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契約獣頼りの異世界生活  作者: 謙虚なサークル
6/15

召喚師、勝負を仕掛けられる

 草原を進んで行くと、長い木がまばらに生えてきた。

 草むらに囲まれ細くなっていく道を、警戒しながら進んでいく。

 出てくる魔獣はその都度撃破だ。

 ローリスはエアショットて一確。

 コチックはとびげりで二確。

 スパルコはエアショットととびげりで倒せる。

 とはいえスキル使用回数と回復石は徐々に減っていく。


「何か起こったら街までスキルが保たないかもしれないし、ここからは温存でいくか」


 と、言ってるそばからスパルコが現れた。

 こいつは少し手強いし、逃げるが勝ちだな。

 俺はスパルコに目もくれず、その脇を全力で走り抜けた。

 ちらっと後ろを振り返るが、追ってくる気配はない。

 ふぅ、逃げ切れたか。


 その後も、逃げられそうな相手は逃げ続けた。

 だがコチックだけは反撃も受けないし、とびげりだけで倒していた。

 コチックはエアショットを使わずに済むし、経験値は稼いでおくに越したことはない。


 それからしばらく進んでいくと、木々の隙間から街が見えてきた。

 おぉ、何とか辿り着いたな。

 草むらをかき分け道に出ると、後は街までは真っ直ぐ進むだけだ。

 と、街の入り口からこっちに向かって走ってくる人影が見えた。


「おーっ!ウィルじゃねぇか!」


 その正体は自称俺のライバル、レヴィンだ。

 レヴィンはニヤニヤしながら俺に近づいてくる。


「なんだぁ?やっと来たのかよ。トロくせー奴だな!」

「レヴィン、お前俺の魔石を盗んでいっただろうが!」

「な……し、知らねーよ。証拠はおるのかよ?」


 俺の追及に、レヴィンはどもりながら白々しい言葉を返してくる。

 嘘が下手すぎるだろ。逆に呆れてしまう。


「そ、そんな事よりウィル、お前この街の召喚師長には勝てるのか? 俺もさっき戦ったばかりだが、相当手ごわかったぜ!」


 言い訳が苦しくなったのか、話をすり替えてくるレヴィン。

 召喚師長というのは街を守護する上級召喚師の事で、俺たち新米召喚師は彼らと戦いその修行の成果を示さねばならない。

 彼らに勝利すれば力を認められたことになり、新たな魔石を貰えるのだ。

 レヴィンの杖には自分の魔石と俺から盗んだもの、そして召喚師長に貰ったものが三つ埋め込まれている。

 恐らくさっき、勝利してきたばかりなのだろう。


「……へへっ、なぁウィル。ちょっと勝負してみようぜ。お前の実力確かめてやるよ」

「構わないが……俺が勝ったら盗んだ魔獣、返してもらうぞ」

「だから知らねーって! ……行くぜ!」


 あくまでもしらばっくれたまま、レヴィンは俺に勝負を仕掛けてきた。


「いってこい! ツチガメ!」


 レヴィンが杖を振るうと、まばゆい光と共にリクガメのような魔獣が現れる。

 ――ツチガメ。

 泥の中に住む魔獣で、いつも眠そうな目をしている。

 動きは鈍いが粘着性の泥を吐き、獲物の動きを止めた後ムシャムシャと食べてしまう。

 ……との事だ。そして俺が手にするはずだった契約獣でもある。

 だが今はレヴィンのもの、さっさと倒して返してもらうとするか。

 俺は迎え撃つべく、杖を振るう。


「いけ、コチック」


 まばゆい光と共にコチックが現れた。

 コチックとツチガメ、二匹の契約獣が向かい立ち、にらみ合う。


「……なんだぁ? ウィルお前の契約獣、コチックじゃあねーか! あの最弱の魔獣かよ! 笑わせるぜ!」

「さて、笑っている余裕はあるのかね。……コチック、エアショット」

「ぴぴぃっ!」


 短く鳴くと、コチックは翼を広げ集めた風をツチガメに放つ。

 風の刃がツチガメを貫き、太い足を大きくよろめかせ――倒れる。


