表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/163

4,全ては彼女の意のままに



——なん、だとッ……?!





 ……ってこんな時に使うんだなと、暢気にも考えてしまった。

 でもここではたと気付く。あれ、それじゃあ全人類絶滅は無理じゃねえか? と。

 例えばの話。星の数ほど神がいて、それぞれの星に人類がいるとしたら、彼女一人……いや彼女と神様一柱だけって、多勢に無勢だろう。


 そう思い、ならばと切り返したが。


 「さっきの話だけれど——


 「先程もお伝え致しましたが、私は嘘は言っておりません。もし、貴方が神様にならない、そういった瞬間に人類、そう地球に住む全人類が死に絶えることになりますよ?」


 全部言い終わる前に言われた。

 どうやら、人類というのは定義の違いでしかなかったらしい。フルルージュ、彼女の言っていた全人類とは、地球規模での話だったのだ。

 じゃあ宇宙の為にっていうなよなッ!!


 逃げられない………逃す気がない。フルルージュはハナからこれが狙いだったのだ。どこまでが彼女の嘘か分からない。いや、彼女の言うとおり嘘が全くないにしろ、だからといって信用できる相手ではない。

 ここはもう、腹をくくるしかない。


 「わかった。フルルージュが望む通り、神でも何でもやってやるよ!」


 その言葉を待っていたかのように花が綻んだかのような、初めての笑顔を彼女は浮かべる。何も知らなければ惚れるように綺麗だが、今はただただ、恐怖が込み上げてくる。


 「ありがとうございます。貴方様ならきっと、受けてくださると信じておりましたわ」


 そりゃそーでしょうよ。こんだけ外堀り埋めといて何言ってるの、このお嬢さん。確信犯過ぎて本当に嫌になる。


 「それでは人類を救うかわりに貴方様が神となり、すべき事、その条件をお伝えいたしましょう」


 そういって彼女は俺に近づき、ある物を差し出した。

 見たところ、艶やかな見た目の黒いゴツゴツした石、といったところか。大きさは片手で持てるぐらいで、小石にしか見えない。

 ふむ、これが何だと言うのだろうか。


 「こちらは貴方様の死の原因となった隕石にございます。綺麗に処理を致しましたので、血などは付着しておりません。宜しければお持ちになりますか?」


 「おぉい! なんてもの本人に見せちゃうの?! 被害者と加害者の対面はもっと慎重に!」


 まじかっ! 俺こんな石ころで死んじゃったわけ?! 何だかそう思うと、憎い、よう、な……?

 んー………相手が物言わぬ石だからかこう、どうしようもない感がハンパないな。

 ところで、なぜ彼女はこんなのを俺に見せた? なぜ彼女がこれを持っている?? 何が目的???

 思考は空回りするばかりで、纏まりそうもない。その間も微動だにしないフルルージュ、彼女は何を考えているのかわからない………


 ふむ、どうせ彼女の事だ。俺が触るまで待ってる腹積もりだろう。それならば!


 「どっせーいぃ! ……。って、何も起きてない?」


 は、ずかしぃぃー!! どっせい言っちゃったよ、何その掛け声?!


 「お伝え忘れてましたが、こちらの隕石が人類を救うための条件となっております」


 フルルージュ、お前絶対ワザと言い忘れただろ。


 「その条件とはこの隕石を、私が望むものと交換する事にございます」


 交換とはまたなんと原始的な条件か。

 異世界の神様になるっていうから、もうちょっとこう……神様パワーでーとか、世界にはびこる魔王をーとか妄想しちゃったよ。

 しかしだな………


 「君が望むものに交換? それと俺の言った一日一善と何の関係性が?」


 「こちらの隕石は特殊な技法により、貴方様と私を結びつける証となっております。そしてこの隕石にはもう一人の私ともよべる魂の欠片を……この隕石にこめております」


 おぉ、お待ちかねのファンタジー要素。さっきまではファンタジーというよりホラーな気分だったから、ちょっとテンションが上がるよな。そんなことを考えていたら、先ほどよりも真剣な声で彼女は俺の目を見つめてきた。


 「ここより先はとても大事な事です。気を逸らさずお聞きください」


 なんて怒られてしまった。すみません。


 「いってしまえばこの隕石は私の目となり、耳となるもの。そして私の望む条件は………貴方様が仰った一日一善を成し遂げるにあたり、必要となってくるものです」


 「日向様、ゆめゆめお忘れなきように。これは私の望むものが手に入るまでは、決して貴方様から離れる事はありません。ですから——


 彼女はそう言って返答を待たぬうちに、俺を空高い場所から見えない足で蹴落としたのだった。そう、俺が今までいたのは天空の城……というより、国みたいな感じだった。

 いくつか大地が浮かんでおり、大きな羽でどこかへ向かう様子も落ちながらだけど見えた。そう……落ちながら。


 フルルージュさん……ちょいと乱雑に、扱い過ぎてはいませんか? 何で蹴落としたの? 普通に死んじゃうよね? これ。それとも、もう俺の身体は不老不死になってて、これくらいでは死なないし、おっけー! みたいなノリ?



 やばい……! 普通に怖い。高所恐怖症にはこれはきつすぎる!! 風圧による吐き気で死にそう。

 眼前に迫る白と茶色の風景。もうすぐそこまでの距離に、せめて顔だけでもと思い、咄嗟に守りに入ると当然だが目の前は真っ暗になってしまう。


 その時。微かに俺の身体を押し上げていた風が、緩やかになったような気がして俺は一瞬気が緩むが、その直後に訪れた着陸時の衝撃には耐えきれず、俺は無事気絶してしまったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