第9隻目 自律思考型ロボットは人員削減の要となるか!(前編)
長くなったので分割しました。
PV5000突破。皆さん、読んでくださり本当にありがとうございます><
引き続きお楽しみいただければ幸いです!!!
オガタは10体の自律思考型ロボットが集まるまでの間、脳内で人工知能の歴史と、人工知能と自律思考の違いを考えていた。
咥えたタバコからは紫煙が昇る。
(違うものとは分かっている。だけど、納得いかない)
それが彼の考えだった。それを証明するために、ロボットを10体集めるのだ。
では彼らが揃うまでに、人工知能の歴史を紐解くことにする。
オガタの前世において、AI技術は革新的進歩を遂げた。だが、21世紀当初に予想された技術的特異点は、彼が生きている間には達成されなかった。それが達成されたのは、オガタの死後から2世紀ほど後、23世紀後期ごろだった。
この技術的特異点により、人類は窮地を脱し、人類が一つに纏まることになったからだ。
なぜならば、彼の死から150年ほどあとに、第三次世界大戦が勃発し、地球全土のおよそ3分の2が不毛の大地と化したからだ。90億近い人口の腹を満たすことがほぼ不可能となり、人類が生き残り、自足可能な食糧の生産のためにも、この問題の解決が戦後における全世界の急務となった。この時には、第三世界と呼ばれた中東アジアやアフリカ、南アメリカの発展途上国も、先進国と呼ばれた国々と肩を並べるほど発達し、人種の壁、宗教の壁さえもなくなり、地球に存在する全ての国々が、この問題解決にあたることになるほどに、この問題は深刻であった。
当時の地球ではこの食糧問題解決に向け、地球を再テラフォーミングする作業が進められていた。だが、当時の科学力では遅々として進んでいないのが実情であったが、技術的特異点の到来により、画期的な方法で解決された。
人工知能が再テラフォーミングに必要なナノマシンを開発し、それに必要な精密機械も開発したからだ。
生産されたナノマシンは地球に速やかに散布された。散布から約10年ほどで再テラフォーミングが達成された。
その後もナノマシンの開発は続けられ、火星のテラフォーミングにも使用されたほどだ。
食糧問題も解決され、この火星テラフォーミングが達成された日を祝うとともに、これまでに起きた全ての惨劇を繰り返さないために地球は国境という区切りをなくした。これにより地球という星が一つの国家「地球国」となった。暦も西暦から宇宙歴と改められ、西暦は2399年という長い歴史に幕を下ろし、宇宙歴が始まった。
話を戻してこのAIだが、宇宙歴5世紀ごろまで開発が進められていた。だが宇宙歴471年に、地球国総務省でおきた「人工知能『那由他』暴走事件」を皮切りに各地でAIの暴走事件が発生したのを契機に、開発が止められ、すべての人工頭脳が廃棄された。
この事件は、過去の映画の設定にそっくりだったことから、総合して「スカイネット事件」と呼称されている。この際に地球が被った被害は数兆アース相当と言われる。
この過去の教訓は今現在も生きており、人工知能の開発・製造は極刑に値する。
では自律思考型ロボットはAIに該当しないのか。
それが該当しないのである。
それは自律思考とはより人類に近い存在。AIという機械の延長線上に存在する知能と違い、人類の考え方を模倣した知能であるからだ。
そのことをオガタは脳内で理解しつつも、疑念を払えないでいる。
なぜなら、軍は「スカイネット事件」問題を深く受け止め、自律思考型艦艇建造ロボットなどは生産していたが、艦艇への搭載は一切認めなかった。また軍縮を契機に製造も中止したほどだ。それは軍がいまだに人工知能を危険視していることに他ならない。
この問題をクリアすれば、艦内空間配分など、余裕を持って設計できるのだ。
この悪魔の証明とでもいうべき問題を解決する方法を考えつつ、片手間に懐から愛用の拳銃―M1911ガバメントモデル―を抜き出し、なにやら弄っていた。
「中佐。灰皿!」
「おっとすまん」
彼が考え込んでいる間にタバコは半分以上燃え尽きた灰となり、今にも折れて落ちそうになっていた。
副官であるサイジョウが灰皿を滑り込まなさければ、灰は床に落ち、白い粉塵となってカーペットの隙間に入り込んでいただろう。
それを掃除するのは副官の仕事であり、仕事を増やされるのは堪ったもんじゃない。というのが彼女の本音だ。
尤も、最近の掃除はもっぱら自律思考型ロボット任せであるが……。
灰が灰皿に落ちると同時に、部屋に10台のロボットが入ってくる。「MOTOKO」を先頭に「BATO」「TOGUSA」「PAZU」「BOMA」など、オガタには聞き覚えのある名前がいくつも見える。
(この10台、攻殻縛りか!)
名前をざっと見て、オガタは前に歩みでる。
「では簡単なテストを始める。えっとPAZU。前へ」
「はい。なんで__」
銃声が響く。
たった一発の9㎜弾は紛うことなくPAZUの左膝関節を打ち抜き、ロボットが発声するのを中断させた。
雷管が撃針で叩かれ、火薬が化学反応を起こし爆発。その爆発音は室内に響き、放たれた弾丸は運動エネルギーをいかんなく発揮したのだ。
「これがテストだ。ほら、銃だ」
オガタはグリップを今しがた自らが撃ったロボットに向けた。
数日中に後編を掲載します!
ぜひお読みください!