幼馴染
「君たちかい?新しいこの世界の住人は」
俺たち以外誰もいなかった世界樹(?)の下に人が現れた。
「僕は君たちをこの世界に連れてきた『神』の仮の姿だよ。ほんとはこんなショタみたいな姿じゃないからね」
神とかいきなり言われても理解できない。
特に和のほうは混乱している。
まあ本物でも偽物でもいいから、ここに連れてきた理由を聞きたい。
「なんで俺たちをここに連れてきた?」
「リアルでラブコメを観たかったんだよね。僕は特に幼馴染とか好きだから」
「勝手な理由で俺たちを殺すな」
「え?わたしたち死んでなくない?」
まあ実際そうだ。でもみんなに忘れられたうえ向こうの世界から消えたのならそれはもう死んだも同然だ。まあ向こうの世界で死んだというだけだけど。
「確かに君たちは死んでない。でも向こうの世界ではいないも同然なんだよ。だからこっちの世界で面白いラブコメを見せてよ。君たち十三年の付き合いでしょ?まずは二人で村まで行ってみてよ」
俺たちは神様の勝手な感情で異世界バトルラブコメを繰り広げなければいけないことになった。
嫌ではないし、相手が相手なわけで、嬉しかったりもするが、まだ困惑しているのもまた事実。だが今はそんなのんきなことを考えている暇はない。ずっとこんなところにいたら死ぬ。この世界は何があるのかわからない。
今はまだ明るいし、今のうちに移動して家を建てるのが最善だろう。
※ ※ ※
「ねぇー、疲れたぁー。ちょっとやすもーよ」
たぶん5キロは歩いた。
大草原を抜けて、今は森の中にいる。
モンスターの類のものはいない。道もそこそこ整備してある。ということは近くに村か街があるはずだ。
俺は歩こうとしないみかちゃんを「あと少しで村があるから」と気休め程度の嘘をつきながらなんとか動かしていた。そのせいか、俺が今一番疲れている。
いろいろしながら歩き続けてやっとのことで村に着いた。
本当に村があるとは思わなかった。
「あそこに座ってやすもう」
「ねぇ、なんか暗くない?」
言われてみれば確かに暗い。この暗い中外にいるのは危険だ。だが、家がない。
ヴゥゥ
今何かの鳴き声が聞こえた。
「ひぃっ」
和は前いったお化け屋敷以上にビビっている。まあ今度は生きている奴だし当然だろう。
あ、そういえば俺はいま武器を持ってない。
素手?いざというときに戦えないからそんなものは使えない。
「うら死ねェェェェ、肉よこせやおらぁ」
近くにゾンビが見えたと思ったら、その背後から人が来て、叫びながら切り刻んだ。
叫んでいる内容は怖かったけどまあ助かった。
「あっヤベェ、武器壊れた。はぁ、家戻るか」
突然叫んでゾンビを殺したと思ったら、今度は武器が壊れたとかで急に表情が暗くなり、しょぼしょぼしながら帰っていった。
(何あれ)
困惑した俺たちは、別の意味で怖くなって、交互に見張りをして寝ることになった。