第一節
Moderato 中くらいの速さで
由美と佐倉さんをなんとか言いくるめている内に俺はある人物の事を思い出した
あの・・由美か佐倉さん。一之瀬って知ってる?
「何?ごまかす気?」とまだまだお怒り気味の由美
「ああ、あの有名な巫女さん?」
有名な・・とは彼女「一之瀬」が去年自己紹介のときに言った言葉に由来する
――― うちは一之瀬沙耶。特徴は伊勢神宮の神官の末裔。
学校内の人なら誰でも知っている。知らない人はもぐりか日々に疎い人だけだろう
「私は去年同じクラスだったから沙耶ちゃんと仲いいよ。」
由美はようやく怒りをおさめた。
「沙耶ちゃんに何か用?」
一之瀬って本当に巫女・・・神官なのか?
「沙耶ちゃんは巫女ではなくて神官候補って言ってたよ」
「おぬしもやるのう副隊長」
「いえいえ隊長様ほどでは」
なにやら二人でのりのりでハイタッチをしていた
じゃあ、僕先に帰るよ
そう言いながら席を立つと
ガシッと由美に手をつかまれた「沙耶ちゃんはB組だよ」
―――さすが副隊長様。よくお見通しで
「ありがと。じゃあ」手を振りB組の方へ向かった
情報局、もといあの二人の情報はああ見えて重い。彼女がそうというのなら一之瀬は確実にクロなのだろう。
可能性的にはこの石が贋物というのが一番ありえるか
ふと自嘲気味に漏らす。ほんとうにいらいらしてきた。
とてもむかつく。
・・・どうしてB組がこんなにC組から遠いんだ!
階段を二つ、廊下を三つ通りすぎようやくB組がある階につく
さて、一度も喋った事はないが一之瀬はどこか分かるだろうか?
副隊長に聞いておくべきだったな?
いや、でも腰までかかる長い黒髪の美少女と剣から聞いた気がする。
・・・よし!恐らく見つかるだろう
俺はB組のドアを開けた
一之瀬はぱっとクラスを見渡しただけで見つかった
―――他に腰まで掛かる黒髪の女の子なんていないからな
「よう、一之瀬」
とりあえず気さくに声をかけてみる
一之瀬はうるさげに俺のほうを見返した
「何?」
いや、この石を見てもらえないかなって
鞄の中から袱紗を取り出す
「・・・何も力を感じない」
話が早くて助かる
「そうか・・」
「一応石を取り出してみて。その袱紗、結界ぽい気がしないでもない」
・・・やはり袱紗で合ってたんだな。この袋
「ほい」
袋から石を取り出して渡した。
刹那、彼女の目が大きく開かれた
「これ。凄い力を持ってる。・・なんでうち気付かなかったんだろ」
彼女は自嘲気味につぶいた
なんと本物の魔法の石だったらしい。・・・魔法かどうかは知らないが
彼女は袱紗を渡すよう目でうながす
袱紗を持つと興奮したように頬を上気させた
「すごい結界。エクスカリバーの鞘みたいな神話レベルの結界や」
エクスカリバーって・・・んな大袈裟な
「早くしまって」
「ああ」
彼女に言われるまま石を袋の中に戻した
要するに本物の凄い力を持つ石とそれを隠すための結界と言うところか
まさか本物とは・・・まあ思わないでもなかったからここにいる訳だが。
「結界は全ての力を外側から守る優れもの。石は・・・うん。全てを破壊し再生しても使い切れないような膨大な力を持っている」
・・・説明してくれているのだろうか?一応礼を言っておくべきだな
「ありがとう。よく分かったよ」
「でも、このままじゃ近い内に君は死んでしまうよ」
「そうか・・・えぇ!」
思わず叫んでしまった。―――周りの視線が痛い
「こっち来て!」
腕を引っ張られて廊下に出た
「こっち」
彼女は俺をひっぱり早足で歩き続ける
ようやく別棟の踊り場まできて落ち着いた
彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめ、胸を上気させている
「もう、いきなり教室で叫ばないで!常識的に考えてよ!」
「ああ、はい。」
「・・・いや、でもあなたは近い内に死にますとか言われたらそりゃ叫ぶでしょ。
ついでに一之瀬だけには常識を諭されたくない。」
胸の内がつい言葉に出てしまったようだ
「だ・ま・れ!」
黙りました
「まったく。しょうがないからうちの家に泊まらせてあげる」
・・・え?
「聞こえなかったの?このままじゃ危ないからうちの家に来てもいいって言ってるの」
・・・まじ?俺、女の子の家に行くの初めて。めっちゃドキドキする
「変な事をしたら許さないからね」
一之瀬は目を三角にしていた。
そんなあからさまな顔をしていたのだろうか?
「あと、立場わきまえてる?」
・・・そうでした。死に掛けた所を救ってもらっているのでした。ありがとうございませえ。
「分かればよろしい」
彼女は胸をはり、元気よく昇降口へ向かっていった
あの・・・?
「何?」 語気も鋭く返される
鞄は?
「そんなもの家に帰ればあるでしょう。どうしてわざわざ持って帰らないといけないの?」
やべえ・・・面白すぎる
彼女は先導して歩き始める
俺は俺の鞄もついでに彼女の家にあることを期待してついて行った
巫女さん登場!




