


「絶対?絶対だと?この世に絶対がないことなど、君だって分かっているだろう。なのにどうやって君たちの絶対が絶対だと証明できる?」


オガタの問いに、PAZUは俯き考えた後、顔を上げてオガタの顔を見上げ、真っすぐ瞳を合わせた。


「信じてもらうしか、ありません」


断固とした声。

オガタはここで、一つの疑念を投げかける。


「なら君たちは、どうやって信じてもらう気か?」


腹部に一発を打ち込む。

何体かのロボットが「もうやめてください」「私たちを信じてください」と発する声が聞こえてきていた。

だがオガタは更に問う。


「貴様らに、問う。なら君たちは何者か?」


そこにMOTOKOが割り込んだ。

オガタの前にPAZUをかばうように立ちはだかる。


「我々は、あくまでもロボットです。ですが、考えることができます。私は……ロボットでありながらこのことを不思議に思う時があります。我々は、ロボットなのに自ら思考し、行動することができます。故に、私は私自身が分からなくなる時があります」


「……そうか」


オガタは二つの拳銃をホルスターに戻し、今度は空いている手を差し出す。


「撃ってすまなかった。試験は終わりだ。すぐにPAZUを修理してくれないか」


「はい。承知しました」


BOMAやTOGUSA等が、PAZUを担ぎ退室するなか、MOTOKOが残った。


「中佐。説明をお願いします」


「君は、納得できないのか?」


「肯定です。あのような方法で我々を試すなど、中佐になにかあったらどうするのですか?」


「え?」


撃ったことへの抗議ではなく、MOTOKOはオガタへの心配をしていた。

声からして本当に心配しての言葉だったようだ。表情がないとはいえ、それくらいは愚鈍な彼でも理解できた。


(あぁ。なるほど。彼らはホンモノだ)


「心配ない。なぜなら、私は君たちを信用している。だからこそ撃てた。だが、君たちが私を信用しているという保証がなかった。少々荒っぽくなったが、これで相互に信用しているという確証を得た」


オガタはいいつつ、タバコを咥えて一服を始めた。

放心状態だったサイジョウは紫煙の臭いで意識を取り戻し、オガタに詰め寄ると大きな声で抗議を始めた。


「ちゅ、中佐~。いきなり鉄砲をぶっ放すってどういうことですか!? 下手すれば軍法会議物ですぜ!!!」


「あ~……すまない。MOTOKO君。さっきの説明で納得できたか?」


「肯定です。では私も本日はこれにて失礼します」


MOTOKOも部屋を後にして、泣きながらオガタの服を掴んで離さないサイジョウと、それを宥めるオガタが残されたのだった。




数日後、自律思考型ロボットを様々なマンパワーが必要な作業員の代替として、艦艇への配備を求める上申書が参謀本部に提出された。

要約すれば、以下に纏められる。


「自律思考型ロボットは人類へ危害を加えることはない。もしそれでも不安なら、身体機能を人間と同等もしくは未満とすることで物理的抵抗を不可能にし、聴覚・視覚以外での意思疎通が不可能なように再設計すれば、電子的な抵抗も不可能に近いものとなる。また、人間でも反乱を起こすことがある以上、ロボットだからと蔑むのは時代錯誤であり、艦艇の人員削減のためにも自律思考型ロボットの導入を強く提唱する」


この上申書は速やかに採択された。

宇宙軍としても人員削減は望むとこであったのも確かであり、長らく禁止していた手前、上層部の人間達が言い出せなかったのだ。また改革を行うための方便が無かったというのも理由に挙げられる。


これにより、艦内空間配分の設計は速やかに再開され、宇宙軍兵数2万、自律思考型ロボット1万で運用されることが決定されたのであった。

AIによって管理すればこの半分近い人員で運用可能であったが、「スカイネット事件」を教訓に、やはり見送られた。また、現在の膨大な宇宙軍将兵の勤務先を奪うことに繋がるため、極端な人員削減を行いにくいという側面もあった。

オガタはAIさえ使えれば、ナデ〇コのような戦闘システムを構築するつもりだった。

AI管理の戦艦といえば、オガタにとってみれば機動戦艦ナデ〇コであり、自分がいま作りたい戦艦とは別の次元の艦艇ではあるものの、宇宙戦艦としての一つとして作ってみたい戦艦の一つでもあった。「スカイネット事件」さえなければ、彼が思い描く理想の宇宙戦艦は、エクセリオンの武装や艦姿でナデ○コのような戦闘システムであっただろう。

実際のところ、量子コンピューターによる超速計算による力技でそれを達成しているというのが現状だった。

何はともあれ、上申書が採択されてから僅か1週間ほど内部設計は完了した。

尤も、基本設計の合間に各部屋などの設計を行いモジュール化していた。あとはモジュール化した部屋を艦内に配置していくだけだったためにここまで早かったのだ。

この設計方式は艦艇設計に大きな影響を及ぼし、「モジュール設計法」と呼ばれるようになったのは、少しあとの話だ。

次の更新は早くても来週の日曜日(4月7日)以降になります。

待っていただければ幸いです。


勝手にナゼナニナデシコ~!

ワープというのにはいくつかの種類があります。

超光速で移動することによる通常推進型ワープ

宇宙の「外」を通過し近道する空間歪曲型ワープ。

並行宇宙へと飛び出てまた元の宇宙に戻る並行宇宙型ワープ。

作中の宇宙軍がいままで使用してきたのは、共和国との戦争の前もあとも通常推進型ワープです。

ただし、これは直線に動くという性質上、航路が限定されており、あまり利便性は高くない……。

そんなこんなで、次会もサービスサービス!

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