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66、苦い再会と俺に下された命令

 セズとキャルヴァンのがばがば尾行を無事振り切る事に成功した俺は、出るときとは別の街の入り口へと向かい、ひたすら道なき道を歩いていた。この街の周りは野花が平地に埋め尽くさんとばかりに咲いており、そこから少し離れた場所からは波打つ音が聞こえ、この街が崖の上に聳え立っている様子が伺える。俺は海の先に見える風景が気になって崖のぎりぎりまで近づき、落ちないよう気をつけながら水平線を目を凝らし見つめる。


 「この先には東の大陸があるってアルグが言ってたけど……なんにも見えないな、やっぱり」


 目に見る限りはいたって穏やかな海が越えようとしたとき、何が起きるのか想像も出来ないし、無茶して越えようとも思わなかった。今のところ越える手段も分かってないし、気にしてもしょうがないと思いなおし、体を90度向きなおしたときだった。遠く崖の先に人影が見えたような気がしたが、動くものは一つも見当たらなかった。

 俺はモンスターか何かと勝手に納得し、それなら見つかる前に早く街に入らなければとばかりに急ぎ別の入り口へと向うのだった。


 裏通りに続くもう一つの街の入り口は朝早いせいなのか、それとも別の理由があるのかわからなかったが、人の通りも少なくこれならキャルヴァンたちに見つかることもなく向えそうだと安堵し、刹那なんで仲間を撒かねばならないのだと自分の状況にがっくりと肩が落ちてしまう。毎度の事ながら仲間を素直に頼れないのはなんでなんだ……。

 自分のせいなのか、はたまた環境がそうさせてくれないだけなのか、はっきりとは分からなかったが、毎回仲間に救われているのは事実で、それでもって仲間に迷惑をかけているのも間違いないもので……。


 「結局悩んだって今をどうにかする以外、方法ってないんだよな……。セズたちには申し訳ないけど、もう暫く話せそうにないしとりあえずはあの我儘王に会わないと」


 気を取り直し、俺は裏通りをすたすたと歩き怪しい井戸端集団の横を内心ハラハラしながら通り抜ける。朝っぱらからなんつーごつい格好で駄弁っているんだ、若者よ! 怖すぎてなにも見えない振りしちゃったわ。やはりこの街はやんちゃな人が多いらしく、特に若者ははっちゃけている人がそこらかしこでたむろっている。

 俺はあの我儘王に会うために毎回こんな怖い思いをしなければならないのかと、恨めしい気持ちになりながらも自衛のため辺りを警戒していたときだ。


 強面集団の中に見覚えのある赤色が見えたような気がして、俺は何かを期待しながらそちらに顔を向ける。この街で別れたのだからいてもおかしくはないのに、昨日もその前の日もすれ違う事すらなかったその人物は、なにやら怪しい交渉をしており見た目どおり怪しい男の袋を納得がいったのか、いくばくかの金銭を渡し交渉成立とばかりに受け取り、そのまま踵を返していってしまう。

 その怪しさもあいまって俺はもう仲間でもないのに彼の肩を思いっきり掴み、こちらに向きなおさせる。


 「アルグッ!! お前今何してたんだッ?!」


 「ヒナタ、いきなりそんな剣幕で一体オレがなにしたってんだ?」


 「とぼけるなよ! 今さっき怪しい事してたじゃねぇか!!」


 ワケが分からないとばかりにとぼけるアルグに、俺は怒りに任せてアルグの手に収まっている怪しすぎる袋を奪い、アルグが驚くのもそのままで中身を確認する。

 絶対怪しい危ない薬とか物品に違いない!! そう思い覗いてみるが、その中にあったのはしっかり乾燥された草で、恐らくだがフェブル国の村に依頼されていた薬草のひとつであるようだった。


 「……それで、オレが怪しい事してたとか言ってたが、それがなんなのかぐらいヒナタにもわかったと思うが、納得してもらえたか?」


 アルグが静かな声音で、ゆっくりしっかりと俺に尋ねてくる。その冷静さに俺は恐ろしさを感じつつも、ごく自然に袋を閉じ、そっとアルグに袋を渡す。


 「すみませんでした……。俺てっきりアルグが裏の世界の住人に誑かされて裏取引でもしてしまったのかと……。本当すみません!!!」


 全身全霊で謝罪をし、アルグの顔を見やると以前と変わらぬ表情で、俺の馬鹿な行動をため息一つで済ませてくれた。あ、仲間じゃなくなってもアルグはアルグなのか……。ちょっと安心した。


