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劣等職からの英雄譚  作者: 竜童子智也
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劣等職になったけど大切な弟妹のため最強になります

プロローグ

次の瞬間、俺ことグレンは殴り飛ばされて家の床を転がっていた。

「お前は勘当だ」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。

顔を上げると、俺を殴り飛ばした父にごみでも見るかのような目を向ける母、そして不安そうにこちらを見る弟妹がみえた。

「よりにもよって劣等職なんぞに成りやがって!」

「本当にこの家の恥よ!顔も見たくない」

父と母の心のない言葉が胸にささった。目に涙が浮かびそうになったがぐっと堪えた。

「最後の慈悲だ。明日には出ていってもらう、部屋に戻って身支度を整えていろ」

殴られた頬を押さえながら立ち上がり、一礼して部屋に戻りながらどうしてこうなったってしまったのか考えていた。

第1章 旅立ち

この世界、メルツィナルガには七つの大国があり俺はその一つフォルケイト王国の貴族の家に生まれた。

家は王国に仕える騎士を多く排出しておりグレンも騎士になるように訓練・勉学・スキル習得と3歳のころから行われていた。

普通の子供ならば嫌がってやらないのだか、その時グレンには弟妹が生まれていた。弟はライネル、妹はネアと名付けられ、グレンはこの二人に誇れる兄になろうと決意していた。だから、どんなに厳しい訓練も勉学も付いていくことができ、子供には敬遠されがちなスキル習得も率先しておこない、執事やメイドからも教わっていった。

スキル習得とは、自身が望んだものや行動したもの、精霊や悪魔、スキル結晶、スキル習得者からの伝授により与えられる。これ以外に遺伝によるスキルもあるがそれは固有スキルになりその人以外に使えないものや、天職専用のスキルがある。

5歳になると、街や地方に向かい様々な人に会っていった。冒険者、兵士、剣豪、獣人、亜人、魔人、はたまた闇ギルドの構成人や幹部、更には英雄、勇者、言葉を冠する魔物にいたるまで網羅し、その知識や技術を自分の血肉にしていった。

その頃になるとライネルとネアも2歳になって歩くようになり、いろいろなところに向かうようになった。最も多く行く場所は決まって武器庫だった。まるで自分の使う武器を見定めるかのように見ていた。

弟妹が3歳になるとグレンと同じように教育が始まったが、2人はすでに一般兵士と対等に闘えた。

その事に両親はとても喜び二人の天職に期待を膨らませた。

天職とは、自身が生まれながらにして持つ職業である。剣士、拳闘士、魔法士、銃士、召喚士、人族以外も主に同じだが時々特殊な職業が現れることがある、それが英雄、勇者、王である。この三つは神に選ばれし者が持って生まれてくる。

中でも銃士は最弱の名を冠し劣等職と蔑まれていた。理由は、

ー曰く弾が無ければ何もできない。

ー曰く接近されれば武器が使えない。

ー曰く専用スキルがない。

とこれ以外にも多々あげられ劣等職と言われている。人族は天職でその人の人生を決めてしまう傾向があるため、誰もが銃士には成りたくないと思っていた。

俺は二人と訓練を毎日のように行った。剣、体術、魔法と行い二人に負けないように頑張った。二人に「兄ちゃんすげぇ!」「お兄ちゃんカッコいい!」といわれると嬉しくなった。

そして運命の日、その日はライネルとネアが5歳になったので俺達三人にステータスカードが渡される予定だった。

ステータスカードは、その人の魔力を流すことでレベル、天職、スキルを表示する魔道具である。世界中の人が5歳になったら貰うが、俺は二人と一緒に渡すことになったので7歳まで待っていた。

その日は朝からわくわくしていた。やっと自分のステータスが解ることが嬉しく今までの頑張りを早く確かめたかった。ライネルとネアも嬉しそうでずっと笑顔だった。そして昼食の後、父からステータスカードが渡され、すぐに魔力を流しステータスをみた。

グレン・バーネル Lv99(上限突破はまだ不可能)

天職 銃士

スキル 六属性魔法・剣帝術・統合拳術・精霊召喚・悪魔召

喚・魔物召喚・覇気・暗殺術・状態異常無効・精魔合

体・痛覚無効・超速再生・変身

「ん?」

(天職が銃士なのはこの際置いとくとして、このレベルとスキルはなんだ)

