砂漠のオアシス
遮るものなく照りつける昼の日差しと、夜の寒さ。
水や食料は限られた地でしか補給できない。
見渡す限りの砂。方向感覚も狂う。
目印を見失うと、再び見つけることは至難である。
砂に足を取られ、転がり落ちた者。
水を求めて闇雲に歩き、ついに力尽きた者。
この広い砂のどこに彼らが行ったのか、いまどこにいるのか。
探し出す術は無かった。
「痛かったよね」
少女は足下に語りかける。
「もう大丈夫。これ以上、痛くはならないよ」
そこにはなにも無かった。
表面上は、ただ砂だけがあった。
「のど、渇いてたよね」
少女が腕を軽く持ち上げると、その手にはじょうろがあった。
「もう大丈夫。好きなだけ飲んでいいよ」
じょうろを傾けると、当然のように水が落ち、砂を湿らせる。
水分を含んだ砂が崩れた。
そこには骨さえ朽ちようとしていた亡骸があった。
そこに、命が芽吹いた。
雨が降った。
雨は止んだ。
一面が、花畑になった。
誰ぞかの亡骸は、花に埋められた。
* * *
この砂漠では、光る羽をもつ少女を見た者がいるという。