 「もうわかった、ヒナタのことだから勘違いでもしたんだろうとは思ってたしな。それじゃあこの街では騒動に巻き込まれんようにせいぜい気をつけろよ。と、いってもお前さんには難しい事だとは思うが……」


 別段久しぶり、とかそういった会話もせずに、再び裏道の奥へと消えていってしまったアルグの背中を俺も何も言わずに見送る。


 「なんだよ、俺のことわかってるくせにまだ俺には話してくれる気はないのかよ……」


 アルグの秘密主義な部分にけちをつけるが、それは俺がいえたことじゃないのは百も承知だった。

 誰もいなくなった裏路地を俺は振り切るように背を向け、本来の目的地であるサリッチの宿へと何も考えないよう、無心で足を前に踏み込む。そうして宿に着いたときには、急ぐ必要もなかったのに走ってきてしまい、息を荒げながらサリッチの部屋の前で呼吸を整えていた。そうして落ち着きを取り戻した後、サリッチの部屋を軽く二、三回ノックをし、彼女の返事を待つ。


 「おい、俺だ。ヒナタだよ」


 ノックをしても返事は返ってこず、俺は念のため声をかけてみる。そうすると彼女は何も言わないままドアを開け、扉の隙間からこっそり俺の顔をうかがう。


 「おい、何してるんだ? さっさと部屋に入れてくれよ」


 「そのアホ面……。確かにヒナタのようね。わかったから早く入ってきなさいよ」


 いや、入りたくともあんたがそうしてたら入れるものも入れないだろうに、毎回の如く人の神経を逆なでにするの上手いよな……。

 そうツッコミを入れたくなったが、また腕輪を壊そうとされてはたまらないので、何も言わず部屋に入り、俺は自然に彼女の座る椅子を用意し、俺はその前の床に正座をする。なんかやだ、慣れたくないのになんか自然とやってしまった……ッ!!


 「なにアホみたいな顔してるのさ……? 馬鹿丸出しでみっともないわよ。まぁ、そんな事より……あんたここに来るまでの間、誰にも尾行とかされてないでしょうね?」


 いきなり核心つくようなことを言われ、ぎくりとはするが問題ないはずだ! だってセズもキャルヴァンもがばだったから撒くのに苦労しなかったし、その後もそんな気配もしなかった。だから問題ない!


 「勿論、そんなへまはしてない。だから早く話してくれないか? 君がこんなことする理由と俺に何をさせたいのか」


 「下僕のくせに、あたしに命令しないでよ。まぁあたしもチャッチャと終わらせたいから今回は大人しく話してあげるわ、喜びなさい」


 「うわぁー、ありがてぇー」


 常時こんな言い方しかしないサリッチに腹立つのも越え、もう諦めに似た感情で対応していた。しょうがないのだ、この子は王様なのだから、腹立てるだけエネルギーの無駄だ。


 「そうねぇ、まず何から話せばあんたも理解が出来るわけ? 私が王様って事は分かったと思うけど、それ以外は何を知っているのよ」


 「俺が知ってるのは、向日葵の一族が代々王様やってることと、それを陰で支える朝顔の一族がいるって事ぐらいか……? あとは、うーん……なにもないデス」


 サリッチが国民から良く思われてない事と、アンユ様というのが人気だという事はあえて黙っておいた。だって言ったら何するか分からないし。



 「あんだけ話を聞きまくっておいてそれだけ? どんだけ情報収集が下手なの……。やっぱりあんたを下僕にしたのは間違いだったかしら」


 「いや、もうそういわれても君は俺を今現在脅しているわけだし、もう今回の件は諦めるか俺で妥協するかどちらかしかないだろうよ……。俺としては諦めるがいいと思うぞ!」


 「……それもそうね、実際あたしも時間がないしあんたで我慢するわ。それで私があんたにしてほしい事…………、それはあたしを殺そうとした黒幕を探し出す事よ!!」




 なんとなくそんな予感がしていたのだが、まさか的中するとは思わず俺は今日一番肩をがっくりと落とし、自身の運命を嘆くほかなかった。


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