確かに俺は、いろいろな人に出会い学んできたがそれにしてもおかしい。スキル習得・進化・統合されているのはわかっていたがそれでも所々おかしい。

俺がステータスに悩んでいると隣から両親の歓声が上がった。

「え…え…英雄王!!?それに斬撃の勇者だと!!」

「すごいわ!この家から英雄と勇者が生まれるなんて!」

ライネル・バーネル Lv31

天職 英雄王

スキル 英雄覇気・英雄覇道・王の宝物庫・英雄王剣術・剣聖

術・四属性魔法・精霊召喚・状態異常耐性

ネア・バーネル Lv30

天職 斬撃の勇者

スキル 勇者覇気・勇者剣術・絶対切断・万物切断・剣聖術・四

属性魔法・精霊召喚・状態異常耐性

二人のカードを見た瞬間、

(ま…まずい!)

そう思った矢先、母にカードを見られてしまった。

「グレンはどんな天職を……え?銃士?」

その言葉に父が真っ先に反応した。

「なに?銃士だと?」

続けてライネルとネアが反応した。

「嘘だ(よ)」

信じられないような顔を向けられた。

「み…見せろ!」

父にカードを奪われ見られた。

「そ…そんな馬鹿な」

「兄ちゃんが銃士?でも…」

「うん、レベルとスキルすごい」

ライネルとネアは天職以外も見てくれたが両親は天職しか見ていなかった。

「絶対何かの間違いだ!カードの誤認だ!」

「そうよ!そうに違いないわ!」

何度もカードに魔力を流したが、結果は変わらなかった。

父は額に血管を浮かべ、拳を握りしめ、俺に向かって振り降ろした。

「はぁ…いってぇ」

殴られた頬を擦りながらこれからのことを考えていた。

(ここを出ていくにあたって持っていくのは、金は貯金を武器は…買うしかないかぁ)

準備を進めているとドアをノックされた。開けるとライネルとネアがいた。

「入ってもいい」

ライネルが言い、ネアが首を縦に振った。

「いいけど、大丈夫か?」

二人は顔を見合せ、首を横に振った。

「たく…見つかる前入りなさい」

ため息をつきながら二人を部屋に入れた。その瞬間、二人から予想した言葉がとんできた。

『(お)兄ちゃんどこにも行かないで!』

「それは、出来ない」

二人の言葉を俺はすぐさま断った。

『どうして?!!』

二人はまだ混乱しているようだから、落ち着かせることにした。

「二人共よく聞いてくれ、お前達がどんなに騒いでも父さんは意見を変えることはない」

「そんなのやってみなきゃわかんないだろ!」

「そうだよ、私とライネルは勇者と英雄王なんだよ。お父さんでも私達の言葉は聞いてくれるよ」

「二人がどんな天職でも父さんの意見は変わらない」

『なんで!!』

「俺が銃士だからだよ」

二人はそれでも納得したくないようで俺にずっと「いかないで!」「ずっとここにいて!」言い続ける。

だから、二人に口調を強めて言った。

「ライネル、ネア」

『!?』

「約束してくれ。強くあり続けるって、誰にも自分にも負けないって。二人は十年後、学園に入る。俺も入るからそこで再会しよう」

二人はその言葉を聞いて俺を止めることができないとわかってしまった。ライネルはうつむきネアは泣き出したが二人同時に、

「うん」

と言ってくれた。

「約束守るからさ、兄ちゃんも約束してくれ。いつまでも、どんなことがあっても俺達の強い兄ちゃんでいてくれ!」

「いつまでもやさいしお兄ちゃんでいて!」

「!!…ああ!」

グレンは二人の願いを破らないと誓い、その言葉を最後に三人の会話は終了した。

翌日、俺は門の前に立っていた。見送りは誰一人としていなかった。

俺は家に向けて礼をして歩こうとした瞬間、

【ライネルより王の宝物庫の使用権を渡されました】

【これにより王の宝物庫を使用できるのはライネル・ネア・グレンの三人になりました】

アナウンスを聞いた瞬間、俺は目に涙を浮かべ大切な弟妹に向けて、

「ありがとう」

と言って歩き始めた。

第2章 再会

スラム街の奥にある小さな小屋に数人の男女が集まり話し合いをしていた。

「計画の方はどうだ?」

「問題なく進んでいる。あとは、あの双子が学園に入れば最終段階に移行できる。」

「よし、ならば最終段階に入ったのち計画を行う」

その言葉に全員が頷き、

『すべては邪神様のために』

それを最後に一人ずつ闇夜に消えていった。

森の中で、怒号が響き渡っていた。

「くそっ、Sランクはまだか!」

「まだです!もう時間がありませんよ!」

「くっ!…結界の準備は!」

「あとすこしよ!なんとか持たない!?」

ライノルは辺りを見渡しても他も同じような状況だった。

(なんとかならないのか?このままではここにいる全員が死んでしまう!)

