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契約獣頼りの異世界生活  作者: 謙虚なサークル
12/15

召喚師、決闘を申し込まれる③

「勝っ……た……?」


 信じられないといった顔のルーシアに、俺は手を差し出す。


「おう、勝てたな」


 しばし、ぼんやりしていたルーシアだったが、ようやく現実味を帯びてきたようだ。

 俺の方は向き直り、満面の笑みを浮かべた。


「はいっ! 勝てました! ウィルさんのおかげです!」

「……まぁこうなったのも半ば俺のせいなんだけどな」


 それに苦笑を返した。

 俺が奴らに喧嘩を売らなければ済んだ話なのだ。

 礼を言われる筋合いはない。

 だがルーシアは、それは違うと首を振る。


「……私はただ、何も言い返せなかっただけですから。でもウィルさんに勇気を貰いました。私でも勝てると教えて貰いました。だから、ありがとうございますっ!」


 そう言って思い切り頭を下げるルーシア。

 まぁ感謝してくれているなら、それはそれでよかったか。


「き、貴様ぁ! このクズっ! クズっ! ゴミっ! なぜ言う事を聞かなかった!」


 ガイナスは倒れたイシコロロを何度も何度も踏みつけていた。


「やめて下さい! 契約獣が可哀想でしょう!」

「可哀想だぁ? 可哀想なのはこっちだ! 下僕に裏切られたのだからな!」


 声を荒げながら、ガイナスはイシコロロを思い切り蹴りつける。

 だが力が足りず、イシコロロはビクともしない。

 むしろガイナスの方が足を痛めたのか、顔を歪めていた。


「言っておくが普通にやれば我々が負ける事はなかった! 命令を無視したこいつが! 全て! 悪いのだっ!」


 今度は反対の足で蹴り始める。

 こいつもしかして、撹乱の効果も知らないのか?

 よくそんな事で人の戦い方にダメ出しが出来たものである。


「おい、やめろ」


 俺はガイナスの肩を掴み止めようとする。

 だが勝手にバランスを崩し、地面に転がってしまった。


「ぐぁっ!? い、痛いっ!」


 目に涙を浮かべて、痛がるガイナス。

 膝から血が滲んでいる程度なのに、大げさな奴である。

 俺が哀れみの視線を送っていると、ガイナスはラグナスの手を借りようやく起き上がった。


「貴様……貴様貴様貴様貴様ぁぁっ!! 全て貴様がぁぁっ!!」


 なんだかわからないが全て俺のせいらしい。

 全くもってひどい責任転嫁である。


「殺すっ!」


 ガイナスは血走った目でそう言うと、腰の剣を抜いてきた。


「ひぃっ!」

「ぴぃっ!」


 悲鳴を上げて俺の後ろに隠れるルーシアとコチック。

 契約獣は魔石により、人間を襲わないように制御されている。

 とはいえこのコチック、性格的にもビビりなのだろう。

 何となくステータス的にそんな気がしていた。


「殺す……! 殺してやるぞ……!」

「お、おいまて早まるなって」

「うるさいっ!」


 説得しようとするが耳を貸そうとしない。

 というか目がイってる。

 おいおい、やばいじゃねぇかよ。

 自慢じゃないが喧嘩なんかやった事ないぞ俺は。

 しかも相手は刃物、逃げようにもルーシアは腰を抜かしている。


「お、おいガイナス……いいのかよ? 剣なんか抜いて……こんな事をしてるのがバレたらヤバイぜ……?」

「クヒ、クヒヒヒッ! 構うものか! こんな所には誰も来ない! この場で殺してしまえば、見られたとて関係もないではないか! 故にラグナス、協力しろ!」

「くっ……やるしかないのか……!」


 ラグナスまでも、剣を抜いた。

 おい、もっと頑張って説得しろよ。

 ジリジリと距離を詰めてくる二人に追い詰められ、俺たちは岩に追い詰められていく。


「ウィルさん……!」

「ぴぃぃ……」

「くそ……」


 やるしかないかと腹を括り、杖を構えたその時である。


「そこまでだ!」


 夜の闇に男の声が響いた。

 月の光が遮られ、金属の巨人、アイアントが姿を現わす。

 その肩にはジードが乗っていた。


「ガイナス! そしてラグナス! 俺に挑戦もせず、仕事もせず、何の目的でギルドに居座っているのかと思えば、こんな事をやっていたとはな」

「な……じ、ジード!?」

「違う! これはあいつが……!」

「問答無用! 行け、アイアント!」

「オォォォォォ!」


 アイアントはガイナスとラグナスの襟首を掴み、持ち上げる。


「く、くそ!離せ!」

「ちくょう! 平民風情がぁぁぁっ!」


 アイアントが暴れる二人の頭をごつんと打ち付けると、目を回したのか静かになった。

 ふぅ、助かった。

 ルーシアはジードに頭を下げる。


「ありがとうございます、ジードさん」

「なに、いいってことよ。それより二人とも、怪我はないかい?」

「はい!おかげさまで!」

「助かったよジード。それにしてもどうしてここが?」

「言い争っていたのが見えたものでね。余計なお世話かも……と思ったが嫌な予感がしてついてきたわけさ。ま、いいものが見れてるよかったよ。二人ともいい戦いぶりだったぜっ!」


 ぱちんとウインクして親指を立ててくるジード。

 ならもっと早く助けて欲しかったところである。


「特にウィルくん、君との戦いも俄然楽しみになってきたよ。そのうちそのうちと引き伸ばしてきたが、いつやるつもりなんだい?」


 さっきの戦闘、見られちまったんだよな。

 なら対策される前に早めに戦った方がいいかもしれない。

 幸い奥の手はもう1つあるしな。

 俺は覚悟を決める事にした。


「わかった。では明日にでも俺との試合、受けてくれるかい?」

「望むところだとも!」


 ジードは笑顔で快諾した。

 そんなに楽しみにしてたのだろうか。


「いやぁここに来た召喚師はすぐに俺と戦おうとするからね。ウィル君のように焦らしてくるタイプは初めてだったから、俺の方がヤキモキしちゃったんだよ。ははは!」

「なるほど、ウィルさんの作戦だったんですね!」


 それに関しては全くの誤解なのだが。

 のんきな二人を見て、俺は乾いた笑いを返す。


「おっと、この二人に色々事情徴収をする為にギルドへ連れて行かないとね。では俺はお先に失礼するよ。行くぞ、アイアント」

「ゴォォォォォ……!」


 ジードの命で、アイアントはのしのしとギルドに戻っていった。

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