「ガァァ……」


 ツチガメのHPバーはゼロになっていた。


「な……っ! お、おいツチガメ! しっかりしろ!」


 レヴィンが声をかけるが、ツチガメは倒れたままだ。

 地属性の魔獣であるツチガメは、風属性が弱点。

 コチックのエアショットは効果抜群である。


「……くそっ、戻れツチガメ!」


 レヴィンは杖を振るい、ツチガメを魔石に戻した。

 あっさり倒されたのが予想外だったのか、レヴィンは俺を睨みつけ歯噛みしている。


「ぐぬぬ……ま、まぐれだまぐれ! だがこいつはどうかな!? ……いけっ! ヒノウマ!」


 再度、レヴィンが杖を振るうと今度は燃える鬣を持つ仔馬のような魔獣が現れた。

 ――ヒノウマ。

 生まれた時から全身の毛が燃えており、特に鬣は激しく燃え盛っている。

 炎の温度は調整可能で人を乗せて走る事もできるが、嫌いな人間が勝手に乗ると燃やしてしまう。

 ……との事だ。


 こいつは火属性の魔獣、風属性のコチックとの相性は互角である。

 勝てるかどうかはレベル次第ってところか。

 スクリーンを使って回避率を上げてみてもいいが、多分普通に殴った方が早い気がする。

 現状だと使えるスキルが少なすぎて、戦略もクソもないのが困りものだ。


「コチック、エアショット」


 俺が命じるとコチックは風の刃を撃ちつける。

 よし、こちらの方が素早さが高いな。

 ヒノウマはそこそこ素早さの高い魔獣、ということはあまりレベル差はないようだ。

 ダメージは3割程度といったところである。


「ヒノウマ、ヒートパウダー!」

「ヒヒィィィン!」


 ヒノウマは高く首を上げて鳴くと、鬣を燃やし炎を飛ばしてきた。

 コチックにもろに当たり、HPバーが3割ほど減った。

 よし、互角だ。先手が取れるし確実に勝てる。

 そう思った俺は再度、コチックにエアショットを撃つよう命令を出す。


「もう一度ヒートパウダーだ!」


 が、今度は相手の方が早い。

 ――まさかの事態。素早さが同じ場合はどちらが先手を取るかはランダムである。

 こちらのHPバーが3割削られ、残り4割となった。

 まずい、運ゲーになってしまったぞ。

 あとは最後の一発が先手を取れるよう、祈るのみである。

 ともあれ俺はコチックに反撃を命じる。


「コチック、こっちもエアショットだ」

「ぴぴぃっ!」


 大きく広げた翼を撃ちつけ、風の刃を飛ばすコチック。

 ん? 気のせいかあの風の刃、いつもより少し大きいような……?

 俺が疑問を感じている間に風の刃はヒノウマを貫く。

 そして3割……ではなく、ヒノウマのHPバーをゼロまでもっていった。


「え? な、なにが……!?」


 驚き目を丸くするレヴィン。驚いたのは俺も同じだが、すぐに答えに気づいた。

 クリティカルだ。

 一部のスキルはクリティカル率が設定されており、それに応じて攻撃力2倍のクリティカルが出る。

 運がよかったな。うん。


「く……戻れヒノウマ!」


 ヒノウマを魔石に戻したレヴィンは、がっくりと肩を落としていた。

 どうやらこれ以上、契約獣は出してこないようだ。

 三つあった魔石、その一つは貰ったばかりでまだ空なのだろう。

 この勝負、俺の勝ちだ。


 コチック

 レベル7、風属性

 HP81

 攻撃31

 素早さ39

 防御19

 魔力29

 所持スキル

 羽休め15/15

 エアショット7/20

 とびげり18/30

 攪乱15/15


 そして今の戦闘でレベルも上がり、新たなスキルも習得したようだ。


「ぴぃっ!」


 勝利の鳴き声を上げるコチック。

 俺はその頭をよしよしと撫でるのだった。


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