目を上に向けるとそこには、この状況を作っている体長15mの魔物が浮いていた。

ドラゴンボム一ドラゴンがボムシードの実を食べ過ぎて出現する特殊個体である。討伐方法がコアの破壊以外なく、最大になると少しでも刺激を与えると大爆発を起こしてしまう危険種である。

(くそっ、なんでこんなやつがこんなところにでるんだよ!Sランク冒険者は出払っている時に!)

ライノルのチームはAランクだがドラゴンボムのランクはS、本来ならSランク一人かAランク数組で対処するのだがこの場にばAランクチームがライノルのチームしかいなかった。

(こうなったら一か八か俺のスキルに賭けるしかないのか?)

「みんな…俺のけんせ……ん?どうした?」

チームのみんなに作戦を伝えようとしたとき後ろから肩を叩かれた。

そこには銀髪の青年がいた。服装は黒を基調にした革製で上から黒のロングコート、腰にロングソードとリボルバーを下げていた。

「きみは、冒険者か?」

「Bランクのグレンです。応援にきました」

ライノルはなぜBランクが!?と思ったが声に出さず自分の作戦を伝えた。

「Aランクのライノルだ。来てくれたのは助かるがもう時間がない。俺が剣聖術の奥義でコアを狙う、失敗するかもしれないから君はすぐに逃げなさい」

それを聞いたグレンは

「コアを破壊すればいいんですか?なら自分がやります」

「Bランクになにをできる!」

ライノルは怒声をあげるがグレンは聞き流し理由を話した。

「俺のは剣帝術です。こっちのほうが希望があります」

「け…剣帝術だと?!」

ライノルは呆けるが、グレンは無視してスキルを発動させた。

「コアはあそこか。……剣帝術・壱之太刀 天邪鬼」

グレンは腰をため居合い切りを放った。

その瞬間ドラゴンボムは頭からコアごと真っ二つにされ、その場にいた全員が口を開けて呆然としていた。

「これでSに上がれるかな?」

グレンの言葉を聞いて全員が今起きたことに混乱しながら黙々と撤収作業をおこないだし、グレンとライノルのチームが先にギルドに報告しに戻った。

「ということは、あなたがドラゴンボムを討伐したと?」

「はい」

「信じられませんね。本当何ですかライノルさん」

「ああ、本当だ。あそこにいたみんなが目撃している」

「にわかに信じられませんが、ライノルさんが言うなら使ったスキルも本当なんでしょう。天職は……え?銃士?本当ですかこれ」

『え?』

全員が疑問の言葉を口にした。

それを聞いていた他の冒険者も騒ぎだした。

「おいおい聞いたか銃士だってよ」

「あり得ないって、銃士でSランクが討伐出来るかよ」

「それなら俺だっていけるぜ。だか、ライノル達が目撃してるしよ」

そんな言葉が飛び交うなか、グレンは受付嬢に向けて

「これでランクを上げれますか?」

「え…ええまぁギルドマスターに報告の後連絡いたします」

「わかりました。ではここに連絡をいただけますか?」

「ここって…統合学園マギアルカ!あなた学生ですか!」

その言葉でまた周りが騒がしくなったので、グレンは一礼してギルドを後にした。

「ようやく明日か」

学園への道を歩きながら17歳になったグレンは10年前の約束を思い出していた。

そうしていると、後ろから抱きつかれた。

「グレン!何しているのこんなところで」

「メルア、いつも抱きつくなっていっているだろ?」

