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契約獣頼りの異世界生活  作者: 謙虚なサークル
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召喚師、召喚師長に挑む②

「ぴ、ぃぃぃ……!」


 来る魔力球が薄れていき、解放されたコチックがよろめく。

 今のグラビティホールでコチックのHPは3割ほど減らされていた。


「ふふ、アクアショットはコチックに対してほぼ無意味だからね。グラビティホールに差し替えさせて貰ったよ」


 ――やられた。

 確かにコチックに対し、弱点でもないアクアショットを並べておく必要は皆無。

 スキルの入れ替えは想定しなかったわけではないが秘術書は安くもないし、グラビティホールのような汎用性の低いスキルは使い終わったらまた戻しておかねばならない。

 そこまでやってくるとは思わなかったのだ。


「ウィル君との戦い、見させて貰ったからね。回避力を積んで反動ダメージでの自爆狙い……俺のアイアントにはかなり有効だろう。というわけで悪いが対策させて貰ったよ」

「……召喚師長ともあろう者が、新人相手にそういう事をするかねー」

「だからこそ、さ。召喚師長が新人相手に易々と負けてあげるわけにもいかないのでね」


 ……ダメージは35か。

 何とかあと2回はグラビティホールに耐えられるだろう。

 対してアイアントのHPはまだ4割残っている。

 エアショットで削り切るには、クリティカルが出ない限りあと4回は攻撃しなければならない。

 このままでは一手、届かない。

 しかも相手はまだ一つ、見せていないスキルもある。

 だいたい何のスキルかは想像がついているが……もちろん『それ』ではない可能性もある。

 これは結構ヤバい感じだ。


「……コチック、エアショット」

「ぴぃ……?」


 それでいいのか? とでも言いたげに、俺の方を見て首を傾げるコチック。

 俺はコチックの目を見て、頷く。信じろと。


「大丈夫だ、頼む」

「ぴ……っ!」


 俺の言葉に頷くと、コチックは命令通りエアショットを放つ。

 風の刃が砂を吹き飛ばしながらアイアントを貫き、そのHPバーを1割削った。

 クリティカルは出ないか。そして残りは3割。


「アイアント、グラビティホール!」

「オォォォォ!」


 再度、放たれた魔力球がコチックを包み込む。

 HPバーはもう残り3分の1しかない。

 ジードはそれを見て不敵に笑う。


「中々頑張ったが……ウィル君、次の攻撃で君は終わりだ」

「さて、そいつはわからないだろう?」


 俺の言葉にジードの眉がぴくんと跳ねる。

 ルーシアに聞いたが、この世界の住人は自分の契約獣は詳細なステータスが見えるが、対戦相手の契約獣のHPはおおよそ、つまりHPバーの減り具合でしか見えないらしい。

 つまりジードにはコチックのHPは約3分の1としか写っていないはず。

 すなわち次のグラビティホールで僅かにHPが残る可能性を捨てきれないのだ。


「確実に倒しきれる確信はない……だろ?」

「ふん、仮にそうだとしても、エアショット2回ではアイアントは倒せない。終わりなのは変わらないよ。クリティカルでも出ない限りはね」


 勝ち誇るジード。

 ……どうやらここが仕掛けどころか。


「確かにその通り。だがそれは俺が何の手を持っていなければ……の話だよな」

「何?」


 そう尋ねるジードに、俺はにやりと笑って答える。


「スキルを入れ替えたのは、ジードだけじゃないって事さ。コチック、ヴォイドボール」

「ぴぃぃぃっ!」


 コチックが甲高い声で鳴く。

 ――ヴォイドボール。

 これは相手契約獣に最大HPの2割の無属性固定ダメージを与えるスキルだ。

 ダメージが低く使いどころは難しいが、相手の回避力や防御力に影響されない為、採用した。

 ちなみに道具屋で20000セラで購入した。

 ヴォン、と空気の歪む音が鳴り、コチックの目の前が揺らぐ。

 透明な魔力球がアイアントへと直撃する。


「ゴッ!?」


 膝を突くアイアントのHPバーが2割近く減る。

 残りHPは1割以下だ。


「な……っ!」


 驚愕の表情を浮かべるジードに、俺は言い放つ。


「さて、どうするジード。攻撃してくるかい?」


 ここでグラビティホールを使ってきた場合、先述の通りコチックのHPはわずかに残る可能性がある。

 そして倒せなければ次の俺の攻撃で、アイアントのHPは確実にゼロになる。

 となればそう簡単にグラビティホールは撃てない。

 新米相手に一か八かの勝負など、出来るはずがないのだ。


「ぐ、むぅぅ……!」


 歯噛みをし、狼狽えているジードだがそんな暇すらない。

 ぼうっとしているとコチックがまた攻撃を仕掛けてくるのだ。

 ジードはすぐに覚悟を決め、アイアントに命令を出す。


「アイアント、リペアボディだ!」


 ジードの命令でアイアントは目を閉じ、脱力の姿勢を取る。

 その身体が淡く光り始め、周囲の砂からキラキラ光るものが集まり始めた。

 ――あれは鉄だ。砂に含まれる鉄がアイアントの身体を修復し、その傷を癒していく。

 金属性の魔獣が持つスキル、リペアボディは周りに鉄があれば使用可能な回復スキルである。

 だが、裏を返せば回復には鉄が必要という事。

 アイアントのHPバーは、ほんの僅かに増えただけだった。


「な……ほ、ほとんど回復していない!?」

「おれが最初ヴォイドボールを使わず、あえてエアショットを使った理由は何だと思うよ?」

「……! 砂を飛ばすためか!」


 その通り、これ見よがしの砂場と反動ダメージのある高速タックルというスキル選択。

 これはもう残ったスキルは9割9分リペアボディである。

 よってエアショットで砂を吹き飛ばし、スキル不発を狙ったのだ。

 狙いは見事ハマり、今度はこちらの攻撃である。


「コチック、とどめだ! ヴォイドボール!」

「ぴぴぃっ!」


 コチックは俺の命令通り、虚空の魔力球を放つ。

 それはアイアントに命中し――HPバーをゼロにした。



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