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創作一本勝負・お題「マフラー」

作者: 「クロ」

ーーー大好きだよ!







隣で頬を少し赤らめながら彼女が笑う、

僕は、そんな君を見ているのが大好きだったんだ。







君に、最後の告白を











ーーーこれ、…君にプレゼント







高校二年の冬、なけなしのお金で購入した赤いマフラー、







ーーーわぁ! ありがとう!







もらってすぐに首に巻いて、笑いかけてくれた時、僕は本当に嬉しかったんだ。







安物だとか、そんな不安を、君は全て笑顔で無くしてくれた。







ーーーずーっと大事にするから!







彼女はそう言うと、僕の頬に唇を触れさせるだけのキスをしてくれた。







羽が触れたような、そんな感覚








ーーー私ね、君の隣にいられて、今最高に幸せだよ!







…僕も、君の隣にいられて、最高に幸せだよ







…でも、







僕はね、君に、伝えなきゃならない事があるんだ。







君に伝えるよ。







最後の、告白を、





















「ねぇ」

「何?」





















「僕ね、もう長く生きられないんだ。」













大粒の涙が、呆然とした表情の君から溢れる。







ごめんね、泣かせちゃって、







叩かないで、痛いじゃん







ーーーしん、じ、られないよ、そんなの!?







そうだよね、信じられないよね、

僕だって、信じたくないんだ、







君の笑顔をみて、

君の隣にいて、

君を支えて、

君に癒されて、

君を抱いて、寝たい







でもね、世界って、時に残酷で、死なんて身近にあるんだよ







ーーーそんな、なんで…!







驚かせちゃったね、でも大丈夫、すぐにはいなくならないよ







ーーーね、ねぇ!? どれくらい私は君の隣に居られるの!?







「半年、かな」







半年、君の隣に居られる最大限の時間







…僕のあげたマフラー、君の涙で濡れちゃってる。







真っ赤な布地に、ぽつ、ぽつって、シミが増えてく







ーーーわから、ないよ、どうすれば、いいの?







僕にだって、わからない







半年で、君に何を話そうか、

話したいな、君に、全てを

昔の事、最近起きた事、そして、これから紡いでいく筈の未来のお話







儚いながらに淡く光ってる。







暖かいけど、切ないな







ーーーしんじゃうの、いやだよぉ…っ!







うん、わかってる。







僕だって、死にたくないんだ。







君と時を過ごして、結婚だって意識してる。







でもね、もう、僕の力じゃ抗えないんだ。







手を繋ぎたい、ハグをしたい、キスをしたい。







力不足だね、もう、できないや







ーーーでも、







ぐしぐしと、僕があげたマフラーで涙を拭う彼女、まっすぐと見つめてくる。







ーーーでもね、







ーーーどんなに辛くても、醜くても







ーーー最後の時まで、あなたの隣にいても、いいですか?







そういう君の瞳には、悲観以外の色が見えたんだ。







あぁ、敵わないな、君は強いよ







いってほしい事を、こうもかっこよく言い切ってくれる。







「うん、ありがとう」







僕は笑った、彼女も、マフラーをシミだらけにして、目を赤くして、笑った。













最後の日、ベットの隣で泣く君を、僕は喋れないけど、今しっかりと見ているよ







君の首元には、季節外れの真っ赤なマフラー、







流石にいくらかわいい君でも、服にあってないよ、







あぁ、喋れるのなら、今君に好きって言って、抱きしめて、泣きたいよ







だんだん、体が冷えていく感覚、寒いな







医師が目を伏せ、彼女が何かを叫んでいる。







ーーーもう、君の声も聞こえないんだ。







寒いな、凍えちゃいそうだ。







こんな寒い所に一人で行くなんて、寂しいね







でも、大丈夫、怖くないよ







君とは、沢山のお話をしたよね、







もう、伝えてない事は、ないよ







最後の力をふりしぼって、作れているかもわからない笑みをむける。


















ーーー最後の告白を、最後の時を、見届けてくれてありがとう、

















…おか、しいなぁ、







喋ったわけでもないのに、顔だって多分動いてないのに、







薄く開けられた僕の目を見て笑った君は、微笑みながら真っ赤なマフラーを僕の首に巻いてきた。








君は、口を動かして、僕に、何かを伝えた。








だから、聞こえないんだってば、








でも、ありがとう








最後は、最高にあったかいよ。

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