振り向くと目に写ったのは、真紅の長髪、翡翠色の瞳、ビスクドールのような顔、大切な彼女の顔があった。

「明日から学校だね。準備終わった?予定ある?」

「ああ…さっきギルドに行ったので用事は終わったよ。この後の予定はないかな。」

「じゃあ今から家に泊まりに行っていい?」

顔を紅く染めながら小声で言ってきた。返事をしようとしたとき、感じたことのある視線を感じた。

「?……ああそうか」

「どうしたの?」

「いやなんでもない。それよりも泊まりだっけ、いいよ…朝まで寝かさないから」

「~~もうばか!……優しくしてよ」

メルアは顔をさらに紅くして頭から湯気を出しながら言った。

二人で家に向かいながらグレンはさっきの視線の二人のことを考えながら歩いていった。

今日は統合学園マギアルカの入学式、各国から15歳になった男女がやってくる。学園内では入学してくる生徒の話題で持ちきりだった。

「今年もすげぇな!獣王と魔王の子に英雄、勇者が入るらしいぜ!」

「今年も特別クラスはヤバくなりそうだな」

この学園は天職によってクラスが分けられているが、特殊職や普通クラスから抜きん出ている者は特別クラスに移る仕組みになっている。グレンとメルアも特別クラスである。

「グレン、どんな子達が入るんだろうね!」

「二人ならわかるけどそれ以外はわからないよ」

「その二人ってグレンの弟と妹!いつも自慢する」

「いつもじゃないだろ、まぁ自慢の双子だよ」

グレンの顔はいつもより穏やかになっていった。メルアもそんなグレンを見て嬉しそうだった。

そうしていると入学式が終わりの合図が聞こえた。

「そろそろ来るみたいだな。席につこう」

数分後、先生が新入生五人を連れてやって来た。グレンはその中の二人が入ってきたとき微笑んだ。

「今日から特別クラスに入るやつらだ。そんじゃ自分の名前と天職を言っていけ」

最初に獣人の女の子から名乗り始めた。

「私の名前はカルシア・ライオネル、獣王の娘さ、天職は獣王だ!」

「私の名前はアドレア・デモスヒィア、魔王の息子で天職は魔王です」

「俺はラガス・カット、まぁ平民だ、天職は剛腕の勇者だ」

「俺はライネル・バーネル、天職は英雄王」

「私はネア・バーネル、天職は斬撃の勇者」

ライネルとネアは簡潔に自己紹介をして終わった。

「よし、次は先輩であるお前らだ!」

3年が先に自己紹介していきグレンとメルアの2年の番になった。

「メルア・クルフェルト、天職は巫女だよ~」

「グレン・バーネル、天職は銃士」

グレンの天職にラガスは眉を寄せたが何も言わず、先輩の自己紹介は終わった。

「これからお前達は仲間だ、新入生はわからないことがあれば先輩に聞き、先輩であるお前達は教えてやれ。それでは解散」

ホームルームが終わるとライネルとネアは俺の所に一直線にきた。

『(お)兄ちゃん久しぶり、約束守ったよ!』

「ああ久しぶり、また会えて嬉しいよ」

兄弟妹で話しているとメルアがやって来た。

「この二人がグレンの弟妹か~よろしくね」

『よろしくお願いします』

「堅苦しいなぁ~なんだったらいまからお義姉さんって呼んでもいいよ」

その言葉に二人は目を見開いたあと俺にジト目を向けてきた。

俺は目を反らして他の新入生に目を向け鑑定した。

(凄まじいステータスだな。だが…ステータス頼りなところがあるな)

ステータスについて考えているとカルシアから声を掛けられた。

「初めまして先輩、獣王のカルシアだ。よろしく」

「よろしくカルシア」

握手を交わすとカルシアは唐突に言った。

「あんただけ普通の天職なんだな。ここにいるってことは強いのか?強いなら一発ヤらないか」

拳同士を打ちならしながら言ってきた。

グレンは、あ…こいつ戦闘狂だなと思い断ろうとしだが、ライネルとネアのことを考えて、

「わかった。明日の昼だったらいいよ」

「まじか!やったぜ!じゃ明日の昼な!」

カルシアは満面の笑みで答えたあと別の人の所に向かった。

グレンは答えたあとメルアから質問された。

「グレン~どうして受けたの?いつもなら断るのに?」

「いつもならそうだが、ライネルとネアがいるだろ?カッコ悪いとこ見せたくないし、獣王の力を試してみたかったんだ」

「ふ~ん、そっかそれならいいや」

メルアは安心したように答えた。

ライネルとネアは二人のやり取りを見たあと口を開いた。

『(お)兄ちゃんこれからよろしく』

「ああ、あらためてよろしく」

三人は握手を交わした。

第3章 模擬戦

入学式の日、三人は学園が終わったあとグレンの家に向かうことになった。

メルアは気を利かせていない。グレンは昨日のことを聞いてみた。

「なぁ、昨日俺を見ていたみたいだけどなんでそのとき声を掛けなかったんだ?」

二人は顔見合せたあとおもむろに答えた。

「兄ちゃんとあの人が楽しそうに歩いていたから」

「でも家まで付いて来ただろう?家に入ってくればよかったじゃないか」

「最初は女の人が家を出てから会おうと思ったけど」

「夜まで待っても出ていかないもん!だから…」

二人は顔を紅くしながら答えた。

「それはすまなかった」

そのあと、これまでのことを話し合った。町から灯りが消え始めた頃にグレンが、

「明日に備えてそろそろ寝るか。二人はどうする?泊まっていくか?」

二人は首を縦に振った。グレンは部屋に案内して三人でいっしょに川の字で眠りについた。

翌日、グレン達は学園に向かい、午前は普通に授業を受け昼になった。

昼食後、俺、カルシア、ライネル、ネア、メルアと五人で第3訓練場に向かった。

「結局、受けてくれたのはあんただけだったな」

カルシアは残念そうに口を開いた。

グレンは歩きなからカルシアに模擬戦のことを聞いた。

「ルールはどうする?武器やスキルの使用は?」

「もちろん殺し以外なしのなんでもありだ!」

グレンはため息を付きつつ頷いた。

第3訓練場につき、訓練場に置いてある武器を装備後訓練場中央にてお互いに向き合っていた。

「あんたがどれだけ強くても勝つのはあたしだ!」

「こっちも負けられない理由があるだから勝つのは俺だ」

二人は言葉を皮切りにカルシアが地面を蹴って迫ってきた。

「おらあああああぁぁ!」

カルシアは拳に魔力を纏わせ殴りかかったが、グレンは手のひら添えて受け流しカウンターで蹴りを放つがカルシアは空中を蹴り避けた。

「あんたなかなかやるな!一歩も動かずに対処されたのは親父以来だぜ!」

「そちらも。次はこちらから!波紋!」

グレンはその場でカルシアに向けて拳を打ち出した。カルシアは避けようとするが、吹き飛ばされてしまった。

「!!?」

カルシアは混乱しつつ立ち上がろうとするが、またしても吹き飛ばされてしまった。

「くっ!一体どんなスキルだよこれ!」

「波紋は、拳術スキルで空間を殴り衝撃波を放つ技さ」

カルシアは避けようとするが不可視の攻撃から逃れられずにいた。

「がああああぁ!うっとうしい!獣王覇気!」

カルシアを中心に凄まじいプレッシャーが起こり衝撃波が欠き消された。

「いくぜ?」

次の瞬間、カルシアが目の前から消え、右から殴り飛ばされた。グレンは空中で態勢を立て直すとカルシアに向けて魔法を放った。

「エアロショット!アースピック!」

カルシアはなにもせずたたずんでいたが、獣王覇気が魔法を打ち消した。グレンはその間に準備を済ませ、カルシアに向けて魔法を放ちづつ接近した。カルシアはスキルを発動させ待ち構えた。

「アイスニードル、陽炎」

「獣王拳・獅子王の牙!」

カルシアがグレンに拳の叩き込むが、グレンの体を通り抜け地面にクレーターを作った。

グレンは回り込み先ほど準備した仕掛けを発動した。

「糸縛」

カルシアを糸で縛り上げ身動きを封じた。

「あたしの覇気を突破するか、この糸、魔力を纏わせてるのか」

カルシアは感心しつつ身をよじり脱出しようとするが、糸はどんどん食い込んでいった。

「俺の勝ちでいいか?」

「冗談!まだあたしは負けてない!」

カルシアは叫ぶが一向に脱出できなかった。グレンはため息を尽きつつ、カルシアに一言いった。

「手加減は嫌うだろうから、この一撃で終わりにする」

グレンはスキルを発動させを放った。

「大罪拳・傲慢」

カルシアは糸を引きちぎりながら訓練場の壁に突っ込んだ。

観覧席に視線を向けると、ライネルとネアが口を開けて呆けてメルアは微笑んでいた。

カルシアに目を向けると、立ち上がりよろめきながら近づいてしていた。

「まさかあれを耐えるとは驚きだ」

「いや、今も立つだけでギリギリだよ。あんなものいままで受けたことがない」

カルシアはグレンの前で膝をつき、手を出して唐突にいった。

「あの一撃に惚れた!あたしと結婚してくれ!兄貴!」

「………え?」

グレンは声を挙げたあと視線を感じ観覧席を見ると、ライネルとネアは唖然とし、メルアは黒いオーラを出していた。

「グレン~カルシアちゃん~ちょっとお話しよっか?」

「!め…メルア!落ち着いてくれ!俺は悪くない!」

「兄貴!どうなんだ?答えてくれ!」

「カルシア落ち着け!今それどこじゃ…」

がしっ!といつの間にか接近していたメルアに襟を捕まれ、カルシアといっしょに引きっられていく。

「ライネル!ネア!助けて!」

二人に助けを求めるが、二人共目を反らしてしまった。

グレンはメルアの鼻歌を聞きながら肩をおとした。

第4章 襲撃

メルアからの詰問をカルシア共々耐えきり、五人でグレンの家に向かうことになった。

「ま…まさかいきなり家に、しかも家族と恋人同伴なんて!あたしでも恥ずかしい」

「カルシア!変なことを言うな!メルア違うから、俺が好きなのはメルアだけだから」

メルアを宥めつつ家に付き、カルシアから話を聞くことになった。

「それで、なんでいきなり結婚なんだ?」

「ん?言わなかったか兄貴、あの一撃に惚れたって」

「言ったが、理由がわからないから聞いている」

カルシアは納得したように手を叩き、理由を言った。

「獣人は強いやつに惚れるんだ!獣王の家系はその傾向が強くてな、あたしは家族以外で負けたことがなかったし、それに…」

「それに?」

カルシアは顔紅くしつつ答えた。

「あの一撃に心を打たれて…もう兄貴しか見えなくなっちまったんだよ!」

『…………』

カルシアの告白に四人は無言で固まってしまい、場に微妙な雰囲気になってしまった。

「兄貴、それであたしに対しての返事は?」

「いや、俺恋人いるからだめだよ?」

「大丈夫!獣人は一夫多妻制だから!」

「いやそういう問題じゃなくて…」

グレンが断ろうとしたとき、メルアが口を開いた。

「グレン、私はいいよ?カルシアちゃん恋人にしても」

「……え?いやでもメルア?」

「いいじゃんこんなに気持ちを伝えているし、私はいいよ?でも…今以上に愛してね?」

「………わかった」

グレンは顔を右手で隠しながら答えた。

カルシアはグレンの答えに喜びはしゃいでいた。ライネルとネアは『(お)兄ちゃんはいろいろすごいな』と話し合っていた。

ため息を尽きつつ、グレンに二人目の恋人ができた。

「魔法陣の構築はどうだ?」

「少し遅れてるけど、順調よ」

男の問にフードを被った女が答えた。

「よし、なら最終確認だ。1ヶ月後に計画を行う。失敗は許されないぞ?」

男が言うとその場にいた数人は頷いた。そして一人ずつ消えていった。

「これが成功すれば俺は幹部に…はっはは!ははははははっ!はーはははははぁ!」

暗闇に男の笑い声が響いていた。

カルシアを恋人にしてから1ヶ月が過ぎた。当初は学園で話題になっていたが、時間が経つにつれ修まっていき今まで通りに戻っていた。

「天職で人を差別するな!」

『そうだそうだ!』

「天職差別反対!」

『天職差別反対!』

「また天職差別反対団が騒いでいる」

三人で学園に向かう途中、広場を通行しようとしたとき広場にいた団体の声が聞こえてきた。ライネルが苛立ちながら言いネアもそれに続いた。

「そうだね、団体に居るのだいたい銃士だね。お兄ちゃんみたいに努力していないから天職のせいにするしかないんだよ」

二人を諌めようとしたとき、後ろから視線を感じ振り向くとこちらを伺う集団を見つけた。

(なんだあいつら?俺達…いやライネルとネアを見ている?)

「ライネル、ネアやめなさい、そういう事を言うんじゃない……こちらを伺う集団がいる確認できるか?できたら学園に気づかない振りをしてに向かう」

ライネルとネアは目を見開いたあと、集団を確認した。

「倒さないの?」

「今は止めよう。目的もわからないし、こちらはなにもされていないからな」

ネアの問に答えたあと、三人して普段通りに学園に向かった。

グレン達を見ていた集団のリーダーらしき男が、歩いていくグレン達を見ながら呟いた。

「これで目標が学園に向かったな。これより計画を行う直ちに各自の現場に向かえ」

リーダーが言うと集団は四方に散っていった。

グレン達は学園に着き、午前中は何事もなかったが、午後の授業で移動中にそれは起こった。

『!!??』

突然学園が大きく揺れ、地面に巨大な魔法陣が浮かび上がった。辺りを見渡すと、混乱は少ないがどうしたらいいのかわからないようで大半が立ち尽くすだけだか、少数は魔法陣を対処しようとしていた。

数人が魔法陣にスキルを発動し対処しようとした瞬間、校門で爆発が起き黒いフードの集団が現れ、スキル発動中の生徒に魔法を放った。

「おとなしくしろ!なにもしなければ危害を加えない」

集団のリーダーらしき男が声を風に乗せ学園中の生徒に聞かせた。

「我らは邪神教、邪神様復活のためこの場にいる全員を供物にさせてもらう。そして私がこの部隊の隊長フォルナル、短い付き合いになるがよろしく」

リーダー男フォルナルの宣言に学園中が騒然とし、あっという間にパニックが起きた。

グレンは騒ぎのなかライネルとネア、メルア、カルシアを探しながら敵を確認していた。

(天職はバラバラだが、全員レベルは60、リーダー男が75と高いな)

「あっ!グレン~こっちこっち!」

分析しつつ走っていると、前からメルアを声が聞こえ見ると、探していた四人がいた。

「ライネル、ネア、メルア、カルシア!なんでみんなここに?」

「グレンが探すと思ってカルシアのスキルで集まっていたの」

グレンの問にメルアが答えると、カルシアがやる気の満ちた目を向けながらいった。

「兄貴!あいつらは潰すよな!邪神なんかの供物になってたまるか!」

「ああそうだな、でも無謀に突っ込むなよ?手分けしてあたる。ライネル、ネア、メルアは校内に侵入したやつらの対処を頼む」

『わかった(よ)』

「カルシアは俺とリーダー男の集団を撃滅する」

「了解!腕がなるぜ!」

全員に指示をだし別れ、カルシアと校門に向かった。

グレンと別れたメルア達は、校内を走りながら敵を探していた。

「なかなか見つからないね」

「校内ではバレないようにしているかも知れませんね」

「そうだね……!二人共あぶない!」

ネアがライネル、メルアを庇うように攻撃を防いだ。

攻撃が来た方向を見ると、学園の制服を着た男女がこちらに手を向けながら警告を発した。

「よけいなことをするな、おとなしくすれば痛い思いをしなくていい、だが抵抗すれば……わかるな?」

敵からの警告に三人は顔を見合せたあと、声を揃えて言った。

『嫌だね!』

「!なら仕方ない、邪神様復活のために死んでもらう」

男女が魔法を放とうとしたとき、周りの空間に波紋ができ、波紋の中心から様々な武器が出現した。

「な…なんだこれは!?」

ライネルのスキル、王の宝物庫の能力に男がうろたえているといつの間にか接近したネアが敵の意識を刈り取った。それを見ていたメルアが二人に向かって、

「二人共すごい!私も負けていられないね、次は私が倒す!」

メルアは意気込むと颯爽と走っていった。ライネルとネアは苦笑しつつあとを追いかけた。

グレンとカルシアは校門前で邪神教と向き合っていた。

「今すぐ魔法陣を解除しろ」

「それは無理な相談だ、私はこの計画を成功させ幹部になるのだから!」

叫んだ瞬間、邪神教はグレンとカルシアに魔法を放った。

グレンとカルシアは左右によけそれぞれの攻撃を放った。

「エレキショット!」「獣王拳・風牙!」

二人の攻撃を散開してよけ、二人に四方から接近した。

「カルシア!加減はいらない撃滅だ」

「了解!いいとこ見せるぜ、それと兄貴これが終わったら、今夜こそ抱いてくれ!」

「ぶっ!!カルシアこんな時なにいってんだよ!それとその言葉は死亡フラグだから!」

「兄貴!そんなことより抱いてくれるの?だめなの?」

「~~いいよ!」

グレンは羞恥を隠すように戦い始めた。

「な…なんなんだあいつらは!」

この計画を止めようと生徒が来たと思い、軽く終わらせようと思ったが、目の前ではたった二人に自分の部隊が倒されていく光景が広がっていた。

(ば…馬鹿な!平均レベル65の部隊をこうもあっさり倒していくなんて…そうだ!これは夢だ)

否定しようと頭を降っていると隣に部隊の副隊長を勤めていた男が飛んできた。

飛んできた方向を見ると、戦闘は終わっており残りの邪神教は自分だけになっていた。

「さっ、あとはあんたを倒して終わりだ」

「覚悟しやがれ!」

グレンとカルシアは、睨み付けながら言うとフォルナルは高笑いをし始めた。

「はっははは!貴様らが俺を倒す?笑止!学生が頭に乗るな!トルネード!」

二人に魔法を放つが、二人は左右に別れ一気に接近してきた。最初にカルシアが攻撃してきた。

「獣王拳・狼風怒涛!」

カルシアの連撃を受け流しながらカウンターを放つがカルシアは腕に手を添えて反らし連撃を続けた。

(こ…こいつ!)

フォルナルは驚きつつ捌いていくが、カルシアは連撃を放ちつつ腑に落ちないことがあり、グレンに念話を送くり、グレンも念話に答えた。

[兄貴、なんで攻撃してこないんだ?]

[そりゃ、そいつがちょうどいい相手だと思ったから任せようと思ってな]

[そっか、ならこいつを今夜のための運動相手にするぜ!]

カルシアが連撃の速さをあげた。フォルナルは狼狽えつつ対応し、魔法を練り上げていた。

「調子に乗るな!テンペスト!」

男が自身の最大魔法をカルシアに放つ前にグレンがカルシアを突き飛ばし、グレンが代わりに魔法を受けてしまった。

「兄貴!」

カルシアがグレンを心配して叫んだ。

「ははっ!あとは貴様だけ……?なぜこんなに早く解けるんだ?」

フォルナルが疑問を口にしていると、弱まってきた暴風の中からグレンの声が聞こえてきた。

「ふむ?以外と強かったな」

出てきたグレンにカルシアが疑問を口にし、グレンもそれに答えた。

「兄貴、なんで?」

「?それゃ大切な恋人に傷を負って欲しくなかったから」

魔法が解けて無傷のグレンが出てくると、フォルナルは驚愕し、カルシアはグレンの答えに顔を紅くしつつ、とても嬉しそうにした。

「無傷だと!貴様さては勇者だな!」

「いいや銃士だが」

「は?」

グレンの答えにフォルナルは間抜けな顔で固まってしまった。グレンはフォルナルを放置してカルシアに向いた。

「カルシア交代」

「なんでだ兄貴、あたしはまだやれる!」

カルシアは意義を申し立てるがグレンは断った。

「このまま続けるとカルシアは負ける。まぁ見てろ、見て自身の経験にしろ」

カルシアが反論する前にフォルナルに歩いていった。

「まぁそういう事だ。一撃で全部終わらせる」

「ガキが調子に…!」

グレンに放とうとしたとき学園を覆っていた魔法陣にスパークが走った。

「一体何が起きている!陣に失敗要素はなく、妨害も不可能な筈だ!」

フォルナルの疑問にグレンが答えた。

「それは普通のやつならな、だが俺にはできるそれだけだ」

フォルナルは信じられないとばかりにへたりこんでしまった。グレンはフォルナルに歩み寄っていきスキルを発動した。

「大罪拳・強欲の同族狩り」

男に拳を叩きつけるとスキルとレベルをすべて奪い無力化した。

「これで撃滅完了だ」

グレンの声と共に事件は幕を降ろした。

エピローグ

「グレン~やったね!これで一件落着だね」

校舎からメルア達が走ってくるのが見えた。グレンは手を振りながら魔法陣を解除をしていた。

「兄貴大丈夫か?」

「大丈夫もうすぐ終わる」

カルシアの心配に答えつつ解除を進めていた。メルア達が到着した頃に解除も終わり、魔法陣が消滅した。

「三人共大丈夫だったか?」

「うん!ライネル君とネアちゃんがね全部倒しちゃった、私全然活躍できなかった」

メルアは肩を落としつつ話しているとライネルが質問してきた。

「兄ちゃんが魔法陣を解除したの?」

「ああ、簡単だったよ、それとメルア今日はライネルとネアを泊めてくれないか?」

グレンはカルシアを見つつメルアに伺った。メルアもグレンとカルシアを交互に見て全て悟り、

「そういうこと…わかった、ライネル君ネアちゃん、今日は家に泊まっていって、グレンとカルシアは今日忙しいみたいだから」

メルアの言葉で全てわかったライネルとネアはやれやれと思いながら承諾した。

「それじゃあとは、衛兵に任せて俺達は戻るか」

グレン達は会話をしながら校舎に向かいつつ一度振り返り、さつき到着した衛兵につれていかれる邪神教をみながら、決意と怒気を交わらせて呟いた。

「来るならこい、俺の大切なやつらを傷着けるなら何度でも叩き潰す」

「グレン~何してるのはやくはやく!」

メルアの声に振り向き、グレンは走って向かった。














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